これまでのあらすじ。
深夜、寝ているジュンの上に小柄な女の子が乗っかっていた。
女の子の正体は人工精霊のメイメイだった。
精霊は求め訴える――――「抱け」。
ベッドの隅で人工精霊メイメイ(人間Ver)に両手を握られたまま、ジュンは必死になって首をぶんぶん左右に振っていた。
「ダメだ! やっぱダメだ! できるわけないだろそんなこと!」
「お願いしますお願いしますお願いしますぅぅぅっ!!」
必死で拒むジュンだったが、
メイメイはまるで雨の中でくぅんくぅんと縋るようにこちらを見上げる捨て犬の如し濡れた瞳。
つぶらな視線は純朴と言う名の属性を持ち、穢れてしまったジュンの心に罪悪感という自己嫌悪を呼び起こす。
「あぅぅ……」
「そんな目で僕を見るなっ!」
何故だろう。決して自分は悪くない……はずだ。
そもそも無理を要求しているのはメイメイの方だし、それを聞き届けなければならない義務などジュンにはない。
なのにメイメイの紫瞳に溜まる涙の光を見るだけで、まるで自分がいじめっ子になったかのような錯覚に陥る。
「うぅ……そうですよね、マンガの世界じゃあるまいし、こんな変な色の目の女の子、気持ち悪いだけですよね……」
どよーん、と。
紫がかった銀髪をいじいじと指に絡めつつ、メイメイは欝モードに入った。
「そうですよね。こんな目で見られたって呪われると思いますよね……。
わたしなんかどうせ、どうせ!
デフォで紫ババア対策になる以外、ろくな使い道なんかないんです……! うぇぇ…………」
――――【紫ババア】学校妖怪。会った相手をとにかく殺すばあさん。ただし、相手が紫色のものを持っていた場合は逃げる。
「い、いやお前さ……それはいくらなんでも自分を卑下しすぎと言うか……」
「だけど!」
慰めようとしたジュンの言葉を無視して、沈み込んでいたメイメイががばっと顔を上げた。
「お願いします! わたしだってマスターを助けたいんです!
サモナイト……さもないと力づくでも……!」
すっ、とメイメイは懐に手を突っ込み、何やら赤い石を取り出した。
「これで、この鬼神将ゴウ……」
「待てええええええ! それ違う! 名前同じだけどそれは『さん』付けする方だメイメイ!
早くそれしまって! 王命に於いて疾く為しちゃダメ!」
色んな意味でSランクの何かを喚び出そうとするメイメイを必死に止める(なんで今作は宿業の結末ないんだろうね)。
「い、いいか? 別に僕はお前の目がおかしいとも悪いとも思わないって。充分、その……綺麗だよ」
なんでこんな口説くようなことを言わなければならないのだろうか。
こんなの絶対僕のキャラじゃない……
そんなことを思いつつも、メイメイを安心させるためにぎこちない笑みを浮かべつつジュンは説く。
「で、でもほらさ? やっぱりそういうことするのはほら、大切と言うか慎重に考えるべきと言うか……」
「……要するに、やっぱりわたしじゃダメなんですよね」
魅力ないんですよね、というニュアンスを言外に含んでいた。
……しまった墓穴った。
どよん、と人魂でも浮かびそうなオーラを醸し出しつつメイメイは肩を落として俯いている。
「い、いやその……そっちに事情があるのはわかるんだけ……」
「け、けどそれなら!」
なんとか言い訳しようとするジュンを遮って、メイメイは決然と顔を上げる。
「言い換えるなら、考えて……その、し、してもいいって思えたら大丈夫ってことですよね!?」
「…………はい?」
理屈の上ではその通りだった。
が、そもそも考えてもダメだと思っているからこそこうして説得しているジュンからすれば、
今更どうしようもないことである。
なので間の抜けた声をあげてしまったのだが、切羽詰ったメイメイはその『はい?』を肯定の『はい』と受け取りでもしたのか、
「そ、それでは失礼します!」
頬を真っ赤に染めて、ジュンに抱きついてきた。
「はいいっ!?」
再び感じるメイメイの柔らかな感触と匂いに、ジュンの思考が見事なまでに麻痺する。
チョーットストッピーング? ナニヲドウシタラコウナルノ?
その胸中の疑問には、奇しくもメイメイが答えてくれた。
「わ、わたしがんばりますから……もしわたしでいいと思ってくだされば、その、だ、だいっ……抱いてください!」
……、なるほど。
どうやらジュンの言葉を『俺を満足させてみろ』的に超強引解釈したらしい。
それは水銀燈を救いたいがための健気さ故なのだろうか……だなんてことはジュンにとってはもはやどうでもよく、
とにかくやばい。
メイメイは可愛らしい女の子だ。
そんな女の子に詰め寄られて……というか抱きつかれて嫌なわけはない。
抱けるというのなら、引き篭もりの自分には過ぎた豪運とすら言えるだろう。
(いやけどだからってそんなことできるわけないだろ――――っ!?)
彼をヘタレと言うなかれ。
まともな思考能力があるならば、いくら魅力的な女の子に『抱いてくれ』と言われたとしても
『はいわかりました』と乗り気になれるわけがない。むしろ引く。事情を聞いていなければ絶対に引いている。
(ああけどそういえば事情があるんだよな……どうしよう)
ジュン自身は気づいていなかったが、その考えは、『絶対ダメ』という考えが揺らいでいることの証拠だった。
メイメイの真剣さに報いたいという気持ちと、けれどそんな理由でこういうことをするのは間違っているという倫理観と、
そしてわずかなこの先の展開に対する期待といった様々な思惑がジュンの中で交錯し、抵抗する力を奪っている。
結局ズルズルと、ジュンはペースに乗せられていた。
が、メイメイもメイメイで混乱していた。
(え、ええと……)
勢いにまかせて抱きしめてみたはいいが、ここからどうすればいいのだろうか。
(と、とりあえず……肌を触るんですよね?)
正面からジュンの身体を抱きしめたメイメイの両手は、そのままパジャマの中へと侵入して背中に触れる。
「ぃ――!?」
直に触れ合う肌と肌の感触に驚いたのか、ジュンが小さく声をあげる。
それに伴って、緊張していた身体がさらに固くなったことを触覚から感じ取ったメイメイはふと思った。
(……ほぐしてあげたいな)
主人に仕える在り方が永いからか、それとも人工精霊としてもともとそういう性質として成り立っているのか、
メイメイには根底的な部分に奉仕精神が塗りこまれている。
そのせいで、ガチガチに緊張しているジュンを見て――力をもらう故の後ろめたさとは関係なく――何とかしたいと思った。
何とかして緊張をほぐして――性的な意図なく――気持ちよくなってほしいと思った。
ただ純粋にそう思ってほぼ無意識に、メイメイはジュンの背中に直に回していた両手を動かす。
「ぁはぅっ、ちょっメイメイ!?」
突然のぞくりとした感触に、ジュンは搾り出されるように息を吐く。
メイメイの細い手が、子どもの頭を撫でるように優しく上下していた。
左手で支えるように抱き、右手でほぐすように撫でている。
「もっと……力を抜いてください」
ジュンの胸に頭を押し当てながら優しく告げるメイメイの声は、どこか満足げだ。
ジュンに知る由はなかったが、その理由は二人の体位にあった。
正面から抱きしめるという形であるが故、メイメイの頭はジュンの胸に密着する状態になっている。
そのためジュンの鼓動を容易に感じ取ることができる。
(すごく……ドキドキしてます)
最初から高鳴っていたジュンの鼓動だったが、自分が背中を撫で始めたあたりから脈動の質が変わっていた。
そしてそれが悪い意味での脈動ではないことを本能的に感じ取ったメイメイは、
それを『自分はちゃんと奉仕できている』こととイコールで結びつけ、それはさらに『満足』へと繋がる。
さらにそれは『自信』となり、自信を持ったメイメイはさらなる満足を求めてジュンへの奉仕を続ける。
ジュンが吐息を洩らす度に小さく笑っていたメイメイは、ふとあることに気づく。
(あれ? もしかして……)
「ひぁっ……!」
『あること』を意図的に試してみた結果、ジュンはメイメイの読み通りの反応をする。
念のためもう一度、つぅ……と指の腹で『そこ』をなぞる。
「ふ、ぁ……」
耐えるような、けれど恍惚としたジュンの吐息。
間違いないだろう、とメイメイは確信する。
どうやらそこは、ジュンにとっての弱い部分であると同時に快感を刺激するツボらしい。
そう判断したメイメイは、それまで通りにジュンの背中を撫でつつ、適度な頻度で『そこ』をなぞるようにした。
結果、徐々にジュンの身体から力が抜けていく。
心音は未だ激しく脈打っているが、背中を撫で始めた頃に比べると随分と落ち着いており、
それ即ち、この愛撫が効果的であることの証明だった。
満足極まったメイメイの口から、自然と言葉が紡がれる。
「気持ち、いいですか?」
性的な意味ではなく、単純に……言わばマッサージのような感覚でメイメイは問う。
だがジュンはそういう意味にとったらしく、再び身体を固くして言葉に詰まった。
けれどその固さもすぐに撫でほぐされ、いつしかジュンは、倒れそうになる自分の身体をメイメイに抱き支えられる形になっていた。
が――
「あっ」
「きゃっ」
完全に身体から力を抜いてしまったジュンの体重を支えきれず、メイメイはジュンの背中に手を回したままの姿勢で引っ張られる。
結果、二人は最初の時のような――寝ているジュンの上にメイメイが圧し掛かるような形となった。
だが、その時とは異なった点がある。
まず、密着しすぎなのだ。
抱きしめられるという状態のため、メイメイの柔らかな――『女の子』の身体が押し付けられ、嫌でもジュンの脳を刺激する。
そしてそれに加えてもう一つ異なる点がある。
「あ……」
ソレに気づいたメイメイの口から声が洩れた。
ジュンは今まで、メイメイの手によって背中を撫で回されていた。
途中からメイメイはただ純粋な解きほぐしとしてそれを続けていたが、ジュンは違う。
女の子に抱きしめられ、肌を直に優しく撫で回され、しかも弱い部分を何度も指でなぞられた。
健康な男子としての身体がそれに反応しないはずもなく、生理現象によって下腹部に変化が生じている。
背中を撫でている時はソレに気づかなかったメイメイも、密着することでようやく気づく。
硬度を変え、存在を主張している『そもそもの目的』に――
――――――――――――――――――――
「はっ……く、あ」
褐色がかった空間の中、その部屋の主である少年の吐息が響く。
部屋のベッドには二人分の影。
一人は少年、もう一人は少女。
少年は寝巻きの前をはだけられ、露出したその胸には少女の頭が乗っている。
「ジュンさん、こういうのはどうですか?」
うっすらと微笑むメイメイは、性器を撫ぜ回される少年に問いかける。
メイメイはジュンに重なるように圧し掛かり、耳を左胸に押し当てた状態で、
ジュンのズボンの中の分身を扱いていた。
「そんっ……ぁっ……!」
ロクに返事も出来ぬまま、ジュンの身体がそれまでよりほんの少し大きく跳ねる。
ツボを突いた証拠だ――そうメイメイが判断出来る以上、返答としては充分。
何より、押し当てた耳に伝わるジュンの心音の変化もまた、自分の奉仕が効果を挙げていることをメイメイに伝えていた。
精一杯の奉仕に相手がよろこんでくれている……それだけでメイメイの心は歓喜に満たされる。
その喜びは『性的奉仕を施している』ということに対する羞恥心を上回り、次の奉仕の原動力を生む。
「それじゃあ次は、こうしてみますね」
「ひゃふっ!?」
ジュンのズボンに突っ込んでいた右手を巧みに操り、5本の指先で絡めるように肉棒を撫ぜ上げる。
ねと……とした感触。
既に先走りの汁にまみれていた肉棒の上部に向かうことで触れる精液の量は増え、メイメイの白い指先を別の白で染め上げた。
「ふふ」
自分の手に精液が付着しても、メイメイは不快には思わない。
むしろそれが奉仕の成果であるという認識の方が強く、ジュンに気持ちよくなってもらっている証拠。
それが切ないほど愛しくて、ジュンの先端を人差し指の腹でくり、と押し回す。
「あっ……――!」
耐え切れなくなったような、ジュンの小さな悲鳴。
どうやら軽く達してしまったらしい。
びくんと痙攣したかと思うと、少量の精液が勢いよく何度か噴出した。
右手の感触からそれを知り、メイメイはふと考える。
これだけの液を出してしまった以上、ズボンを穿かせたままではジュンに不快感を呼び兼ねない。
「失礼しますね、ジュンさん」
そっとジュンの胸から頭を離し、起き上がる。
重しが離れてもジュンは起き上がらず、放心した瞳で虚空を見つめていた。
その様子に微笑んだメイメイは、そのままジュンの腰に手を添えて、分身に負担がかからないようそっとズボンを脱がした。
「わぁ……」
自らの精液に塗れた肉棒は、ぬらぬらとした光沢を放ちながらそそり立っていた。
ズボンを脱がせたことで停滞していた異臭が解放され、メイメイの鼻腔を突く。
「……ふぁ」
なんというか、すごい匂いだった。
くら、とあっという間に意識を半分ほど持っていかれ、危うく倒れかける。
ぼんやりした意識のまま何とか身体を動かして、メイメイは再びソレに指を絡め、奉仕を再開した。
(本当、すごい匂い……)
指を動かしながらも思考の大半はその異臭のことに占められる。
異臭と言えば異臭。
だが、不思議と嫌な感じがしない。
平時ならば真っ先にその場から離れたくなるであろう臭いであるはずなのだが、今はむしろ気になって仕方がない。
奉仕することを優先すべきだから? それとも、この匂いこそが自分の奉仕の結果だから?
答えは出ない。
ただ、その異臭の中で指を動かすことに一心不乱となり、いつの間にか自分の顔がソレの目前に動いていたと気づいてもなお、
メイメイはそれに驚くことなく霞がかった紫瞳でソレを見つめていた。
(熱い……)
いつから興奮していたのか、メイメイの息遣いは荒く、体温も上昇している。
だがそれ以上に、指を絡めているジュンの分身の発する温度が高い。
(熱いんなら……冷やさなきゃ……)
ぼんやりした意識のまま、メイメイはふっとソレに息を吹きかけた。
「はあっ……!?」
向こう側からジュンの悲鳴が聞こえる。
その悲鳴に、ほんの少しだけメイメイの意識が戻ってきた。
(あ……そっか、わたし、今はジュンさんに気持ちよくなってもらうために……)
無我夢中になっているうちに、自分のしていることが何なのかを忘れていた。
状況を思い出したメイメイは指の動きをそのままにしばし考えて、今の悲鳴が快楽の証拠であることを認識する。
認識した途端、メイメイの顔が蕩けた笑みに染まった。
再びソレに顔を近づけて、目を閉じて息を吹きかける。
「ふぅ〜」
「ひあっ!?」
「ふー」
「あくっ!」
「ふっ♪」
「はぁっく!」
なんだか面白い。
軽く息を吹きかけるだけでこんなに気持ちよくなってもらえるなんて。
嬉しくて、そして弱々しいジュンの悲鳴がなんだか面白くて。
メイメイは調子に乗って、吹き方を変えつつも何度も息を吹き続けた。
「ちょ、も、もう……だめ……」
「ふ〜……え?」
駄目?
その言葉に、メイメイの動きが止まる。
ひょっとして、自分では満足してもらえなかったのだろうか?
不安によって身体に電撃のような冷気が走るが、次の瞬間、そういう意味ではなかったと理解する。
「あ……はっ」
びゅる、と。
ジュンの呻きと共に、先端から勢いよく白濁液が飛び出る。
しかも量が半端じゃない。どうやら完全に達してしまったようだ。
爆発した肉棒は溜め込んだ欲望を吐き出し、欲望は間近にいたメイメイを染め上げる。
「ひゃ……」
身体に付着した精液から立ち上る異臭に、再びメイメイの意識がくらつく。
身体の中身がなくなったかのようなふわふわした感じのせいでまともに動けず、
今度はそのまま仰向けに倒れてしまった。
「ごめん、メイメイ」
上から声が聞こえた。
上――今の自分から見れば正面。
霞んでいた視界のピントを合わせてみると、そこにいたのはミーディアムの少年。
こちらに圧し掛かるような形で、少年の両腕は少女の肩を掴んでいる。
ああそうか。倒れたのではなく、押し倒されたのか。
「僕、もう……」
耐え切れなくなったとでも言いたげな表情で告げられる。
それが意味することと自分がここへ来た目的が思考の中で絡み合い、押し倒されたメイメイの頬が緩む。
「はい……」
胸にあるのは達成感。
自分の奉仕は実を結んだ。この少年は気持ちよくなってくれた。
自分を抱いてもいいと思ってくれた。それどころかむしろ、自分を求めてくれている。
微笑みはそのままに、メイメイは両腕を広げる。
まるで、目の前の存在を求め返すかのように。
「来てください、ジュンさん」
メイメイの手がジュンの背で絡み、ジュンの手がメイメイの服にかかった。
――――――――――――――――――――
堪えきれないほどに膨れ上がった性欲に急かされて、ジュンはメイメイの服に手をかける。
無造作に、けれどメイメイに負担をかけないように胸元を開き、押し込められていた乳房が魅惑的に震えながら飛び出した。
(うわ、おっき……)
清純な性格と清楚な服装から連想されるイメージとは裏腹に、まろび出たメイメイの双丘は豊かに盛り上がっていた。
しかもこちらが服をたくし上げたせいで、未だにぷるぷると弾力を感じさせる震えを見せている。
ごく、とジュンは唾を飲み込んだ。
ただでさえ今までメイメイから受けていた愛撫で理性がトびつつあるというのに、
まるでプリンのように瑞々しく揺れる乳房のせいで、ますます歯止めがなくなってしまう。
「あ、あう……」
そんな折、釘付けになったジュンの視線より上の方から恥ずかしそうな声。
はっとしてそちらを見上げると、そこには顔を真っ赤にして俯き加減に目を逸らすメイメイ。
こちらの視線に気づいたのかメイメイは無防備に顔を上げ、
「っ!」
目が合った途端、さっきよりも顔を真っ赤に染めて視線を逸らした。
だがこれは、決して嫌がっている態度ではない。
すべてをこちらに委ねていて、けれど恥じらいを捨てきれない……そんな初々しい態度。
(……可愛い)
愛撫されていた時のものとは微妙に異なる胸の高鳴り。
それが何を意味するのかを追究する間もなく、ジュンは自然な動作でメイメイの髪を梳き、顔を近づけて頬に口付けた。
「え……」
驚いたようにメイメイが再びこちらを向く。
そのきょとんとした様子にジュンは我知らず優しげに微笑み、
メイメイが何か言う前に、その肢体に顔を埋めた。
「ひゃ、あ……」
右手でメイメイの腰を撫でながら、左手でその肢体を支え、口は震える双丘の片割れを頬張る。
丹念に舌で舐め回し、メイメイの反応を探る。
苦痛に耐えるような反応をされればそれを避け、感じるような素振りを見せられればそれを繰り返す。
そうして少女の身体を追い求め、いつしか精霊は陶酔したかのような吐息を洩らしていた。
「あ……ふぇ、ふぁ……ジュン、さ……」
その声に応えるように、ジュンは一度手を止め、自分の顔がメイメイの視界に入るように身を起こす。
陶然とした様子で虚空を眺めていたメイメイは、やがてジュンの姿を認識したのか、
ふらふらと頼りない仕草で腕を上げ、少年を求めるように伸ばしてきた。
それに抗う理由はない。
ジュンはゆっくりと身体を下ろし、メイメイの腕が首筋に回り、抱き寄せられて、こちらも抱き返して、
お互いに抱き合う形でベッドの上に転がった。
「なあ、メイメイ」
自身も意識のほとんどを快楽に冒された状態で、ジュンは少女の耳元で囁く。
「……ふぇ?」
欲望が爆ぜる限界は近い。
ジュンははっきりと、それが近いことを認識できていた。
いつ爆ぜるかを手に取るように理解していた。
だから、その余裕で以って笑みを為す。
「気持ちよかった?」
「ふぇ……」
からかうような、けれど優しい声音に、メイメイの身体が力なく縮む。
いくら頭が快感に蕩けていようと、それを口にするのは憚られる程度にまだ理性を残していた。
なら、壊さないと。
これからすることに理性は邪魔だ。
お互いに心の底を剥き出しにして貪りたい。
「ふあっ……!?」
抱きしめたままメイメイの背筋に指を這わせる。
つつ……と背骨のラインに沿って下ろされる指先にメイメイはぞくぞくと震え、その震えは吐き出される吐息をも震わせる。
「じゅ、ジュンさんっ、やめっ……」
震える唇のせいで上手く言葉を紡ぎ出せていない。
そんなメイメイの哀願に、しかしジュンは優しげに意地悪に首を振る。
「だめ。さっきのおかえしだよ」
「お、おかえしって……ひゃうっ!?」
下ろしていた指先を、不意打ちに今度は撫で上げる。
下ろしていた時よりは素早く、しかし快感を刺激する程度に抑えた速度で。
それまでとはまったくの逆方向に走る感触に、メイメイは冷たいものを当てられたかのように仰け反った。
そのショックに、メイメイを蕩けさせていた快感は吹き飛んだ……かに見えた。
「ぁ……ぅ……」
だが、メイメイの意識が整う前にジュンは再び指先を這わせ、先ほどと同じ快楽を与えている。
同じと言っても、メイメイにとってはそうではない。
ショックで一度意識が覚醒しかけたところを甘い快感で引きずり下ろす。
その落差によって、メイメイ自身が感じる快楽はその濃度を増していた。
「ひゃ、ふ、あ……」
指を這わせ、息を吹きかけ、愛しげに抱きしめ……
様々な手段で優しく行われる愛撫に、メイメイの瞳と身体から力が抜けていく。
そうしていくうちに少女は再び少年に身体を委ね、
委ねられた少年は仕上げとばかりにメイメイのうなじに指を当てる。
「あ、ん……」
うなじも弱かったのか、くすぐったげな吐息を洩らすメイメイに微笑み、ジュンはゆっくりと指を下ろした。
下ろされる指先はやがて尾てい骨にまで達し、メイメイはそこでひときわ大きな声をあげる。
感じてくれたようだ。
だが、重点的には攻めない。
ジュンはそのまま五指を開き、優しく包み込むように少女の尻肉を愛撫する。
「あ、あ……あっ……」
弱いところを攻められなかったもどかしさと、それでも充分に気持ちのいい愛撫を与えられる快感に、
メイメイの身体が断続的に震える。
頃合を見て、ジュンは再び耳元で囁いた。
「気持ち、いいか?」
ぴくり、とメイメイの身体が動く。
しかしそれは驚きのそれではなく、質問されたことを認識したことを示す反応。
メイメイは陶然としたまま、霞んだ紫瞳を耳元のジュンに向けて答える。
「は、い……きもちいい、です」
「そっか……よかった」
やっと心を剥き出せた。
嬉しくて、強すぎない程度にメイメイの身体を抱きしめる。
メイメイも弱々しくそれに応え、やがて二人はどちらからともなく抱擁を解いた。
「それじゃあ……」
「……はい」
霞んだままの紫瞳に喜悦が宿り、ジュンはそんなメイメイの下を脱がす。
衣服は膝のあたりまでずり下げられ、少女の秘部が露わになった。
もう、充分に濡れそぼっている。
そして、お互いの限界が近いことをジュンは理解している。
タイミングは、今。
――――――――――――――――――――
受け入れる姿勢を取る少女へと、少年はゆっくり腰を落とした。
「……っ」
苦痛にメイメイの顔が歪む。
侵入する異物に身体の内側……触れられることなどまずない箇所を刺激され、強引にこじあけられる痛み。
「か、はっ……」
これまでに与えられた快感でも、その痛みを誤魔化しきれない。
耐えるために止めていた息が、痛みに音をあげて吐き出される。
それと同時にきつく閉じていた両目も薄く開き、中に溜まっていた涙が一筋、左目から流れた。
虚ろな紫瞳が意識と共に虚空を彷徨い、自分を抱いている少年にピントが合う。
(あ……)
先ほどまでの優しげなものとは裏腹に、少年は痛ましげに顔を歪めていた。
メイメイのような苦痛ゆえにではない。
おそらくは逆。いや、逆の逆とでも言うべきか。
苦痛とは真逆の快楽衝動に襲われたジュンは、その衝動に振り回されぬよう自制し、それによって苦しんでいる。
(……じ、せい?)
ふと気づけば、挿入されていた異物の動きが止まっていた。
時折びくびくと小さく跳ねてはいるが、現状以上に挿入されることなくそのままの状態を保っている。
そんなことをする必要などないのに。
ただ欲望のままにこの身を蹂躙しても構わないはずなのに。
「ジュン、さん」
少年の意図を理解したメイメイは、強引に形作った微笑みを投げかける。
「わたしなら大丈夫ですから……無理はしないでください」
告げられたジュンの表情に困惑が混ざる。
無理もない。いくら笑みを浮かべたとて、大丈夫には見えないだろう。
むしろ、無理をしていると示しているようなものだ。
だからメイメイは歯を食いしばってジュンを抱きしめ、自ら結合を促した。
「ちょっメイ……ぅぁっ」
「き――はくっ……!」
肉棒が深々と突き刺さり、メイメイの喉から奇声――声というよりは息に近い――が洩れる。
ジュンはジュンで、唐突な行為にもたらされた快感に不意をつかれ、わずかに狼狽していた。
「は、ふ……はーっ……」
頬を上気させ瞳を閉じたまま、メイメイは無理やり呼吸を整える。
正直、かなりの激痛だった。意識が飛ぶかと本気で思ったほどに。
けれど――
(あったかい……)
両目を閉じているせいか、触覚がいくらか冴え渡ったようだ。
ひくひくと蠢く自分のナカと、びくびくと震えるジュンのモノが、互いに互いを刺激し合っている。
それでいて、混ざり合うかのように包み込めている。
そんな、気持ちのいい、安心出来る一体感がある。
「……メイメイ?」
心を満たした安堵感に、メイメイは目を閉じたまま無意識に微笑んでいた。
そんなメイメイにジュンは不安げに声をかけ、自分が笑っていると気づいていないメイメイはどうしたのだろうと紫瞳を開く。
「あ……」
目が合った。当たり前なのだが。
だが少年の顔――厳密には瞳――を視界に入れた途端、メイメイの胸が急に高鳴る。
性的な興奮でもなければ、行為に対する羞恥でも、ましてや恐怖心でもない。
ただ、奇妙な安心感。胸が高鳴っているというのに落ち着いているという矛盾した、けれど心地よい感覚。
そんな気持ちに包まれたメイメイは、やはり落ち着いたまま、再び微笑む。
「大丈夫です。今度はもう、本当に大丈夫」
汗を張り付かせたままの少女の笑みは、どこか晴れやかで、澄みきっていた。
その表情に今度こそ嘘はないと感じ取ったジュンは、戸惑いながらもいくらか真剣さを顔に含ませて頷き、そのまま腰を引く。
一体感が失われることにわずかな喪失感を覚えるメイメイだったが、それは本当に一瞬。
「んぁっ……」
ぬちゅ、と、液にまみれた棒が引き抜かれていく音。
そんな中、メイメイは新たな快感を感じていた。
抜かれるのがとても気持ちがいい。ふわっと何かから解放されるような無重力感。
自分の中に詰まっていた肉棒が去りゆくことでスペースに余裕が生じ、
全身が弛緩するようなまどろみに似た感覚に襲われる。
「あ、は……っ」
弛緩は頬の筋肉にまで及んだ。
顔に笑みが浮かぶことを止められず、そして止める必要はないと考えてそのまま笑い、ジュンの首に手を絡める。
「はふ……」
この無重力感も悪くない。悪くはないが、それよりも。
それよりもメイメイは、先ほどの一体感が恋しくなった。
恋しくなって、再びジュンを促した。
もう、二人の間に言葉はない。
いつしかジュンの頬も優しい笑みに崩れていた。
激しく、しかし決して乱雑ではない勢いで腰を振っている。
「ひゃっ、ふっ、あはっ……」
打ち付けられるメイメイはそれを受け入れ、揺れる肢体は汗を散らし、時に豊かな双丘を少年の胸板で押し潰す。
一体感と無重力感……異なる快楽を与える感覚を、秒に満たない合間に交互に受け、精霊の意識は次第に研ぎ澄まされていく。
もう、そもそもの目的はその意識から消え去っていた。
「ひあっ……い、いいですっ、あふっ、ジュ、さ……もっと……!」
意識にあるのはただ、恋しいものを望む衝動のみ。
満足を与えてくれる相手に満足を与え、相手が満足してくれればこちらの胸はさらに満たされる。
そんな昂情の半永久機関に身を委ね、少年と少女は時が来るまで腰を振る。
「ジュン、さ――――は、ぁ…………!」
「くっメイメイっ……!」
そしてやがて、二人は果てた。果ててなお、その余韻は頭を痺れさせた。
「ん……」
褐色の空間の中、ベッドに横たわっていたメイメイは意識を取り戻した。
どうやら果てた後、そのまま眠ってしまっていたらしい。
「えっと……」
横たわったまま、右手を顔の前まで持ってくる。
夜闇の中、白く細い手が紫色の光に包まれた。
光の加減を見て、ほっと一息つく。
力の吸収は上出来だ。これだけあれば主人を癒す力は格段に上がるだろう。
「ぅ……」
傍らから聞こえてきた声に首を動かしてみると、そこには目を閉じて横たわっているミーディアムの少年。
こちらもメイメイと同様、行為に疲れて眠っているようだ。
少年のあどけない寝顔にくすりと笑い、精霊はその頬に手を伸ばす。
「ありがとうございます、ジュンさん」
優しく撫でながら、メイメイはふと、行為の際に頬にキスされたことを思い出す。
これはあくまで力をもらうための行為だったはず。
なのに、どうしてこのミーディアムの少年は『それにしては必要のない行動』をとったのだろう。
――優しく愛撫をしてくれた。
――気持ちいいかと言ってくれた。
――しなくてもいい我慢までしてくれた。
何故?
考えるうちに一つの結論に達し、自分でもよくわからない心音に胸を締め付けられる。
まさか。そんなわけない。
そう頭では否定しつつも、『それ』以外に理由が思いつかないことと、そうであってほしいという無自覚の願望が
メイメイの中で渦巻いていた。
ただ、一つ確実に言えること。
それはジュンが優しい少年であるということだ。
欲求の赴くままにこの身を貪ればよかったのに、彼はこちらの身体を愛撫して性感を昂ぶらせ、快楽を与えてくれた。
そんな彼の気遣いを申し訳ないと思う反面、それ以上に嬉しいと思った。
「……あの時の真紅さんのミーディアム、あなただったらよかったのに」
運命がひび割れ始めた時代のことを思い出し、少し哀しげにメイメイは微笑む。
「それか、あの時あなたがマスターのミーディアムに……」
なってくれていたら……と続きそうになった口を閉じる。
今さら言っても詮無いこと。
時間のゼンマイは戻せても、運命のゼンマイは戻せない。
けれど故にこそ、自分はこの優しい少年に出会うという運命に辿り着けた。
「ジュンさん」
だから、メイメイは静かに微笑んでその名を呼ぶ。
「ん……」
呼ばれた少年はまだまどろみの中。
そんなあどけない寝顔のミーディアムにメイメイは顔を近づけて、
「優しい人、好きですよ」
呟いて、額にそっと口付ける。
「また、来ますね」
愛しげに呟いて、ジュンのベッドで横たわったままの姿勢で紫の精霊は姿を消していく。
その空間から完全に消え去る瞬間まで、メイメイは愛しい少年の寝顔を穏やかに見つめていた。
end...?
おまけ。
「〜♪ 〜〜♪」
割と温かみを帯びてきた陽光が差し込む。
とある学校の家庭科室に、上機嫌な笑顔を浮かべる紫がかった銀髪の少女がいた。
右手にはホイッパー。左手にはなにやら茶色の粘質な液体が入ったボウル。
家庭科室にいるのは少女一人だけ。
それもそのはず、この時間にはどの学年、どのクラスもこの教室を使わないからである。
ぶっちゃけ、メイメイが勝手に忍び込んで何か作っているだけである。
メイメイがホイッパーでボウルの中身をかき混ぜていると、窓から何やら青い人魂。
「あ、レンピカさん。何かあったんですか?」
笑顔のまま顔を向けるメイメイに、レンピカは明滅で返事をした。
「そうですか。マスターもしばらくはめぐさんのところで安静にしてくれないと……え?」
メイメイの台詞を遮って、再びレンピカは明滅する。
「あ、これですか?
えへへ、チョコレートの材料です。ちょうどバレンタインですし、今はマスターもじっとしてますし」
本人が気づいているのかどうか知らないが、上機嫌にホイッパーを動かすメイメイの頬は幸せそうな朱色に染まっていた。
『…………』
エプロン姿で一人はしゃぐメイメイに、レンピカは呆れたように――まるで溜息でもついたかのような明滅をした。
あとがき。
こんにちは。前回あんな比喩しちゃったせいでプリン作りが気まずくなった双剣です(アホ)。
さて。
復活早々ほぼオリキャラの形で書かせてもらったメイメイ話、少しでも楽しんでもらえたなら幸いだ。
続きそうな終わり方させたが、これもうほとんどオリ話だしとりあえずここで切り上げとく。
まあ『機会があったら書く』程度で。じゃあな!
P.S.
>>129の『変態ジュン』が何なのかようやくわかった。なんて素晴らしい変態たちなんだ(褒め言葉)
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129 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/16(火) 17:49:48 ID:ZqrhzL0X
双剣氏乙。
だけど、メイメイ人間化って、それ何て変態ジュン? とかちょっとオモタ。w