ある日の出来事。
「純。昨日、紅茶がきれていたでしょう?買ってきなさい。」
まだ、ベッドに入ったままで出てきそうにない純に、真紅が言う。
純はまだ眠たいのか、目を擦りながら答える。
「……なんでぼくが買いに行かなきゃならないんだよ…」
「今はノリがいないわ。あなたしかいないのよ。」
今日、純の姉であるノリは学校に行っており家には純とドール達しかいない。
「後でノリに買いに行かせりゃいいだろ…」
純は極度の引きこもり。外へでるなど、無理な相談だった。
「やっぱり、ダメ人間はいつまでたってもダメ人間ですぅ。」
横にいた翠星石が茶々を入れる。
「うるさい!お前は黙ってろよ!」
ベッドから起き上がり、眼鏡をかける純。
「だいたい、お前は起きるのが遅すぎるですぅ。そんなことだから、引きこもりなんですぅ。」
いちいち痛いところを突いてくる翠星石。
「いちいちウルサい!そんなに言うならお前が買いに行けよ!」
また始まった…とばかりにため息を吐く真紅。
「まったく…仕方がない下僕ね。」
「…で、なんでこんなことになるんだ?」
「そんなことしるかですぅ!」
近所の商店街への道のり。純と翠星石が、並んで歩いていた。
あのあと、真紅はこのような提案をしたのだ。
「なら、二人で買ってきなさい。純、翠星石、依存はないわね?」
純としては、依存がありまくりだったのだが、そのまま真紅に押し切られ、今に至るのだった。
(なんで僕がこんな性悪人形と…)
(なんで翠星石がチビ人間なんかと…ですぅ…)
二人は無言で歩き続ける。
目当ての店に着いた二人。
「えっと…確か…。」
棚を調べていく純。しかし、どれがどれだかまったく分からなかった。
(困ったな…どうすれば…店員に聞くか?いや、そんなのは無理だ…)
「なにやってやがるですぅ!紅茶くらい、さっさと選びやがれですぅ!」
棚の前で、そわそわしている純をみて急かす翠星石。
「…どれがどれだか、分からないんだよ。」
困った顔をする純。
「まったく……んっ…そうですぅ。…チビ人間!」
何かを思いついたように、純を呼びつける翠星石。
「あ、違うですぅ!もっと右へ行きやがれですぅ!」
「うるさいな!耳元で騒ぐなよ!」
店の中なのに、騒ぐ二人。
今、純は翠星石を抱きかかえている。
先ほど、翠星石が困っている純を見かねてこう言い出したのだ。
「ほら、チビ人間。いつも真紅にしてるみたいに、私を抱き上げるですぅ。」
「翠星石が、紅茶を選んでやるですぅ。」
で、こうなっているわけだが。
自分の腕の中で紅茶を真剣に選ぶ翠星石をみながら、純は思う。
(やっぱり…同じアリスドールっていっても、真紅とは感じが違うな…)
翠星石の髪が、手に当たる。
(髪の毛も、どちらかというと真紅よりふわっとしている感じで…)
「あった!これですぅ。」
「…えっ!あ、あぁ。見つかったのか?」
あまりにジロジロと翠星石を見ていたため、少し焦る純。
「?……ほら!さっさと会計にいくですぅ。」
帰り道。少し時間がかかりすぎたが、なんとか紅茶を買うことができた。
「…疲れた…」
一人つぶやく純。
「このくらいで疲れるなんて、先が思いやられるですぅ。」
……こいつは、毒づくことしかできないのか?
「でもまあ、チビ人間にしてはよくやったほうですぅ。誉めてやるですぅ。」
「…珍しいな。お前が誉めてくれるなんて。」
純が言うと、翠星石は顔を真っ赤にして弁解する。
「かかかか、勘違いするなですぅ!きょ、今日は少しはましだと言っただけですぅ!」
そんな翠星石をみて、純は可笑しくなる。
(こいつらがいなければ、ぼくはこんな風に笑えなかっただろうな)
「…おい。性悪人形。」
んっ?と、こちらを振り返る翠星石。
「今日は…その、なんだ…ありがとうな。」
翠星石は、そんな素直じゃない純をみて、クスクスと笑う。
「な、何が可笑しいんだよ!…ほら、こっちこいよ。」
「?」
「抱っこしてやるから、こっちにこいって。」
「……真紅の気持ちも、少しは分かるですぅ…<ボソッ>」
「なんか言ったか?」
「何でもないですぅ!」
純の腕の中には翠星石。
素直じゃない純の、精一杯の感謝だった。
〜fin〜
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世界陸上終了&再放送再開うp。
文章つたないのはかんべん。