ジュンと真紅は一緒に紅茶を飲んでいた。雛苺も翠星石ものりもいない二人きりの静かな一時。 そんな時にジュンが真紅に対しこう言った。 「なあ真紅、この指輪を通して僕の力がお前の媒介になってるとか言ってたけど、それなら もっと強い人間をマスターにした方がその分お前も強くなれたんじゃないのか? 格闘家とかさ〜。」 「強い人間をマスターにすればドールも強くなれる。そう考えていた時期が私にもあったのだわ。」 数十年前、俗にベトナム戦争と呼ばれる戦争がベトナムの地で行われていた。 そして、その地にあって武器を持たず、徒手空拳だけで完全武装した敵兵士を 次々に撲殺して行く若干16歳の日本人少年傭兵の姿があった。 後に地上最強の生物、オーガなどの異名を与えられる事となる少年は 同じくベトナムの地に降り立った薔薇乙女第五ドール真紅と出会った。 「私はローゼンメイデン第五ドール真紅、お前はこれより真紅の下僕となる。」 真紅お決まりのセリフ。しかしその瞬間、少年は大笑いしたではないか。 「アァァァハッハッハッハッハッハッ!!」 まるで笑いのツボに入ってしまったかのように少年は笑い続ける。 しかし真紅も仕方が無い顔をしていた。そもそも人間にとっての常識では 人形は自分で動いたりしゃべったりしない。だからこそ今までも人間にその存在を恐れられたり、 恐怖のあまり笑われたりなどもあったのだが、目の前の少年は少し違うようだった。 「俺が下僕だと? お前の? 馬鹿馬鹿しい。俺は帰るぜ。」 「あ、待ちなさい!」 笑いながら後に振り返り帰ろうとする少年を真紅が慌てて追い駆けようとした瞬間だった。 恐らく並みの…嫌、相当に動体視力を鍛えた者の目をしても視認する事など不可能な速度で 少年が振り返り、真紅の顔面に裏拳を叩き込んでいた。 「俺を下僕にしようとすると言う事は、俺への挑戦だと言う事。一気に決着付けさせてもらったぜ。」 「でもダメ…ダメなのよ…ジュンじゃないと…ダメなのよ…。」 「真紅!?」 先程までの冷静さが嘘の様に弱々しい泣き顔になった真紅はジュンの胸に飛び込んだ。 「ジュン…ジュン…私は貴方をマスターに選んでよかったわ…。だって…。」 「真紅!? 一体どうしたんだ!? 真紅!?」 「だって…ジュンは私に裏拳なんかしないのだから…。」 「裏拳!?」 真紅はジュンの胸の中で泣き続けた。やはり何事にも相応か否かと言う物がある。 それはマスターを必要とするドールも同様。だからこそマスターとドールのバランスが大切となる。 真紅は一度そのバランスを見誤って死に掛けた。しかしもう二度とそんなミスは犯せない。 と言うかまたそんなミスをしてしまった今度こそ本当に死んでしまう。 そして真紅はジュンと出会い、ジュンとの時を大切にしていく事になる。 だからつづかないんだってば ――――――――――――――――――――――――― 先生またまたやってしまいました申し訳ありませぬ。 真紅が過去に酷い目にあった体験の話で考えてたのに 気が付くと「ドールとマスターの相性って大切だな」な話に なってしまったスマソ