机に向かう少年。・・・それを見守るのは紅に身を包んだ
人形。 

「カチャ・・・」 
「あ 悪い 起こしたか?」 
「いいえ」 

無心に取り組む少年を見守る人形は少年のもとへ寄り添った。 

「ゴン」「あてっ。何すんだよもー、邪魔すんな」 
「・・・・・・」人形の眼がまっすぐ少年に向けられる。「抱いて頂戴」 
「・・・は?」「・・・もっと近くで見たいのよ・・・早く」 

人形は、真紅は早く返事しすぎた事を少し後悔した。ジュンに「抱いて」欲しいと最初から思っていた訳ではない。 
ただ、返事を遅らせて相手の反応をもう少し見てやる事が出来たではないか。 
成り行き次第ではもう少しでも、互いの距離を縮められたかもしれない。 
真紅はジュンの膝の上で話をしつつも、はしたない、と本人が思っている考えに身を委ねていた。 
と、話をしているうちに急にジュンの様子が変わった。急に黙り出したり、まとまりの無い事を言い出した。 
まるで話に集中できていないようだが、なぜかは始めは分からなかった。 
その時、お尻の下の感触に気がついた。 

自分が悪い訳ではない、とこの少年は言ったところだろうか。 
寝不足に”日課”の消化不良、真紅の言葉に、彼女の柔らかい感触と香り・・・ 
そう、これは生理現象で不可抗力なのだ。僕は悪くはない。 
しかし彼女が息を飲んだのが聞こえたのか、まとまりの無い話もぎこちない沈黙へ変わってしまった。 

30秒も経っただろうか。永遠のような時間の後、口を開いたのはやはり真紅だった。 
「・・・人間のオスは・・・」その先は聞かなくても分かっている。言葉を待った。「ジュン。」 
・・・?さらに間が空いた。 
「貴方にとって私は、何なの?」 
非難でも詰問する口調でもない。 

何代ものマスターを経て、百年以上の時を生きていた真紅。 
マスターに恋し、マスターに恋される事も初めてではない。だが不幸にも恋が進展する事はなく、 
殊に肉体的な接触となると全く経験はない。 
そんな人生を送ってきた真紅だからこそ、ジュンの”生理現象”をきっかけに、ジュンへの気持ちを衝動的に処理しているようだ。 
真紅本人は再び迷っていた。勢いに任せて難しい質問をしたが、これではジュンに逃げ道を与えてしまう。 
ここでジュンがなんと答えるかは5分5分。相手も急にこんな質問をされて戸惑っているだろう。 
真紅は再び自分の判断を悔やんだ。 

「もちろん・・・大事な、えっと、大事な人だよ。人じゃなくて人形だけどな」 
55点。思ったよりはいい答えだけど・・・ 
いつの間にかジュンの膝から持ち上げられ、机の端に、椅子と向かい合わせになるように座らされていた。 
そこで改めてジュンの整った顔を見つめる。この胸の感じは・・・あの感覚だ。やはり私はジュンが好きなんだ。 

何故だろう。ジュンの「あそこ」に触れたから?顔をこんなに間近に見ているから?それとも? 
経験が深いようで浅い真紅の中で、恋のカスケードが始まってしまった。もはや止まらず、きっかけはこの際関係ない。 

「私は・・・ジュンに対して、単なるマスターと人形の関係以上の何か感じるの。」 
それは告白なのか?ジュンは答えに窮したが、真紅を好きな事は事実だ。 
生理現象=性欲 の対象としてしまった後ろめたさもあり、これまた経験の無い少年は 
まるで漫画の台詞の通りに答えてしまった。 
「僕は・・・僕も真紅は好きだよ。好きだ。でもほら、そういう変な意味じゃなくってさあ・・・人間と人形だしね・・・」 

この勝負、真紅の奇襲勝ちと言えようか。真紅にとって、人間と人形の違いは問題ではない。 
恋愛に関し、それだけは経験済みだ。 

「ジュン」 再び沈黙の後、ぽつりと真紅が口にした。 
「抱いて頂戴」「・・・は?」 今度は間を開ける事を思い出した。 
「今度は・・・本当に・・・」 

少年の寝室。卓上のライトが仄かに室内を照らしている。 
2人の抑えた荒い息づかいと、たまに漏れる甘い声は中学生の部屋に似つかわず・・・ 

「はぁ、はぁ・・・・んちゅ・・・ちゅぱ・・・ん・・・」 
「くちゅ・・・ん・・・ん・・・んぁ・・・ちゅっ・・・」 

真紅に「告白」されたジュン。告白に応えてしまったのは良かったのだろうか? 
僕は人形と恋愛なんてできるのだろうか?冷静に考えていられたのは最初の一瞬だけであった。 
告白した後の真紅は積極的だった。ジュンの顔に両手を添え、唇同士を引き合わせた。 
反射的に身を引こうとしたが力が入らない。 
そうして真紅の柔らかい唇の感触に、眼前で嗅ぐその香りに、面倒くさい考えは全て融けて流されてしまった。 

真紅がいきなり大胆な行動に出たのには、彼女なりの背景があった。 
読書家の彼女であるが、恋愛の実際に関する本はほとんど読む機会もなく、マスター達の話や 
召使い達の会話(その階級なりの下品さがあった)を聞く程度の知識しか持っていなかった。 
のりの本は少しお上品だったが、居間で見るテレビでは、みんなキスしていた(ように思えた) 
経験がない以上、人の話やテレビなどを参考にしてしまうのは仕方がなかった。 

(もう10分近くたつのね・・・「次」に移らないのかしら・・・)冷静さを保っている真紅のほんの一部分が、壁の時計を見て思った。 
要は二人とも「次」がどんな物か本当は分かっていないのだが、身長差を考えればジュンがリードするよりない。 
「ちゅっ・・・・むちゅ、ちゅぱ・・んふっ・・・」 
「ん・・・真紅・・・んん、ちゅっ・・・」 
ようやくジュンは愛撫する事を思い出したようだ。必死に「勉強」した事を思い出しつつ、人形の胸に指を這わせた。 

「ちゅ・・・んんん!はあっ・・・んはぁっ!」 
ドレス越しに感じるジュンの指に、真紅は躯を震わせる。 
「ん〜っ!あっ!んはぁ、はぁ、ん・・・」 
マエストロの指がドレスを脱がしにかかり、程なく少女の姿があらわになる。 
透き通るような白い肌、卓上灯に映えるブロンド、海の色の瞳・・・暗がりのベッドに横たわる彼女は、 
「真紅」の名を脱ぎ捨てて、美しく輝いていた。 

「あぁ・・・」あまりの美しさに、ジュンならずとも吐息が出る 
。片手は彼女の髪を撫で、もう片手はその手をしっかりと握りしめている。 
そして唇が下に、顎の下に、首筋に、うなじを動き回る。唇が新たな肌に触れるたび、真紅の口から吐息が漏れる。 
「んん・・・んあっ・・・はぁ・・はぁ・・・ああっ!・・・あんっ・・・・んっ・・ん〜!」 
そして唇は胸のなだらかな隆起へとたどり着いた。 
ちゅっ、ぺちゅっ・・・ちゅっ・・・ 
「ああっ!やっ、やあっ・・・はぁん!・・・んん・・・あぁっ!」 
未知の感覚が真紅を貫き、その身を震わせる。両目には涙の粒を浮かべ、身の置き所のない快楽に髪を揺らす。 
舌は二つの隆起をたっぷり味わった後、さらに下へ、真紅の奥へと向かっていった。そして指が舌の役割を受け継いだ。 
「はあっ・・・はぁ・・・ちょっ、だめ、だめなの!んんっ!ああっ!ジュ、ジュン!いやぁぁ!」 
真紅が自分で感じてくれている。真紅を悦ばせている。真紅と体が触れ合っている・・・ 
今やジュンは舌の奴隷となって、真紅を責め抜いている。 
既に濡れた真紅の性器は、愛撫を受けてさらにその潤いを増していった。 
むき出しにされたその姿を覗きつつ、ジュンは必死で舌を動かしていた。 
「ジュン!あぁん!はあっ!ジュッ・・・んん・・・あっ!はあっ、はあっ、ジュン!ジュン・・・!ああっ!」 
細い両腕でジュンの頭を抱え、真紅は迫りくる波に飲み込まれようとしている。腰が小刻みに上下し出した。 
「んっ!んあ・・・ん!ああっ!ジュン!あっ!はぁっ!あっ!あ・・・あ・・・んんんん!!!」 
真紅の動きが止まり、体が弓なりに反った・・・そして数瞬ののちの脱力。 
「んぁ・・・・はぁっ・・・はあっ・・・はあっ・・・あんっ・・・はあっ・・・んん・・・」 
体中に汗を浮かべ、力の抜けた真紅は、ただ胸だけを上下させていた。 

それから少しして。 
真紅の呼吸はようやく戻ってきたようだ。そのまま眠ってしまったんだろうか。 

ジュンは彼女の「全て」を見てしまった気になり、その気まずさからそれ以上は彼女に触れず 
隣でただ、横になっている。 
ぼんやりと天井を見つめているジュン。これは本当に現実なんだろうか?今までも変わった夢は見てきたけど 
こんなに生々しくて、色彩の強い夢を見ただろうか? 
しかし、そのぼんやりとした気持ちを整理する暇はなかった。 

隣で寝ていたと思っていた真紅がごそごそし出し、ジュンの腹の上に乗った。二人に掛かったシーツの下から顔を出す。 
その青い眼にのぞかれると、ジュンはいつも心まで見通される気がする。 
「あ、あのさ・・・大丈夫?その・・・」 
しばらく無言でジュンを見つめ続ける。無表情にも見えるが、優しさがこもった視線だった。 
「私は大丈夫。そして次・・・はジュンの番よ。さあ、早く来ているものを脱ぎなさい」 
・・・まだぼうっとした気持ちが続いているせいか。どういう意味なんだろう・・・ 
ジュンが意味が分からず、返事することができないでいると、今度は少し顔を赤くして、小声でこう付け足した。 
「レディだけに恥ずかしい思いをさせるものじゃないわ。今度はジュンが・・・恥ずかしくなる番なのだわ」 

そうは言いつつも真紅は、百と数十年間生きてきた中で、今までとは違う「幸せ」を感じていた。 
今までが不幸せだった、訳ではもちろん無い。数々のマスター=ミーディアムに愛され、十二分に幸せだった。 
しかしミーディアムとの、恋愛としての繋がりはほとんど経験がない。 
他の姉妹達の話に聞くような、胸の締まるような、身の焦がれるような気持ち。それに応じて流れてくるエネルギー。 
そのような世界の入り口に立った事はあれども、今日このように感じる事は今までなかった。 
彼女は自分の知らないそれらの世界を求めていた。 

本人にその実感があるだろうか、ローゼンメイデン。当時のヨーロッパでも、乙女は恋するものであったのだ。 

ともあれ今の真紅は、新しく覚えた快楽に対する好奇心で一杯である。 
私が気持ちよくなったように・・・ジュンを気持ちよくさせられるかしら。 
ジュンの服の下は、どんな様相をしているのだろう・・・ 

今は難しい動機なんて関係なく、好奇心だけが真紅の心を動かしていた。羞恥心はもちろんあった。 
はしたない事であると分かってはいたが、アリスゲームが茶番と知った今、はしたなさが何になろう。 
アリスゲームが今の幸せに優先するのだろうか。 
・・・そんな事はない。彼女が自ら数百時間前に下した結論そのものである。そして今の状態が幸せなのだ。 

そんな気も知らず、ジュンはやや呆然としつつ服を脱いでいた。最後に残った下着を後ろ向きで脱いでしまうと、 
恥ずかしげにシーツの中に潜り込んでしまった。 

「そんな風に隠していたら分からないわ。こっちに出てきなさい」 
有無を言わさぬ口調で、ジュンをシーツの下から引っ張り出す。 
「ほらこっちに・・・まぁ」 

真紅がこのときまで思い出していたのは、姉の、水銀燈の言葉だった。 
数十万時間前、本格的に仲違いする前に、水銀燈はよく妹達を冷やかしに来たものだった。 
話の内容の多くは、自分の経験した事や新しいミーディアム、その男達の生気を 
いかにして我が物にするかといった事・・・ 
だが百聞は一見にしかず。西洋にも古くからある諺である。 

真紅の眼に映ったのは、ジュンのペニス。まだ本格的な出番ではないが、きたる快感を待ち望むような 
そんな状態である。 
「・・・そう、これがジュンなのね・・・」 
うっとりとした口調、いつもの凛とした雰囲気を忘れた目つきで見つめる。 
我知らず手を伸ばしていた。少しのためらいの後、彼女の手が亀頭に触れた。 
「うぅ!?」 
その声とともに、ぴくん、と反応するペニス。じっと触れていると、ペニスが震えながら大きくなっていくのが感じられた。 
ほとんど何も考えられない頭で、真紅は水銀燈の言葉を思い出していた。 

「ん!あっ、真紅!」 
中学生のものとはいえ、人形には大きい物を両手でなで回す真紅。 
見る見るうちにペニスは大きく、固くなっていく。 
痛いほど張りつめたペニスの、片手で竿を上下にこすり、もう片手で亀頭をなで回し始めた。 

――――――――――――――――――――

経験の無いジュンにとって、それは全く新しい感覚だった。 
「うっ・・・く・・・うぁっ!?」 
始めは乾いた手で擦られ、刺激が強すぎたが、 
先端から粘液がにじみ始め、適度な潤滑剤となっていく。 

「すごい・・・すごいのだわ、ジュン。こんなに、感じてくれている・・・」 
無心に手を動かし続ける真紅。下半身からうねってくる快感を押しとどめようとするかのように、 
ジュンの手はシーツを掴み、体を反らしている。 

白く細い指は粘液を纏い、滑らかな軌跡を描き、上から下へと、ジュンを犯していく。 
静脈を浮かべ怒張しきったその一物は、鈍く光りに映え、ぴくぴくと脈打っている。 

やがて・・・真紅が顔をゆっくりと近づけ - 少しの躊躇いの後、唇が触れた。 
「あっ!しん・・・くぅ・・・あぁ・・・」 
柔らかく紅色の花弁に包み込みこまれ、温かい舌が先端をなで回す。 
「んっ・・・ぴちゅ・・・んぁ・・・ちゅっ・・・ちゅる・・・」 

部屋には摩擦音、真紅の口から発する水音、そしてジュンの呼吸が響いている。 
「じゅる、じゅぷ、ん・・・んん・・・んはっ・・・ちゅっ・・・」 
ジュンの両手は真紅の頭をつかみ、指は彷徨うように金色の髪をまさぐっている。 

やがてクレッシェンドの旋律は、最後の小節を迎えようとしていた。 
「はあっ、はあっ・・・あぁ・・・ん・・・しんく・・・もう、もう・・・」 
その声が聞こえたかどうか、真紅の愛撫はますます強く、早くなっていった。 
「ん・・・あっ・・・あ・・・うぅ・・・い、イッちゃうよ・・・」 
「じゅぷっ、じゅる、じゅっ、ん、んっ、んん・・・」 

ジュンの腰が浮いた。 
怒張の先から精液が、弾けるように真紅の口を犯していく。 
「ぶびゅっ!びゅるっ!びゅくっ・・・びゅくっ・・・・」 
「んっ!んん〜!?んはっ、ああんっ・・・」 

不意打ちを食った真紅がジュンを放してしまった後は、顔に、髪に、そして 
白い肌に容赦なく大量の精液がふりかかった。 
「けほっ、けほっ・・・はぁ、はぁ・・・・はぁ・・・」 

それからしばらく後。 
明かりを落とした部屋で、真紅はジュンの寝顔を見つめていた。 

二人でシャワーを浴びた後、少年はあまりにも多くの事があった一日を 
振り返る余裕もなく、倒れるように寝てしまった。 
ジュンの手に真紅のが重なる・・・よく見ると、契約の指輪が少し大きくなったようだ。 

絆・・・がさらに強くなったからかしら。 
真紅はそう思いつつ独り微笑みを浮かべた。 

ふと時計を見るともう11時。そろそろ翠星石との交代の時間だ。 
真紅はもう一度ジュンの頬にキスをすると、鏡の部屋へと向かった。 

「はーーただいまです真紅」 
「お帰りなさい、何か見つかった?」 
「ぜーんぜん。白井花びらの一枚も見つからなかったですよ」 
「・・・・そう」 

(・・・実は翠星石の知らない事が一つあるの・・・) 
少しだけ邪(よこしま)な微笑を浮かべつつ、真紅はnのフィールドへと踏みこんでいった・・・ 

――――――――――――――――――――
終わりです・・・ 
お付き合いありがとうございました、 
遅筆でごめんなさいでした。 

次はめぐ×銀を書きたいな、と思う今日この頃。 
では〜 

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