では、一本投下します 
渋いお茶など煎れてご笑読下さい 
歯にしみるような甘口のお話なので 

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大学病院の一室、心地よい5月の風が病院の薬臭い瘴気まで流し去ってくれるような、そんな穏やかな時間 

病室には一人の少女と、一体のドールが居た 

不治の病の少女の病室だった、他の姉妹をすべてブッ壊す使命を負った、命宿る人形がそこに居た 
その少女の生命を食い物にするために媒介の契約をしたドールは、最近は戦う以外の時間を 
少女の病室で過ごす事が多かった、喋るでもなく触れ合うでもない時間、ただ、少女の歌が好きだった 

「水銀燈・・・いいこと考えたの♪」 
「めぐ・・・アンタのその顔、怖いわよぉ」 

窓枠に腰掛けていた水銀燈は体をひねってめぐの顔を見た、めぐの笑顔を見て自分の顔をひん曲げた 
めぐの瞳がクリクリと動き、イタズラっぽく光る、めぐは水銀燈と出会うまではこんな顔をしなかった 
水銀燈はめぐのその目がキライだった、こういう目をする時、めぐは突拍子も無い事を言い出す 
この間こんな目をした時、めぐは真顔で「水銀燈、キスをしましょう」と言い出した 
水銀燈はメグのその目が嫌いだった、嫌いすぎて胸の鼓動が不安定になる、キライすぎて目が離せない 
キライで・・・キライで・・・目が離せなくて・・・胸がドキドキして・・・動けなかった・・・そして受け入れた 

「わたしの・・・お嫁さんになりなさい!」 

水銀燈は腰掛けていた窓枠から落っこちそうになった、普段は蒼白な顔を真っ赤にして、めぐに毒づく 
「バ・・・バ・・・バカじゃないの?あんたイカレてるわぁ!この私に白いウエディングドレスを 
着ろですって?イヤよ!バカじゃないの?何で二人してバカ面並べて、あんたらがありがたがる 
『キョーカイ』とか『シンプ』の前で、『生涯愛する事を誓いますか』なんて・・・イヤよ!絶対イヤ!」 

水銀燈は絶対イヤだった、めぐはひどいと思った、とても意地悪でイヤな奴だと思った、絶対に無理 
ドールの自分に、罪を重ねた自分に、そんなママゴト遊びのような真似なんて、そんな、幸せなんて・・・ 

「・・・・めぐ・・・・・イヤだからね・・・バカよ・・・めぐはバカよ・・・こんなジャンクのわたしを・・・貰ってくれるなんて 
誓うから・・・何でも誓うから・・・幸せにしてくんなきゃ・・・・・イヤだからね・・・・・わたし・・・・う・・・う・・・」 

水銀燈の震える背中を見つめるめぐは、もういちど目をクリクリとさせて笑った 

その笑顔は・・・水銀燈の心を奪った笑顔 

「めぐのプロポーズ作戦、大成功♪」 
「・・・・・・・・バカぁ・・・・・ドールとじゃ、女のコ同士じゃ、結婚できないじゃない・・・」 
「いいこと考えたの♪」 
「めぐゥ・・・アンタのその顔、怖いわよぉ」 

めぐはベッドの上で身軽に転がった、1年の保証すらないメグの病は、精神的な変化でほんの少し好転した 
それが「容態の急変」で瞬の間に消えてしまう命だとしても、めぐは今を楽しんでいた 
ベッドの手すりに引っ掛けていたコード、その端のボタン、あまり使わなかったナースコールを押した 

ポーン 

スピーカーから声が流れる、水銀燈は嫌いだった、距離を隔てて声が届く現象、摂理に反してると思う 
めぐの部屋にそんなものがあると、自分の声とめぐの囁きに割り込む物があると、その・・・ジャマになる 

「ハーイ、柿崎さん、どうかしましたか?」 
「あ、婦長さん?ちょうどよかった、わたしロンドンに転院しま〜す♪、今すぐ!」 
「え?ロンドンって?ちょっと柿崎さ(ブツッ)」 

めぐは二人の邪魔をする無粋なコードを引き千切った、水銀燈の不満を一瞬で解決、そしてまた笑った 
水銀燈は不安だった、何だかワケのわからない展開、ひどい目に遭う予感じゃない、逆の不安 

「ろんどんって、どんなオトギの国よぉ?わたしたちが結婚できるの?」 
「ねぇ水銀燈・・・エルトン・ジョンって知ってる?ジョージ・マイケルは?」 
「?」  

英国が採択した新法案で、同性のパートナーとの事実上の結婚を果たしたアーティストの名を、 
水銀燈は知らなかった、めぐは知っていた、病室の青春、ラジオが友達だった時期がとても長かった 

水銀燈は再び俯く、やっぱりこのミーディアムはダメだ、わたしの黒い体まで何だか赤っぽくなるようだ 
それが「幸せの前の不安」だなんて信じられなかった、まさかあの「何とかブルー」とかいう物だなんて 

「ダメよ・・・やっぱりダメ・・・だってあんたら人間が遠くに行く時は 
『ヒコウキ』に乗らなきゃいけないんでしょ?めぐ、そんな体で長旅なんて無理よぉ、死んじゃうわよぉ」 
「いいの」 
「よくないわぁ!だ、だって、アンタが死ぬと困るのよ!バカでもアンタ、ミーディアムだからね!」 
「だって・・・『愛は命がけ』って言うじゃない」 

水銀燈は・・・・・何も言えず・・・・ただ・・・・・・・・・・・・・・黒い体を真っ赤の染めて・・・ 

「あらあら、わたしの天使さんは泣き虫さんね、これじゃ『本番』が思いやられるわ」 
「バカぁ!・・・バカぁ!・・・・めぐのバカぁ・・・・びぇえぇぇん!・・・・」 

MEGU YOU HAVE TAKEN SUIGINTOU TO BE YOUR WIFE. WILL YOU LOVE HER, COMFORT HER, 
HONOR AND KEEP HER, IN SICKNESS AND IN HEALTH, IN GOOD TIMES AND IN BAD, AND BE FAITHFUL TO HER 
AS LONG AS YOU BOTH SHALL LIVE?”」 

「I WILL!」 

「SUIGINTOU YOU HAVE TAKEN MEGU TO BE YOUR WIFE. WILL YOU LOVE HER, COMFORT HER, 
HONOR AND KEEP HER, IN SICKNESS AND IN HEALTH, IN GOOD TIMES AND IN BAD, AND BE FAITHFUL TO HER 
AS LONG AS YOU BOTH SHALL LIVE?”」 

「・・・・・・I WILL」 

「 MEGU AND SUIGINTOU HAVE DECLARED BEFORE ALL OF US 
THAT THEY WILL CONTINUE TO LIVE TOGETHER IN MARRIAGE. THEY HAVE MADE SPECIAL PROMISES 
TO EACH OTHER. THEY HAVE SYMBOLIZED IT, BY THE JOINING OF HANDS, THE TAKING OF VOWS 
AND EXCHANGING OF RINGS.” 
“SO THEREFORE IT GIVES ME GREAT PLEASURE TO REAFFIRM YOU AS WIFE AND WIFE.” 」 

「“YOU MAY KISS THE BRIDE.”」 

「めぐ、汝は 水銀燈を妻とし、水銀燈を愛し、敬い、慰め、助け、 
病める時も健やかなる時も、良き時も悪しき時も、 
どんな時でも命ある限り誠実に尽くすことを誓いますか? 」 

「誓います!」 

「水銀燈、汝は めぐを妻とし、めぐを愛し、敬い、慰め、助け、 
病める時も健やかなる時も、良き時も悪しき時も、 
どんな時でも命ある限り誠実に尽くすことを誓いますか? 」 

「・・・・・・誓います」 

「本日、めぐと水銀燈は結婚し生涯を共にするという誓約を明らかにされました。 
それは、両手を取り合い、愛を誓い、指輪を交換したことにより象徴されています。 
それ故に、お二人を正式に妻と妻として宣言いたします。 」 

「それでは、誓いの口づけをどうぞ! 」 

大学病院の一室、湿っぽい6月の風を乾かすような、暖かく甘い雰囲気の病室、そんな幸せな時間 

病室には、一組の・・・・・ 

コリント人への手紙−第13章 

愛は寛容であり、親切です。 
また愛は人を妬みません。 
愛は自慢せず、高慢になりません。 
愛は礼儀に反することをせず、 
自分の利益を求めず、怒らず、 
人を恨まず、不正を喜ばずに真実を喜びます。 
全てを耐え、全てを信じ、 
全てを望み、全てを忍びます。 
どのようなことが起ころうとも、 
真実の愛は決して終わることはありません。 

魔法の言葉(完) 

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この作品のタイトルは Do As Infinityの名曲 
『魔法の言葉〜Would you marry me?〜」から頂きました 

毎回甘々でも飽きるので、次あたりはスパイスの効いた作品など投下したいと思います 

では 

追伸 
(4)のケツについてる「邦訳」は無しって事でお願いします、投下ミスです 

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