その閃光は確認できない速度で私に突き刺さった。
一瞬何が起こったのか、なぜこんな事になったのか、私には理解できないでいた。
「水銀燈。あなたはここでお終い。ここでお別れ。ここで朽ち果てる。」
目の前には赤い、紅いドレスを纏った人形。
「あなたはもう動けない。もうアリスにはなれない。再び立ち上がることもないわ。」
…真紅。目の前にいるのは同じ薔薇人形の一人。真紅がいた。
「私はこれからアリスになるために他の姉妹のローザミスティカを奪いにいくわ。」
真紅が?なぜ?
「何故かって?愚問ね。死に行く者に答える必要など無いわ。」
真紅の姿が段々と薄れてゆく。まるで雪のように。
それを見た私は、どうしてだろうか、とても綺麗だと思ってしまった。
なぜ彼女がこんな行為に及んだのか。それは分からない。
それを考えようとする余力も残っていない。
真紅は言った。私はもう終わりなのだと。現に私の体の半分は既にもっていかれ。
一つ、大きな風穴が開いている。不思議と怒りは沸いてこない。
ただ、真紅に対する憐れみが沸いてくるだけ。彼女はこれで良かったのだろうか。
私はこれで良かったのだろうか。もう少し、もう少しだけでいい。時間が欲しい・・・
アリスになる思いは叶わず。私の意識は闇へと落ちた。
再び光差す事が無い闇へと。