バキ!「さっさとおっ死ねこの野郎!」

隣にいた相棒に鬼軍曹の鉄拳制裁が下った。軍曹が摘み上げたものを見るとどうやら菓子パンを隠し持っていたらしかった。まあ入れたのは俺なんだが。

相棒は泣きそうな顔で俺を見上げたがどうしてやることもできない。助けてやりたいのは山々だが海兵隊では上官には逆らえない。

もし逆らってみてもあの鬼軍曹が相手ではしごき上げる格好の獲物を見つける事になるだけだろう。

生真面目な顔を装いながらぼんやり考えていると皆が腕立て伏せの格好をし始めた。相棒はと言えば泣き顔で菓子パンにむしゃぶりついている。

慌てて自分も腕立て伏せをし始めるが頭の中は別のことで一杯だった。そう、自分の鞄の中身についてだ。

何とか自分の鞄の中身を知られないよう相棒の鞄にパンを入れてその後の鞄の検査を有耶無耶にしたかったがどうやら駄目だったようだ。

腕立て伏せが終わるとまた検査を再開しだしたのだ。ああ、神様!日曜には教会に行きますからどうか救いの手を!

必死の祈りも虚しく自分の番がやってきた。軍曹が鞄を蹴り上げる。やめてくれ!そんな事をしたら・・・!

と、蹴り上げた反動で鞄が開いてしまった。? 軍曹がこめかみに血管を浮き上がらせながら顔を近づけて言った。

「俺がこの世でただ一つ我慢できんのは―――鍵をかけ忘れた小型トランクだ!」泣きたい気分だったが今泣けばもっと

酷い目に遭うだろう。必死に耐えた。だがそれも鞄の中を軍曹が覗き込むまでだった。

軍曹の顔色が変わる。殴られる衝撃に耐えようと歯を食いしばる。・・・・・・・・・?

恐る恐る目を開けると軍曹が鞄を素早く、かつ丁寧に閉めたところだった。鞄の中身を見られて何も言われない・・・。

より悪い想像が膨らみ、「除隊」の2文字が頭を駆け巡った。軍曹に頭がおかしくなったのだと思われたのかも知れない。

こうなるとどんどんと想像は悪い方向へと膨らんでいき、ついには除隊後に精神病院で一生を過ごすストーリーを思い描いてしまった。

こうなったら徹底的に釈明しなくてはならない。口を開きかけたが軍曹は青い顔をしたまま立ち去ってしまった。

しかし去り際に呟いた軍曹の一言が胸に引っかかった。「お前もか」とはどういう意味なのだろうか。






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