いつものように突然水銀燈はあらわれる。
「真紅、元気だったかしらぁ」
「水銀燈!449時間ぶりね。何の用かしら?」
水銀燈が服のポケットから黒いシックなデザインの携帯電話を取り出す。
「うふふ・・・携帯買ったのよぉ」
「携帯・・・それがどうかしたのかしら」
「真紅に電話してあげようかと思ったの、携帯の番号教えてくれるぅ?」
もちろん真紅は携帯など持っていない。
「・・・薔薇乙女に携帯なんて必要ないのだわ」
「あらぁ?もしかして携帯持ってなかったの?気がつかなくてごめんなさぁい・・・うふふ」
水銀燈は机の上に立ち真紅を見下ろす。
「なにか伝言なら人工精霊に伝えさせればいいのだわ」
「こんな便利な道具があるのに、人工精霊を伝書バトの代わりにするなんてホーリエちゃんもかわいそう」
「最近の携帯は便利よぉ。写真だって取れちゃうんだから」
ピロリロリ〜ン!
携帯の写真で真紅の不機嫌な顔を写す。
「あらぁ、こんな不細工な写真は容量の無駄ね。消去消去・・・うふふ」
「どうせ貴方だって電話かける相手もいないんでしょ、みじめね」
オバカサ〜ン!オバカサ〜ン!
「メグからメールが着たみたい。ちょっとごめんなさいね・・・うふふ」
「その恥ずかしい着信メロディはなにかしら」
真紅はイライラしながらメール操作をする水銀燈をにらみ付ける。
「人と話してるときに失礼なのだわ」
水銀燈が見せつけるように携帯を操作する。
「夕食用意してあるから早く帰ってらっしゃいって、携帯なんか持つと落ち着かないわぁ」
「用がないのならさっさと帰るのだわ」
「暇な時はこれでゲームもできるのよ、真紅やってみるぅ?」
「いいかげんにしなさい!話したいことがあるなら早く言いなさい!」
たっぷり1時間、携帯を自慢しまくった水銀燈は引き上げていった。
「ま、負けたのだわ・・・」
涙をこぼしながら真紅は床に崩れ落ちた。