おまえらケンカはやめやがれですと翠が申しているぞおまいら 
また長々と設定戦闘だしシリアスなモンでけど蒼の考えが変わった理由だし前スレの埋めに使おうとたら既に埋められてた罠 orz 
前スレ682の続き、というか話の裏面みたいなもの投下。少々最終話のネタバレ入ってるんでまだ見れてない人はご注意を。 
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私は死を望んでる。それは今でも変わらない。 
けれど、最近ほんの少しだけ気になることが出来た。 
こんな壊れた子は早くイッちゃった方がみんな円満。 
なら、もし壊れた部分が直ったらそれからどうなるんだろう? 
ありえない話だし望んでるわけでもないけれど、イフは好き。だって文学的だもの。 
それに、ジャンクなんて言うなって言ったのはあなたでしょ? 
だからあなたがどう考えてるのか教えてよ。 
教えてったら。ねぇ教えて? 私はね…… 

私は何を考えているのだろう。 
死にたがっている人間の身体を治したところで、本人が喜ぶわけがない。 
なのに生きて欲しいと思うだなんて、ほんとばか。 
しかもただ生きて欲しいだけじゃない。生きて一緒にいたい、笑っていて欲しいだなんて、なんてエゴ。 
私は怖い。失うことも、奪うことも、壊れることも、欠落することも―――呼びかけることさえ。 
呼んでくれる声に気付きさえすれば誰もジャンクになんてならないと言うのなら。 
誰の声に、あなたは気付いてあげられたの? 
あなたの声には、誰が気付いてくれたの? 私は…… 

冷たく切り捨てた心は彷徨うばかり。 
それはとても悲しくて暗くて冷たくて淋しいことなのだわ。 
ああ、冷たい。身も心も。 
それでも時は廻る。もうすぐ、朝。 

「……なんで誰も気付いてくれないのかしらね…………」 

冷えた涙って冷たい。私って…… 

ザンッ! 

様々な概念に混濁する空間の中、迫りくる枝葉を双刃に伏す。 

「まったく、まさか世界樹を相手にするとは思わなかったよ」 

ここは夢の世界。ただし、はっきりそうだと言えたのはつい二日前までのこと。 
双子の姉の願いにより現実と混ざり合った今、夢は現、現は夢と化している。 
蒼星石の知る限り、今在る現世は二つ。 
一つは今いる平和な世界。 
そしてもう一つは、自分が大罪を犯すことになる過ちの世界。 
恐らくは、後者こそが正しい歴史の道筋だったのだろう。 
だがしかし。 
最愛の姉が生み出した願いから成る夢現に、道には異なる標が具現した。 

ザンッ! 

それにより、姉妹誰一人欠けることのない世界が拓かれた。 
そしてまた、姉と同じく夢に通ずる蒼星石はひとつの真理を垣間見る。 

(―――アリスになる道は、ひとつじゃない) 

辿るはずだったもう一つの未来。夢を通して切り離されたその道を、客観的な視点で垣間見た。 
すべてを握するには至らなかったが、それでも男装のドールは父の言葉を聞いた。 
ならば離反の必要などありはしない。 
己にすら勝てぬ紛い物の創造者になどもはや惑わされる道理はない。 
故に。討つべき敵はただ一つ。 

ザンッ! 

「けど……流石に数が多いね。しっかりネジをまいてもらってきて正解だったよ」 

夢と現実は分かれつつも元に戻ろうとする―――それは自分が言った言葉だ。 
姉がそうなっていたように、 
『夢に取り込まれた現であり、現に受け入れられた夢でもある今の世界』もまた、元に戻ろうとする力が現在進行形で働いている。 

それ即ち、姉妹が欠ける悲しみの世界への帰還。 
迫りくる枝葉は辿るはずだった世界そのもの。 
世界樹を挟んだ対岸に位置する『この世』と『その世』のうち、『その世』―――なるはずだった方が『この世』を認めず侵食を始めたのだ。 

ザンッ! 

よって。 
この戦いは『望まざる世界の自分』との戦いでもある。 
こうして軽口を叩く中襲い掛かる枝葉の一つ一つに、蒼の庭師はかつて抱いていた悔やむべき自らの意志を受けていた。 

――『自分はいつまでも姉の影に過ぎない』『お父様は嘆いている』『アリスを目指す事こそが自分の存在意義のはずだ』 

世界の侵食を受けると言う事は、『その世界に在る自分』に『今ここに在る自分』が乗っ取られることに他ならない。 
かつて抱いていた悲痛な意志が今のこの器すらをも満たそうと貪欲にこちらを目指していた。 
あの男―――槐は自分達の父ではないということは垣間見た情報から既に知っている。 
だがそれでも、ローゼンメイデンである自分達の存在意義が変わったわけではない。 
その事実が蒼星石の動きを鈍らせ、かつての自分に戻らせることに拍車をかける 
―――はず『だった』。 

ザンッ! 

「まったく……世界樹に込められた影とは言え、くどすぎるよ。 
 『君』を否定はしない。けどもう『僕』は止まらない。成長すらせずしてアリスへの昇華を求めるなんて、愚かしいと思わないかい?」 

第4ドールは過ちの自分を受け入れた上で切り伏せる。 
それは真に『自分自身の確立』を為すことを意味していた。 
姉や契約者に依存する在り方しか出来なかった彼女は今、自らの足で前へと進む決意に立っている。 
だが…… 

「っく……!」 

対峙するは世界の具現。 
構成要素は夢なれど、庭師の鋏ですべて捌けるわけがない。 
死角から迫り来る枝葉はしかし――― 

ザンッ! 

「背後は気にしなくていいと言ったのだけど……やっぱりまだ信頼は出来ない?」 

流麗なる斬撃に断ち滅ぶ。 
続けて襲い来る枝葉から視線を外さず、柏葉巴は手にした刀を一閃する。 
ここは夢の世界。故に軽々振るえて重みのある、なおかつ折れることなき刀など在っておかしい道理はない。 
彼女もまた、決意故に参戦した者の一人であった。 

ザンッ!ザンッ! 

「ごめんね。今まで誰かと協力することはあっても、こうして背中をまかせることなんてなかったもので」 

とは言え巴は歴戦の英雄というわけではない。 
正面から大量に迫りくる枝葉を蒼星石が祓い、それに漏れた食べ残しを処理するのが巴に与えられた役割だった。 
だがそれで充分。 
巴が斬り伏せる枝葉も無論のこと、辿るべきだったはずの世界をその心に映し出す。 

ザンッ! 

されど。その程度で臆するならば既に勝敗は決している。 
蒼星石とは違う形だったが、巴も既にその世界を知っていた。 
雛苺との別れ。 
その哀しみは他の何かに喩えることなど出来はしない。 
だが既に知っているというのなら。 
今更同じ悲しみをいくら与えられたところで、それが戦意以外の何になる。 
庭師に比べればほんのわずかな意思の枝。 
だがそれで充分。 
決意を奮い立たすのに、これ以上の起爆剤はない。 

ザンッ! 

一方で、巴にとってこの戦いはやはり、自分自身との戦いでもあった。 
こうして客観的に感じることで改めて判る。自分が如何に雁字搦めの束縛に埋もれていたのかが。 
蒼星石と違って具体的な打開案は今の巴にはない。 
だがそれでも。それでも、何かを為すには為そうとする意志がなくては始まらない。 
巴はようやくその意志へと至り、初めて自分と誰かのために刃を振るう。 

ザンッ!ザンッ! 

「それは私も。周りの期待を裏切らないために、誰かに背中を預けることなんて出来なかった」 
「おあいこだね」 

それでもこの二人は相反する面を持っていた。 
誰かに依存することでしか己を保てなかった蒼星石。 
誰にも依存せずにしか居場所を守れなかった柏葉巴。 
だが既にそれも同位。 
庭師は力強く踏み出せる両脚を手に入れ、剣士は力を抜いて歩ける両脚に至る。 

「ここは君の夢。君の意志の強さがそのまま現れる。だから、信頼してないはずがないよ」 
「そう」 

ザンッ!ザンッ! 

世界樹はすべての夢の世界に繋がっている。 
なのに何故あちらの世界は巴ひとりの夢を冒してこちら側を制圧しようとしているのか。 
実は、単に巴しかいなかったからである。 
今回の件で現実は夢を介して二つに別れたわけだが、 
その相違点はあくまでローゼンメイデン……より厳密には翠星石から派生する範囲という局地的なものなのである。 

故に、その範囲内にいる人間――特にローゼンメイデンに近しい者――の夢のみがその中継点となる。 
ジュンは今回の件での契約者である故に双方の世界から完全に『現実の存在』としか扱われないため夢の中継点にならない。 
芝崎元治は夢の庭師である蒼星石と繋がっているため、彼の夢の中蒼星石を敵に回すことは分が悪すぎる。 
めぐには資格があったかも知れないが、翠星石は彼女の存在を知らない。 
よって、今は解除されているとはいえ雛苺と契約を結んでいた巴が白羽の矢の的にされた。 
結果、その瞬間即ちこの夜に巴は夢の中でその世界と繋がり、蒼星石同様もう一つの歴史を垣間見たのである。 
そして、今回の件を調べていた蒼星石もそれを知るに至り、こうして二人だけで世界を相手に奮戦することとなった。 

ザンッ!ザンッ! 

敵の性質上、この戦いに赴ける者は奇しくもここにいる二人のみ。 
だがそんな数的不利故にこそ。二人は己が決意が揺るぎない真実なのだと確信を深める。 
この戦いは夢への逃避などでは断じてない。現実を認めたからこそ貫くための獅子奮迅。 

「キリがないのは承知の上……現状が維持出来ていることこそが好戦況の証ね」 
「そうだね。後は時間まで耐え抜けばいい―――――!!」 

世界樹相手に勝算はない。 
だが別に勝つ必要はない。そもそも世界樹を滅ぼしてしまえばこちらにまで崩壊が迫り来る。 
ただひたすらに、夢の契約が完了するまでこちら側への侵食を防ぐだけでいい。その時点で歪んでいた夢と現実の境界線は元の強度を取り戻す。 
現実の翠星石と夢の翠星石の身体が融合したのは昨夜。 
そして、分かれた心が再び一つになるのはこの先の夜明け。 
契約が真に完了する刻限まであとわずか。 

「翠星石……夢見ることって、素晴らしいね」 

戦いが終わったら姉に言おう。結果的にとは言え自分たちを救ってくれた最愛の姉に、必ず。 
夢の庭師として恐らくは生涯最大の戦いになるであろう黄昏の殺陣の中、暁に向け新たな戦友と共に蒼の双刃は世界を屠る。 

go to the Traum of twilight of dream... 

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あとがき。 
こんばんは。友人に一回くらい同人やらないかと言われてこの話+α使うかと割と本気で言う前に「創作キボンヌ」と封じられた双剣です。 
なお、その友人に前回の翠のと以前の銀との絡みとを見せたら『前者の方が面白いけど後者の方がエロい』と言われた。 
自分で書いたモンを面白いとかエロいとか判別しにくいわけだがそれでも銀のがエロいとは思わなかった。エロってやっぱ難しい。 
さて、そろそろひと段落つきそうなわけだが、実は蒼、一つ勘違いしてたりする。 

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