ずっと前に銀色って美しいというSSを書いた者です 
続編を書き始めたのでまたちょくちょく投下していきます 

今回は人間化させたいな、なんて思ってたり 
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 ガチャリ、と扉が開く音で目が覚めた。 
「ただいまー」 
 下から馬鹿姉、のりの声が聞こえる。つまり、真紅達も帰ってきたと言う事か。 
 はぁ、と息をついて寝呆け眼を擦ってみる。次第に鮮明になっていく視界には―― 

 服がはだけた水銀燈。 

「うわぁっ!」 
 驚いて水銀燈から体を離す。気付いたら僕も裸に近い状態じゃないか。 
何をしていたんだ。僕は。 
「ん……ジュン……?」 
 水銀燈が目を擦りながら起き上がる。 
 今まで中に納まっていた白い液体が綺麗な脚を伝っていく。最後にはシーツを汚して零れ落ちた。 
 彼女はそれを嬉しそうに見て笑う。 
「許してくれたのよね……ジュン」 
 この一言で僕は寝呆けて霞んでいた記憶を思い出した。 
 そう、僕と水銀燈は―― 

 ガチャッ。 
 また扉の開く音。今度は僕の部屋の扉。 
「あらぁ、真紅達が帰ってきたわぁ」 
 わざとらしく僕に抱きつくる水銀燈。柔らかい胸が当たって気持ち良い。 
 いや、そうじゃなくて。真紅達が帰ってきてこの状況っていうのは危険だ。 
「……ジュ……ジュン!?」 
「あわわ……」 
「水銀燈とジュンは何で裸なのー?」 

 3体共それぞれ違う反応をする。真紅に至っては固まりかけている。 
 やはりこのまま寝てしまったのが間違いか。何でも勢いでやってしまうと後で後悔する。 
「いや、これは何て言えばいいのか……」 
「ジュンは許してくれたのよぉ」 
「このケダモノがぁっ、ですぅ!」 
「何だか水銀燈とジュンが仲良くなってるのよぉ」 
「こ、これは夢なのだわ……」 
「あぁっ、真紅ぅ!死んじゃダメなのぉ!」 
 ドサッと鈍い音を立てて真紅が倒れた。それにつられたかのように翠星石と雛苺がまさに錯乱状態で部屋の中を駆け回っている。 
 しかし、そんな事はお構いなしに水銀燈は僕に抱きつき頬をお腹に擦り付ける。 
 僕は一体どうすればいいんだ。 
「もう一回するぅ?」 
 水銀燈が問い掛けてくる。今そんな事をすればもっと怪しい状況になるだろう。 
「いや、それはまずい」 
「どうしてぇ?」 
「何が何だかよくわからなくなる」 
「ふぅん」 
「僕は取り敢えず服を着て……」 
 何食わぬ顔で真紅達と1階に行こう。 
 という訳で、その辺に散らばっている服を集めて着る。未だ翠星石と雛苺は錯乱状態。 
 これで後は水銀燈を何とかすれば……。 

 ガチャッ。 
「翠星せっ……」 
 何をしていたのか蒼星石が入ってきて一瞬固まった。が、すぐに何かを悟ったような顔をして、「あ、まだ僕用事が合ったんだ」 
 と流し目で言いながら帰っていった。あぁ、蒼星石にまでバレてしまった。 
 本当にどうすれば。 

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 打開策が見つからない。今出来る事と言えば、髪の毛をくしゃくしゃと掻きむしるくらいだ。 
 なんて非力。なんて無力。 
「何してるのよぉ?早く服着なさぁい」 
 さっきまで裸に近い状態だった水銀燈が、知らない間に服を着て僕の服を渡してきた。 
 その手際の良さは一体何処から……。 
「う、うんそうだな」 
 深くは考えないことにして、取りあえず服を着る。少しトランクスが気持ち悪いが、我慢しないと。 
「よ、よーし」 
 妙に上擦った声が出てしまった。この時点で不審者だよな。 
 でも、早く説明を付けないと。 
「あ、あのさ……」 
 駆け回り大運動会開催中の翠星石と雛苺に声をかけてみる。 
「ひ、ひえっ。ケダモノ眼鏡!」 
「ジューン」 
 翠星石は吃驚するくらいの早さで逃げ、雛苺は抱きついてきた。何この状況。 
 どこからどう説明すればいいのか分からない。翠星石は完璧に僕のこと避けてるし。 
 ああ、一緒に寝てしまうなんて不覚だった。いわゆる一生の不覚というヤツか。 
「いや、アレだよ。ことの成り行きっていうか……うん、そんな感じ」 
「し、信じられんです!人形とか、か、か、身体を重ねるなんて!この変態人形フェチのロリペド野郎がぁっ、です!」 
 言い返せないのが痛い。本当に痛い。痛すぎる。 
「いやしかし、こうするしかなかったんだよ……」 

「うわぁぁー!ジュンのバカヤロー、ですぅ!」 
 思いっきりその辺にあったオモチャを僕に向かって全力投球。そして光の速さで何処かへ行ってしまった。 
 色んな意味で痛い。このまま泣いてしまいたいくらい。 
「フフフ。負け犬のお馬鹿さんが吠えたって仕方ないのよぉ」 
 ゆっくりと僕に歩み寄って、 
「ねぇ、ジュン……」 
 足に抱きついてきた。現在の状況、左足に雛苺、右足に水銀燈。まさに両手に花。否、両足に花。 
「はは……」 
 と。 
 雛苺が突然足を離し扉の方まで逃げて行ってしまった。 
「な、なんか水銀燈臭いのぉ〜」 
「え?何がぁ?」 
 キョトンとする水銀燈。こんな顔もするんだな。 
 つい、可愛いと思ってしまう。 
「水?みたいの匂いがするのぉ〜」 
 そう言い残して、部屋を出て行った。部屋には水銀燈と二人。正確に言えば真紅もいるのだが。 
 いやしかし、水臭い?ってことは生臭い? 
 え……。それってまさか。そんな訳ないよな。 
「み、水ぅ?」 
 服を掴み、自分で確認する水銀燈。何だかおかしな姿に見えてこれも可愛い。 

「ジュ、ジュン!?これってもしかして精液ぃ?!」 
 僅かな希望は無惨にも砕け散った。 
「はは……。そうかもね……」 
「だとしたら、早く洗わないとお父様に作ってもらった服が!」 
 涙目になって抗議してくる。何故か変に嫉妬してしまう。 
 僕が好きだったんじゃないのか……。 
「う、うん。そうだな。早く姉ちゃんに洗って貰おう」 
 いや、待て。 
「あ、やっぱ僕が洗ってくる」 
 姉ちゃんに洗って貰えば、必ずこの異臭に気付くだろう。そして、もし姉ちゃんにもバレたら……。 
 想像しただけでもおぞましい。 
「じゃあ、着替えどうしよぉ?」 
 あぁ!しまった。そうだ。着替えは……。 
「僕の古着でいいか?」 
「んー。まあジュンのならいいけどぉ」 
「はは、良かった。嫌だって言われたらどうしようかと」 
「フフフ。そこまで困らせないわよぉ。夜は、わからないけど、ねぇ?」 
 そう言った彼女の、水銀燈の、その紅い瞳の奥には、大人の魅力が満ちていた――。 

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