トントントントン…一定のリズミカルな音と、遮光カーテンから漏れる光で、僕は目を覚ます。
だけど身体は言う事を聞かない。その内、ぱたぱたという靴音が部屋に向かってくる。
「マスター、起きてよ。もう起きなきゃいけない時間だよ。」
眉を釣り気味にさせた蒼星石は左手に菜箸を持ち、ちょっと古ぼけた割烹着に身を包み、まだ布団にこもる僕を見下げる。
襖からこぼれる味噌汁と焼き魚の匂い。あぁ、さっきの音は、蒼星石が朝食を作ってくれている音だったのか…
「…んー…蒼がキスしてくれなきゃ起きない…」
「え…?そ…そんな僕…ますたぁ…」さっきまで強気だった声が一気に弱気へと変わる。
「起きない。」また頑固に言い張ってみると、蒼星石は誰に見られているわけでもないのにキョロキョロと辺りを見回してから、
ゆっくりと腰をかがめ、長い横髪をかき上げながら僕の頬にちゅっと軽く唇を当てる。
「さ、マスター起きて!」
「ほっぺなんか嫌だ…口にお願い…」
「えっ…そんな…僕ますたーの言うとおりにしたのに…」蒼星石は悲しそうに俯くが、
「じゃあ今日遅刻したら蒼星石の所為だな…あ〜あ…」
僕の言葉を聞くと、蒼星石は眉をへの字にしたが、もう一度跪き、今度は僕の唇に軽くキスをする。
僕がその瞬間を見逃すはずも無く、唇が触れた瞬間蒼星石の唇を僕の何周りも大きい唇で捕らえ、思いっきり吸ってやる。
「?!んぁっ…やっ…」
歯を下でこじ開け、歯茎の上や下を摩ってついには下を無理やり絡めて、さっきより強く強く吸ってやる。
ちゅぱ…
唇と唇が離れると、唾液が糸を引いて僕達の間を結ぶ。
「蒼の味がする…」
「なっ…何馬鹿な事言ってるの?!もうお魚焦げちゃうよ…早く起きて!!」
そう言って今度は腕を強引に引っ張り立たせる。
「はいはい……今日からまた頑張ろうな〜」
(…本当は…ずっとずっと傍に居て欲しいよ、マスター)
----
あまりにも別に書いてる物が鬱展開だからやってやった。後悔はしてない。
とりあえず明日から仕事頑張りましょう。