ジュンは真紅を抱きかかえて砂漠を歩き続けます。

もう何時間歩いたのでしょう、見渡す限りの砂の海は果てが見えません。
ジュンは真紅を地面に放り出します。
「お前も足が有るんだから、自分で歩けよ」
真紅は黙ってジュンの後をトコトコとついて来ます。

もう何時間歩いたのでしょう、見渡す限りの砂の海は果てが見えません。
ジュンは水筒に残った最後の一口の水を飲み干します。
「真紅は人形だから水なんか飲まなくても大丈夫だろ」
真紅は黙って捨てられた水筒を逆さにして振っています。

もう何時間歩いたのでしょう、見渡す限りの砂の海は果てが見えません。
ジュンは真紅の左腕をもぎ取るとムシャムシャと食べてしまいます。
「お前は僕の家でただで飲み食いしたんだから、返してもらうぞ」
真紅は黙って左腕のあったところを擦っています。

もう何時間歩いたのでしょう、見渡す限りの砂の海は果てが見えません。
ジュンは真紅の右腕をもぎ取るとモグモグと食べてしまいます。
「お前に毎日紅茶を飲ませてやったんだ、返してもらうぞ」
真紅は黙って右腕のあったところを見つめています。

もう何時間歩いたのでしょう、見渡す限りの砂の海は果てが見えません。
ジュンは真紅の左足をもぎ取るとパクパクと食べてしまいます。
「お前のドレスを修理してやっただろ、手間賃としてもらっておくぞ」
真紅は黙ってジュンの後を片足でピョンピョン跳ねてついて来ます。

もう何時間歩いたのでしょう、見渡す限りの砂の海は果てが見えません。
ジュンは真紅の右足をもぎ取るとガリガリと食べてしまいます。
「お前の腕を直してやっただろ、修理代としてもらっておくぞ」
真紅は黙ってジュンの後を芋虫のようについて来ます。

もう何時間歩いたのでしょう、見渡す限りの砂の海は果てが見えません。
ジュンは真紅の胴体をもぎ取るとバリバリと食べてしまいます。
「真紅は人形だから体の部品がなくなっても平気だろ」」
真紅は黙って首だけで転がってついて来ます。

もう何時間歩いたのでしょう、見渡す限りの砂の海は果てが見えません。
ジュンは真紅の首を食べようとします。
「これまで契約して力を分けてやったんだ、返してもらうぞ」

真紅は初めて口をひらきました。
「ジュン、私のことを忘れないように私の髪を一房持っていって。そしたら私を食べていいのだわ」
ジュンは真紅の髪を引きちぎってポケットに入れると首をモゴモゴと食べてしまいます。
ジュンは元気いっぱいに歩き出します。

もう何時間歩いたのでしょう、やっと街が見えてきました。
ジュンは街につくと食堂に入って食事を頼みます。
「何か食べる物と飲み物をください」

食堂の主人は言います。
「お金か値打ちのあるものを持ってきたら食わせてやろう」
ジュンは身に着けている服以外なにもありません。
「これで食べさせてください」
ジュンはポケットに入っていた美しい髪の束を差し出します。

次の瞬間、ジュンの体を突き破って人形が飛び出しました。
真紅はアリスとなってお父様のところで幸せに暮らしました。

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