「あら真紅ちゃん、まだ起きてるの?もう夜の11時よぅ」
のりがパジャマ姿で私に話しかけてくる。
「ええ・・・」
時計は午後10時10分を指し示していた。
「あまり遅くまで起きてちゃ体に悪いわよぅ。どこか具合でも悪いの?」
のりが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「大丈夫なのだわ。私ももう眠るわ」
「そう、よかった。それならいいのよぅ。それじゃおやすみなさい、真紅ちゃん」
「おやすみなさい、のり」
にっこりと笑いながら、のりがドアを開けリビングから出て行った
バタン、とドアの閉まる音を聞きながら、真紅はソファの上でぼんやりと考えた。
最近、ジュンと会話をしていない。
このところずっと、ジュンは机に向かっているか図書館へ出かけているかの
どちらかだったから、会話をする機会が無かったのだ。
翠星石と雛苺は、ジュンが机で勉強しているときにも遠慮なく騒ぐ。
そしてジュンが怒って二人を部屋から追い出そうと奮闘するその時に、
二人はジュンと口喧嘩をしたり追いかけっこをしたりしていた。
でも私は違う。ジュンの勉強の邪魔をしたりなんかしない。
ジュンは今、学校へ行くための準備をしている大切な時期にいる。
その邪魔をするなんて、無粋な真似はしない。
それなのに・・・。結果的にジュンは、勉強の邪魔をしている翠星石達とばかり話をして、
私とは全く話をしようとはしないなんて。なんて酷い話。
たまには私にだって話しかけてくれてもよいのではなくて?
ジュンは気づいていないのよ、私が一番ジュンの事を思っているということに。もう!
「本当に駄目な下僕ね」
ぷんぷんと腹がたってきた。
ふと時計を見る。もう翠星石や雛苺は眠りについているだろう。
ジュンは、まだ起きているのだろうか。
このところのジュンは本当に熱心で、夜中にも勉強をしている。
今階段を上ってジュンの部屋へ行けば、きっとジュンは机に向かって勉強をしているだろう。
その時に、二人だけで話をする事が出来るかもしれない。
「・・・別に、ジュンなんかと話をしなくったって、私は全然平気なのだわ」
そう、ジュンはただの下僕。
だから、ジュンと話ができなくても私は寂しくなんか・・・・。
色々と考えているうちに、まどろんできてしまった。
ゆっくりとまぶたを閉じる。そして、少しずつ意識が遠のいていく・・・・。
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ふと目を覚ますと、時刻は夜中の一時を過ぎていた。眠ってしまったようだ。
さすがにジュンももう眠ってしまっているだろう・・・。
惜しい事をした。もし眠らずに部屋へ行けば、姿を見る事と、
おやすみ、と挨拶をする事くらいは出来ただろうし、もしかしたら話をする事が出来たかもしれないのに。
・・・べつに、そんなことしなくたって平気なのだけど。
もう私も眠りに就こう、そう思いリビングの出口へと向かう。
部屋の電気のスイッチをステッキで切ると、意外とリビングが明るい事に気がついた。
窓を見ると、月が空に明るく光っていた。
「まあ、綺麗・・・」
しばらく見とれていた。
ふと視線を外すと、ソファーの横にジュンの私服が落ちているのが目に入った。
ジュンったら、こんなところに服を脱ぎっぱなしにしておくだなんて、だらしが無いわね。
服を拾い上げ、たたもうと再びソファーに座る。
ふと、服からジュンの匂いが漂ってきた。
ジュンの匂い・・・。
そういえばこの頃、ジュンに抱っこをしてもらっていない。
懐かしい香り・・・。
くんくんと、ジュンの服の匂いを嗅ぐ。
ゆっくりと堪能し、はーっと一息つく。そして、気がつく。
ジュ、ジュンの服の匂いを嗅ぐだなんて、これではまるで変態じゃない!
すぐに止めなければ・・・。
しかし思いとは裏腹に、ジュンの匂いを嗅ぐ事はとても興奮した。
懐かしい香り。ジュンの香り。ジュン・・・。
興奮すると同時に、悲しい気持ちになってきた。
どうして・・・どうしてジュンは私に話しかけてくれないの?
私と話をしなくて、ジュンは寂しくないの?
ジュンは私の下僕。私のもの。他の娘たちとばかり話をするなんて、イヤ。
ゆっくりと・・・自分の秘部に手をのばす。
「ジュン・・・」
ジュンの服の匂いを嗅ぎながら、ゆっくりと手を動かす。
だめだわこんな事しちゃ・・・。だめ・・・。こんなはしたないこと・・・。
しちゃ、だめ・・・。やめないと・・・。
だが秘部を撫で回す手は一向に止まらない。
スカートをまくり、下着をゆっくりと下ろす。
「ああっ・・・ん・・・あっ・・・」
快楽を貪りながら、ゆっくりとボタンを外していく。
露出した胸を自らの手で揉みしだく。
「ん・・・あっ・・・はあっ・・・」
体中が火照り、頬は赤く染まっている。
ジュンの服の匂いを嗅ぎながらのそれは、想像以上に気持ちが良かった。
あまりの快感に、思わず体をのけぞらせる。
「あっ・・あっ・・・あんっ・・・」
快感が体を突き抜ける度に、口から喘ぎ声が漏れる。
ジュンの匂い。ジュンの匂い。ジュンの匂い。
鼻腔から入り込んでくるその香りは、快感を与え続ける。
「んっ・・・ジュン・・・私・・・」
本当は私だって貴方と話がしたかった。
だけど、私は翠星石や雛苺みたいには振舞えない。
私がしっかりしていないと、あの子達を止められない。
私がしっかりしないと・・・。だけど・・・。
ずるい・・・。あの娘たちばっかり・・・。
「はあっ・・・あんっ・・・ああっ・・・!」
ジュン・・・私とも・・・。
興奮が最高潮に達しようとしていた。
「ジュン・・・ジュン・・・あっ・・・ん・・・」
どたっ
音。
興奮が一気に冷める。赤くなっていた顔が、瞬く間に青くなる。
ゆっくりと後ろを振り返ると、そこには・・・。
「ジュ、ジュン・・・!」
ジュンが尻餅をついて、床にへたっていた。
一瞬の間の後、自分の服が乱れている事を思い出しあわてて隠す。
きっと真っ赤になっているのだろう、顔が熱い。
最悪。
見られた。
自分の最も見られたくない姿を。
最も見られてはいけない人に。
見られた。
「あっ、ち、ちが、違うのよ、これは・・・・」
咄嗟に出た弁解の言葉。
違う?何が?
何も違わない。
自分はジュンの服の匂いを嗅ぎながら、オナニーをしていた。
いやらしい喘ぎ声をあげながら。
いやらしい手つきで。
最愛の人の目の前で。
「ちが・・ちがう、の・・・」
終わった。
服の匂いを嗅ぎながらあんなことをするなんて・・・。
きっとジュンも気味が悪いだろう。
ジュンは今、私のことをどう思っているだろう。
イヤらしい子だと思っているだろうか。
気持ち悪い奴だと思っているだろうか。
変態だと・・・思っているだろうか。
口先だけは上品にしていても、本性はえっちな・・・。
吐き気がした。
ジュンの顔をまともに見られず、俯いてしまった。
一気に涙があふれてくる。肩が震える。
「あ、あの、真紅・・・。僕、その・・・」
ジュンが口を開く。
やめて。
「ご、ごめん・・・!」
そういうと、ジュンは階段を駆け上がって行ってしまった。
その言葉を聞いた途端、死にたくなった。
「う・・・ぐっ・・・・ひぐっ・・・・」
もういやだ。
絶対に軽蔑された。
これ以上無いくらいに。
今まで築き上げてきた物が音を立てて崩れていくのが分かった。
どうすればよいのだろう。
明日からどんな顔してジュンに会えば・・・。
泣いてるうちに気づいた。
ジュンはきっとショックを受けているだろう。
この大切な時期に、ジュンに動揺を・・・。
私が一番ジュンの事を考えている・・・?
違う。違う。違う。
「私は・・・」
終わり。
ぐは・・・なげえwしかも上げちまったよ・・・orzスマン 感想頼む