大晦日、兼正月の宴会は無事終了した。

同僚の仕事全部引き受けて、宴会のパシリやった俺は無事じゃねーけど。

やれ酒がねぇだの、やれ一発芸見せろだの。

拳銃の弾買ってこいだの、味噌汁が食べたいでござるだの、子どもはいいですねーさんだの。

いい加減にしろよこの酔っ払い共が!…とは言えないのが下っ端の悲しいところ。

怒涛の新年を迎えて少し経ったある日、俺は新たな指令を貰う。

そしてほぼ同時に長谷川からの電話、再就職が決まったらしい。



「そうか、お互い頑張ろうな」











黒の行方








俺は近くの陰に身を潜めた、そして建物の様子を盗み見る。

被っている笠を押し上げ、屋根に大きく設置されている看板を確認した。

スナックお登勢、そして…万事屋銀ちゃん。

晋助様の仲間であった坂田銀時が経営している店、売れ行きは…いや何も言うまい。



(ここであの二人の姿は消えた。ならば白夜叉が失踪に関わっている可能性はある)



今回行う俺の任務は、橋田賀兵衛の孫の行方を調べる事。

まあ厳密に言えば違うんだけどな。

俺の本当の任務は全く別だが、その一環としてジジイの孫探しに協力してる。

実際は孫探しなんて可愛いもんじゃないけどよ。

だが俺は俺の任務を遂行するのみ、余計な情を挟む気は全く無い。



(………………!)



轟音と共に蹴飛ばされた一階の店の扉。

そこから現れたのは、赤ん坊を抱えた白夜叉だった。

間違いない、今のは橋田の孫である勘七郎だ。

仕事柄、俺は人の顔を一瞬で覚え一瞬で見分ける癖をつけてある。

俺はケイタイに番号を打ち込みながら、追跡を開始した。

白夜叉に勘付かれないよう、見失うギリギリまで開けているので大丈夫だろう。



「…もしもし、です」

『ああ、アンタかィ。で…面白いことはあったのかねェ…?』

「橋田の孫は坂田銀時が保護していました、俺では奪えないのでお願いします」

『ほォ、それは面白いねェ。で…ドコにいるんだィ?』



俺は自分の現在位置を似蔵様に伝え、通話を切った。

そしてもう一度番号を打ち込む、もちろん似蔵様に向けてではない。

呼び出し音は四回、意外と長かった。



「もしもしです、七の件についてですので橋田様をお願いします」



少々お待ち下さいの声が途切れ、再び呼び出し音に切り替わる。

今度は二回も待たずに、すぐ電話が繋がった。



『お前か、勘七郎は見つかったのか!?』

「いいえ。ですがスナックお登勢でそれらしき目撃情報がありました」

『ワシは勘七郎を見つけてこいと言ったのだぞ!!』

「落ち着いて続きを聞いて下さい。…スナックお登勢の上部には万事屋があります」

『それがどうしたというのだ!?』



これは相当頭に血が上ってるな。

普段の天下の橋田屋主人が、この繋がりに気付かないはずがない。

俺は説明を続けた。



「万事屋はその名の通り何でも屋。ならばそこに子どもを預けた可能性が高いと思います」

『何?』

「そうだとしたら早くても遅くてもあの女は必ず万事屋に来るでしょう、子どもを連れ戻すために」

『……ふむ』

「お登勢に話をつけた方がいいと思われます。上手くいけば身柄も確保出来るかもしれません」



橋田は納得したのか、俺にスナックの監視を続けるように命令して電話を切った。

……ま、スナックの監視なんかとっくに放棄してるけどな。

俺が孫の詳細を橋田に伝えなかったのは、当然理由があっての行為。

橋田のジジイが直接取り戻すより、似蔵様が取り戻した方が点数が稼げるからだ。

これが俺の任務、鬼兵隊としての任務だ。

俺の仕事は似蔵様の補佐、そしてお目付け役も含まれているんだろうな。

あの人は正直、後先はあまり考えていない。

だから俺が橋田のジジイとの間に立って交渉役を務めるようにと、武市様から指令を貰ったのだ。



(女をおとりにしてる間に、似蔵様が赤ん坊を取り戻せば一石二鳥だろう)



……正直この任務はあまり気が進まない。

子どもを、赤ん坊を道具として扱っている気がしてならないからだ。

それではアイツらと同じ、鬼畜外道と同じ場所に立つ羽目になるのではないのか?



「…今更か」



自嘲の笑みを浮かべた瞬間、ケイタイが震える。

俺は通話ボタンを押して耳に受話器を押し当てた。



「もしもし?」

『坂田銀時を逃がしたよォ、場所教えてくんなァ』

「…わざとですね、てか白夜叉じゃなくて孫追いかけて下さいよ孫」

『片腕が塞がってたら満足に戦えないさね。俺ァ全力であの男を斬ってみてェんだよォ…』



駄目だこりゃ、完全に人斬りモードになってるよ。

まあ白夜叉を斬ればあの赤ん坊も取り戻せる、それにターゲットの動向を探るのは俺の仕事だ。

公園でオムツの処理をした坂田銀時は、橋田屋の建物に向かって歩いていく。



「…橋田屋に戻って下さい、坂田銀時も向かっています」

『そうかィ。言っとくがくれぐれも邪魔しちゃいけねェよ…?』

「しませんよ。似蔵様の間合いになんて怖くて入れません」



橋田のジジイから全員集合の連絡も入っており、俺も橋田屋に向かうことにした。

どうやら母親が確保されたらしい、だが孫の居場所はまだ吐いていないようだ。

橋田のジジイも裏を知っている男、拷問くらい平気でやってるだろうに。

母は強しってとこか、普通の女なら耐え切れずにすぐ自白する。

……アイツも、そんな風に耐えていたんだろうな。



「……行くか」



笠を深く被り直し、俺は白夜叉とは違うルートを選んで橋田屋に向かった。

裏口から回り込めばきっと他の浪士に、似蔵様に追いつくはずだ。

白夜叉はともかく、万が一橋田の孫を巻き添えにしてしまっては似蔵様の立場が無くなる。

大丈夫だとは思うが相手が相手、それ程楽な戦いにはならないだろう。



一抹の不安を抱えながら、橋田屋に駆けた。








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