唐突ですが、なんとなく書いたので。
翠星石派ですが、翠星石ものが多いのであえて蒼星石で。
『蒼の目覚め』 1
ローゼンメイデン……ローザミスティカにて魂を宿す不完全なる人形たち。
ジュンは彼女たちの、まるで本物のような身体に興味を持っていた。以前触れた真紅の肌は人間のようだった。
どこまで人間のそれと同じかを純粋に興味から確かめたかったが、実行できるほどの勇気を持ち合わせていなかった。
真紅や翠星石相手ではあとが怖そうであるし、子供子供した雛苺で試すのは若干抵抗がある。
(確かめたい……ああ、でもなー)
真夜中ドールズが眠りについた後、鞄を見ながら一人悶々と悩んでいると、そのうちの一つが開いた。
「ん……?」
中から出てきたのは蒼星石だ。翠星石とは対照的にボーイッシュな外見をした薔薇乙女。他のドールズと比べると
常識を持ち合わせているが、真面目すぎてどこか近寄りがたいという感想をジュンは抱いている。
「ジュン、どうしたの?」
「何のことだよ?」
「このところどこか思い詰めたような表情をしている」
ジュンは驚いた。蒼星石は自分のことなど興味を持っていないだろうと思っていたからだ。
「そんなことない」
「いや、前のボクと似たような顔をしているんだ。翠星石や真紅たちを敵に回していたときのボクと……」
(そんな大層なことじゃないんだけどなー……)
「君には感謝しているんだ、ジュン。翠星石があんなに楽しそうにしているのは久しぶりに見るし、ボクだって
皆と一緒に暮らせて嬉しい。だから、何かボクにできることがあったら……」
(…………)
そのとき、ジュンは自分の悩みを解決してくれそうな存在が目の前にいることに気づいた。近寄りがたさから選択肢に
入れることを無意識にしていなかったが、蒼星石は翠星石のように騒ぐ性格ではないし、あまり女性を感じさせない外
見は、自分がやろうとしていることの抵抗感を和らげそうだ。
『蒼の目覚め』 2
「蒼星石……こっちに来てくれないか……」
ジュンの言うとおりに蒼星石はテクテクと歩いていく。ベッドの下まで来ると、ジュンは静かに蒼星石を持ち上げて
自分の膝の上に置いた。
「ジュン……?」
少し驚いて蒼星石はジュンを見上げる。
「ん……」
右頬を静かに撫でられて蒼星石は小さく声を出した。
「あたたかい……本当に生きているんだな……ローゼンメイデンは……」
「そうだよジュン。でも、そのことはジュンが誰よりよく知っているんじゃないの?」
「生きているとかそういうことじゃないんだ。僕は、蒼星石の肌のあたたかさに驚いているんだ。本当にあたたかい」
蒼星石はキョトンとした表情を浮かべたが、目を閉じてジュンの手の上に自分の小さな手を重ねる。
「うん、ジュンの手もあたたかいよ。考えてみたら、ボクはこういう触れ合いをあまりしてこなかったように思える」
「そうなのか……」
ジュンは指の腹で蒼星石の頬や顎、うなじを優しく撫でていく。
「ん……ジュン……?」
必要以上の接触に、蒼星石は少し戸惑いながらジュンを見る。膝の上に抱えられているため、ジュンの顔が近い。その
顔は少し赤みを帯びて蒼星石をじっと見つめている。その視線に若干の恐怖と、そしてまた若干の何かを胸の奥に感じ
ながらジュンのなすがままにされる。
「ダメだよ……くすぐったいってば……」
少しふざけた声で言うつもりだった。しかし、その意思とは反して、自分でも驚くぐらい切ない声だった。
「あれ、おかしいな……ボク……」
自分の身体の奥の変化に戸惑い伏目になる。その潤んだ瞳のまま、チラっとジュンを見上げる。
(か、可愛い……)
蒼星石の肌があまりに人間のそれと同じことに夢中になって撫で続けていたジュンは、その切なげな蒼星石の瞳を見て
素直にそう感じた。外見がボーイッシュなだけ、その仕草は蒼星石が女性であることをいやが上にも強調させた。
「蒼星石……」
さっきまでより優しく蒼星石の頬を撫でながら、ゆっくりと蒼星石を抱き寄せて耳元に口を近づける。
「ジュ、ジュン……?」
「僕は君たちの全てを知りたい……。今は蒼星石、お前のことをもっと……」
「え……?」
ジュンの熱い息がかかるのを感じながら蒼星石はその言葉の意味を考えた。
「ジュン、それって……」
ジュンの指がそっと蒼星石の胸元のリボンをつまむ。蒼星石は一瞬悩むような表情になったが、顔を伏せて小さく呟いた。
「…………………………いいよ」
『蒼の目覚め』 3
「ん……あ……」
上着を丁寧に脱がされた蒼星石は、ジュンの指が胸や背中を撫でるのを受け入れていた。そのたびに抑えても声が漏れる。
「蒼星石、やわらかい……あたたかい……」
小指の先で蒼星石の控えめな胸を横から優しく撫でる。
「ジュンの指も……はぁ……あたたかいよ……はぁ……はぁ……」
乱れた息をもう隠そうとしないで、蒼星石はジュンの指を感じていた。以前女の子がマスターだったとき裸の胸に触れら
れたことはあったが、それとは明らかに違う感覚に蒼星石は戸惑いを覚えていた。
「なにかおかしいよ……ボク……こんな感覚初めて……」
胸の先に小さくついている蕾が控えめに自己主張を始める。
「蒼星石、僕の指を舐めて……」
「え……?」
自分の身体の奥にゆっくりと火をつけてきた指が離れて切ない視線を向ける。その潤んだ瞳の前にジュンの指がつきつけ
られる。人間の同年代の男としては細い指。蒼星石は、この指がどれだけ凄い技巧を持っているかを知っている。人形の
魂を呼びもどし、薔薇乙女をすら修復できる奇跡の指だ。
「あ……ジュン……」
その指に、蒼星石は敬意と、そして初めて感じた欲情を込めてキスをした。
「ちゅ……」
そのまま小さな舌で丁寧に舐めていく。
「ちゅぶ……ちゅ……ちゅ……ちゅぅ……ちゅっぷ……」
むき出しの胸をジュンの拳に無意識にすりつけながら、蒼星石は夢中でジュンの指を舐めた。
「ちゅ……ちゅ……ちゅぅぅ……ちゅぷっ……ちゅぷっ……」
肌よりもあたたかい、いや、熱いと言っていい蒼星石の舌にとろけるような感覚をジュンは感じた。
「蒼星石……いいよ……」
「ん……ジュン……」
切なげにジュンを見る瞳に答えるように、ジュンは蒼星石に舐められて湿った指で蒼星石の乳首を優しくつついた。
「……! んんぁ……ああああっぁぁっ……!?」
高まっていた身体にとって、その一撃は最後のとどめとなった。蒼星石は今まで体験したことのないような、身体が浮き
あがる衝撃を感じながら、ゆっくりとジュンの胸に倒れかかった。
「え……蒼星石?」
ジュンは我に返ると、慌てて蒼星石の様子を見る。もしかしたらネジが切れたのかもしれない。
「すー……」
その小さな声にジュンは安堵の表情を浮かべる。
「寝ただけか……驚かすなよ……」
ジュンは幸せそうな寝顔をしばらく見つめる。先ほどまでしていた淫らな行為のことを振り返ると、今更ながら顔が赤く
なるやら青くなるやら。
ジュンは優しく蒼星石を抱き上げると、彼女の鞄の中に丁寧に入れ、そして自身も眠りについた。
『蒼の目覚め』 4
翌朝。
ジュンは目覚めるなり視線を感じた。
「……?」
視線を感じる先では、蒼星石がもじもじした様子でジュンを見ていた。
「お、おはよう、ジュン……」
「あ、ああ、お、おはよう、蒼星石……」
お互い昨夜の行為を思い出して、どちらからともなく赤くなる。
「……ジュン?」
「蒼星石、どうしたです?」
「おはよーなの!」
その様子を不審げに見つめる真紅と翠星石。何も気づかない雛苺だけ能天気だ。
「そ、そうだジュン、朝ごはんができているみたいだよ」
「そ、そうなんだ。ありがとう、蒼星石」
とってつけたような蒼星石の言葉に、これまたとってつけたように礼を言うとジュンはバタバタと部屋から出ていった。
「さ、朝ごはん、朝ごはん」
そのあとを蒼星石はついていく。部屋に残された3体のドールズがぽかーんとした表情で扉を見つめる。
「……あの二人、いつの間に仲良くなったのかしら?」
「蒼星石、なんかとても喜んでたです」
「雛も仲いーのー!」
「蒼星石、昨日は……」
「い、言わないで! は、恥ずかしい……」
何か言おうとするジュンの口を蒼星石はジャンプして塞ごうとする。
「やっぱ昨日のは夢じゃないんだ。蒼星石と……」
「わー! わー!」
ぴょんぴょん飛びかかる蒼星石にジュンは微笑みかける。
「蒼星石、これからもよろしく」
「もう…………馬鹿…………」
人差し指をもじもじとくっつけながら、頬を染めた蒼星石は小さく呟いた。だが、その表情はとても幸せそうだった。
おしまい
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執筆時間1時間。
眠くなってきたので最後はちょっと駆け足ですみません。
ジュンが原作とは違い爽やかな感じなのは見逃してください。