連投は良くないと思うんだけど、色々なことを願ってもう一作。
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明け方5時ごろ、ジュンくんは目を覚ましました。
昨日は2時ごろまで楽地獄通販サイトに入り浸っていたので、
実質睡眠時間は3時間ぐらい。
でも、今日はせっかくの日曜日なので
(ヒキコモリといっても日曜日のアドバンテージは大きいのです)
ちょっと早めの朝食をかっこみ、今日の予定を立てていました。
「まず、通販サイト行って、買って。行って買って。それでもって買うか・・・」
良く分かりませんが。つまりは何か買うということです。
げっぷをするほどのコンフレークをおなかの中に入れて、二階に上がります。
しかし、突然のねむけがジュン君を襲います。
「寝不足・・・だよな、やっぱり」
ジュンくんは睡眠欲に負け、そのままベットに倒れこんでしまいました。

『か か っ た わ ね 、 ジ ュ ン く ん』

扉を少しだけ開けて中を覗いていたのり。その手には本が握られていました。

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「一人からの、スーパーミラクルひきこもり脱却法〜実践編〜 
 著:山田大学名誉教授 ハイデカ・マサオ・マリオ       」
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次にジュンくんが目を覚ました場所、それは全く見ず知らずのデパートの中でした。
座っている所のまん前に各階の案内表示板があるんだから間違いありません。
「な、なんだってこんなところに・・・」
まだうまく働かない頭を動かして、必死に考えます。
でもダメ、どうしたって思い出せません。
確か、朝食を食べたあと突然眠くなったとは覚えているんですが。
「もしや、悪の秘密結社に連れ去られて・・・・いや、まさか」
そんな冗談めいた言葉を考えながら、ジュンくんは休憩用のベンチから立ち上がります。
とりあえず、こんなところに長いは無用なのです。

おかしい、ジュンくんは、足に違和感を感じます。なんかスースーするのです。
!!ジュンくんの表情が一瞬で固まります。スカートです。スカートをはいているのです。
しかもこれってば、のりが昔通っていた中学校のもの、それをなんでジュンくんが着ているのでしょうか。
よくよく調べてみると、上着もそれです。胸の辺りのリボンがオシャレです。
「お、おちつけ、おちつくんだ僕。なんか辺な夢を見てるんだ。
 悪夢だ悪夢。もしかしたらあの性悪人形達の仕業かも・・・・」
落ち着け、と言っている割には全然効果なしです。

ガーっと目の前エレベーターが開きます。
「う、うわぁ」
うっとりするほどさらさらのストレートヘヤー。とても自然で上品な
ナチュラルメイクはきっと同姓の女の子だってうっとりするほどでしょう。
めがねがそんな全体の印象にちょこっとワンポイントを入れているのも
評価点が高いです。
 そんなうつくしい少女が、エレベーターの中の鏡に映っていたのです。
オウイエス!ジュンくんです!!

頭が混乱して、考えがまとまりません。
こんなの悪夢のほうがマシです。
それでも、ジュンくんは必死に考えます。
これからどうすればいいのか。
どうするべきなのか。

今日は日曜日ですが、幸いまだ朝の早い時間みたい。
人の数も少ないですし、うまくいけば、
あんまり目立たずに、ここから抜け出せそうです。

案内板を詳しく見ると、このデパートは、ジュンくんたちが住んでいる町より電車で
5駅分所にあるようです。電車さえ使えば、かっとびできるはずです。
ジュンくんは、スカートのポッケの中を探ってみました。
小銭出て来い、小銭出て来いました。電車賃分だけみつかりゃあとは
何もいりません。

『ライオンの親は時に我子を千仞の谷に突き落とすという。
 ヒキコモリにもそれぐらいひつようなんだなぁ
       〜ハイデカ・マサオ・マリオの言葉〜 

 その格好で家まで帰ってきてね。
 きっと、これでジュンくんは一回りも二周りも大きくなれるはずよ。
 ファイト!                 おねえちゃんより
 
 PS:もちろん電車賃はありません、かならず、誰かに借りて
    帰ってきてね、それも修行のうちだから。        』

ジュンくんの血管がプチンと切れました。
「ちくしょう!な、なんだって僕がこんな目に!」
床をドンドンとグーで殴ります。
しかし、その奇行は自然にみんなの視線の的となります。
(ヒソヒソ・・・あの子どうしたのかしら・・・)
じっとしているとこんな声まで聞こえてきそうです。
こんな格好をしている以上、絶対目立ってはいけません。自然に、自然に、ごく自然に振舞ってなければ
ジュンが男とばれて、変態少年と揶揄されて、
『ハレンチ!ヒキコモリ変態女装少年が日曜のデパートで破廉恥な行為を!』
と女性週刊誌の一面を飾ることになってしまいます。
とにかく自然でいること、そして、自然に家に帰ることが、今ジュンくんがもっともしなければならないことなのです。



ジュンくんは色々と苦肉の策を練らねばなりませんでした。
まず、ヒキコモリにありがちな挙動不審はNGです。これをやったらまずばれて、
変態女装少年であることが世間に露呈されてしまいます。
恥ずかしいのですが、胸を張って、堂々と歩きます。
また、蟹股歩きも変です。見た目はほぼ女の子なのですから、しゃなりしゃなりと、
ちょっとオシャレにエレガントに歩きます。
慣れてないこともあり、若干不自然ですけど、まあ合格点といったところでしょう。
一歩歩くごとに顔から火が出そうになりましたが、今はじっと我慢です。
トイレに行きたくなったのですが、男便所には入れませんでした。
「ま、まさか・・・本当にこんなことをしなくちゃいけないだなんて!」
 もはや恥も外聞もかなぐりすてて、女子トイレに入りました。
ヒキコモリのせいでこうなったというのならば、ジュンはヒキコモリを恨みます。
心のそこからヒキコモリをうらみます。

しかしそれもあと少し、あと少しでデパートの出口です。
ここのデパートを出て、電車に乗ってしまえば家までわずかないとまもかかりません。
今すぐに、どっかそこらへんを歩いている人にお金を借りて、
それでもってばっくれてしまえばいいんです。
どっちみち、こんな格好になることなんて、二度とないんですから。

(よし、次に出てきた奴がカモだ。お金を借りてばっくれないと)

入り口で張っていたジュンくんはそう決めました。
こういうのは決断が大事です。

「す、す、す、すみませぇん、じつは、ぼ・・・アタシ・・・」

なんとか女の子言葉でがんばろうとしますが、ヒキコモリであるとの恥ずかしさでどうにもなりません。
言葉が出ないんです。

「どうしました?具合でも悪いとか・・」

再びジュンの表情が固まります。その顔には見覚えがあるのです。
とってもよく知っています。むちゃくちゃに良く知っています。
トモウェです。

「トモエッ、どうかしたのー?」
「さっさと屋上行かないと、くんくん変身ショーが始まってしまうですぅ!」
「さっさと案内なさい、トゥモエ」

しかも、なんかおまけいっぱいついています!赤と緑とピンクです!
しかも赤なんて、なんか分かってるっぽくて、ジュンくんのことを見て、
ニヤリと笑いやがりました!

もうだめです。すべてが終わりなのです。

「すみません、この子たちに面倒まで見てもらっちゃって」
「い、い、いえ、そんな・・・・」
ジュンくんは裏声を使って言います。
なぜかジュンはトモウェ&愉快な仲間達と共に屋上にきています。
何か事情を知っていそうな真紅はともかく、雛苺が、これでもかってほど
女装したジュンになついてきているのです。
「オシャレさ〜んは、ちょっとおしゃれ〜アハンハーン」
なんか即興で作ったような歌を歌いながら、じゅんにぺったりとくっついています。
(柏葉でもいいから、何とかお金借りて逃げなくちゃ・・・・)
ジュンくんもそう考えているのですが、雛苺のせいで、それさえどうもうまくいきません。
なんとかこの場は取り繕って、終わり次第逃げ出すことにジュンくんは決めたのです。

「こらー!まてー、です!」
すいせいせきは、男の子を追っかけていました。なんか後ろに座っていた男の子が
すいせいせきの髪の毛のカールを逆巻きにしようとたくらんでいたそうなんです。
雛苺は雛苺で、「おねえさんのぼりー!」なんていいながらジュンの頭の上に
上っていたりします。
トモウェはそんな姿を見て、クスリと笑いました。
「・・・この子達変わっているでしょう?」
うんうん、とジュンはうなずきます。いつも見ているから分かってますが、
こうも客観的にみると、更に変わっています。
「でも、この子のお兄さんも、おんなじぐらい変わってるんですよ」
(!・・・僕のことだ・・・。柏葉の奴、なにを言うつもりなんだろう)

ジュン君の心に針が一本突き刺さりました。きっと「実はね、ヒキコモリなんです」とか
「とっても暗いんです」とか、ネガティブなことを言われるに違いありません。
それを考えると、心が冷たい水の中にしずんいってしまうのです。
段々意識が遠のいて、周りの風景が灰色に変わっていきます。
「そのお兄さんって、本当にとっても変わっているんですけど。とっても素敵な人なんですよ」
(え?)
心が、識が水の中からひょっこりと顔を出します。
「・・・男の子だけど裁縫が得意で、ほら、私が使ったハンカチも彼が縫ってくれたんです」
それは、小学校1年生の時に、ジュンくんがトモウェに誕生日プレゼントとして渡したものです。

(まさかまだ持っていたなんて)

「私、彼のことが大好きなんです。こんなに素敵なものを作り出せるすばらしい腕と心を持ってて、
 それに、この子たちにもすごく好かれているんですから」
何故トモウェはこんなことを女装しているジュンくんに言うのでしょうか?
のりから事情を話されて、話しているようにも思えないのです。
とすると・・・・

「・・・(ありがとう、柏葉)」
「え?」
ジュンは小声でそう言うと、よっこいしょっ、と雛苺を置き席を立ちました。
お金を借りることもせず、ジュンはその場から立ち去ります。
もうお金などいりません、どうどうと、歩いて帰るのです。
この格好でも、どんな格好でも、誰に見られても構わないのです、
ジュンくんは、ジュンくんなのですから。

デパートの屋上からエレベーターで降りていくジュンくんを
トモウェはウィンクして見送りました。
「トモウェ」の瞳はすべてをじっと見ているのです。



 太陽がちょうど頭の上に来たころ、ジュンくんはようやく家に戻ってきました。

「ジュンくん!お帰りなさい!どうだったどうだった?ひきこもり完治した!?
 とっても荒療治だから、ジュンくんの精神が崩壊するんじゃないかと思ってお姉ちゃんとっても
 しんぱいだったのよぅ!」

のりはかなり怖気づいていました。コーンフレークに睡眠薬をまぜたのものりですし、
着替えさしたのものり、デパートに運んだのものり、トモウェちゃんたちにデパートに行くように指示したのも
のりです。頭に鍋をかぶり、片方の手にすりこぎを持ってジュンくんの怒りにそうなえていました。

でも、まったくそんなことってばありません。
ジュンくんは上着を脱いで、いつもの洋服に着替えます。
そしてのりに告げるのです。
「明日から、図書館で勉強することにするよ。今までの遅れを取り戻したいし。」
「それって・・・それって・・・!」
のりの表情が一気に明るくなります。ジュンくんの心の中は、
手のひらではおさまりきらないような満足感で一杯なのです。

「成功だったのね!おねえちゃんうれしい!
 それじゃあ、それじゃあ次はこれなんかどうかしら!?アマゾン奥地の裸族のコスプレをして
 漢が集まる市場に放置するの!効果抜群だそうよ!」

「頼むからもうやめてよ、ねいちゃん・・・・」

でも、もう、のりヘンテコ作戦は勘弁なことには違いありません。

(了)

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