「こ、これは・・・ちょっとマズイかもですぅ・・・」 
翠星石は洗面所にあった体重計に乗った瞬間、重々しく呟いた。 
プラス6kgオーバー、見た目にはあまり変化はないように見えるが、ここ最近 
は妙に動きが鈍いと翠星石自身も感じていた。 
「ま、まあこんなものは所詮数字のマジックですぅ、これくらいのこと、翠星石は 
平気の平左なのですぅ(汗)」 
体重計から降り、じっと鏡を見る。心なしか頬が膨らんでいるように見えた。 
「こ、これは目の錯覚なのですぅ、翠星石は十分可愛いですぅ」 
とにかく現実から目を逸らそうと、慌てて洗面所から飛び出していった。 
その一部始終を見ていた人間がいるのも気づかずに・・・・・・。 

「チ〜ビ人間、さっさと起きやがれですぅ!こんな天気のいい日に昼寝ばかり 
していたら体がカビだらけになるですぅ!!」 
夜更かしというより、復学のための勉強に忙しいジュンは疲れているのか昼寝している 
日が最近多くなってきていた。真紅はそんなジュンのことなど気にせず自分のペースを 
維持しているのだが、翠星石はかまってほしいのか疲れているにも関わらずジュンを叩き 
起こしてくるのだった。 
「うるさいな!少しは寝かせてくれ!!」 
ジュンはベッドから出ずに怒鳴りつける。そして掛け布団を頭から被り意地でも 
寝ようとしていた。 
「起きねえというのなら〜、こうしてやるですぅ!!!」 
翠星石は助走をつけて大きくジャンプしジュンに強烈なボディプレスを喰らわせた。 
「うぎゃああああ!!!」 
突然の衝撃にジュンは叫び声をあげる。翠星石はなおもジュンのボディを踏みつけ強引に 
叩き起こした。 
「こ、この性悪人形め〜、よくも僕を踏みつけたな」 
「起こしてやったことを感謝しろですぅ、まったく翠星石がいねえと起きることもできねえヘタレ野郎ですぅ」 
翠星石は思い切り毒づくと部屋から出て行った。ジュンは今さら寝ることもできず 
踏みつけられた体をさすりながら着替えをして1階へと下りていった。 
(あの性悪人形、今にみてろよ) 
ジュンの心の中でちょっとした復讐心が疼いていた。 

リビングに下りてきたジュン、そこには真紅に雛苺、そして問題の翠星石もいた。 
「あ〜ジュンなの〜、ジュンおはようなの〜」 
雛苺が無邪気にジュンに挨拶する。おはようといってももう昼なのだが雛苺は 
あまり気にしていない。 
「ジュン、紅茶を淹れて頂戴」 
(起きてきてすぐそれかよ・・・) 
ジュンはそう思いながらも素直に紅茶を淹れるため台所に入った。 
(でも真紅はまだマシか、紅茶以外は静かだからな) 
問題はコイツだ、とジュンは紅茶を淹れながらその問題児の方に顔を向けた。 
何かと突っかかってくるその性格、可愛らしいところも無論あるのだがジュンは 
そのギャップの激しさについていけないときが多々あるのだった。 

「みんな〜ただいま〜」 
紅茶を淹れ終えて真紅たちに配っていたときにのりが帰宅した。 
リビングではみんな紅茶を飲み、けっこうマッタリとした雰囲気になってはいる。 
「あ〜いけない!!」 
のりが慌てた声を出すと全員がのりの方に向き直った。 
「のり〜どうしたの〜?」 
雛苺が怪訝そうにのりに尋ねる。 
「今日、借りていたノートをお友達に返さなきゃいけなかったの」 
「別に明日でいいじゃないか、そのくらいのこと」 
「明日の日曜日はその子が出掛けちゃうから、今日じゃないとダメなの」 
心底困った表情でのりは言った。 
「じゃあ行ってくれば」 
ジュンはぶっきらぼうに返す。だがのりはまだ困った顔をしてジュンを見つめていた。 
「のり、いったいどうしたの?」 
のりの困った顔を見た真紅が問いかけた。 
「えっとね、その友達の家ってここから遠いのよ、だから・・・」 
「だから何?」 
「お買い物どうしようかなって・・・」 
そう言ってまたジュンの方を見つめた。それを聞くと真紅たちも一斉にジュンの方を向く。 
「な、なんだよいったい・・・」 
8つの視線に射すくめられジュンはおののく。 
「ジュン、のりが困っているのだわ、ここはお買い物くらい行くべきなのだわ」 
「な、なんで僕があああああ!!!」 
ジュンは大声で抗議する。 
「ねえジュン君、お願い・・」 
のりは拝むようにジュンにお願いする。さすがにジュンも折れざるを得なかった。 
「・・・分かったよ、行けばいいんだろ」 
「それでいいのだわ、じゃあ行ってらっしゃい」 
「お前は何をしてるんだよ!!」 
「私は忙しいのだわ」 
「紅茶飲んでるだけじゃないか!!」 
いつものように真紅とジュンがやりあう、翠星石にはそれが仲良くみえるのか、ジェラシーの炎がオッドアイに燃え上がる。 
「仕方ねえですぅ、チビ人間は1人では何もできねえやつなのですぅ、ここはこの 
翠星石が付いていってやるですぅ」 
翠星石はここぞとばかりにジュンに随行しようとする。彼女の場合は常に口が悪くなってしまうのであるが・・・。 
「・・お前が付いていくのかよ・・・・」 
さっき叩き起こされたことを根に持っているジュンが露骨に嫌な顔をする。 
だが最早致し方ない、ジュンと翠星石はのりに渡されたメモを持って買い物へと 
出掛けたのだった。 
これが桜田家の生活を変えるとは誰も知る由もなかった・・・・・。 

ジュンと翠星石は並んで歩いている。翠背石の足取りは軽いがジュンのそれは重い。 
「まず何を買うですぅ?」 
翠星石がジュンを見上げながら尋ねる。 
「まずは、挽き肉だとさ」 
のりに渡されたメモを見ながらジュンが答える。このメモの内容だと今日の献立は 
またも花丸ハンバーグのようだ。よく飽きないな、とジュンはある意味感心する。 
最もジュン自身も食べているのだが・・・・。 

やがてジュンと翠星石はスーパーマーケットに到着するとお肉コーナーへと向かう。 
「牛肉♪豚肉♪鶏肉♪キン肉、肉、肉、にく18♪」 
翠星石は訳の分からない歌を歌いながら挽き肉を物色している。 
ジュンは呆れながらも自分もメモを確認しながらカートに挽き肉を入れた。 
(うん待てよ) 
ジュンの心にちょっとした悪戯心が湧き上がった。 
(さっきの踏みつけのお返しだ) 
そう思うとジュンは近くにいた店員に尋ねてみた。 
「あのすいません、豚肉6kgってどれぐらいになりますか?」 
「えっ6kgですか?!」 
店員は作業場にいったん戻ると、巨大な肉の塊を持ってきた。 
「そうですね6kgっていうとこのぐらいになりますね」 
ジュンはその肉の塊を見たあと翠星石に視線を移す。ジュンの視線に気づいた翠星石の 
顔がみるみる青くなっていった。 
「宴会でもなさるんですか?」 
店員がジュンに訝しげに問いかけた。 
「ああ、いや豚肉6kgがどのくらいのものなのかなって思っただけです」 
ジュンが答えると店員はその肉の塊を片付けていった。 
「う、きょ、今日はサラダにするですぅ」 
巨大な肉の塊の重さが自分の増えた体重と同じだと思い知らされた翠星石が慌てた風で 
野菜コーナーへと駆け出していった。 
「お、おい待てよ、まだ挽き肉を買ってないだろ」 
いきなり駆け出した翠星石にジュンが呼び掛ける。 
「きょ、今日の夕食はサラダに変更ですぅ、健康バンザイですぅ!」 
そう言うと翠星石はカートに中に次々と野菜を放り込んでいった。 
ジュンは何度も止めようとしたが翠星石の激しい抵抗に遭いついに諦めてしまった。 

「ジュ、ジュン君・・・・これって・・・」 
食卓に並んだ何ともヘルシーなメニューを見てのりは絶句した。一応買ってきてもらった 
ものをのり自身が調理したのだが、今日本来のメニューからあまりに遠ざかっている。 
今日のメニュー、その内訳は、 
海草サラダ 
ほうれん草のお浸し 
五目ひじき 
の3品である。当然のことながら他のドールたちの反感を買った。 
「うわ〜ん!のり〜!ヒナ花丸ハンバーグ食べたいの〜!!」 
「ジュン!なぜ突然メニューの変更になったのか!答えなさい!!」 
非難轟々である。無理もないのだが。 
「うるさいな、文句ならコイツに言えよ」 
ジュンはそう言って翠星石を指差した。 
「ええい黙りやがれですぅ!真紅にチビ苺も最近健康に全く無頓着なのですぅ! 
ローゼンメイデンたるもの常にヘルシーでセクシーであらねばならんですぅ!!」 
セクシーっていきなりなんやねん、翠星石の突然の訳の分からない台詞と剣幕に 
全員がその場で固まった。 
「ま、まあたまにはこういうものもいいんじゃないかな〜」 
のりは何とかこの場を取り繕うとしてようやく食事が始まった。 
だが笑顔で食べているのは翠星石のみで他はみんな無言だった。夕食が終わったあと 
もどこか暗い雰囲気がリビングに漂った。 
だがこの日だけでは終わらなかったのだ。次の日も翠星石のオペレーション・スリムは 
続くのだった。 

6:00 
「チ〜ビ人間早く起きるですぅ!!」 
翠星石は朝っぱらから凄まじい勢いでジュンを起こしにかかる。 
「な、何だよ、まだ6時じゃないか!!」 
「うるさいですぅ!もう6時ですぅ!さっさと起きて着替えやがれですぅ!!」 
そう言う翠星石の後ろには真紅に雛苺、そしてのりまで着替えて立っていた。 
「着替えるって、いったい何すんだよ」 
「エアロビクスですぅ、早く外に出るですぅ」 
「エアロビクスって、何で僕までやらなきゃいけないんだ!!」 
ジュンは眠気もどこへやら叫びまくる。 
「この家はみんな運動不足なのですぅ、ブクブク太る前にしっかりと運動して 
ヘルシーな生活を送るのですぅ」 
「ブクブク太っているのはお前だけだろう」 
朝からいきなり起こされたせいか、ジュンはつい禁句を言ってしまった。 
“ドカッ!!” 
翠星石のドロップキックがジュンの脛を直撃した。 
「ぐあああ!!こ、この性悪人形!!本当のことを言っただけだろ!!」 
「黙りやがれですぅ!まったくデリカシーの欠片もねえ奴ですぅ!!」 
気にしていることを衝かれたせいか顔を真っ赤にして怒っている。 
2人の喧嘩がヒートアップする前にのりが何とか止めようと声をかけた。 
「まあまあジュン君も翠星石ちゃんももう喧嘩は止めて、じゃあ外に出て 
エアロビクスよ〜、さあヒナちゃんも真紅ちゃんもGO」 
のりは先頭に立って真紅と雛苺を外に連れ出す。翠星石がそれに続き、 
ジュンも仕方なく外へ出て行った。 

庭に出た桜田家の面々は翠星石を中心に1列に並んだ。 
「さあ始めるですよ〜、ミュージックスタートですぅ!!」 
翠星石はCDラジカセのスイッチを入れ音楽が鳴り出す。 
“腕を前から上げて大きく背伸びの運動〜” 
ラジオ体操かよ!!!! 
まじめにやっているのは翠星石のみ、のりはつき合い程度、ジュンはすでにやる気 
まったくナシ、真紅と雛苺はラジオ体操など知らない。 
(何でお前がラジオ体操を知っている?) 
ジュンたちの視線が翠星石に集中する。そんなことなどお構いなしに翠星石はラジオ体操を続けていた。しかも第2まで。 

朝の迷惑極まりないラジオ体操も終わり、ようやく朝食となる。しかしここでも 
翠星石のダイエットはしっかり周りを巻き込んでいた。 
本日の朝食、 
お粥のみ・・・ 
「・・・・・・・・」 
もはやのりは言葉も出ない。 
「・・・お粥ね・・・これだけか・・・・」 
ジュンから出た言葉はこれのみだった。ひきつった笑いが痛々しい。 
真紅に至ってはもうただ沈黙、雛苺はひもじさのあまり泣いていた。 
「・・・いただきます」 
まるでお通夜のような朝食が始まった。誰も話をすることもない静かな食事風景、 
不満と諦めをない交ぜにした表情を1人を除いた全員がしていた。 
「ごちそうさまですぅ」 
すぐに食べ終わった翠星石がすぐに2階に上がる。これからダンベルダイエットでもするらしい。残された4人は鈍い動きでまだ食事を続けていた。 

「見〜つけた、今日も隠密乙女金糸雀が真紅たちを密着マークするかしら〜♪」 
庭では隠密にそぐわない可愛らしい黄色いドレスを着た金糸雀が桜田家の食卓を 
双眼鏡でしっかり偵察していた。 
「あらぁ、今日の真紅たちの朝食はお粥だけ、何て貧しい食生活かしら〜」 
やがて真紅たちの食事が終わり、各自が力なくソファーに寄りかかる。 
「朝から何て自堕落なのかしら、朝は元気いっぱいにならなきゃいけないかしら」 
そう言うと金糸雀は自らそれを実践すべく、シートを広げてお弁当を取り出した。 
「そうと決まればエネルギーをチャージするかしら〜、みっちゃんの作ってくれた 
お砂糖入りの玉子焼き〜♪いただきま〜すかしら〜」 
金糸雀がお楽しみの玉子焼きを食べようとしたまさにその瞬間、横から大きな口を開けて 
迫ってきた影がある。 
バクゥゥゥゥッ!! 
その影はまるでジョーズのように一口でフォークに刺した玉子焼きを食べてしまった。 
「キャアアアア!!何かしら!何かしら!!妖怪かしら〜!!!」 
驚き恐れる金糸雀だったが、ピチカートが冷静にその妖怪の方を向くように点滅する。 
ゆっくりと顔をあげる金糸雀の目にピンクのドレスが映った。 
「うゆ〜玉子焼き、甘くておいしいの〜」 
そこには飢えた狼のような雛苺の姿があった。 
「ひ、雛苺、何てことするのかしら!!」 
「うぃ、金糸雀〜、もっと玉子焼きないの?」 
反省の色など露も見せず、雛苺はさらに玉子焼きを要求する。 
「こ、これはカナの玉子焼きかしら!絶対にあげないかしら!!」 
金糸雀はこれ以上とられまいと必死に後ろにお弁当を隠す。 
「金糸雀〜、ヒナもっと玉子焼き欲しいの〜」 
「いや!ダメかしら!!雛苺はちゃんとお家で食べるかしら!!」 
金糸雀と雛苺のせめぎ合いは果てしなく続くと思われた。しかし2人の後ろから 
もう1頭の獰猛な赤い狼が近づいてきた。 
「2人とも騒々しいのだわ、少し静かになさい!!」 
やはり空腹のせいなのだろうか、普段に比べ口調が荒々しい。 
「真紅〜、金糸雀が玉子焼きをくれないの〜」 
「ちょ、何を言ってるのかしら!これはカナのかしら!!」 
真紅は2人のやりとりを苛立たしげに聞いていたがやがて口を開いた。 
「よく分かったのだわ、争いの原因になっているのはそのお弁当なのだわ」 
都合よく解釈したな真紅・・・・ 
「ならばその争いの元を絶てば問題ないのだわ、金糸雀、貴女のそのお弁当を私に 
渡しなさい」 
「えぇぇ!で、でもこれはカナのかしら」 
「いいから渡しなさい!これがあるから貴女たちは争うのだわ、ならばその禍根を絶つ 
これで万事うまくいくのだわ、だから早く渡しなさい!」 
厳しい口調で言われ仕方なく金糸雀はお弁当を真紅に差し出した。 
真紅はお弁当をゲットした!(←いいのかそれで) 
「あぁ〜、玉子焼き〜・・・・・」 
金糸雀はうらめしそうにトボトボとみっちゃんのマンションに帰っていくのだった。 
真紅はお弁当を美味しく頂きました。(まさに鬼畜!!) 
雛苺は食べ物を求めて徘徊しました。(どこへ行く?!) 

「うゆ〜、お腹空いたの〜」 
餓鬼の如く食べ物を求めて徘徊する雛苺、その雛苺の前に大きな建物が見えた。 
有栖川大学病院という看板が雛苺の目に映る。その病院の裏手から何やら食べ物の匂い 
が漂ってきた。 
「うゆ〜この匂い、美味しそうなの〜」 
匂いにつられ雛苺はフラフラと病院の裏の厨房へと歩みを進めた。そして半開きになっているドアから病院内へと侵入し本能の赴くがまま厨房を目指していた。 
厨房ではまさに昼食の準備に追われていた。患者さん用の昼食がその病状ごとに分けられ 
用意される。そんなところを雛苺は調理師たちの目を盗んで食料を略奪していった。 
「よく分かんないけどご飯があったの、いただきま〜すなの〜!」 
持ち出した食料を病院の隣にある古ぼけた教会まで運びこみそこで食べ始める。 
「おいしいの〜、しあわせなの〜」 
ひもじさに苦しんでいた雛苺にはどんなものでも御馳走らしい、ひたすら夢中で食べた。 
「あらぁ、珍しいわねぇ雛苺、今日は真紅と一緒じゃないのねぇ〜」 
雛苺が声のする方を向くと、そこには水銀燈がいた。 
(これはチャンスね) 
雛苺を倒しローザミスティカを奪える。そう水銀燈は判断すると背中の羽を広げ雛苺に 
闘いを仕掛けようとする。だが攻撃しようとしたまさにその瞬間に雛苺は猛然と水銀燈 
に襲い掛かった。 
「う〜、や〜く〜る〜と〜!!!」 
まるで場違いな言葉を発し雛苺は水銀燈に襲い掛か・・・・からなかった。 
雛苺の標的は水銀燈の後ろにあったヤクルトだった。水銀燈を飛び越えヤクルトを 
ゲットする。 
「ちょ、待ちなさい雛苺!それは私のヤクルトよ!!!」 
とっておきのヤクルトを奪われそうになった水銀燈が羽根を飛ばそうとするが、 
一瞬雛苺の方が速かった。無数の苺轍が水銀燈に絡みつき動きを封じる。 
「何よこんなもの、引きちぎってあげるわ!」 
水銀燈は苺轍を引きちぎろうとするが全くそれができないそれどころか尚も水銀燈 
の体をキツク締め付けていった。 
「水銀燈〜、ヤクルト貰っていくのなの〜」 
そう言った雛苺の顔はまさに餓鬼そのものだったと後日水銀燈は語った。 
雛苺、水銀燈からの大金星でヤクルトをゲット!!(座布団は舞ってない) 
やがて苺轍も消え、ようやく水銀燈は動けるようになった。 
「まったくなんてこと、雛苺ごときに私がやられるなんて・・・・」 
水銀燈は自嘲するかのように鞄へと向かう。その通路には雛苺の食べたものの 
跡が散乱していた。 
「あの子、こんなものをおいしいなんて言ってたの・・・・」 
散乱していたものの中には水銀燈もよく知っている食べ物がきれいさっぱり 
なくなっていた。水銀燈は呆れるやら何やらで少し頭が痛くなった。 

「もういらないわ!」 
「そんなこと言わないでめぐちゃん、食べなきゃ元気にならないわよ」 
「食べたって元気にならないわ。私のことなんかもうほっといて」 
看護婦は仕方なくめぐ用の昼食を片付けた。 
めぐはただ窓の外を見て歌っている。まるで誰かを呼ぶように。 
「そんな歌を歌ったって、私が来るとは限らないわよ」 
窓から水銀燈が少し不機嫌な顔で現れる。 
「でも貴女は来てくれたわ」 
「相変わらずイッちゃってる子ね。食事はもう済ませたの?」 
「ううん、だってあんなゲロのようなもの食べる気なんかしないわ」 
そう言っためぐに水銀燈は思い切り突っかかった。 
「何言ってるのめぐ!!世の中にはゲロすら食べられない人がいっぱいいるのよ!!!」 
凄まじい剣幕で怒鳴りつける水銀燈、そんな彼女の気迫に押されめぐは看護婦さんを呼び出し食事を摂らざるを得なかった。 
「あのもしもし、やっぱり食べます・・・・・」 
めぐが元気になったのかはそれはまた別のお話・・・・・ 

「最近物騒ね〜、知ってる?あそこのコンビニ、夜中に真っ赤な鬼が出て 
期限切れのお弁当やパンをかっぱらっていくんだって」 
「あと有栖川大学病院、あそこ最近昼食の種類が減ってるって噂よ」 
ご近所の奥様方の喧しい噂話が桜田家にも聞こえてくる。原因は分かっているのだが 
まさかウチの人形たちが犯人ですとはとても言えない。 
だがご近所の噂に上っている以上、何としても真紅と雛苺の行動を抑えなければ 
ならなくなった。 
「なあお前らもう絶対に外には出るなよ!!!」 
ジュンが2人に強い口調で命令する。 
「だって〜お腹空くのなの〜」 
「ジュンこれだけははっきりと言っておくわ、まず第1の原因は翠星石にあるのだわ、 
私たちは致し方なく外に出て食料を調達する。この惨めさが貴方にはどれだけ理解できるというの!!」 
こう言われてはジュンも言葉は出ない。そう何より最大の原因は翠星石にあるのだから 
まずは彼女をどうにかしなければならない。 
そしてそのチャンスは意外にも簡単に訪れたのだった。 

真夜中の1時、もう全員が寝静まっている刻限、その怪しい人影は台所の冷蔵庫へと 
向かっていた。 
「だ、誰も見ていやがらねえですね、今がチャンスですぅ」 
冷蔵庫を徐に開け中の牛乳やハムを取り出し口へと入れていく。 
「さ、さすがに7日目にもなるとキツイですぅ、ふぅ生き返るですぅ」 
ガチャッ!!パッ!! 
リビングのドアが開き明かりが点く、そしてそこにいたのはジュン、のり、真紅、雛苺、 
全員が揃っていた。 
「あら翠星石、いったい何をしているのかしら」 
殺意も露わに真紅が尋ねる。 
「翠星石!ずるいの〜!!!」 
「案外あっさりとボロを出したな」 
「あらあら・・・・」 
のりの無言の表情が恐ろしく不気味だった。 
「ち、違うです!す、翠星石は冷蔵庫の中を確認しただけですぅ!!!」 
慌てて弁解しようとするが飲みかけの牛乳と食べかけのハムが散乱していては 
当然のことながら説得力などない。現行犯逮捕である。 
「これじゃ〜ダイエットなんて無理だよな〜、そうだ僕たちがお前用にちゃんとダイエットさせてやるよ」 
「そうね、まあ私たちはダイエットなど必要としていないのだわ」 
「ヒナたちは普通の生活に戻るの〜」 
「翠星石ちゃん、私が翠星石ちゃんにだけ特別メニューにするからね〜」 
顔は笑っているが目が笑っていない、のりマジで怖い・・・・ 

その後 
「いただきま〜すなの〜♪」 
待ちに待った花丸ハンバーグ、雛苺は零れんばかりの笑顔だ。他の3人も 
思いは同じだった。 
「・・・・いただきますです・・・・」 
翠星石の朝食は、 
サツマイモが半分・・・ 
はだしのゲンか・・・・ 
食事が終わると翠星石はひたすらのりの手伝いをやらされた。食事の後片付け、 
洗濯、掃除、風呂洗い、のりは笑顔(?)で言った。 
「働かざるもの食うべからず!」 

翠星石がダイエットに成功したかはローゼンメイデンの歴史に記されていない。 
ドールの歴史がまた1ページ。 

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