蒼星石に案内されたのは、少女趣味な家具、アイテムに囲まれた彼女の部屋だった。
「お茶、入れてくるから、待ってて」
彼女を待つ間、ぐるりと部屋の様子を観察する。
部屋の色彩は、桃色。ベッドの布団の色、机の上の文房具、本棚、本の背表紙……いたるところでそんな色が使われている。
ベッドや棚の上に鎮座しているのは愛嬌豊かなくまやいぬのぬいぐるみ。なかでもちょっと間抜けっぽいいぬを模した大きなぬいぐるみは、ベッドの上で寝るときの添い寝相手になっているようだ。
「えっと、紅茶でいい?」
「 」
「よかった」
蒼星石はふにゃっと笑ってぼくの隣に座る。
ぴょこんという擬音がとても似合う彼女を形容するとまさにいぬ。
「ん? ボクの顔見て面白い?」
ぴったりとぼくの身体に密着して、体温を二人で共有しあっている。
すりすりと、彼女の体重をこちらに預けにきてくれる。
『ボクの体重知りたいだなんて、好奇心旺盛すぎ……』
なんて顔を赤らめながら、こしょこしょ耳元に囁いてくれたのは、平均からちょっと軽い値。
『その、誰にも言わないで……』
神聖なるその数字は、ある意味ぼくの一生の宝物だ。
ただ最近の食欲具合から、その数字が悪いほうに変動しているようだが……。
「 」
「はあ!?」
そんな彼女を見ていると、とたんにいじったり、からかったりしたくなる。
それを他人がやると、まるでイジメているようにみえて不快になることがあるが、自分がしてみると、はあ、快いのはなぜだろうか。
「 」
「へんな言わないでよ、ばか」
「 」
「ふんだ。もう くんのことなんて大っ嫌い」
ちょっとしたことでも、彼女が飼っている腹の居場所を悪くするのはカンタンなことだ。
「 」
「そんなこといっても、許してあげない」
「 」
「どうせボクはマジメちゃんだよ。悪かったね」
ついに、彼女は親友のぬいぐるみが鎮座するベッドへと逃げ込んだ。
「 」
ぼくはいろいろな言い訳を口にしてみたが、あの犬ちっくな顔をこちらに向けるようなことはしてくれない。
彼女はいったん黙ったら、いつまでたっても貝のようなカタブツになることができる。
そうなると今度は彼氏のほうが焦る番だ。
一度機嫌を悪くした子犬を懐かせるには、多大な努力と犠牲が必要なのだ。
「 」
「 」
「 」
いろいろな好条件を提案してみても、彼女が食いついてくる気配はまったくない。
前からそうだったけれども、最近はとみにその要求されるハードルが高くなっている。
少なくとも、昼飯の高いパスタと食後のデラックスパフェを一回おごるぐらいでは許してくれない。
食べ物じゃボクは釣られないよ! だなんて余計機嫌を損ねるだけだ。
言葉で説得するのをあきらめたぼくは、がばっと実力行使にでる。
「わわっ」
これには蒼星石も驚いたようだ。ぼくの身体で影になった彼女の顔では、口がぽっかりと開いている。
「 」
「な、なにするんだよ、もう!」
「 」
「えっ、えっ、えっ?」
「 」
「やだよお、はなしてよお」
「 」
堪えられなくなったぼくは、その小うるさい唇を唇で塞いでしまう。
「んんっ……はむっ……」
だったらいっそと、舌まで入れてみる。
「ふぁん、んんっ……んーっ……ぺちゃっ……んむぅ……」
蒼星石のまぶたがとろんと半開きまで落ちる。あれほど抵抗していたキスも、いまではぼくの舌に舌をなまめかしく絡めてくる。
「むぅ……んんっ……んむっ……まぁん……んふぅ、ふぅ……」
蒼星石の両手が、ぼくの背を頼ってがっしりとつかむ。その両足はぱっかりと開いたから、ちょうど彼女の股間、足と足の間にぼくの下半身が割り込むことができた。
「ぷはあっ」
彼女のお口は、ぼくと彼女のよだれでびしょびしょだ。
「…………」うつろな目は、じっとぼくの顔をとらえて離さない。
しかし、突然はっと目が見開くと、彼女はぼくから顔を逸らす。
「ずるいよ……」と、いかにもベソをかきそうなかお。
「ボクが女の子だからって、無理矢理だなんて……」
「 」
「そ、そんなことないよお! 先にキスしてきたのは くんだ!!」
「 」
「そ、それは……」
「 」
「あぅ……」
蒼星石の顔はころころとかわるけれども、今じゃ目を潤ませてぼくの顔を見上げている。
「すんっ、すんっ……すんっ」
女の子の最終兵器、泣き落とし。たちが悪いことに、これは演技なんかじゃない。蒼星石はそんな器用な真似ができる女の子じゃない。
鼻をすする音だってフェイクじゃない。リアルでもない。真実だ。
これじゃあぼくが世紀末的モヒカンじゃないか。
「 」
結局、最大限の譲歩。このまえ買った一か月分の小遣いを使い果たしたいぬのぬいぐるみよりひどい内容。
「……うん。すんっ、すんっ……。許してあげる……すんっ」
「 」
「でも、このぬいぐるみ、ボクのたからもの」
「 」
「うん。だって、寝るときはいつもこの子といっしょに寝てるんだ」
「 」
「さびしい…… くんがいないから」
「 」
「……えっち」
彼女の目元は赤いし、鼻も紅ければ、頬も明い。
「また今日もするんでしょ。紅茶、せっかくいれてあげたのにさめちゃうよ……」
「 」
「……ばかっ」
ぼくが仕掛けたキスは拒絶されることなく、ふたたび蒼星石の唇をじっくりと味わう。
そうしてぼくが自身の身体を支えるためだけに使っていた両手は、いま、彼女の身体をむさぼりうねる触手に変わった。
「んふぅ……」
相変わらず、蒼星石のぷわっと膨らんだ乳は、どんなスポンジよりも心地よい。
張りがあって、揉めば揉むほどより強く反応して押し戻そうとする。
「あふっ……んんっ……みゅ、にゅ、うゅ……」
ぼくが手に力をいれるたびに、蒼星石は子どものように鳴いてくれる。
ブラウスのボタンを一つずつ外していく。ぼくの指の動きを指を甘く噛んで恥ずかしげにみつめている彼女は、反則的にぼくの男心を刺激する。
ブラは桃色と橙色のチェック柄。彼女の外からの評価とは正反対の女の子らしい下着に思わず顔がゆるんでしまう。
「ううっ……もしかして、子どもっぽい、て思ってる?」
「 」
「うゆ──……」
こういうときでも、つい心ならないことを言ってしまうのは、犬属性だからか。
ブラを下げると、そこにはそこそこ熟しはじめた淡い肌色の小山がふたつ。
頂上の突起がつんとぼくの方を向いている。
「あう……」
蒼星石と目があうと、ぷいっと目を逸らされてしまう。
心なしか、春の身体測定のときよりおおきくなっているような気がする。ぷにゅ、ぷにゅと柔らかい毬をいじりながら思った。
「んはぁ、んんっ、んんんっ、んふぅ、……ふぅー」
その毬は、ぼくの手の中でぐにゃり、ぐにゃりと形を変える。親指と人差し指の間から、豊かなお肉がこぼれてしまう。
「あぅ……」
蒼星石の目だけが、こっちを向いた。
「……ほかのところも……てほしいな」
もし外で誰かが叫んでいれば聞き取れなかったであろうほどのか細い声。
よしよしと、ぼくは右手を蒼星石の身体のサーフェイスに沿って下へとさげていく。
ブラウスは前を開かせたから、手がさえぎられたのは青いズボン。厚手の素材でできていて、外はごわごわしている。
前の留め金を外すと、ブラと同じく、桃色と橙色のチェック柄のパンツがちらりと姿を見せる。
上に着ている服とまったく調和のとれていない違和的に薄い布。ズボンはひざこぞうのところまで脱がせて、そのスレンダーな足と足の間のデルタ地帯に右手を忍び込ませる。
「いっ!」
蒼星石の右手が、女の子の大事なところに侵入してきたものを防ごうと、すばやくぼくの右手をがっしりとつかむ。
女の子にしては握力がある。ふだんから庭仕事で大ばさみを使っているせいか。
それでも、男であるぼくの行為をとめるには、力が足りなすぎた。邪魔されたことで、かえってその秘所によりいっそう強くいたずらしたくなる。
「あはっ、はぁ! うふっ、にゅ、ふぅー!」
ぼくがその割れ目を綿の布地の上からなでるたび、蒼星石は身体を海老のようにそらせて、ベッドのシーツを乱していく。
「だめっ、あはっ、やっ、ひゃ、ああっ、あっあっ!」
わざとらしく、しゅり、しゅりと音を出して、じっくりとその熱いところを優しくいたぶる。
ぼくが濡れていることを指摘したり、卑猥な言葉をかけてみると、彼女はもうこれ以上ないぐらいといわんばかりの恥辱を感じたのか、両手で顔を塞いでしまう。
「やだぁ……すんっ……すんっ……」
こういうときの蒼星石は本当に脆い。いつもサバサバしていて、テキパキと物事をこなす『頼れるお姉さま』なんて、ここには存在しないのだ。
いまこのベッドで寝ているのは、彼氏にいいようにいじられる可憐な少女。それはまさにちいさなコスモスのように、ちょっといじりすぎるとすぐ散ってしまいそうで恐ろしい。
だからぼくはベソばっかりかいている彼女の耳元に顔寄せる。
「 」
優しい言葉をかけると、鉄仮面のように塞いでしまった両手を緩めて解放する。
「ふにゃ!」
そうして、ぼくはパンツの中に手をしのびこませる。
産毛のような陰毛の先には、湿気高い雌の火山口。ほとほとと熱く愛の液体をたらし続けている。
「あはぁ!」
そのいやらしい口に指を突っ込むと、今までにない強烈な刺激が蒼星石をおそったのだろう。
その指を鍵型にしてくちゅくちゅと回したり、上下に動かしたりしてみる。
「はんっ、はっ、はっ、あっ、みゃ、みゃ、はっ」
指が二本出し入れできる頃には、そこからあふれる愛液で大きなしみができるほどパンツを痛めはじめていた。
「 」
彼女はもうろうと、首を縦にふった。パンツをずらしているときも、半開きのまなこがぼくの顔をじっと見つめる。
とても不安げで、おびえている顔。その恐怖をやわらげるために、ぼくは彼女の両手をぎゅっとにぎりしめる。
チャックから出した愛棒は頼もしいほどギンギンに怒張していた。
フリーハンドで腰を動かして、彼女の女に突き立てる。
「いっ……ぁはぁ……」
ぐちゃぐちゃと音を立てて、ゆっくり突入していく愛棒。
潤滑油としてあふれ出てきた彼女の熱い液が肛門までの股間をたどって垂れていく。
中は沸騰するぐらい熱かった。
何度か出し入れしているうちに拡がっていったのか、まえのようなきつさはもう、ない。
けれども、彼女はまだ抵抗があるようだ。
しきりに、しかし小声でぼくの名前を呼んでいる。
大丈夫、ここにいるよと言うと、涙を一滴流して微笑んだ。
腰の動きを少しずつ早めていく。最初はブランコのように。
蒼星石の吐息に喘ぎ声が混じりはじめる。今までのような苦しそうなものじゃなくて、柔らかい、歓喜の声。
「あっ、にゃ、はんっ、ふっ、ふぅ、きゃっ、ひゃつ、きゃっ、」
熱くて甘ったるい彼女の息がぼくの顔や首にあたって、ぼくの男をさらに長く、太く強化してしまう。
腰を振る早さは、剣道の素振りのように、さくつさくっさくっとなっていた。蒼星石の淡い股間の肉に、ぼくの締まった肉がぶつかりあって、ぺちぺちと音をたてる。
その結合部分は、粘液という粘液がまとわりついて、シーツを汚すまでにあふれでていた。
くちゃ、くちゃ、くちゃ。
「えっちなおとっ、ふっ、はっ、ボクのっ、にゃ、きゃっ、」
その卑猥さが、ふだん真面目な蒼星石の心を激しく爆発させてしまっている。
くちゃ、くちゃ。
他人に見せている外観からは想像もつかないほどの痴態は、特権的にぼくだけが見れる。くちゃ。彼女の本当の姿は、前戯にすすり泣く女の子であり、そしておしべとめしべが交わるたびに、くちゃ、くちゃ、嬉しがる淫靡な雌なのだ。
ぼくはそれを含めて全部を愛した。彼女の持っている全ての要素を包括して受け入れた。
「 くぅん、ボク、ボク、きもちぃ、いいーっ、えっち、えっち、あっ、にゃっ、」
くちゃ、くちゃ。
だんだん彼女も何を言っているのかよくわからなくなってきたようだ。
ぼくもまた、頭の中がまっ白になっていく。
「だいすき、すき、あっ、あっあっあっあ!! くんの、きゃっ、あはっ、はんつ、はっはっはっ!」
くちゃ、くちゃ、くちゃ。
「らめっ、もっともっと、もっと、はぁん、きゃっ、ひゃっ、あっあっあっ」
「おっき、あついよぉ、あつっ、 くんの、ぎゅっぎゅつて、ぎゅっぎゅっ、」
「すきぃ、すきっ、もう、ふきっ、ふひ、ふひっふひっしゅきっ、ひっ、ふひっ、」
くちゃ、くちゃ、くちゃ、くちゃ、くちゃ。
「やっ、いくっ、あっああっ、はぁ、は、は、は、ああ、いくつああああいくっ」
限界だった。ちょろちょろと漏らしていたけれども、もうこれ以上堪えたら頭が狂ってしまう。
出す。彼女の膣に出す。
「いって、 くん、 くん、 くん、 くぅぅぅぅぅん!!」
ぶしゃっ!! ぶしゅああ!!
「うにゃああああああああっ!! にゃああああああ!!」
しゃああああああぁぁぁぁぁ…………。
「っはああ……はあああ……はあ……」
「はあ…………あはぁ…………はぁ…………」
「 くぅん……」
ぼくたちは、お互いの口をひたすらむさぼりつくした。
唇なんてよだれでふやふやになるくらい。舌がつって痛くなってしまうくらい。
こぽり、こぽりと膣から白い体液がこぼれて純白なシーツを汚す。
蒼星石をぼくの色に染め上げたことにとても満足して、いつのまにかぼくは眠りに落ちてしまう。
「 くぅん……しゅき……」
ろれつの回ってない、愛しい女の子の呼び声と吐息に送られて。
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「……入れなおそう」と、小さなテーブルにある紅茶を飲んで一言。
はぁ、というため息とともに陶器のティーカップを盆に載せて、立ち上がる。
「…… くんのせいなんだよ。ばか」
しっかりとぼくの責任にすることも忘れない。
「 」
「ふんっだ」
怒る姿が、ここまでぷりぷりという擬音が似合うのもめずらしいことだ。
結局ぼくの彼女はどんなしぐさをしようが、どんな感情を露にしようが愛しいことには変わりないのだ。
「もう、 くんにはおいしい紅茶なんていれたげない」
「 」
「ボクは一度決めたことはゼッタイ守り抜くタイプなんだ」
「 」
「う、うるさいなあ、それとこれとは別だろう?」
「 」
「あーもう!! もうやだ、 くんなんて大っ嫌い!!」
「 」
「…………」
「 」
「……ずるいよ、それ」
「ぜったいずるすぎ。そんなの、人間の片隅にも置けない」
「 」
「ふんだ……」
いつもみたいな、いつもの口論。売り言葉に買い言葉。
たまに人から仲悪いんじゃないのかと心配されたり、逆にはやしたてられたりすることもある。
特に彼女の姉からは、溺愛する妹がおかしなことになってないか、毎日チェックが入っている。ぼくがちょっと厳しい態度をとると、『まあた蒼星石を泣かせたですぅ!!』といってすぐ妹の味方になる。執拗に、徹底的に怒鳴りこんでくる。
でも、けんかもしないと、彼女との間はぎくしゃくばっかでうまく行かないだろう。ささいな言い合いですら、そこに彼女との強い絆を感じられるのだから。
「もう、 くんのこと好きだなんていってあげないんだから……」
完