そこは、一見普通に見えるが、かなり奇妙な部屋だった。飾り気が無く、地味な部屋に見えるが、所々に意味の分からないぬいぐるみや、明らかに胡散臭い呪い系の道具が置かれている。机に置かれたパソコンには、怪しげな通信販売サイトが写っていた。
しかし、この部屋が奇妙な理由は別にある。それは、ベットに腰をかけ本を読んでいるアンティークドールだ。
勿論、只の人形ではない。動くアンティークドールだ。ゼンマイ仕掛けなどではない。正真正銘の動くアンティークドールである。
名前は真紅。ローゼンという人形師に作られた。戦うことを定められた誇り高いアンティークドール。
「まったく、紅茶をいれるのにどれだけかかってるのかしら」
本を乱暴に閉じ、真紅は言った。声からかなり怒っていることが分かる。
「使えない下僕だわ」
「使えなくて悪かったな」
一人の男が入ってきた。この部屋の主である桜田ジュンである。両手でトレーを持ち、その上にはティーポットとティーカップが乗っかっている。
「なんか、ティーセットが新しいのに変わってて、時間かかった」
何時ものは、どこでも売っているような安物のティーセット。しかし、今日のは、所々に花の模様が彫ってある高級感が漂うティーセット。勿論、この家にはそんなものは無いはずだ。
「ああ、あれね。のりに買ってきてもらったのよ」
「買ってきてもらったって……、そんなに安いものじゃないだろ」
トレーを床に置き、自分も座る。ジュンはちょっと前のことを思い出した。次に、ティーポットとティーカップを見る。綺麗な白地に青い柄の模様。一目見ても分かる。いい仕事をしている。
「もしかして、これもか?」
「そうよ」
真紅はベットから下り、ジュンの足に腰掛けた。
「お前、姉ちゃんを使って家の金を使うなよ……」
「使ってないわよ」
ジュンは、真紅用のティーカップに紅茶を注いだ。
「のりに言ったのよ。今度、学校でこれ見て欲しいなーって言えって」
真紅が先ほどまで見ていた本を指差した。どうやらキッチン雑貨の雑誌のようだ。
「そしたらしばらくたって、のりが学校で貰っちゃったーって……」
「狙ったな。お前」
「何のことかしら? 言ってることが理解できないわ」
真紅は微笑み、上品に紅茶を飲んだ。
「のりモテるわね。誰かさんとは大違い」
ちらっと、ジュンを見た。
視線を受け、ジュンは怯んだ。ジュンもごく一部にはモテモテなのだが、本人は気付いていない。
「……間接的な搾取じゃないか」
「あら、搾取は犯罪じゃないわ」
ものは言いようだ。
くつろいでいる真紅を横目に、ジュンは雑誌を手に取り、パラパラと眺めた。そしたら、自分が使っているティーカップが目に止まった
カップ&ソーサー。15000円(税込)。キッチンにはこれが六客あった。
プレゼントしたのが一人か、それとも複数なのかは分からないが、とりあえず、御愁傷様。
「おいしいわ」
真紅が言った瞬間、大きな音がして窓ガラスが割れた。
割れたガラスが飛び散り、部屋に降り注ぐ。当然の事だが、紅茶にも降り注いだ。多分飲んだら重傷を負うだろう紅茶が誕生した。
「わぁぁぁっっ!!」
「わっ、私の紅茶がぁぁぁぁっっっ!!」
真紅が崩れた。
割れた窓から、現れたのは水銀燈だ。
「真紅ぅ。久しぶりねぇ。今日こそ貴方のローザミスティカ頂くわよぉ」
何時もの猫なで声で水銀燈は言った。
「あら? どうしたのぉ? 元気ないじゃない」
真紅は、四つんばいになり、一点を見つめて止まっている。
「……とう」
「んっ? 何ぃ?」
「……ぎんとう」
「もっとはっきり言わないと水銀燈わかんなーい」
「水銀燈!!」
声に驚き、水銀灯がビクッとなる。
「何よぉ。行き成り大声出さないでよぉ」
真紅がゆっくりと立ち上がる。顔にかかっていた髪を書き上げた。
瞳は、瞳孔が開き、水銀燈を見つめていた。
「貴方は、私を怒らせたわ」
真紅の視線を受けた水銀燈は顔を強張らせた。
「何? やる気になったの?」
「貴方の体に私の受けた苦しみを刻み込んであげるわ……」
真紅の瞳が光る。
「どうやら、やる気になったみたいね。いいわ。ジャンクにしてあげる」
水銀燈は真紅の前に立ちはだかった。二人は対峙した。
ローゼンメイデン第五ドール。ミーディアムとの絆を尊む真紅。
ローゼンメイデン第一ドール。アリスになる為ならどんなことでもする水銀燈。
今、アリスゲームが始まる。
水銀燈はバックステップを踏み、距離をとると翼を動かした。複数の羽が真紅に襲い掛かる。
真紅は、低い姿勢をとり、一気に駆け抜け、羽をやり過ごす。刹那、地面を捉える鋭い音がした。拳が水銀燈を目掛けて放たれた。
部屋には甲高い音が響いた。
水銀燈は寸前の所で拳を受けた。が、衝撃で数歩後ろに下がった。
「スマートな戦い方じゃないわね。やっぱり貴方はアリスに相応しくないわ」
「言ったでしょ。貴方の体に刻み込むって」
真紅の手を弾き、腹部に目掛けて蹴りを放つ。バックステップでそれをかわし、攻勢に出ようとした真紅。しかし、視界にバネのように引き絞られた翼を確認し、すぐさま状態を横にずらした。
引き絞られた翼が放たれ、先ほどまで真紅がいた場所を通過した。衝撃に空気が悲鳴を上げる。
翼が壁を貫通し、激しい音とともに崩れた。
「貴方こそスマートじゃないわね。恥をかかないうちに降りたらどう?」
「面白い冗談だわ」
羽が手に集まり、剣を形作った。
「そういうことは、ジャンクになってから言いなさい!!」
真紅の頭目掛けて、素早く剣を振るった。
迫る剣を見据える真紅。その凶刃が頭を切り裂くように見えた瞬間、真紅は、剣を両手で挟み込んだ。
「甘いわ」
「奇妙な事をっ!!」
片手を離し、顔面目掛けて鋭い拳を放つ。
真紅は、それを受けた。片手で剣を弾き、もう片手で拳の軌道を下方に変える。
状態を崩した水銀燈の懐に素早く入り、その胴部に肩を入れた。
その衝撃は、体に伝わり、水銀燈は宙を舞った。
壁にぶつかり、崩れ落ちそうになるのを如何にか堪える。
「テレビの見よう見まねなんだけど、案外効果があるわね」
真紅は水銀燈を見下した。
「こんなこと、できるようになるなんて。まったく……暇ね、貴方は」
水銀燈はよろよろと立ち上がり、服についた埃を払う。
「あら、意外と頑丈ね」
「アリスになるまでは、負けられないもの」
「そう。でも、それも終わりだわ」
勝負を決するべく、真紅は拳を放つ。
「まだ、負けられないのよっ!!」
放たれた腕を取り、一気に引き寄せる。小さな体が、バランスを崩した。
「真紅っ!!」
水銀燈の拳が顎を打ち抜いた。
顔だけが、逆の方向に流れ、顎が仰け反った。
手を離し、続けざまに、蹴り上げる。真紅が円を描く様に舞い、音を立て床に落ちた。
「無様ね」
「貴方ほどではないわ」
真紅は、立ち上がる。しかし、ダメージはあるのか、少しよろめいた。
「勝手に言ってなさい」
水銀燈が駆け、拳を振るう。真紅は再び拳を受けた。同時に水銀燈の体が反転する。
「また、奇妙なことを!!」
翼を広げ、状態を整える。両足で地面を捉えるが、衝撃を殺しきれず後退した。
反撃をしようとするが、何かか足に当たり、一気に後方に倒れた。
「っもう。一体、何なのよ……」
水銀燈が目を開く。
目の前には、ジュンの顔があった。
「いたたた……」
「人間。邪魔よっ。どっか行きなさい」
「それは、こっちの台詞だ。人様を巻き込むな!!」
ジュンは顔を上げた。水銀燈の顔は目の前。しかもちょうど位置も同じ。
ジュンの唇が水銀燈の唇にクリーンヒット。
「んっ」
一瞬の触れあい。ジュンがすぐさま水銀燈を押しのけた。
「おまえっ……」
なにするんだ。と言いかけて、やめた。水銀の様子がおかしい。何時ものなら、きっと文句を言うだろう口からは何もはっせられない。硬直していた。
そして、次第に顔が紅潮していく。
「は、初めてなのに……」
水銀燈は気を失った。
「ちょっ、お前っ!!」
ジュンの叫びも今の水銀燈には届かない。
戦いを思わぬ形で中断された真紅は、一言。
「意外と初心なのね」
そう言って、気を失った。緊張の糸が緩んだのだろう。
一人残されたジュンは、ボロボロの部屋と、倒れたローゼンメイデンを見て呆然としていた。
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結局、真紅と水銀燈は暫く目覚めず、部屋の修理は、翠星石がした。
「すごーい。綺麗になったわぁ」
ジュンに抱かれている水銀燈は言った。
「お前……。帰れよ」
「帰る所なんてないわよぉ。ここが私の家だもの」
いつから、決定権が外部者になったんだ。生物ですらない。
「ミーディアムとかいないのかよ……」
「いるわよ」
水銀燈はジュンの頬に頬擦りをした。
「でもだめ。あんまり長い時間はいれないから」
「なんだよ、それ」
「一度、来てみる? ジュンなら合わせてあげてもいいわよぉ」
ゆっくりと、耳の方に移動し、舐めた。
「ひゃっ……!!」
突然の感覚に思わず声を上げてしまった。
「かわいいー」
そんなジュンを見て、微笑む水銀燈。
どうしてこんなことになったんだったか。ジュンは少し前のことを思い出してみた。
翠星石が部屋を片付け終わって暫くたったころ、真紅と水銀燈は目を開けた。
「やっと、置きやがったですか」
「大丈夫? 真紅?」
翠星石と蒼星石が心配そうに真紅を見た。
「ん……、私の、紅茶は……?」
「……あれ? ここ、どこ?」
二人は、ゆっくりと上体を起こし、あたり見渡した。
そして、目が合った。
「水銀燈!?」
「真紅!?」
同時に立ち上がったが、直ぐによろめいて倒れてしまった。
「真紅、しばらく休んだほうがいいよ」
「そうです。休んでるです」
二人は、真紅を持ち上げ、優しくベットの上に降ろした。
「ごめんなさい」
「そんなことはいいですよ。さっさと休むです」
それを聞いた真紅は、目を閉じる。しばらくたって、落ち着いた寝息がきこえた。
二人は、大きく息を吐いた後、振り返る。そして、水銀燈を見た。
「後は、こいつですけど。どうするですか?」
「いっそのこと、このチャンスにローザミスティカ奪っちゃおうか?」
二人して物騒なことを言う。水銀燈は乾いた笑いをだした。
「冗談よね?」
「冗談にする理由があるとおもうですか?」
「このあたりで、今ままでの悪行を清算しないとアリスになれないよ?」
嘘だ。清算してもアリスにはなれない。
「別に今日くらいおいてもいいんじゃないか? どうせろくに動けないんだから」
言ったのは、椅子に座っていたジュンだ。
「な、何言ってるですか!?」
「そうだよ。ジュン君。こんなやつ今のうちにジャンクに!!」
今、蒼星石の口からとんでもない言葉が発せられたような気がするが、聞かなかったことにしよう。
「大丈夫だって。な、水銀燈?」
この言葉の意味は、めんどくさいからさっさと終わらせて、一人になりたいである。
しかし、水銀燈にとってはまさに蜘蛛の糸。
「ええ!! 大丈夫!!」
そう言って、何度も頷いた。
「ほら、本人もこう言ってるし、いいじゃないか。お前らももう帰れ」
二人は暫くジュンと水銀燈を見た後、
「ちび人間がそこまで言うならいいです……」
「何かあったら、呼んでよ」
ドアに向かって歩き出す。やっと終わった。ジュンは心の中で喜んだ。
「たまには、役に立つわね。人間」
「そんなこといいから寝てろ」
「さすが、私の唇を奪うだけのことはあるわ」
二人の足が、ピタリと止まる。ゆっくりと振り返った。
「聞き捨てならないですね」
「どうゆう事?」
キョトンとした顔で水銀燈は答えた。
「だから、人間が私にキスしたのよ」
「嘘です!!」「嘘だ!!」
息を合わせて叫ぶ二人。さすがは姉妹といったところか。
「嘘じゃないわよ。ねぇ、人間?」
「嘘じゃないけど、事故だろ。勝手に肉付けするな」
「なによー。したことに変わりはないでしょ」
「まぁ、それはそうだけど……」
「じゃあ、いいわよ。ちょっとこっちに来なさい」
ちょいちょいと手招きをする。
ジュンはめんどくさそうに、頭を掻きながら、水銀燈に近づいた。
「なんだよ……」
「うりゃっ」
ジュンの首に飛び掛り、ぶら下がる。そして、そのまま唇をあわした。
「んっ……あむっ……」
一瞬の触れ合い。
「これで、いいでしょ」
「ちょ……、おまえっ」
「二度も汚されちゃったー。もうアリスになれなーい」
水銀燈かケタケタと笑う。
対称的に翠星石と蒼星石の顔は強張っていった。
一瞬、ジュンの頭を、チャ○ルドプレイが過ぎった。
「だから、ジュンだけのアリスにしてー」
二人の体が、ピクっと動いた。
何も言わず、まるで幽鬼のように部屋を出て行く二人。
色んな意味で終わった感が漂う。
「お前……。冗談にも程があるぞ」
「冗談なんかじゃないわよぉ」
水銀燈は足を、ジュンの胴体に回し、抱きつくかたちになる。
「事故であっても、私の初めてを奪ったのはジュンなんだから。きっちり責任とって貰うわぁ」
「そんなキャラじゃないだろう」
「人間が知らなかっただけじゃない。これでも私、結構純情なのよー」
嘘だ!! 心が叫んだ。
「そういえば、人間の名前知らないわ。教えて」
「何で教えないといけないだよ」
「じゃあ、いいわよ。まったくケチね。ジュンは。そんなんじゃ人生損するわよ」
「知ってんのかよ!!」
回想終了。
……明日が見えない。
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翠星石と蒼星石は、重い足取りでリビングまでやってきた。
顔は下を向き、表情は失われている。
「どうしてくれようかです」
「どうしようか……」
とりあえず、ソファーに腰掛た。
「何とかしないと、翠星石の優先度がどんどん下がっていくですよ」
「やっぱり、早いうちにジャンクに……」
この言葉は、聞いてはいけない。
身を預け、宙を眺める。水銀燈のことだ。このまま強引にいついてしまう可能性は高い。そうなると、競争相手が増えてしまう。ただでさえ真紅と雛苺におされ気味だというのに。
「何とか穏便に出ていってもらうですよ」
「闇討ちならばれないよ」
軽く聞き流しつつ、途方に暮れる。
すると、突然、ガラリと窓が開いた。カーテンをくぐり、入ってきたのは金糸雀だ。
「進入成功かし……ら?」
視線を上げると二人と目が合った。
「何してるですか……」
「不法侵入だよ」
「は、早くも、見つかったかしら〜」
早々の失敗に項垂れる。
「今日はお前に付き合ってる気分ではないです。さっさと帰るですよ」
「元気ないかしら。何かあったのかしら?」
「お前みたいなお子様には分からない悩みです。帰って玉子焼きでも食べてるですよ」
目を瞑り、横になる。俗に言う不貞寝だ。
「い、いくらなんでも酷いかしら……。折角、アリスゲームしに来たのに」
「お前、意味分かって言ってるですか? 相手になんないですよ。見逃してやるから帰るです」
「今日のカナは今までと違うかしら!!」
「そうですか……。じゃあ、蒼星石に適当に相手してもらういいです」
翠星石はそう言って、そのまま寝てしまった。
残った二人は互いの顔を見合わせた。
「やる?」
「何か釈然としないけど、まぁ、いいかしら」
金糸雀は持っている傘を蒼星石に向けた。
「本当にやるの?」
「や、やるかしら!!」
「じゃあ、いいけど」
ゆっくりと、金糸雀の方に向き直る。
「人工精霊は使わないのかしら?」
「必要ないと思うよ」
「もしかしてなめられてるかしら?」
「なめてなんかいないよ。実際使わないで十分だと思うし」
「なめられてるかしら……」
金糸雀は項垂れた。
「まぁ、いいかしら」
「いつでもどうぞ」
金糸雀はしっかりと地面を踏みしめた。
「ローゼンメイデン第二ドール、カナリア。行くかしら」
言って、金糸雀が視界から消えた。
----
桜田ジュンは途方に暮れていた。
「そろそろ、降りてくれないか……」
水銀燈は、未だに腕の中にいた。人形とはいえそれなりの重さはある。抱きかかえるのも結構つかれる。
「いやよー。私、動けないし。疲れるなら椅子にでも座ればいいじゃない」
「ベットまで運んでやるよ」
「真紅と同じベットなんて絶対に嫌だわ」
顔を横に振り、絶対に嫌。と繰り返す。
「わかったよ……」
諦め、椅子に腰掛けた。
水銀燈はジュンの胸に顔をうずめる。
「どうしたんだ?」
「なんでもないわよ」
顔を上げ、ジュンを見る。ゆっくりと、首に手をかけた。
「――――ジュン」
「ん?」
水銀燈が、目を瞑り、顔を近づける。
ジュンも抵抗せず、静かに唇が重なる。
「ん……んっ……ふむっ」
水銀燈がすぐさまジュンの口に舌を差し込んだ。
「んうっ……んぁっ……っ」
ジュンもそれに答え、互いの舌が絡み合う。
互いの唾液が絡み合う。
「んぁっ……」
水銀燈の喉が、唾液を求め、喉が鳴った。
ジュンは抱きしめた腕に人形とは思えない暖かさと柔らかさを感じた。
ゆっくりと唇が離れる。二人の唇には透明な橋かがかかっていた。
「驚いたわ。ジュンって結構大胆なのね」
「お前に言われたくない……。それに、お前からしてきたんだろ」
「他人にされたらこたえるの? 十分大胆だと思うけど」
むしろ鬼畜だわ。それは、言わないでおこう。
「それに……」
手がゆっくりと、下に行く。そして、ジュンの下半身を撫でた。
「ちょっと大きくなった?」
「なってない!!」
さらに撫でる。
「やっぱ大きくなってるわ」
「……おま、え」
ぎこちない手つきだか、それが帰って気持ちいい。
水銀燈は、チャックを降し、ジュンのモノを取り出した。
手を離し、出てきたモノを見つめた。
「大きい……」
唖然とした様子で言って、モノを握り締める。
「ちょっ、痛い……」
「あ、ごめんなさい」
力を抜き、指先で、モノの先端を刺激する。
今度は、優しく握り、ゆっくりとしごいていく。
いつの間にか、ジュンのモノはガチガチになっていた。
「はぁ……はぁ……」
ジュンのモノの先端から先走り汁が漏れてきた。水銀燈は気にせず、しごき続ける。ニチャニチャと音を立てる。
「どう? ジュン?」
ヌルヌルとした感触が、刺激を高めていく。
ジュンは、奥からこみ上げてくるもの感じた。
「うぁっ……」
水銀燈が更にしごいていく。
ジュンのこみ上げてきたものが、限界を超えた。
瞬間、思考が止まる。
「あっ!!」
ビュクッ、ビュクッ、ビュクッ。
堪えてきた白濁が、水銀燈の手を汚す。
「熱い……」
ジュンのモノから手を離した。
「すごいわ……」
手の中には、ぬるぬるとして白濁が大量にあった。
水銀燈は、徐にそれを唇に寄せた。
「お前……」
唇が淫らに開き、艶やかな舌が伸びる。
「ん……」
手の中の白濁を舌で掬い取り、口の中に持ってく。
「んくっ……」
喉が動き、飲み下したことが分かった。
ジュンはそれを唖然とした様子で見ていた。
「……おいしくない」
「そりゃ、そうだろ……」
「舐める?」
「断る」
「そう」
残った白濁を残さず舐めとり、飲み込む。
「うー」
顔をしかめる。
「何か、イガイガする」
「無理して飲まなむから」
「だってもったいないじゃない」
水銀燈は、再び、ジュンに抱きついた。
「続きどうする?」
「真紅が……いる」
水銀燈の目が悪戯な光をたたえた。
「いなかったら?」
「……」
「黙らないでよ」
「……したい」
水銀燈は微笑んだ。それは、今までからは想像出来ないような笑みだった。
「ありがとう」
ゆっくりと瞳を閉じる。
しばらくたって、心地よい寝息が聞こえた。
ジュンは、水銀燈の髪を撫でる。
桜田ジュンは、途方に暮れていた。
----
「くっ!!」
無意識に出てしまう声。空気を切り裂く感覚が、連続で襲ってくる。
蒼星石の手には、庭師の鋏が握られていた。
「どうかしら?」
一定の距離を保ちつつ、傘を高速で使う金糸雀。
蒼星石が刃や蝶番で受けていく。
高い金属音が部屋は響いていた。
開始当初からずっとこの状態が続いていた。初撃から使わないといった人工精霊を使わされてしまい、蒼星石に焦りの色が浮かんでいた。
「なかなかやるかしら」
「金糸雀こそ……見直したよ」
「ありがとうかしら。それじゃあ、少し速度を上るかしら」
金糸雀は身を引き絞り、突きを放った。蒼星石は今までと同じように受ける。その瞬間視界が塞がれた。
「なっ!!」
金糸雀が傘を開いたのだ。すぐさま傘を弾く。しかし、そこに金糸雀の姿は無い。
蒼星石は全感覚を使い、金糸雀を探す。間合いの中で、空気の烈断音。
金糸雀は真下にいた。身を縮め、その両手には人工精霊のヴァイオリンとその弓が握られている。
「反応が鈍いかしら!!」
弓を蒼星石の喉下目掛けて放った。まるで銃弾のような一撃が迫る。
蒼星石は上体を仰け反らせた。目の前に煌きが映った。
「避けられた……かしら?」
金糸雀が驚きの声を上げる。
蒼星石は深く息を吐いた。
「君を侮ったことは謝るよ」
鋏を力強く握る。
「僕も本気でいく!!」
素早く踏み込み、大きく鋏を振るう。金糸雀は後ろに飛びのき、それをかわした。
「なかなかの一撃かしら」
金糸雀は笑う。
蒼星石が駆ける。一気に間合いをつめ、鋏を振るう。片手だが、武器の重量を活かした一撃。
金糸雀は数歩下がり、避ける。蒼星石は斬撃と突きを織り交ぜ、攻撃を放つ。
避けられものは避け、その他は弓を使い受け流す金糸雀。
「逃げてるばかりじゃ勝てないよ」
「だったら当ててみるかかしら」
「調子に乗って!!」
金糸雀の言葉を受け、蒼星石は鋏を振るう。先ほどまでと同じ斬撃と突きを織り交ぜた連撃。
金糸雀はまた避ける。しかし、先程のように受け流しは使わない。すべてを回避する。
「策士の目を舐めるなかしら!!」
蒼星石が胴を薙ぐように放った一撃を身を屈め避けると、そのまま突き進む。
今度は、胴を狙った突き。
蒼星石は、咄嗟に身を側方に倒し、避ける。脇腹の部分の服が破れた。
すぐさまバランスを直し、金糸雀の方に向き直る。
「一度見た攻撃パターンはきかないかしら」
金糸雀がヴァイオリンを構える。
「そろそろ、勝負をつけるかしら」
部屋に美しい旋律が響く。
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金糸雀はこう戦うものだとテレビで放送されるまでは思ってました。
それにしても、エロも戦闘も巧く書けない……。
----
桜田ジュンは、寝てしまった水銀燈をベットに置き、階段を降りていた。起きたら怒られるかもしれないが、膝に乗っかってるだけでも結構疲れるのだ。リビングからは甲高い金属音や、轟音が聞こえてくる。日常生活では聞くことのない音の連続に、ジュンは辟易とした。
「あの、性悪人形どもめ……」
リビングの前で止まり、深く息を吸う。
ドアを勢いよく開け、
「お前ら、なにやって……!!」
目の前に広がるのは、凄惨な光景。もはや、元の姿を思い出すことさえ憚られた。床、壁、天井には陥没や大穴。転がり、大破した調度品。
ぶっちゃけありえない。
「あ、ジュン君」
「何かしら?」
蒼星石と金糸雀が動きを止め、ジュンを見る。
「……」
無意識に体が震え始めた。体の中を血がグルングルンと駆け巡る。
体の奥から熱いものがこみ上げてくる。
「お前ら……」
そして、噴出した。
「今すぐ、片付けろーーっっっ!!」
二人の体が、ビクッと震える。
「ジュン君!! これにはわけが……」
「か、かなは何にも悪くないかしら!!」
「いいからさっさとやれ!!」
更なる噴出。
「ちび人間、うるさいですよ」
ソファーで寝ていた翠星石は、体を起こした。
意図してだろうか、その部分だけ、唯一原型が残っている。
「お前は何故止めない? というか、何故今まで起きない?」
「起きてたですよ?」
「はい?」
「面白そうだったから寝ながら見てたですよ」
ジュンは乾いた笑いを漏らす。
段々、心が麻痺してきた。
「お前も片付けろ」
「いやですよ。翠星石何もしてないですし。やったのは蒼星石と金糸雀ですよ」
「見てたお前も同罪だ!!」
最後の噴出。
出すものを出し、大きく肩で息をする。
「わ、わかったですよ。そこまでい言うならやってやるです……」
「翠星石……」
「蒼星石やるですよ」
「あれ? かなはいいかしら?」
「ああ、お前もやるですよ……名前何でしたっけ?」
「金糸雀かしら!!」
翠星石は絶対狙ってやっている。
さすがに三人でやると修復も早く、小一時間ほどで大体完了した。
三人は、その場に座り込んだ。
「終わったです……」
「終わった……」
「か、かしら……」
ジュンは一通り確認する。まぁ、パッと見は大丈夫だろう。所々に傷が残っている儀がしないでもないが、それくらいは妥協してあげるべきだ。
「まぁ、いいか」
頷くと、時計が鳴った。見ると、もう夕食の時間だった。
「もうこんな時間か」
「今日は腹減ったです……」
そういえば、何時もなら聞こえてくる仕度の音が聞こえてこない。
どうしんだろう。
「そういえば、今日はのりの姿を見てないですね」
「のりさんなら、今日は部活で遅くなるって言ってたよ?」
「えっ?」
何で、蒼星石が知ってるんだ。
「一週間くらい前に試合があるから遅くなるって」
「よく覚えてるですね」
すごい記憶力だ。今後何かと役に立つかもしれない。ジュンは一瞬不埒な事を考えた。
それにしても、夕食どうするか。
「店屋物でもとるかな……」
「断固拒否するです」
「店屋物はあまり体によくないよ」
人形が食に文句を言うのか?
なんか変じゃないか?
「じゃあ、僕の手料理とどっとがいい」
「しょうがないですね。店屋物でいいですよ」
「そうだね、たまには、いいかもね」
二人は笑う。ただし少し乾いている。
「お前ら、少しは気をつかえ」
そんな三人を見て、金糸雀が笑った。
「やっとかなの時代が来たかしら」
「どこに電話する?」
「無視するなかしら!!」
「うるさいですよ……えっと名前何でしたっけ?」
「金糸雀かしら!!」
「うるさいよ」
金糸雀は胸を張った。
「人が折角、すばらしい提案をするのに」
「お前の提案なんか、ろくなもにじゃないにきまってるです」
「そんなこと言っていいかしら? 折角、マスターのみっちゃんの家に招待しようと思ったのに」
翠星石と、蒼星石の動きが止まる。
「少なくとも、そこの人間よりは大人だし、美人だし、料理もうまいかしら」
「その話、詳しく聞きたいです」
「金糸雀。今日はごめんね」
二人は、金糸雀の手をがっちりと握る。
「お前ら少しは遠慮しろよ」
金糸雀に。後、僕にも。
----
鏡をぬけると、そこは小奇麗な部屋だった。装飾品などは少なく、落ち着いた雰囲気だが、ぱっと見て女性の部屋だと分かる。
部屋を訪れたのは、ジュン、翠星石、蒼星石、金糸雀の四人。真紅、水銀燈はぐっすり寝ているので放置、雛苺は蒼星石に聞いたら巴の所に泊まるらしいのでこれまた放置。そしてできたのが、この微妙なパーティーだ。
「どうぞどうぞかしら」
「お前の家じゃないだろ……」
部屋の置くから音が聞こえた。
「かな、帰ったの?」
出てきたのは、普通の女性。美人とはいえないかもしれないが、そうでないともいえない。仕事から帰ったばかりなのか、スーツ姿だ。
「みっちゃん、どうかしら!!」
金糸雀が誇らしげに翠星石と蒼星石を指差した。
みっちゃんは二人を確認すると、止まった。いや、手が僅かに震えているから止まってはいないか。
「みっちゃん?」
目が血走っていく。ぱっと見て危険な雰囲気だ。
「どうしたかしら……?」
「か、かな……」
「だ、大丈夫かしら?」
「大丈夫じゃない……わ」
みっちゃんが膝から崩れる。体全体がプルプルと震えている。
「ゆ、夕食をご馳走したくて連れて来たんだけど……もしかして、調子悪いかしら?」
「大丈夫!! なんの問題もないわ!! すぐ準備するから、そこら辺に座ってて!!」
ガバッと顔を上げると、すぐさま立ち上がり、キッチンの方に駆けて行く。
と、その直前で止まり、ジュンの方を見た。
「貴方……誰?」
今まで気がつかなかったのか。
先ほどまでとは打って変って、明らかに不振な目をしている。まるで、不法侵入者を見る目だ。
「ジュンは、マスターかしら」
「そう……」
ジュンを上から下まで見回し、なにやら考え始めた。そして、うんと頷いた。
「どうぞ、座って」
そう言うと、キッチンに消えて行った。
じはらくたって出てきたのは、すごいものだった。一言で表すなら、小学生の女子のお弁当。その拡大版といった感じた。のりの料理も同じベクトルにだが、これほどではない。
「すごいです」
「やった……」
翠星石と蒼星石が歓喜の声を上げる。
「どうぞ、遠慮しないで食べてね」
みっちゃんの声とほぼ同時に、二人は食べ始めた。ガッツいている。とてもアリス候補のやることは思えない。まぁ、二人がアリスになることは……。これ以上は言うまい。
そうな二人を見ていたら、ジュンのお腹がなった。色々あったし、昼から何も食べていないので、しょうがない。
「いただきます」
軽くお辞儀をして、食べようとすると、みっちゃんと目が合った。
「どんどん食べてね」
みっちゃんは笑って言った。
先ほどのような不振な目はない。
しかし、それ自体が不振だ。
料理を食べ終わると、翠星石と蒼星石は早々に帰ってしまった。どうやら眠くなったらしい。帰り際にお礼を言ったのは腐ってもアリス候補だからか。無駄なこと……。これ以上は言うまい。
金糸雀も食べたら直ぐに寝てしまった。
そして、部屋には二人。
何ともいえない雰囲気。
「えっと、ジュン君だっけ?」
みっちゃんがジュンを見る。
「は、はい。そうです……」
「別に緊張しなくていいのよ。とって食べようとしてる訳じゃないから」
「はぁ……」
と言われても、あの目があるから。どうも信用することができない。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけどいい?」
「はい。何ですか?」
「ジュン君は、翠星石ちゃんと真紅ちゃんのマスターなのよね」
「そうです。あと間接的ですけど、雛苺もそうですね」
「そう」
みっちゃんは、うんうんと頷いた。そして、ジュンに向かった。両肩に手を置く。
「誰か一人譲ってくれない?」
「無理です」
何を言い出すんだこの人は。
「駄目なの……」
「駄目です」
ものすごく項垂れるみっちゃん。
「どうしても?」
「どうしても」
「お金ならいくらでも払うわ。今はないけどすぐに稼ぐから」
「駄目ですって」
「そう……」
さらに項垂れる。
しばらくたって、ガバッと顔を上げた。
徐に、ジュンの手を取ると、そのまま自分の胸に当てた。
「ちょっ、何やって!!」
「か、体で払うわ」
「む、無理ですよ。だから、早く離れてください」
「私じゃ駄目なの?」
「駄目じゃないです。って、そんな問題じゃなくて、とにかく離れて……」
みっちゃんは、ジュンの言うことは聞かず、更に強く押し当てる。
「どうにか、おねがい!! 何でもするから!!」
「絶対無理です!! だから、離れて!!」
「わ、わかったわ。譲ってくれなくてもいいから。せめて、時々遊びにいかせて、それか、遊びに来させて!!」
顔を近づける。いつの間にか、距離はゼロにも等しくなっていた。
「わ、わかりました。それくらいなら大丈夫です……だからはやく……」
「ほ、本当!! ありがとう!!」
みっちゃんは腕を離した。しかし、そのまま勢いよく抱きつく。
押し倒す形で倒れる二人。
みっちゃんは、感動のあまりか、強く抱きついたまま、頬擦りをしたり、雄たけびを上げたり。
「お、おねがいします……離して……」
しばらくたって、ジュンの声に反応する。
途端、顔を赤らめた。
「ご、ごめんなさい。つい感動のあまり。すぐ離れるわ」
と言って、身を起こす。そして、立ち上がろうとして、
「あ……」
止まった。
「どうかして……あっ」
ジュンとみっちゃんの視線の先にあるのは、少しだが大きくなったジュンのモノ。
「えっと、その、すみません……」
「わ、私こそ、ごめんなさい……。すぐ直すから」
「えっ?」
みっちゃんはジュンのモノ擦り始めた。
「こうなったのは、私のせいだし……。勢いだったけど、体で払うとか何でもするとか言っちゃったし。一応、ね……。嫌なら止めるけど……」
「嫌じゃ……ないですけど、こうゆうのは良くないと……」
「私のことは気にしないでいいのよ。その、事故にでもあったと思ってくれれば」
擦り続ける。
すぐさま、ジュンのモノは大きくなった。
「このまましても、いいのよね?」
断ったほうがいいのは分かった。しかし、そうは言えなかった。男としての本能のようなものが、そうさせてくれない。しかし、だからといって、素直に受け入れることもできなかった。きっと理性と呼ばれるものだろう。頷くことができない。
経験が無い。という事がすべての原因のような気がした。
「そんな、考えなくても」
「ごめんなさい……」
「あやまらないでよ」
みっちゃんが、下を彷徨うジュンの手を取った。
そして、そのまま、胸に押し当てる。
「あらためてやると恥ずかしいわ。すごい事してるよね、私」
顔が紅潮していく。
目にも朱を帯びていく。
色っぽい。
「早くして。なんか、もう。止めるなら今のうちだよ」
ジュンはこの状態が理解できなくっていた。
手の中の感触を確かめるため、そっと力を入れた。
「んっ……」
「……ごめんなさい」
そのまま、胸を弄る。
ついさっきあった女性との行為にジュンは興奮していた。
「あっ……ぁ……ぁっ、どう、かな?」
みっちゃんが吐息を漏らす。息は熱い。
「あんまり、大きく無いんだよね。ごめんね……」
「そんなことは……ないです」
確かに小ぶりだったが、それは、たしかに女性の象徴であり、それだけでジュンは十分興奮していた。
「そう? ありがとう……。このまま、して……いいんだよね?」
このままする。ジュンは想像する。
つまりは、セックスという行為をするということ。
「お願いします……」
みっちゃんは笑った。
瞳を閉じて、顔を近づける。
重ねられた唇は柔らかく、滑らかで、明らかに男性のもととは違った。
「……んっ」
今まで感じたことの無い感覚。
興奮が高まる。もっと深い快感を味わいたい。
ジュンは、みっちゃんの唇に舌を押し入れた。
「んぅっ……?」
一気に押し込み、白い歯を舌で舐める。
「ぁっ……はぁぁ」
唇が開き、空気が漏れる。
みっちゃんは歯の隙間から下を少し出し、ジュンに答えた。
腕が落ち、力が抜けていく。
「……っ、ちゅっ……」
ジュンは、更に深く押し込む。一瞬、びっくりしたのか舌を引いたみっちゃんだが、すぐに迎え入れた。
口内で絡み合う舌。粘ついた音を出し、二人を麻痺させていく。
どれくらいくらい唇を合わせてのか。
「はぁー……」
唇を離すと同時に深く息を吸う。息苦しくなるまでのディープキス。
「大胆なんだね……もしかして、経験済み?」
「ち、違います……。なんか、夢中で」
「夢中に? 私で? 本当に?」
「本当です。気持ちよくて……」
「ありがとう」
みっちゃんは、片手をジュンのモノを擦り、もう片手でジャケットとブラウスのボタンをはずしていく。
「まだまだ、でしょ? もっとしていいんだよ?」
篭った熱が放たれ、姿を見せたのは、花柄の下着。
「ほら。触って」
言葉に導かれるまま、ジュンは手を這わせた。
服の上からとは違う、柔らかな感触。
「う、あっ、柔らかい」
力を入れると僅かだが、めり込んでいく。
「くっ、ふぅ……」
時間をかけゆっくりと揉んでいく。しかし、飽きることは決してない。
「あっ……」
しばらくたって、ジュンの手のひらに何かが突っかった。
ちょうど、ゴムのような硬さ。
見るとはっきりと分かる。
乳首が、はっきりと起き上がっていた。
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みっちゃんなんて全部妄想ですorz
個人的には、25くらいだと思ってるんだけど、どんな感じなんでしょう?
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もうすぐ私は消えるのだ。
誰に言われたわけでも無いが、そう感じた。目の前には何も無い。何時かは分からないが、近い未来に間違いないだろう。
こうなることは、分かっていた。分かりたくはなかったが。所詮は私は贋物なのだ。どんなに頑張ったところで、アリスにはなれない。
私自身のことなどどうでもいい。気がかりなのはお父様のことだ。私なんかを作って、お父様は幸せだったのだろうか。
贋物で、アリスになれない。出来損ない。どうして私を作ったのか。私には分からないが、望みを叶えてあげられなかった事は確かなはずだ。
お父様は悲しかったはずだ。どんなに精巧に作っても決してローゼンメイデンになる事のできない私。
そんな私を、口数こそ少なかったが、優しく見守ってくれた。私には最高のお父様だった。
そういえば、夜中に工房に一人でいる姿を何度か見たことがあった。お父様の背中を思い出す。
泣きたくなった。けれども涙はでない。余計に悲しくなった。
短かかった。
だけど、楽しかった。
ローゼンメイデンの皆には迷惑をかけてしまった。私が謝るのも何だし、今更謝ったとこでなんの意味は無いが、謝りたいと思っている。
そういえば、私が奪ったローザミスティカはどうなったのだろうか。戻っているといい。いや、戻っていてもらいたい。彼女達にはアリスゲームがある。
私が言えることではないかもしれないが、最後まで頑張って欲しい。そう思う。
不思議と消えることに恐れは無かった。消えることを考えたことは無かったが、心は妙に落ち着いている。来るべき時が来たな、そんな感じだ。
もしかしたら、私はこうなることを予測していたのかもしれない。
生まれてよかった。
お父様に合えた。
いけ好かないやつだが、ラプラスの魔も悪いやつではなかった。
私は、幸せだ。
種類はあるだろうが、皆私を見てくれた。誰にも見られなよりは、はるかにいい。
私という存在が、世の中に残った。それだけで満足だ。なんて素晴らしい。
ふと、体が希薄になった気がした。
もうすぐ、なのか。未来というか、直ぐ先ではないか。予想外に早くて、ちょっと動揺してしまった。
何も見えなかった視界に、薄っすらと何かが浮かんだような気がした。無駄だとおもったが目を凝らす。何も見えない。
当たり前のことだが、少し、残念だった。最後くらい心静かに眠りたい。神様は意地悪だ。
そんなとき、
――――薔薇水晶。
声が聞こえたがした。頭に響くような、脆弱で脆いが、同時に強く美しい声が。
「お父様……?」
幻覚だろうか。いや、私のいる所は、そんなものを越え場所だ。
なら夢か。
「お父様……、私は……」
声が擦れる。少しずつ自分が消えていくのが分かる。
姿は見えない。だけど、存在を感じる。
「私は、お父様の……ために生きる事ができましたか……?」
その手が、私の頬に触れた。
暖かい手だ。
たとえ夢でも、いい。また触れてもらうことができたから。
お父様の顔が浮かぶ。
いつもと同じで無表情。
だけど、私にはとても穏やかな表情に見えた。
足が、腕が、体が、顔が、動かない。全てが、軽い。密度が無くなっていく。
ああ。
お父様、ラプラスの魔、水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、雛苺、ローゼンメイデン、アリスゲーム。
私は、幸せだ。
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一応、アニメ最終回の後の話です。
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