秋葉原イベント前夜篇
リビングにて真紅は放送時間前には必ずテレビの前を占領して、くんくんをチェックしている
ジュンが高校生になってからも毎日繰り返される何時もの日常だ
ジュンもくんくんに熱中している真紅を微笑ましいと思えるまで心が成長していた
「ジュン、明日くんくんの新しいDVDが発売されるの
初回版を買ってきなさい五分以内で」
やっぱり可愛くないとジュンは思った
しかし真紅の望みはたまには叶えてやらないと
また勝手にトンでもない物を注文しかねない
「そうだ!明日は秋葉原に行くから、ついでに買って来てやるよ
真紅お前も行くか?」
「嫌よ家来の貴方が買ってくればそれで済むでしょう」
真紅はテレビからジュンに視線すら移さずに
気丈高に言い放った
ジュンは少しムッとしたが、あることを思い出して
勝ち誇った顔で真紅に言った
「中の人が来ても?」
「中の人?」
「あ~、つまり何だ、本物に会えるって事!
本物のくんくんに会えるって事!」
「!!!!!!?」
真紅は今日初めてジュンの方に顔を向けた
ジュンが言うには明日はDVDの発売のイベントで
購入者だけにトークショーとサイン会があるらしいが
くんくんに会えると聞いて
恍惚状態の真紅にジジュンの言葉など耳に入っていなかった!
(あぁ……明日はあこがれのくんくんに逢えるのだわ………)
まるで少女漫画の恋する乙女のような真紅
「お~い真紅戻ってこ~い!」
ジュンは真紅の視線を掌でサッサッサッサッと何度も遮る
真紅はその夜眠れなかった!
まるで遠足前夜夜の小学生の如く
アリスゲームですら真紅はこんなにも緊張しないだろう
「明日が愉しみなのだわ!」
結局真紅は一睡もできなかった!
こうして桜田家の夜は更けて行ったのであった
秋葉原ジャンクパーツ篇に続く!かも………?
秋葉原到着篇
ここは世界に誇る電気街、秋葉原
近年は電気男のブームや大型家電量販店の相次ぐ出店により
日曜日ということもあってか裏通りまで通行人でごった返していた
ざわざわ…ざわざわ…
通行人がジュンを好奇の目で見ている…
「あの~?すみません…写真撮ってもよろしいですか?」
見るからに観光客風のカップルが近いてカシャっと写真を撮っていった
(これで10組目だ……)
ジュンはため息をついた
ジュンの誤算は真紅が黙ってリュックに隠れるタマではなかったということ
ジュンは真紅を腕に抱えて中央通りを力無く歩いていた
「おい、おい!聞いてるのか真紅……!絶対に動くなよ………!」
「家来の癖に指図しないことね」
「なんだと~~~!!誰のお陰でくんくんに逢えると!!!」
「ジュン、声が大きいわ」
(お、おい!あの人形趣味の男すげえな!)
(人形に話し掛けてるぜ!)
(すげぇ~!)
(ママ~あのお兄ちゃん変~)
(し!見ちゃいけません!)
(でもあの人形も良く出来てるよな!いくらするんだ?)
「あの!RTVですけどインタビューお願いします!」
「ガルルルル!!!」
「ひぃ!」
ジュンは局の人間を威嚇して拒否する
「美しいものを撮ることはごく自然なことなのだわ」
真紅が口を開く
「真紅じゃなくて奴らは僕を馬鹿にしてるんだよ!」
「そうかしら」
今の姿を知り合いに見られたら死のう………
ジュンは本気でそう思った
と、目的地に向かう途中、ガラスショーケースに人だかりが出来ていた
「この人形すげえリアルじゃね?」
「かわいい~!」
「このフィギアは萌え萌えっすよ!」
ギャラリーからはそのような会話が聞こえてきた
よく見るとショーケースの中に見慣れたドールが3体!
翠星石、雛苺、金糸雀に間違いなかった!
「ぶっ!あ、あいつらまさか着いて来ちゃったのか?」
ドナドナ篇に続く!……かも?
いつもいきあたりばったりで書き込みしてる
今は反省してる
ドナドナ篇
ざわざわ…ざわざわ…
(ふふふですぅ…真紅ばかり注目されてたまるものか!ですぅ)
(もっと見て見て~なの!)
(この中ではカナが一番かしら~?)
ショーケースの三体のドール達は
悩ましいポーズをとっている
つもりらしい
が、
これはどう贔屓目に見ても盆踊りか暗黒太極拳の部類であった
そこへ一人の男がガラスに顔を密着させて
「ぐぶぶぶぶ……可愛い人形ちゃ~ん!僕が今、買ってあげるからね~?」
(ゲゲ!+ですぅ+なの~+かしら~?)
どうやら3人ともに同じ感想らしい
一応容易に買われないようにかなりの高額の値札を用意したつもりだったが
その『大きなおともだち』は、慣れた様子で店員を呼び
すでに商談を行っていた
店員のほうも
(こんな商品あったかな?)
と疑問に思ったものの男に押しきられた格好になってしまった
(ガクガクブルブル…)
三体は見た目は微動だにしていないが心の中では震えていた
まさにヘビに睨まれた蛙の状態
「う~ん…どの娘にしようかな~?」
(ひぃ!ですぅ!チビ苺のほうが美味しいそうだぞ!ですぅ!)
(金糸雀が良いと思うの~~!)
(もうズルしないから助けてかしら…)
「決めた!この金糸雀って娘にしよう!」
(ひぃぃぃうぅぅ!助けてなのかしら~!)
その様子をジュンは茫然と眺めていたが
「心配いらないわ
人形好きな人に悪い人は居ないものなのだわ」
「そうか?」
ジュンの脳内ではドナドナがエンドレスで流れていた
くんくん登場篇に続きます
多分
くんくん登場篇
「真紅、ここがイベント開場があるビルだよ」
秋葉原の中でも一際大きいそのビルの看板には
石バツ電気と書いてあった
「そそそう?それでは案内ななさい」
「真紅、声が震えてるぞ」
いつも通りに振る舞っているつもりらしいが
真紅の声は緊張で震えていた
「ま、まったく相変わらず無礼な家来なのだわ
案内なさいと言ったのが聞こえないの?」
真紅は頬を赤らめてジュンをたしなめた
「待った、その前にDVDを買わないとな」
「お、お買い上げありがとうございました~…」
ジュンを見てひきつった笑顔をする店員からジュンはもう諦めの境地で
チケットを貰いイベント会場の6階へ向かった
(あぁ…いよいよ憧れのくんくんに逢えるのだわ…)
エレベーターの中で真紅は幸せの絶頂にあった
ざわざわ…ざわざわ…
会場に着くと人影もまだ少なく
時計を見ると開演まで一時間近くあった
「どうする真紅?ここで待つか?」
「そうね、紅茶もない所なのが不満なのだけど
ステージの前のこの場所が気に入ったし
待つことにしましょう」
心なしか真紅は疲れた表情をしているのにジュンは気が付いたが
初めての街で疲れたのだろうし真紅はどうせ強がるだろうとほうっておいた
そして時間
ジャーン!ジャーン!
大音量で会場内に音楽が鳴り響き…
『みなさま大変お待たせいたしました!
只今から名探偵くんくん監督及び出演者による
トークショーを開催致します!!』
パチパチパチパチパチパチ!!!!
うぉ~~~と会場内に歓声が上がった
真紅はというと……
眠っていた………
「おい!真紅起きろ!くんくん始まったぞ!?楽しみにしていたんだろ!起きろ!」
真紅「……」
ジュンが平手打をしても起きる気配が無い
「はっ!そうだ!確かあいつ一睡もしてないって!」
果たして真紅はどうなるのであろうか?
完結編を待て!
また勢いで書いたっす
完結編
『みなさまお忘れ物の無いよう
お足元にお気をつけてお帰り…』
真紅は結局起きないままイベントは終わってしまった
(やっぱり監督はすげーな!)
(ああ!声優達もこだわりがあるよな!)
ファン達は興奮冷め止まぬ様子でくんくん談義に花を咲かせていた
「真紅………」
ジュンは真紅を見ても不思議と怒りは沸いて来なかった
今回の主旨は中の人のトークショーだから
真紅が見てもつまらないと思うし逆に夢が壊れるかもしれない
ジュンがそう思っていると
「う、う~ん……」
ようやく真紅が起きだした
「くんくん………は?」
「もう帰っちゃったよ……」
「………そう…」
真紅は怒らない
自分がかなり無理をして街を歩いていたのを自覚していたから
「真紅ごめん…僕がつれまわしたから
だからコレ……」
ジュンは真紅に何かを渡した
「これ…は?」
「サイン色紙だよ
僕がくんくんに頼んで書いて貰ったんだ
ほ、ほら!『真紅ちゃんへ』って書いてあるだろっ」
「まったく使えない家来ね」
真紅は色紙を胸に抱く
何だかくんくんの匂いがした気がした
「今日はなかなかに有意義な時間だったわ
帰りましょう」
「ああ!」
そして桜田家
「ただいま~」
「のり、お腹が空いたわ早く食べさせてちょうだい」
「あら?翠星石ちゃん達は?」
ジュン&真紅「あ!?」
そのころ
閉店し暗くなったショーケースでは
「助けてですぅ~!出られなくなったですぅ~!
誰でもいいから翠星石を買いやがれ!
ですぅ…」
「うにゅ~!お腹がすいたの~!」
完
最後まで読んでくれた方乙です
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