「ん〜ふっふ〜♪ん〜ふっふ〜♪」 
「ずいぶんとゴキゲンだなお前……」 

今宵は聖夜。クリスマスイヴ。街は雪と騒ぎに包まれる。そこ。一日遅れとか言うな。 
ここ桜田家も例に漏れず――漏れる少年が一人いるが――楽しげな空気に満たされていた。 
のりは相変わらず楽しげにドールたちの相手をし、 
そのドールたちは「くんくんクリスマススペシャル」に夢中である。 
ただし、翠星石だけは「みんな子どもですぅ」と言って何故かジュンの部屋にいた。 

「これだからヒキコモリのちび人間は困るですぅ。聖なる夜を祝うのは紳士淑女の嗜みですぅ〜♪」 
「誰がヒキコモリで誰が淑女だって? 
 まったく……普段は 
 『そんな子どもみたいに騒ぎ立てて、まったく世話が焼けるですぅ』とか偉ぶってるクセに 
 クリスマスは別なんだな性悪人形。 
 あと、クリスマスツリーに短冊かけたってサンタは叶えてくれないぞ。七夕に彦星と織姫に頼め。 
 そんなボケ今時ベタだ」 

憮然とした口調で言われて翠星石は手を止める。 
ジュンの部屋に飾られた小型のクリスマスツリーには何やら色々書かれた紙片が吊るされていた。 

「あ〜らちび人間はサンタクロースにお願いするのにメッセージカードを使うのがおかしいと言うですか? 
 ああ、世の清らかな子どもたちの夢を踏みにじるなんて、信じられないくらいの外道媒介ですぅ」 
「ぐぬっ……」 

言われてみれば幼稚園や小学校には「サンタさんにお願いのお手紙を書きましょ〜」とか言うところがあった。 
サンタクロースを信じる子どもの話を引き出されて「サンタなんているか」などとは言えないのがジュンである。つんでれつんでれ。 

「というわけでぇ、翠星石を抱っこするです」 
「は?」 

脈絡皆無な要求にしばし唖然。 
思考能力が戻ってきてからまず考えた事は、『こいつ本当にあの性悪人形か?』。 
契約を交わして以来、時折強がりながらも自分に甘えるようになった翠星石だが、今回はその強がりが見られない。 
偉そうな態度は相変わらずだが、なんというか恥じらいがない。むしろ喜色すら感じる。 
ということはこの要求は甘えではなく何かの企みなのだろうか?だがこんな時に抱っこして何になる。 
それこそ甘えとしか説明がつかない。 
次に考えたのが要求の理由。『というわけで』とはどういうわけでだ。 

「そんなの決まってるですぅ。ちび人間には絶対服従しか許されないんですぅ♪」 

上機嫌にかざすは短冊……もといメッセージカード。 
書かれた言葉は『だっこするです』。 
――待て。そりゃサンタクロースの正体は大人であって、僕ももう子どもじゃない(自称)。 
けどプレゼントもらうかあげるかで言えばまだもらう側の歳だぞ。 

「関係ないですぅ〜。ちび人間は翠星石のマスターですから翠星石に貢ぐのが当たり前です」 
「おい……今にはじまったことじゃないけど、マスターって言う割には随分人使い荒いな…………」 
「いーいーかーらー早く翠星石を抱っこするです〜〜〜〜〜〜〜!」 

ベッドに乗ってジタバタ暴れる自称淑女さま。 
抱っこするくらいで静かになるなら安いものかと溜息交じりに腰を上げ、翠星石を抱きかかえる。 
……。 
…………。 
………………。 
……………………? 

(あれ?) 

いつもならここで「遅いですぅ!まったくほ〜んとにちび人間は使えないです」とか言われそうなものなのだが…… 

「ぇへへ♪」 

なんだかみょ〜にご満悦だ。実に幸せそうな表情で体重をこちらに預けてくる。 

「な、なんだよ? なんだかいつもと違うじゃないか」 
「ジュン、今日はクリスマスです」 
「へ? あ、ああ。そうだけど、それが何なんだ?」 
「クリスマスにはプレゼント交換があるです」 
「……そういえばそんなものもあったな」 
「だから、翠星石からのクリスマスプレゼントです」 

どこにしまっていたのか、小さな箱を取り出した。 

「……いいのか? ていうか交換?」 
「いいからとっとと開けやがれですぅ」 

乱暴な言葉遣いだが笑顔は健在。翠星石を落とさないようそのままベッドに腰を下ろし、受け取った箱を開ける。 

「……お前、バレンタインともごっちゃにしてるのな」 

箱の中身はハート型のホワイトチョコ。 
それだけで、じゃれついてくる翠星石に対しての戸惑いはあっさり消え去り、甘える姫君の髪を手櫛で梳いてやることにした。 

「聖繋がりだから問題ないです」 
「ま、それはそれでお前らしいか」 

微笑み合う二人の姿はまるで仲睦ましい恋人同士のそれである。 

「こんなところ真紅に見られたらちび人間はきっといびられるですぅ」 
「どうせあいつらテレビに夢中だよ」 

こうして聖夜は更けてゆく。 

ところで、そんな虫歯になりそうな空気に満たされたジュンの部屋の外では―― 

「ああ、翠星石……あんなに甘えて…………」 
「……お酒を飲ませると随分と素直になるのねあの娘…………」 

妹離れしつつある姉の姿に目の幅涙を流す蒼星石や 
ジュンの好感度について少なからず焦燥を覚える真紅が覗いていたりする。 
「くんくんクリスマススペシャル」は実はとっくに終わっていた。 
ちなみに雛苺はイチゴたっぷりのクリスマスケーキに夢中である。 
なお、部屋の中ではさらなる展開になりつつあったが、それは二体のドールにより未然に防がれた。 

(゚∀゚)<性夜なのはイケナイと思います! 

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