そんじゃ投下しようか?
まだエロまで行ってない上に17kbもあるけど。
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予習&復習
ttp://rozen.s151.xrea.com/eroparo/080.html
ttp://www.geocities.jp/rozenmaiden_hokanko/3-237.html
この話の続き。
小一時間ほど時間くれ。投下用に編集してくる。
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今現在日本全国どこにでも存在するであろう典型的引き篭もり少年桜田ジュン。
彼は、薔薇乙女第一ドール「水銀燈」との刺激的な体験を経て…
相変わらずパソコンの通信販売をしていた。
やはり、長年彼の趣味として心に巣食った習慣からは中々脱却できない。商品の購入には至らないものの
様々な通販サイトの閲覧、更新チェックは、当分止められそうに無かった。
ただ、画面を見つめているはずの表情、目つきは、どこか虚ろだ。瞳に移る様々な情報も頭に入っていな
いであろうことは容易に想像できる。
ジュンは、パソコンに向かいながら、頭の中では全く別のことを考えていた。
ため息を一つ付き、窓を見る。
そこには、所々ガムテープが張られたガラス窓が、鎮まり返った夜の街を映していた。
―――あの日
水銀燈が飛び去り、荒れた部屋を片付け、真紅たちの追及に冷や汗を流した。
小一時間では済まないような小言、罵倒を受け、すっかり憔悴させられた。
「…おかしいわね…」
真紅が一言呟いた。
「? どうしっ…どうなされたのですか?」
散々説教されて身も心もボロクソだったジュンは不機嫌な姫君を極力刺激しないように尋ねた。
「窓の時間を巻き戻したのだけれど…破片の幾つかが、戻ってこないのだわ」
見ると、水銀燈が去った際に粉々に砕かれフレームまでひしゃげていた窓ガラスが修復されていた。
しかし、ガラスには所々穴があいている。
「ここに戻って来ていないということは、私の力が及ばない場所にあるということね…」
真紅の能力がどれ程の範囲を捕捉できるか定かではないが、飛び散ったガラスの破片程度なら問題なく効
力を発揮するはずだ。
なら、戻ってこない破片は、どこへ行ったのか…
ぞわり、と。ジュンの心に、嫌な予感が蠢いた。
―――カチャリッ
月明かりの差し込む、仄暗い建物の中に音が響く。
壊れたパイプオルガン。
「あぅっ」
苦悶の声色。
蜘蛛の巣が掛かった十字架。
埃だらけの礼拝堂で、小さな影と二つの光体が蠢めいていた。
影は膝を立てて床に肘をついて四つんばいになっていた。その背中には4枚の翼。
平次であれば力強く羽ばたいたであろうそれは、力なく床に下ろされていた。
その内の一枚の周りを、二つの発光体が飛び交っている。
その翼が弱々しく持ち上がり、ふるふると震えた。浮いた翼の一部に二つの光体が纏わり付く。
そして。
「あぁっ!」
悲鳴と共に。
―――カチャン
翼から 小さなガラス片が 落ちた。
水銀燈は濡れた子犬のように体を震わせた。苦悶に歪む顔。あまりの痛みに、目尻には涙が浮かんでいた。
右上の翼に一枚。その下の翼に一枚。ガラス片が、突き刺さっていた。
左上の翼は、真紅たちとの戦いで傷つき、癒えかけていた筈の傷口が、再び開いていた。
左下の翼にもう一枚。
ドレスは所々小さく切り裂かれている。
「あぐぅっ」
歯を喰いしばり、木製の床に爪をたてて痛みを堪える。
レンピカとメイメイが、比較的傷の浅い翼を癒そうと懸命に飛び交っていた。
イタイ
「痛み」と言うものをこれほどにまでに「痛覚」させられた経験は一度もない。
何でこんな目に遭うのか。それを考えると、どす黒い憎悪と惨めな自己嫌悪に苛まれる。
左翼の傷が8割方回復したので借りを三倍返してやろうと意気込んで乗り込み、ドールズどころかただの人
間に手篭めにされ、その性処理を手伝った挙句に色々と開発されてしまいました
笑えない。全くもって、笑えない。
不様。不様だ。少なくともめぐにだけは、絶対に知られたくない。
未経験の痛みは頭の中を掻き乱す。その痛みが憎悪の炎を煽り立てる。
燃え盛る炎が傷口を炙り、更に痛みを助長する。
最悪な悪循環。
あの人間。次の邂逅のときには全てを奪いつくそうと、その顔を網膜に焼き付ける。
しかし焼き付けた表情は、彼の人間の行為を呼び覚ます。
あの人間はどんな顔をして、私にどんなことをした?
―――興奮に顔を赤らめて、私のうなじに赤い痕を刻みアツイ吐息を吹きつけた。恥ずかしすぎて口では言
えない場所を散々弄くられた。
そして私はどうなった?
―――破裂寸前まで押し上げられて限界ギリギリのところで爆発した。快楽に隷属した。髪を振り乱して淫
らに踊った。果てた。
見られた。姉妹達が私を見ている。
あの時の快楽は「おぼえたて」である水銀燈の下腹部を内側からじわじわ煽り立てる。
生まれて初めての快感は、大人びた精神を童心へと還らせる。少年少女は快楽に素直だ。
キモチイイ
憎悪が烈火なら、快楽は遠火。
烈火が傷口を炙り、遠火が下腹をじっとりねぶる。
アメと鞭を同時に喰らった水銀燈のその下半身は、確かに濡れていた。太腿を伝うほどに。
―――カチャリ
最後の一枚が床に落ち。
「ひぁあ!」
痛みにビクリと痙攣する。快楽にビクビクと下半身が蠢く。爪が床を掻く。突き出した腰が震える。
痛みを少しでも和らげようと、快楽が奔る。
それは、とても淫らな自己防衛本能で。
水銀燈は、確かにイッた。
濡れて透けるショーツの下で女陰が僅かに潮を吹いていた。
頭の中で苦痛と快楽がせめぎあっている最中、それとは別に、水銀燈の体には別の異変が起こっていた。
苦痛に呻く体は熱を持ち、快楽に素直な半身は悶える。汗をかく。
その汗の量が、尋常ではなかった。生地が広いドレスはその殆どが水気を含み濡れている。
ドールズには新陳代謝というものはない。だから、汗とは単なる水分に過ぎない。
とはいえ、運動によって生じる熱を冷ますには水分が必要だし、感情を表現する為にも使われる。
言葉を発する際にも口内が濡れていなければ、美声を奏でることはできない。
また、水分が出尽くせば更に熱が上がるかというと、そうでもない。
水は熱し難く冷め難いという特徴を持つ。保温という観点から、非常に優れた液体である。
逆に水分が無い場合は熱し易く冷め易いということになる。
例を挙げるなら砂漠が判り易い。
日中は40度を越える気温だが、日が落ちれば氷点下となる。湿度が無いためだ。
水銀燈の体は砂漠になろうとしていた。
水分が体からことごとく失われれば、人は当然水を求める。
そしてそれは当然ドールズにも当てはまる。ただ人と違うのは、水分の消耗が致命的というほどの要素には
成り得ないことだ。失われた水分は、吸収し直せばいい。
体の変調と痛みと快楽で朦朧とする意識を無視して、本能が水を求めて行動を開始する。
立ち上がりフラフラと歩いた先では人工精霊がnのフィールドの扉を開いて待っていた。
輝く扉に倒れこむように身を躍らせる。体が何かを突き抜けるような感覚を最後に水銀燈の意識は落ちた。
ここまでで2体の人工精霊の激しい論戦があった。
最初は主をめぐのもとまで送ろうということで両者意見が一致していた筈だ。
しかし付き合いの長いメイメイが水銀燈の「メグに見られたくない」という乙女心を読んでこれを却下した。
ではどうするか。
レンピカが「あの人間」の場所へと送ることを提案した。これに対しメイメイは猛烈に反対。
真紅や雛苺は積極的に仕掛けてこないことは明らかで、主に危害が加わらない可能性が高いが、あそこには
激シスコンの翠星石がいる。
奴なら、あの如雨露を主の喉の奥まで突っ込んで無理矢理ローザミスティカを抉り出す位は遣りかねないと
主張した。仮に無事だったとしても、主が現在最も憎んでいる「あの人間」の場所へ連れて行こうものなら、
後にしつけの名を借りた身の毛もよだつ拷問がこの身を襲うだろうとも。
一方レンピカも譲らない。
さいわい現在時刻は午後9時を過ぎている。ドールズは9時以降眠りっぱなしであり、アリスゲームに発展す
るようなことは無いだろう。都合がいいことに「あの人間」も含め、大概の人間はまだ眠らない。
さらに都合がいいことに、あそこの人間は皆お人好しだ。姉なり弟にすがり付けば取り敢えず窮地は脱出で
きる。何より弟とは一度は情交を交わした間柄だ。無碍には扱わないだろうと主張した。何気にマエストロ
級の職人っぽいというのも評価できる。
結局メイメイが渋々ながらもレンピカの案を受け入れ、nのフィールドは桜田家に向けて開かれたのである。
この論戦は非常に短いものだったが、両者が激しく飛び交いチカチカと明滅する様は中々に綺麗であった。
「ま、またかよ…」
ジュンは絶句した。
パソコンがブラックアウトしたのだ。以前あんな目に遭っていながら懲りもせずに再びディスプレイから出
現しようとするとは全くの予想外だ。
今度は一体どんな演出で現れるのだろうかと考えを巡らしながら身構えようとして、しかし今回は完全に虚
を突かれた。
ブラックアウトしたディスプレイから飛び出してきたのだから、それも当然か。
ジュンは飛び上がるほどに驚いた。キーボードを退かす間もなく、白髪をなびかせながらこっちに突っ込ん
できたのである。
「ひぃっ!」
小さく短い悲鳴があがる。ジュンはとっさに両手で頭を抱えた。一応の防御だがどこか間抜けだ。
ガシャン
来るべき衝撃が来ない。その代わり、妙な物音が聞こえた。
「???」
腕の間から恐る恐るパソコンを覗き込む。
そこには、 某S子宜しく上体を画面からはみ出させ、顔面をキーボードに突っ伏した水銀燈がいた。
キーボードは衝撃のため、何個かキーが吹き飛んでいる。息が荒い。苦悶の呻きが聞こえた。
「おい?!なんだ???どうした?!」
慌ててその身体を抱え上げる。だらりと脱力している身体は、軽い筈なのに酷く重く感じる。
なによりも異常なのは、その体温だ。
ゾッとするほどに冷たい。ドールズ達には、触れると心地よく感じる程度の体温があることをジュンは知っ
ている。それと比較してこの体温は異常だ。着ているドレスにしたって、水気を含んで非常に冷たい。
ジュンは取り敢えず水銀燈をベッドに寝かしつけた。
「どうすりゃいいんだよ…」
ぐったりと横たわる水銀燈と、ゼンマイが切れたときの真紅が被って見えて、ジュンは眩暈がした。
キーボードの惨状を見るに、パソコンにお伺いを立てることはできないだろう。
ジュンは頭をフル回転させて打開策を練ろうとするが、一向にいい案は浮かばない。
それどころか、混乱した脳内では、「あの時」の水銀燈の艶声と痴態が飛び出し始める始末だ。
―――ああ確かにあの時のHな声は最高だったなまたヤリたい最後のお漏らしは生温かくてもうGJだっt
ゴスッ
ピンク色の脳内の影響が下半身に及ぼうかという刹那、凄まじい衝撃がジュンの後頭部を襲った。
「いだっ!だ、誰だ?!」
焦って振り返ると、そこには二体の人工精霊がジュンを威嚇するかのようにブォンブォンと飛び回っていた。
「取り敢えず、これでいいのか?」
ジュンは人工精霊にお伺いをたてた。
場所は台所で、手には給湯器と湯呑みと水の入ったポッド、おしぼりが乗ったお盆を持っている。
二体の人工精霊に追い立てられるように台所に向かい、指示(手足口が無いので体当たり)に従って用意し
たものだ。
必要なものが揃うと今度は「サッサと部屋に戻れ!」と言わんばかりにジュンを急き立てた。体当たりで。
「いたっ!いたたたっ!」
両手を塞がった状態では防御もままならず、容赦なく後頭部から腰にかけてをドスドスど突かれていた。
湯飲みにお湯を注ぎ、水で薄めてぬるま湯にする。それを、抱え起こした水銀燈の口に運ぶ。
小さな口に、湯飲みが触れたのを確認し、ゆっくりと傾ける。
水銀燈の口内に吸い込まれた筈のお湯は、溢れてダラダラとドレスにこぼれた。
バキッ!
「あたっ!」
後頭部に強烈な一撃を受けてジュンは悶絶した。
とっさに後ろを振り返る。
「しょうがないだろ!こいつの口が小さすぎるんだよ」
光の塊に過ぎないはずの人工精霊に怒気が揺らいで見えた。
さてどうするか。ジュンは考える。
この湯のみでは水を飲ませるのは非常に困難である。病院なら水差しもあるだろうが、あいにくそんなもの
はこの家には置いていない。
水銀燈を見れば、寝相が良いとはとても言えず、事態は緊急を要するだろう。
「要は、水を飲ませればいいんだな?上手く飲ませる方法あるけど…文句は言うなよ」
何事かひらめいた様子のジュンが二体の人工精霊に言い含めた。心なしか頬が赤い。
ジュンは湯飲みのお湯を一気に煽ると
そのまま水銀燈に覆いかぶさり、口づけた。
水銀燈の背中に手を回し、顎を支え、軽く口を開かせた状態にする。
お湯を零さないように口を噤んだまま小さな唇に己が唇を合わせる。
口を慎重に開き、少しずつお湯を送り込む。
細い喉がコクリと動くのを、顎に添えた手で確認してはまた少し送り込む。
コク コク コクン
よほど喉が渇いていたのかもしれない。無意識にコツを掴んだらしく、吸い付くようにしてお湯を飲む。
送り込むべきお湯が口腔から無くなり、初めてのキスのような行為に溺れかけた意識を無理やりに覚醒させ
てジュンは水銀燈を引き剥がした。
「…これで…良いんだろ」
人工精霊を振り返ると、そこにはなぜかほんのりピンクがかった光を放ちポワンと浮かぶ人工精霊達の姿が。
ジュンの問いかけにビクリと痙攣すると、真っ赤になって二体ともパソコンのディスプレイに飛び込んでし
まった。
それを見届けてジュンは水銀燈に向き直る。
湯飲みに湯を注ぎ、水で割る。ぬるま湯を口に含み、水銀燈の唇に己が唇を重ね合わせて注ぎ込む。
コクコクと口内の水分を飲み干して、尚いっそう水分を求めて吸い付いてくる感触に、ジュンは悶えた。
もっともっとキスしてちょうだぁい
まるで、そんな風にせがまれてるようで、理性が溶けそうになる。
とはいえ、気を失っているのにそこまで水分を求めるのは、それなりに危機に瀕しているからなのだろう。
ここはグッと堪えて、お湯を飲ませることに集中しなければなるまい。
もはやギンギンになっている下半身を宥めすかして、いや、キスというもどかしさを楽しむかのようにジュ
ンは再度、水銀燈に覆いかぶさるように口付けた。
どの位の時間がたったか、水銀燈の顔色は最初に比べればかなり良いと言えるだろう。
実に湯のみ十杯分の水分を飲み干して、ようやく落ち着いてきたのかもしれない。
興味本位で舌を差し込んでみる。いや、興味ではない。欲だ。差し込んだ舌は、吸われた。
クチリ、クチュリと音が鳴り、しゃぶられている。
(うわっ!わっ!わっ…!)
チウチウと吸われる。ジュンの頭の中で何かがボフッと音を立てた。心拍数が上がっていくのが解る。
目がチカチカして、視界がぼやけてきた。全感覚が、舌先に集中しているのが体感できるのだ。
思わず支える腕に力がこもり…
「あぐっ!」
耳に飛び込んできた悲鳴に、我に返る。
反射的に手を離してしまった。
ベッドに倒れる水銀燈のその表情は、苦痛に歪んでいる。
それを見て、急激に熱が冷める。
自分のした行為がどんな行いだったのかをまざまざと見せ付けられて、自己嫌悪が襲ってくる。
翼を見ると、ひどい裂傷が見えた。折れている翼もある。
咄嗟に窓に目を向ける。
戻ってこなかった破片。
傷だらけの翼。
悪い予感が的中していることに、眩暈を感じた。
無意識の最中で遮断していた筈だった痛覚が、ジュンの行動を引き金に蘇っていた。
水銀燈は細かく震えていた。直感で痙攣ではないと感じた。
おそらくは、痛み。そして寒さだろう。
一瞬の逡巡のあと、ジュンは行動を起こした。
ドレスの紐を解く。チョーカーを外す。黒い上衣を脱がし、白いドレスも脱がす。
下着姿の少女人形を見ても、先程のような劣情は湧かない。
その下着も取り払い、水銀燈を抱えた。自らの体を抱きしめるように小さくなり、カタカタと震える少女に
不安と漠然とした恐怖を感じた。掛け布団を捲り、水銀燈をそっと横たえる。翼に気を使いながら、慎重に
掛け布団を掛けた。
翼は布団からはみ出すようにした。じっくり観察すると、ガラスの破片らしきものは刺さっていない。
傷口からは人間や動物で言うところの「血」に該当するようなものも流れていない。
ただ単に「モノが壊れている」といった印象があるだけだ。
これにはジュンも頭を抱えた。治療というより、修理が妥当だろうが、そんな技術は持ち合わせていないの
だから当然だ。
頭をよぎるのは、もぎ取られた真紅の右手。しかし具体的に何かをしたという自覚はジュンには無い。
あえて挙げるなら、心の底から「守ってやりたい」と思っただけだ。
何から守ってやりたかったのかと言えば、目の前で小さく震える水銀燈から守ってやりたかったのだ。
それが今はどうだ。本来襲い掛かってくるべき少女は、守るべき少女にかわっている。
「くそっ…!」
進展しそうにない状況に歯噛みする。
これほどまでに直してやりたいはずなのに、自分には何もできない。何も起こらない。
繋がりが、無い。
なら繋がりを強くするしか、ないじゃないか。
ジュンは床に捨て置いた水銀燈のドレスに手を伸ばした。
もう、これに賭けるしかないのだ。そういう覚悟。
そしてそれとはまったく別の、覚悟を決めた表情で、ドレスをまさぐった。
ジュンは真紅、翠星石、間接的に雛苺と、媒介として契約をしている。馬鹿でかい指輪はその証だ。
そしてその指輪は取ろうとしても取れるものではない。何故なら、喰い込んでいるからだ。
いや喰い込んでいるというほど生易しいものではない。既に同化しているような感触まである。
アリスゲーム。ゲームといえば聞こえはいいがやってる事は殺し合い。既に一体が再起不能になっている。
歴代のマスター、ミーディアムの誰もが経験していない事態である。
その最中に放り込まれただけではなく、3体のドールと契約しているという、他に前例の無い状態のジュン。
ただで済む筈が無いのだ。
そして今、都合4体目のドールと、契約しようとしている。
白いドレスの内側にある小さなポケットにそれはあった。
手にとって、天井のライトに掲げて仰ぎ見る。
薔薇のような飾りの付いたそれは、なるほど確かに彼女のものらしく、少し棘棘しい印象があるデザインだ。
しばらくそれを眺め、そしてジュンは何の迷いも無くそれを嵌めた。
既に嵌っている指輪に重ねるようにして。
変化は一瞬にして劇的だった。指輪の花から新たに蔦が伸び、手首に巻きつく。そして締め上げた。
「痛っ…」
一瞬の痛み。そして花はさらにその花弁を広げた。葉も生えていた。もはや指輪とは言えない程に大きい。
そして、締め込まれた事による、ちょっとした違和感が残る。
手を開閉してみるが特に支障が無いのが不思議なところだ。
具合を確かめるのもほどほどに、水銀燈に向き直る。
あとは治すだけだ。
傷ついた翼にそっと手を伸ばす。左手で軽く触れてやると、水銀燈は低い呻き声と共に眉を顰めた。
その様子を見て、ジュンは思う。
治してやりたい
そう強く願った。
光。暖かな光が指輪から放たれた。
翼を包み、そして、水銀燈の全身を包み込んだ。
ここは何処だろうか。
酷く暗くて冷たい場所に、裸で放り込まれている。
寒い。
体を抱えて耐えようとするが、効果はない。
何故なら、外の寒さとは別に、体の内側から冷えてくる。
自分の内側からじわりじわりと寒さが刺してくる感触。
それ即ち、痛い。
鋭利なナイフがじっくりゆっくりと体の内側を引き裂きながら、生えてくる感覚。
「いやっ…!…お父様…めぐ…!助けて……痛い、寒い…!」
叫んでも、誰も来ない。
痛みと孤独に、水銀燈は泣いた。
辺りには闇しかない。
底なしの不安と絶望に、無限に泣き叫ぶしかないような、そんな錯覚。
しかしそれは、唐突に消えた。
あわてて周りを見回すと、闇が光に浸食されていくのが見える。
光源は、自分の体。
刺し抉るような寒さは消え、代わりに暖かな何かが内から溢れてくるのを感じる。
「ふぁっ…あぁ…」
ココチヨイとも言えるし、キモチイイとも言えるような。
体が熱くなる感覚を覚え、それに身を委ねながら、水銀燈はこの世界が閉じていくのを眺めた。
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とりあえずここまで。
後はエロスとオチでいったん終了。
キャラ設定は漫画準拠です。