久しぶりに投下。 
色々パクってますが、この際開き直ります。 
これからも色々パクるので今後は「パクリのブーさん」と(ry 
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 DELUSION1 いつもの朝 

ジリリリリリリリリリイr(バチン) 
あぁ、目覚ましが響いてる――もう朝か――学校行かなきゃ―― 
めんどくさ、さぼっちまえ…… 

ガチャリ 
「ジュン。今日は学校に行かないの?」 
「今日は日曜日だぞ……」 
「我が家のTVは壊れたのかしら?ちょうど今、月曜日にやってる“オハヨウくんくん”が終わったところよ」 
「今日はしんどいから学校休む……」 
「蒼星石、雛苺。JUMがぐずってるわ」 
「ジュン君、髪型の保障は出来ないよ」 
「落書きしちゃうの〜」 
鋏を開け閉めする音と絵筆を水に浸してかき回している音が聞こえる。無視、無視。 
ガチャリ 
また誰か入ってきたようだ。 
「あらあらあらぁ。寝坊すけさんがいるわよぉ」 
「姐さんお早うなの〜」「お早う」「珍しいわね」 
「じゅ〜ん〜。覚えてるかしらぁこの前の約束」 
何か重いものがしなだれかかってくる。この声、パターンから察するに―― 
「今度私に起こされたらなんでも言うこと聞くって約束。うふふ、楽しみだわぁジュンを好きなように出来るって。」 
ジュンに危機が訪れた。 
「そのまま寝てて良いわよぉ。ふふふふふ」 
「ジュン君。そろそろ起きないと襲われちゃうよ」 
「ごめんなさいごめんなさい!! 起きる!起きるからぁー」 
「チッ」 
「お早う。ジュン君」 
「……お早う。姉さん達」 
四人の女性がジュンを見下ろしていた。 

今日も一日が始まった。 

ジュンが覚醒した途端、ぞろぞろと姉達は出て行った。 
心なしか部屋が広くなった。 
「僕の朝の日課はまず起きることだ」 
もうジュンは起きている。ベットからのそりと這い出す。 
「次にご飯を食べなくてはならない」 
「顔を洗ったりしないのぉ?不潔ねぇ」 
ギョッと振り向くと黒基調の服に身を包んだ女性が立っていた。 
肌の色は透けるように白く、一見すると病気のような痩せた女性だ。 
それでも出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。さらに冷たい感じはするが美女の部類に入る顔つきだ。 
「水銀燈姉さん……」 
桜田水銀燈。桜田家薔薇乙女軍団の長女である。 
「銀姉でいいわよぅ、家の中なんだから。顔、ちゃんと手入れをしないと大変な目に遭うわよぅ」 
全く気配が感じられなかった。部屋から出て行ったのでは無かったのだろうか? 
「姉さん、いちいち茶々を入れるなよな。何の用だよ」 
ジュンはさっさと居間に行くことにした。朝御飯が呼んでるぜー! 
「あらぁ素っ気無い。いいのぉそんな態度で」 
後ろから抱きつかれた。 
(当たってる当たってる! 胸が……) 
「貴方は今しがた私に起こされた。約束は守らなきゃねぇ」 

(ホント起きるのが遅いわねぇジュン) 
(うるさいな。次はちゃんと起きるよ) 
(信じられないわぁ) 
(じゃあ賭けをしてみようか) 
(へぇ?) 
(一週間姉ちゃん達より早く起きてこれたらご褒美くれ) 
(早く起きるのは普通の事だと思うけど?ま、いいわ。失敗したら私の言うこと何でも聞きなさいよぉ) 

ジュンの頭につい先日のことがフラッシュバック。 

「しまったぁぁぁぁァァ!! 今日が七日目かあ!」 
「大方、すっかり忘れてたんでしょうねぇ。お馬鹿さぁん」 
ジュンの首筋に水銀燈が甘噛みした。最近彼女がやるようになった悪癖の一つである。 
「うふふ、今夜は徹夜確定〜♪」 
踊るような足取りで水銀燈は部屋を出て行った。部屋には灰のように白く燃え尽きた青年が残された。 
「神よ……」 
ジュンは胸の前で十字を切った。 
「この哀れな子羊めをお救いください。夜には姉さんが約束を忘れていますように……」 
水銀燈とは対照的に、今しがた掘り起こされたゾンビのような足取りでジュンは部屋を出た。 

居間ではすでに食べ始めていた。もうほとんど食べ終わっているものもいる。 
皆揃ってから食べ始めるという習慣は桜田家には無い。各々、仕事や学校といった予定が詰まっているからだ。 
なお、桜田家の構成員は全部で十人。大家族だ。それ故にかなり騒がしい。 
新調したての大きな四角テーブルはまさに戦場と化していた。 
「誰か醤油を取りやがれです!」「自分で取りなさい」「……」 
ザワザワガヤガヤ 
「はい、醤油」「ヒナが先なのー」「カナが先かしら!」 
ザワザワガヤガヤ 
「みっともないわねぇ」「ジャンクは黙れかしらー」「醤油ゲットですぅ」 
ザワザワガヤガヤ 
「……」「今ジャンクって言ったの誰!?名乗り出なさい!」「僕じゃないよ」「ごちそうさまかしらー」 
ジュンは自分が座るべき椅子を探した。が、間の悪いことに開いていない。 
残るはテレビの前にある小さなテーブルだけなのだが、そこには先客がいた。 
「あら、遅かったわね。ジュン」 
桜田家五女、桜田真紅だった。 
うまい具合に真紅の反対側に手付かずの朝食が並べられている。そこに座ることにした。 
「いつものことながら騒がしい朝ね」 
真紅は紅茶を入れている。ある意味場違いな程落ち着いていた。 
ジュンは返事を返さない。ひたすら目の前の食べ物を食べることに専念していた。 
「寝起きなのによく食べるわね。お先に」 
真紅は朝食の入っていた食器を持つと、流しに置きに行った。 
大テーブルの方でも一人、二人と席を立つ。 
戦場は静かになりつつあった。 
(何でこうなったんだろうなぁ) 
箸が止まった。ジュンは静かに頭の中の思い出のページを開き、回想する。 
少なくとも、真紅達は人形だったはずだ。――以前は。 
今の彼女らの体は立派な人間である。 
薔薇水晶にローゼンメイデンが敗れたあの日から、桜田家の内情は大きく変化していた。 
なにより、ジュンが復学したことは人類の大いなる一歩だろう。その他にも―― 
ジュンは「あの日」以来何度もため息をついた。 
そして今日もまた一つため息をついた。 

――“こうなった”のは三年程前のことだったような気がする。 
まだ僕が中学二年生。引き篭もりのときだった。 
当時、真紅達ローゼンメイデンは生ける人形であり、アリスになるために姉妹で戦っていた。なんとも救われない話だ。 
最終的にアリスゲームは偽ローゼンメイデンの薔薇水晶が勝利した。が、ローザミスティカを体に取り入れると自壊し、作り主であるエンジュと共に消え去った。アリスは誕生しなかった。 
その後、ローゼン本人が現れた。 
その時のことは良く覚えていない。でもある程度なら思い出せる。 
真紅達が椅子に座らせられていた。ローゼンが一人一人の服装を直している。 
エンジュに似ていたような気がする。顔がはっきりと思い出せない。 
そして彼は作業をしながら独り言のように呟いた。 
「アリスというのは存在しない」「美に関する感覚は人それぞれ」 
「アリスの概念は矛盾している」「では、矛盾を追い求めたら?」 
「錬金術師として名高い私でも」「どうなるかは分からなかった」 
「私の持つ全ての錬金術の知識」「応用すれば分かるかも知れん」 
「そこで人格を持った人形達に」「人間に限りなく近い人形達に」 
「アリスゲームをさせてみたが」「結果は未だにはっきりしない」 
「方法を変えてみることにする」「アリスゲームではない方法に」 
ローゼンが真紅の前に来た。服装を直しつつはっきりと言った。 
「アリスゲームだけが、アリスになる道ではない」 
「またすぐに会おうではないか」「ネジを巻いただけの神業少年」 
ローゼンの姿はもう無かった。 

人形達をそのままにしておくのもなんか釈然としないのでとりあえず全員連れて帰った。 
真紅以外覚醒していないのでどうすべきか迷ったがソファに雛苺と蒼星石に並べて座らせておくことにした。 
後はのりが何とかするだろう。 
それから疲れきった僕は眠ったのだが……やけにはっきりした変な夢を見た。 

『ジュン君、ジュン君』 
「何だお前?くんくん?」 
『その答えは正解とも言えるしそうでもない。僕は誰だろう?』 
この人をバカにしたような口調は一匹しか思い当たらない。 
「ラプラスだろ。何の用だ」 
『残念。覚えてないのかい?ネジを巻いただけの神業少年?』 
「あー……アリスゲームの首謀者?」 
『もう分かったようだから本題に入るよ。時間が無いもんでね』 
このくんくんはローゼンのようだ。何しに来たんだろう。 
『アリスゲームのやり方を変えてみようかと思ってね。アリスという矛盾を追い求めた時の過程と、その結果が分れば良いのだから発想を転換させてみる』 
「僕には関係ないだろう」 
『まあ聞いてくれ。前回のアリスゲームの問題点は三つ』 
くんくん(ローゼン)はさくさくと話を進めていく。 
『一つ目は彼女らが人形だった事。人形では経験できないこともあるしね。二つ目は動力源ともいえるローザミスティカを奪いあわせた事。真紅のように罪悪感から戦いを放棄されてしまうかもしれない。』 
「……」 
僕はほとんど話を聞いていなかった。 
『三つ目は思わぬ横槍が入った事だ。エンジュがあれ程にも完成度の高い人形を完成させるとは……正直思っても見なかった。弟子を過小評価しすぎたな』 
エンジュはローゼンの弟子だった説は本当だったようだ。 
僕は赤の他人だと思っていたのだが。 
『正直な所、エンジュに無いものはローザ・ミスティカの精製法ぐらいだ。人形師としての腕前は僕に匹敵する。』 
「ひょっとして、エンジュ達が飲み込まれた光はお前の仕業か?」 
『おや、ご名答。薔薇水晶がこのまま壊れてしまうのは惜しかったから、とっさに九秒前の白に送った。オマケも付いてきたようだがね。壊れるのだけは食い止めれただろう』 
最初から最後までこいつはアリスゲームを観察し続けたのか。 
真紅なんか水銀燈のことであんなに悩んだっていうのに……なんか頭にくる。 
『話を本線に戻すよ。結論として、ローゼンメイデンとプラスαを人間にしてみようと思う』 
「……はい?」 
『まじめな話なんだよ。究極の少女ではなくて女性を目指す、というのでもほとんど同じだと思うが』 
くんくんはパイプをくゆらせている。 
『それに、戦わせるようなことはさせない。約束しよう』 
「究極の女性か……なんかニュアンス狂う……」 
『しょうがないだろう。人間の生活で得られる経験も新アリスゲームには必要だ』 
「人間には寿命があるじゃないか」 
『色々突っ込んでくるね。しかし全ての疑問は一言で解決』 
「?」 

『現代の錬金術師ローゼンの力を見せてやろう。全ての事象は僕の思うがままだ』 

断固たる自信に満ちた口調だった。 
しかし、くんくんの声、口調で無かったらとてもかっこよかっただろうに。 
『楽しみにしていてくれ。君はまだ真紅のミーディアム。これからの変化は必ず君の周りで起こるのだから――』 
急にくんくんが透けていった。 
『ん、時間切れかな。……また会おう。意見を聞かせて欲しい』 
「二度と御免だ」 
くんくんは消え去った。 

「……はっ」 
目が覚めた。何も変わった所は無い。 
何も起こってないじゃないか。変化なんて 

ジュンの視界に、鞄を抱いて気持ち良さそうに寝ている十七、八の女性が目に入った。 
漫画的表現をするならメガネに小さなヒビが入ったような衝撃だった。 

「し……んく?」 
服装から判断して真紅っぽい。あ、覚醒した。 
「お早うジュン」 
何事も無かったかのように挨拶されても困るんですが。 
「挨拶も出来ないの?無礼な下僕ね」 
「真紅なのか?真紅なんですか?真紅じゃないよな誰ですかアナタ!」 
「騒々しい。朝からテンションが高いわね」 
「人形が人間になってたら驚くわ!」 
「お父様が夢の中に出てきておっしゃられたの……」 
真紅、夢見る乙女モード突入。 
「これからは人形としてでなく人間として生き、究極の女性を目指しなさいって……」 
背筋に走る嫌な予感。急いで一階の様子を見に行く。 
予感は現実のものとなっていた。 
ソファの上ではお互いに寄り添うようにして眠っている五人の女性が―― 

「ジュン」 
「ん、はい?」 
思い出の日誌が勢いよく閉められた。 
「妄想の世界に浸るのは勝手よ。でも、時間を考えなさい」 
ジュンは時計を見た。もうすぐ家を出ないと間に合わない。 
「じゃあね。学校で会いましょう」 
真紅はもう身支度を終えていた。すたすたと玄関まで行ってしまう。 
居間はガランとしていた。ジュン含めて三人しか残っていない。 
「遅刻だぁぁぁ」 
ジュンは大急ぎでご飯を片付け、準備を始める。 
「はい、お弁当」 
のりが弁当を差し出した。 
「おい姉ちゃん!! なんで声かけてくれなかったんだよ!」 
「だってジュン君、声かけづらい雰囲気だったんだもの……」 
「遅刻するぞ」 
新聞を広げていたエンジュがポツリと呟いた。 

今日も一日が始まった。 

     終わり 

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えーと、「終わり」と書きましたが、まだ短編(?)連作の形式で続けていこうかと思います。 
元ネタ……分かっても糾弾するのは勘弁してください。 
「これじゃないか?」は一向に構いませんので。 
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 DELUSION2 桜田家の居候(前編) 

「えーと、今日はレッスン1の途中からね」 
学校の教室に英語教師の声が響く。それにしてもよく通る声だ。 
場所にして高等部の一年A組、時にして一限目のことであった。 
我らがジュンは机に突っ伏していた。 
「眠い……」 
引き篭もりを卒業して今年で三年目。様々な受難がありつつもジュンは高校へと進学していた。 
ジュンの学校は高校、大学とが同じ敷地内に入っている。 
広大な敷地を有し、多方面で活躍できる人材を育成するようにと高校の段階から凄まじい数のコースに分かれている。 
ジュンは普通科の生徒だった。 
「予習はしてきたぁ?」 
そして、卒業した中学校もすぐ近くにあった。交通面、将来性の面からこの中学校からの進学率はかなり多い。 
「だるい……」 
しかし、ここまで立地的に揃っていると新鮮味が無いのである。 
クラスメイトには中学の同期がちょこちょこいる。 
通学の方法、距離もほとんど変わらない。 
ついでにジュンの完全夜型の生活習慣も変わらなかった。 

「……この文のと同じ意味の“ことわざ”はー……」 
「もうダメだぁ――」 
ジュンは先生に見つからずこっそり寝る達人だった。 
今日も職人(?)の技が光る。 

だが、英語教師は女性だが恐ろしいことで有名だった。体罰など屁とも思わない。 
ジュンは眠りの世界に駆け足で走り出したが引き返してきた。 
「うう、一応ノートだけは取っておくか……」 
うつらうつらする頭で授業を聞く。 
ふと、ジュンの頭に真紅達が人間になった時の事がよぎった。 
「眠気覚ましにはちょうど良いかも知れん……」 
ジュンは居候が増えたときのことを眠い頭で思い出した。 

ジュンが人間となった真紅と一階に降り、同じく人間となった薔薇乙女達を見つけてから約5分。 
「ちょっとぉ!! 解きなさいよ!」 
水銀燈がじたばたと暴れている。 
彼女の体はもう人形ではない。人間だ。 
しかし、縄でぐるぐる巻きにされて椅子に縛り付けられている様はとても「人間らしい」とは言えなかった。 
「静かにするですぅ」 
「解かなかったら酷いわよぉ皆ジャンクにしてやるんだから!!」 
「雛苺」 
「うゆ?」 
「さるぐつわを噛ませなさい」 
「分かったの〜」 
「やめて!ちょっとぉ…ムグムグ」 
雛苺のあまりの手際のよさにジュンは戦慄した。 
これから何が始まろうというのか。 
のりがいればもう少し平和的になっただろうが、出かけている。 
「うう、真紅が怖いかしら〜」 
「水銀燈……貴女にはいくつか質問に答えてもらうわ」 
「ムグー(なによぉ)」 
「イエスなら首を縦に、ノーなら首を横に振って頂戴。分かった?」 
「……」 
水銀燈は真紅を半目で睨んだだけで首を動かさない。 
「もう一度聞くわ……今の話を分かった?」 
水銀燈は微動だにしない。 
「翠星石、蒼星石。水銀燈をくすぐりなさい」 

「いい加減に素直になるですぅ〜」 
「言うことを聞いておいた方が良いよ。水銀燈」 
「ムグ!ムグググゥムムグ(きゃは!あひゃひゃぁあは)」 
「もういいわ」 
水銀燈は椅子ごと床に転がって荒い息をしている。 
焦点の合っていない涙目で小刻みに痙攣されるとかなり怖い。 
「質問をするわ、良いわね」 
翠、蒼の二人に起こしてもらった水銀燈は恨みがましい目で真紅を睨んだ。 
さっきの睨みよりも殺意二十%増しだ。ジュンは寒気がした。 

「またくすぐられたいのかしら?よ・い・わ・ね」 
水銀燈はブンブンと首を上下に降った。 
「よろしい。では聞かせて頂戴」 
場に神妙な空気が流れる。 
「ヤクルト好き?」 
緊張の糸が音を立てて千切れた。 
「真紅! ふざけるなですぅ」 
「このためだけに水銀燈を縛ったの……?」 
「真紅はSかしら」 
「ヒナはヤクルト好きなの〜」 
「なぁ真紅。何のつもりなんだよ」 
「いいから外野は黙ってなさい。水銀燈、答えて」 
水銀燈はゆっくりと頷く。 
「どんどん行くわよ」 

しばらく質問攻めが続いた。 
「何のつもりなんだろうな」 
「考えでもあるのかしら?」 
「さっきから意味の無いような質問ばっかりですぅ」 
「政治がどうとか、何年前何処にいたとか」 
「ヒナもう眠いの〜」 
外野は固まってヒソヒソと話していた。 
どんどん質問はペースが上がっているような気がする。 
「次よ」 
「ムグ」 
「めぐという娘は貴方のミーディアム?」 
「ムグ」 
水銀燈が首を縦に振った。 
「めぐは元気?」 
「ムググ」 
首を横に振った。 
「私達を襲ったのはめぐのため?」 
「ムグ……ム!!」 
首を縦に振りかけて、水銀燈ははっと我に返った。 
「惜しいわね」 
「ムググゥ!ムグムグムグググー!!(ちょっと! 今のは無しよぉー!!)」 
水銀燈がかつて無いほど焦っている。 

「リズム良く質問を出しといて本命の答えを聞きだすとは……」 
「恐るべきですぅ」 
「うにゅ〜」 
「ムググググ、ムググッ!(汚いわよ、真紅!)」 
「初めからストレートに聞くと嘘つくでしょうからね」 
平然と真紅は答える。やっぱり恐ろしい。 
「聞きたいことは聞き出せたわ。薔薇水晶と戦った時、貴女が言った言葉が気になってね」 
「言葉ってなんだったの?」 
「“ごめんね、めぐ”って言ってたわ」 
水銀燈の顔が真っ赤になった。 
「貴女のローザ・ミスティカを貰ったときに見た記憶が何なのかこれではっきりしたわ」 
「ムグゥ……(生き恥よぉ……)」 
「水銀燈が……意外かしら〜」 
真紅がそっと、うなだれている水銀燈を抱きしめた。 
「もう、大丈夫だから。人間になってアリスゲームの目的が変わった以上、姉妹で争うことも無いわ」 
水銀燈は驚いたように目を見開いた。が、すぐに泣いているのか笑っているのかいまいち分からない表情になる。 
「なぁ真紅。じゃあミーディアムの僕はどうなるんだ?この指輪外れるのか?」 
水銀燈の表情が一変した。 
「まだ分からないわ。追々調べていく必要があるわね」 
「人工精霊は機能しているみたいだけど」 
蒼星石がレンピカを突っついている。 
皆の目が飛んでいる人工精霊に移った瞬間、ゾン! と聞き慣れない音が響いた。 
水銀燈の背中から巨大な羽が生えて(?)いる 
「力を使えるのか!?」 
「なまじ人間サイズ分だけ大きいわね」 
あっというまに水銀燈は縄を切り裂き、さるぐつわを取り自由の身になっていた。 
水銀燈が叩き壊すかのように桜田家の窓ガラスを叩くとガラスが波打った。 
「nのフィールドの入り口ですぅ!」 
「真紅! どうするんだ!」 
「泳がせるわ。ホーリエ」 
水銀燈はもうガラスの中に消えていた。 
「水銀燈を追って頂戴。気付かれては駄目よ」 
後を追うようにホーリエがガラスの中に飛び込む。 
「ホーリエの帰還待ちね……ジュン、お茶を入れて頂戴」 
真紅は淡々と指示を飛ばす。 
「うう……なんかかっこいいかしら……でもカナ負けないかしら」 
密かにライバル意識を燃やしている黄色いやつがいた。 
有能な指揮官は辛いな。真紅。 

「お茶がぬるいわ」 
ビシィ!! 
「いってぇぇ」 
すごい音がした。 
でかくなった分、髪の毛鞭も威力が上がっているようだ。 

しばらくしてホーリエが帰ってきた。 
「場所は割れたわ。突入よ」 
「やっぱりかっこいいかしら……」 

しばらくnのフィールドを進んでいくと目的の位置に着いたようだ。 
出口は病院の廊下に取り付けてある大きな鏡らしい。 
「行くわよ」 
ひょいひょいと鏡から出ていく。 
この光景を一般の人が見たら色々やばいだろうが、幸い周囲に人の影は無かった。 
ホーリエがとある病室の前で旋回し始めた。 
「ここみたいだね」 
「突入なの〜」 
ドアを蹴破って病室に入る――ようなことはしない。意気込んでいた割に普通に入った。 
「おじゃましま……す……」 
先陣を切ったジュンだったが病室に入った瞬間後悔した。 
水銀燈が床にへたり込んで呆けたようにベッドを見て、なにやらブツブツと口走っていた。 
「うわぁ……」 
ジュンのトラウマに新たなる一ページが刻まれる。 
後続が続々と病室に入ってくるが誰しも水銀燈を見るなり黙ってしまった。 
次第にこそこそと小声で話し始める。 
「これじゃ鬱銀燈ですぅ」 
「なにがあったのかな?」 
「誰か聞いてみるのかしら〜」 
一同、また黙ってしまった。 
「だって……ねぇ?」 
「やっぱり……」 
「ちょっとなあ」 
「ヒナ、あんな電波な水銀燈に話しかけたくないの〜」 
幼い感性は時として残酷な表現をする。 
あまりにストレートな表現すぎて話題に上がっている本人に聞かれたらえらいことになるだろう。 
聞かれてはいないようだったが。 
「ジュン」 
「なんだよ……」 
まさかこのタイミングでは…… 
「水銀燈に何があったか聞き出しなさい」 
やっぱりか。 
「何で僕なんだよ! 他当たれ」 
「頑張って、ジュン君」 
「やるときはやる男だって信じてたですぅ」 
「男気かしら〜」 
「生贄なの〜」 
うう、皆酷い。 
「分かったよ。全く……」 
そろりそろりと水銀燈に近づく。 
正直気が引けるが仕方が無い。ジュンは思い切って話しかけてみた。 
「どうしたんだ?」 
ギチギチと錆びた歯車同士がゆっくり回るような速度で水銀燈はジュンに振り向いた。 
さりげなく目の焦点が合っていない。その上、口が半開きだ。 
ジュンは会話を続けずに逃げ出したい気分に駆られたが踏みとどまる。 
「どうしたんだ?」 
もう一度聞いてみた。 
「めぐが……めぐが……」 
水銀燈に気をとられていて今まで気付かなかったが、ジュンはベットを見た。 
「いなくなっちゃったぁ……」 
ベッドは空だった。 
とどめとばかりにベットの横のテーブルには菊の花が生けてあった。 

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