フィクションにおけるセクシュアリティ

「女性の描くやおいは、嘘であり、同性愛者に対する偏見を助長する。現実の同性愛者はやおい嫌っているので、こういった同性愛者を傷つける行為は即刻止めるべきだ」

これって、よく聞かれるやおいバッシングの常套句です。一見正論であるように感じます。って、確かに正論であり、否定できないです。実際やおいに対し否定的な同性愛者の方は多いですし。

しかし、これって、やおいに限ったことでしょうか。

たとえば、男女のポルノは、ヘテロセクシュアルみなさんが喜びますか？

やおいが正確な同性愛を描いていない嘘だというのなら、男女エロは正確な異性愛を描いていると言えるのでしょうか？

過激なやおいに嫌悪感を持つ同性愛者がいるのと同じように、偏見はいりまくりの男女エロに嫌悪感を持つ異性愛者の人たちも多いのです。男女エロをあさりまくった経験上断言します（笑）

某総合ゲイサイト（女性の立ち入りお断りだったので、URLは記載しません）にて、アニメ、ゲームのファンサイトのキーワードに「女性向け」と入れて好みのサイトを検索するようにというアドバイスがありました。同性愛者の方すべてが、やおいに嫌悪を持つというのなら、こんなアドバイスがされるはずありません。やおい好きの同性愛者のかたも確かに存在するのです。

それでも、フィクションにおけるセクシュアリティの描かれ方で、一つ気になることがあります。

メタルギアソリッド2というゲームがあります。このゲームの評価はここで語ることではないのですが、私には面白いゲームでありました。

さて、そのゲームにヴァンプという男性キャラが登場します。彼は、なかなか魅力的な雰囲気を持ったキャラでした。どっか、イっちゃったような、どっか変質者的雰囲気を持っているとでもいうのでしょうか。

問題は、そのキャラの設定が、バイセクシュアルなんですね。

しかも、そのときの仲間のある女性キャラの父親の愛人だったという、さらに濃い設定で。

※この設定は公式だというのですが、出所がはっきりしません。ただ、キャラファンサイトだけではなく、まじめな考察系ファンサイト、攻略サイトにも公式設定がそうであるとの記載があったので、たぶんそうじゃないかと思うのですが。確実な情報ではないです。

※↑といっていたら、情報をいただきました。どうやらゲーム中にスネーク自らがそうだと語ったらしいのです。はて、全然気付きませんでした（笑）　寝ながらプレーしていたか！

別にキャラの設定がバイセクシュアルでもいいのです。ただ、そういったいかにもという雰囲気のキャラに、その設定は正直抵抗があります。

たとえばですね、ヘテロセクシュアルは描かれることが多いので、ヘテロセクシュアルというだけで、キャラの個性にはなり得ないのです。が、バイとかホモセクシュアルは、滅多に描かれないので、そういった設定自体が一つのキャラ個性になってしまいます。

バリエーションが、少ないと一つの描かれ方の印象比重が大きくなり、ステレオタイプ化しやすい。ヘテロセクシュアルなどいくらでも描かれるし自分の周りにもいくらでもいるから、そのキャラがいかに変態的に描かれようが、それを「ヘテロだから」的に結びつけることはないのです。

昔、本の題名は覚えていないのですが、ある同性愛者の書かれた本に出ていたことです。いわゆる美少年ものといわれる、美少年同士の同性愛が少女漫画に多かったころ、自分の同性愛指向に気がつきあじめた男の子が「ぼくは美少年ではないから、（同性との）恋愛ができるのか不安」という悩み相談があったそうです。

どうも、その当時まだまだ同性愛者の情報は少なく、高校生くらいが手に取れる情報はそのくらいだったので、そういった誤解が生まれたらしいのです。まあ、今はいくらなんでもそういったことはないでしょうが。

もっとも、男女恋愛でも、恋愛漫画にしろ映画にしろドラマにしろ、美男美女の組み合わせが多いわけです。が、皆少々容姿の問題で悩んだとしても、ちょっと周りを見まわせば、さほど美男でも美女でもない二人が普通に恋愛をしているわけです。

だから、そこまでの誤解は生まないといえます。

男女エロのフィクションでの描かれかたの多くは男性の都合のヨイ解釈で、問題大ありです。しかし、マイノリティの描かれかたは、描かれるパターンが少ないだけに、もっと気を遣うべきかも知れません。

もちろんセクシュアリティに限ったことじゃなくて、病気とかを描くときも要注意なんだろうなと思います。

こういったのは、つくり手の偏見が悪意無く、無意識に反映されてしまうのかもしれませんね。