作ってみたので投下
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日曜日の昼下がり、桜田邸は今日も騒がしかった。
「ジュン~、ヒナと遊んで欲しいの~」
「うるさいですぅチビ苺! ジュンは翠星石と遊ぶのですぅ」
「いいかげんにしろよな、おまえら・・・」
ここ最近、これといった事件も無く平和そのもの。しいてあげれば、庭の茂みが毎日のようにガサガサと動いているぐらいであろう。
「・・・ジュン君、うちの茂み、何かいるのかしら・・・」
「知るかよ、そんなこと」
2体の人形にじゃれつかれて、ジュンは機嫌が悪かった。
のりも別に深く考えようとはしていない。猫か何かだろうと思っていた。
「ジュン。お茶の時間よ」
「へいへい」
この毎日繰り返される光景も、少しずつ違っているものだ。
しかし、ずっと同じことをしている存在が一つ。そいつは今日も本を読んでいた。
蒼星石である。
(ジュンとお話したいけれど・・・)
蒼星石だって姉や雛苺と一緒にジュンにじゃれ付きたかった。騒ぎたかった。
だが、彼女には楽しそうにしている三人(?)に割り込んでいく勇気は無かった。
「はぁ・・・」
ため息を合図に、本を閉じた。
平和な毎日。変わらない日常。良いことだと分かってはいるのに蒼星石はそこはかとない疎外感に苦しんでいた。
気分を変えるために部屋を出て、ジュンの部屋に行くことにした。
部屋の面々は蒼星石が部屋を出たことに気付かない。
ジュンの部屋に来た蒼星石は何をするわけでもなく本を片手にぼぅっとしていた。
「暇だなぁ」
辺りを見回してみる。
ふと目に付いたのはジュンのノートパソコン。電源は付けっ放しだった。
「・・・ちょっとぐらいならいいよね」
蒼星石はパソコンの扱い方について一通りの知識は持っていた。
インターネットに接続し、お気に入りを見る。
適当にクリックしてみた。ジャンプした先は
「えーと、《Ⅲチャンネル》?」
「蒼星石ーどこにいるのですぅー?お茶にするから出てきやがれですぅー」
「ああ、行かなくちゃ」
蒼星石は下に降りていった。
「ん、なんだこれ?」
お茶を飲み終り、部屋に戻ってきたジュンは自分のノートパソコンの画面を見た。
「“くんくんについて語るスレ”? こんなとこにつないでたかな?」
水曜日、その日は朝から雨だった。
ジュンは図書館に入り浸り、のりは学校に行っている。今日の桜田邸は比較的静かだった。
人形達はテレビを見ている。しかしその中には蒼星石の姿は無かった。
蒼星石はジュンの部屋でパソコンをいじっていた。《Ⅲチャンネル》をやっていたのである。スレはもちろん“くんくんについて語るスレ”だ。
書き込まれたスレを見つつ、ときおり書き込みながら蒼星石は呟いた。
「面白いなぁ」
すっかりはまっていた。
―――次のくんくんはどうなるんだろうね?―――
―――お隣さんちで事件が起こるんだよw―――
―――たいしたことじゃないさ、きっと―――
―――かずきィーーー!!―――
「あはは・・・あは・・あははははは」
そんな蒼星石をドアの隙間から翠星石が覗いていた。
「これは引きこもりの予兆なのかですぅ・・・」
雨はまだやみそうに無い。
次の日も雨だった。
昨日より幾分雨脚が強くなっているため、ジュンは家にいた。一階で雛苺と遊んでいる。
ジュンは昔のようにずっと部屋に引きこもることは少なくなった。
本人曰く「遊んでくれって雛苺や翠星石がうるさいから仕方なくやってんだ」と主張しているが
「最近ジュン君よく笑うようになったわねぇ」と、のりの一言が全てを物語る。
だが、一方でみんなの前で笑わなくなっていた者もいた。
今日もパソコンに向かっている蒼星石である。
まったく笑わないわけではないが、
「うふふ・・・あはははは・・・・あははァ!」
とてもじゃないが健全な笑い方とは言えなかった。
「さて、今日はどんな書き込みがあるかな~」
慣れた手つきでマウスを動かす。目的地は《Ⅲチャンネル》だ。すぐに到着。
しばらくして、マウスを動かす手が止まった。
―――人形って儚いよね―――
3日で新スレになる“くんくんについて語るスレ”は今日も賑わっていた。
そこでは「名探偵くんくん」の突然の放送中止の話題でもちきりだった。
真紅が怒っていたから蒼星石の記憶にも新しい。
―――なんで放送中止~!?―――
―――またやるだろ。充電中さ―――
―――出来はよかったのに―――
―――いくらよく出来ててもなぁorz―――
―――所詮は人形劇ってことか・・・―――
―――このまま皆から忘れ去られたりして―――
蒼星石はそこで見るのをやめてしまった。
どうしても「人形」である自分と重ね合わせてしまい、見ていられなくなったのだ。
「そんな・・・嫌だ・・・僕は・・・僕は・・・あぁあああァ!!」
頭を抱えて錯乱すること10分。
「蒼星石~・・・どうしたですか!?顔色真っ青ですぅ!」
「あ・・・あぁ、なんでもないよ翠星石。ちょっと眩暈がしただけだから・・・」
「さっき聞こえた奇声といい、本当に大丈夫かですぅ?」
「大丈夫、大丈夫・・・」
蒼星石はまるで自分に言い聞かせるかのように呟いた。
その時、蒼星石の脳裏にある考えが浮かんだ。
(アリスになりさえすれば・・・お父様からも愛してもらえる・・・
アリスになりさえすれば・・・ジュンと・・・)
蒼星石の目に一瞬、狂気の光が宿った。
しかし、翠星石はそんなことには気付かない。
「下に行って、ソファで休むですぅ」
「・・・・・・そうするよ」
雨はまだ降り続く。いつまでも、いつまでも。
蒼星石が「アリスを目指す宣言」をする七日前のことだった。
おわり
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