今日は夏祭りだ。
まずはりんご飴を買ってなめつつ屋台を見物する、ふと気になる看板があった。
『カラー雛苺釣り』
なんだろう?
屋台を覗いてみると1m四方のタライの中に小さな雛苺が何匹も入ってる。
赤、青、緑、黄色、色鮮やかに塗られた雛苺がとてもかわいらしい。
「「ヒナが鬼やるの~」」 「「ドロップき~~っく」」 「「ヒナのぼりなの~」」
雛苺達はタライの中で鬼ごっこをしたり、プロレスごっこをして遊んでいる。
かわいいな、欲しいな。
僕は家までダッシュで帰り、お母さんに頼み込んだ。
「雛苺飼いたいんだ!僕が世話するから飼っていいでしょ?」
お母さんは顔をしかめて大きくなったら飼いきれないとか食費がかかるからと言ったけど説得する。
お母さんの「どうせすぐに死んじゃうから」という言葉にショックを受けたが、許してもらえた。
僕は再び全速力で雛苺釣りの屋台に戻る。
「坊ちゃん、釣ってみるかい?一回100円だよ」
屋台のおじさんが声をかけてくる、早速やってみよう。
100円を渡すとおじさんは飴のついた糸をくれた、これで釣るらしい。
タライの中で雛苺同士で楽しく遊んでいたが僕が飴を垂らすとこっちに注目が集まる。
「「「お菓子なの~」」」 「「「飴ほしいの~」」」 「「「お腹すいたの~」」」
飴の下に一斉に集まり、飛びついて飴を取ろうとする。
赤、緑、青はたくさんいたが、一匹だけ紫色の雛苺がいた。
他の雛苺は仲間と遊んでいたのに一匹だけボールを転がして遊んでいた子だ、この子にしよう。
目の前に飴を垂らしてやるとボールを放して飛びついてくる、このまま引き上げれば釣れる。
引き上げようとすると紫雛苺に他の雛苺もしがみついて一緒に上がってこようとする。
屋台のおじさんは棒で紫以外をタライの底にバシバシと叩き落す。
「はいはい、釣るのは一匹だけね。坊ちゃんウマイね~、紫はアタリだよ」
おじさんは釣った雛苺をビニール袋に入れ、口を輪ゴムで縛って渡してくれた。
家に帰ってビニール袋を開けてみるが雛苺はぐったりとして動かない。
屋台のおじさんに言われたとおりゼンマイのネジを巻いてやることにする。
蝶ネジを取り出し差し込む穴を探したが見つからない。
思いついてスカートをめくり上げ下着を下ろしてみるとお尻に穴が開いていた。
お尻の穴に蝶ネジを差し込もうとするが中々入らない。
三分の一ほど入ったところで左右にグイグイひねってみると雛苺が動き出した。
「うわ~~ん!!いたいの~~!穴が違うの~!」
どうやら動かなかったのはビニール袋に入れてたため酸欠になったらしい。
僕は雛苺に謝り、今日からこの家で雛苺を飼うことを説明すると大喜びしてくれた。
さっそく一緒に遊ぶが雛苺は左足を引きずっている、どうしたんだろ?
「・・・昨日ぶつけちゃったのよ、大丈夫なのよ」
しばらく遊んでやるとお腹が空いたと騒ぎ出した、何を食べるのかな。
「うにゅ~が食べたいの、白くて丸くて甘くてフワッ~としてるのよ」
う~ん、なんだろう?白くて丸い?
台所にあったダイコンを輪切りにして与えてみる。
「違うの~こんなのじゃないの~もっとフワッ~っとしてるの~」
ダイコンを摩り下ろして大根おろしにして与えてみる、手間がかかるなあ。
「違うの~!!辛いの~!こんなの食べたくないの~」
贅沢を言う雛苺に好き嫌いはダメだぞと言い聞かせ、大根おろしを食べさせる。
2~3日もすると紫色だった色がだんだんと剥がれてきた。
どうやらスプレーで着色してあっただけらしい。
めずらしい紫雛苺だと思ったのに、どこにでもいるピンク雛苺になっちゃったなあ。
「ごめんなさいなの~・・・」
普通のピンク雛苺を前にしてがっかりしてると雛苺はしきりに謝る。
お詫びのつもりなのか、ダンスを踊ったり、歌ったりしてくれるが気分は晴れない。
お前、いまだに足を引きずってるけどぶつけただけじゃなかったのか?
「・・・うゆ~、本当は生まれた時から足が不自由なのよ・・・」
雛苺の話を詳しく聞くと、体に障害のある雛苺は目立つような色に塗って、早めに売って処分するらしい。
僕は屋台のおじさんにすっかりだまされてしまったようだ。
「あのね、あのね・・・ヒナがアリスゲームに勝てば足も治って、人間になれるのよ」
他の人形姉妹を倒すと雛苺が人間になれるらしい。
近くに真紅を飼っている家がある、連れて行ってみよう。
山田さん家の真紅は畑で草取りをしていた。
それにしても年寄りの真紅だ、頭は白髪だし腰も曲がってる。
赤いモンペをはいて、頭につけてる布もヘッドドレスではなく赤い手ぬぐいだ。
「アリスゲームなの~~~!!」
雛苺が僕の手から飛び出し、足を引きずりながら突進していく。大丈夫かな?
相手は婆さん真紅だが身長20cmくらい、雛苺は子供で10cmしかないし、足が不自由だ。
雛苺はポコポコと老真紅を殴りつけ、老真紅はホッホッホと笑って受け止めている。
しばらくすると老真紅は「負けたのじゃわ~」と言ってコテンと後ろに倒れる。
「ヒナが勝ったの~!ろーざみすてぃかを渡しなさいなの~!」
老真紅は笑いながら腰につけた巾着袋から飴玉を取り出し雛苺に渡す。
「おいしいの~~」
畑の脇に座って真紅の話を聞くことができた。
ローゼンメイデンはそれぞれ人気の差で生産数が違うのでアリスゲームはほとんど成り立たないらしい。
人気のある翠星石、水銀燈に生産が集中していて雪華綺晶がほとんど生産されなかった。
全種類のローザミスティカを集めるのは無理ということらしい。
「人間と一緒にいつまでも暮らすのが一番の幸せなのじゃわ」
雛苺、人間になるのは無理みたいだ。残念だったな
「飴おいしいの~」
老真紅に手を振って別れると雛苺を抱えて家に帰る。
家に帰ったら紫色が残っている服を洗ってやろう。
ネットで通販サイトばかり見てると肩がこる。
というわけで僕は肩こり解消用に低周波治療器を愛用している。
「ジュン、たまには外に出て運動しなさい。そんなものは迷信に決まっているわ」
真紅は低周波治療器を怪しげな健康法と一緒にしてるようだ。
これは真紅に試してもらわないといけないな。
「じゃあ、ちょっとだけ試してみろよ」
真紅の両手に電極を持たせスイッチを入れる。
「気持ちいいのだわ・・・」
体をぴくぴくさせながら目を閉じて気持ちよさそうにしている。
よし!強さを上げてみよう!まずは中!
「あ!ああああ!!イイイイィィィィーーーー!!」
全身をビクビクと仰け反らせ、首をガクガクと振り、口からは舌が飛び出す。
気持ち良いというか感じてるな。
次は最強!
「と、と、止めるのだわ!ダワダワダワダワダワダワダワダワダワダワダワダワダワダワダワ・・・・」
なんかダワダワ言い出したぞ。
真紅の目はピカピカと点滅して首が360度グルグルまわり、体全体がエビのように弓形になる。
手足をバタバタ振り回して股間からは湯気がたっている、どうやらお漏らししてしまったようだ。
そろそろ止めてやろう。
「真紅、気持ちよかったかい・・・真紅?」
真紅は動かなくなっていた。
真紅の関節からは白い煙が上がり、青かった目は白く濁ってしまった。
ゼンマイを巻いても、強く振っても動き出さない。
真紅は壊れてしまった。
僕が真紅を壊してしまったことを知ると、翠星石と雛苺は逃げるように家から出て行ってしまった。
僕は真紅の亡骸を机の上に座らせ話しかける。
「人形が動いてて喋ったりするなんて、今になると夢だったみたいだな・・・」
僕は再び学校に行くようになり、友達もできた。
それでも一日の最後には真紅にその日の事を色々と話す。
机にちょこんと座った真紅におやすみと言うと、僕はベッドに入り深い眠りについた。
真紅「ジュン」
ジュン「なんだよ」
真紅「たまには紅茶ではなく、ミルクティーが飲みたいわ。淹れてきなさい」
ジュン「はぁ…はいはい、分かったよ」
真紅「いい子ね」
30分後…
ジュン「ほら、淹れてきてやったぞ」
真紅「ありがとう、頂くわ。」
ジュン「どうだ?」
真紅「……そうね。紅茶とはまた違う、優しい香りと味…。ジュン、まるであなたの様…ふふ」
ジュン「真紅…」
真紅「ジュン…」
ジュン「それ、こげ茶色の絵の具に白い絵の具を混ぜたやつ」
真紅「ブブゥ!」
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