「第一回・ひないちごがきらなんとかに喰われちまったけど、
トモウェをどうやってごまかそう会議」
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真紅は100円ショップで買ってきたミニ黒板に、速筆でそう書きます。
いえ、正確には字があまりにも汚いので速筆に見えただけですけど。
「さあ、みんなでアイデアと持ち寄るのよ」
出席者は、翠星石、金糸雀、真紅、水銀燈、
そして遠路はるばる南米はアマゾンよりやってきてくださった
薔薇水晶さんの5人です。
あ、あと、雛苺も足だけあります。
討議は実に50時間に及びました。途中に3度殴り合いに
発展するほどの騒ぎになりました。
ちなみに殴ったのは、雛苺の足、殴られたのは金糸雀です。
そして3日目の夜、とうとう結論は出たのです。
『薔薇乙女の誰かがコスプレして、とりつくろって騙す、最後にドッキリカメラ』
机の上には栄養ドリンクと、ココアシガレットの山。
全員が全員疲労困憊でしたが、これ以上ないすばらしい案が出たのです。
あとは、だれがこの役を引き受けるかですけど。
「ここにある割り箸には皆の名前が書いてあるですぅ。ほれ、真紅、ひけです」
6本の割り箸にはそれぞれ名前が書いてあります。
真紅の右腕にここにいる全員の視線が集中します、どうか自分にだけは、
自分にだけはという気持ちが痛いくらいに腕に突き刺さってくるのです。
「これにするわ!」
真紅は思い切り割り箸を引き抜きます!
『チンコーン』
柏葉家のインターホンがなります。お金持ちだけあって、ちょっと高級そうな
インターホンの音です。
「はい、ただいま・・・」
ガラス戸には人影が映っています。
そのシルエットから、雛苺だと容易に想像がつきました。
「と、トモウェ、ただいま、な、なの。」
雛苺(仮)は苦笑いですけど、にっこりほほえみました。
「さ、桜田君、どうしたのその格好!」
雛苺に扮したジュンは、何一つ言いません。
なんで僕がこんな格好を、という考えばかりが頭をよぎります。
でも仕方ないんです。割り箸には何故か(確信犯的に)ジュンの名前が書かれていたのですから。
あとは、もう時の流れに身を任せ、雛苺の色に染められ。
各々の人工精霊がどこから探してくるのか、ジュンサイズの雛苺衣装を持ってきて、
高速で着付けを済ませて行ったのです。あの時、ジュンになすすべはありませんでした。
「ねえ、桜田君、一体どういうつもりなの」
ジュンは何も言いません、言えないのです。
ことの顛末を巴に話すと人工精霊のホーリエが机の2段目から狙撃する予定になっているのです。
(きっと、雛苺や真紅ちゃんたちのいたずらね、それなら・・・)
でもなんだか巴は自己解決してしまったようです、頬をにわかに緩ませながら、
お台所から小さな包みを持って着ました。
「ほら、ひないちご、うにゅうよ。たべたいでしょう?」
ジュンの表情が固まります!やばい、やばいのです。真紅達から言い渡された
極秘ミッションが始まってしまったのです。
つまり、「雛苺らしい行動を求められたらかならずすること!しなかったらホーリエで狙撃」なのです。
仕方がありません。正直雛苺の口調でしゃべるのさえ嫌ですが、狙撃されるよりましなのです。
「うにゅう、たべたい、のー」
まさに棒読み口調。心のこの字も入っていません、
「こら。いつもみたいに、上目遣いで可愛くおねがいしなくちゃだめでしょ」
確信犯です。巴確信犯。でも雛苺が普段そうしているというならば、
そうしなければ狙撃です。仕方ありません。
「トモウェ、おねがい。ひな、うにゅうがたべたいの」
軽くぶりっ子ポーズで目にちょっぴり涙を浮かべます。
死にたい、正直死にたい。ジュンの頭にはそんな言葉ばかりがぐるぐる回ります。
でも、そんな姿に巴は光悦な表情を浮かべていました。
今にもよだれをたらしそうなくらいの勢いです。
「はいはい、ごほうび、ごほうび」
そういってジュンの頭をなでなでします。
「ほらほら、ひないちごだっこしてあげるからおいで」
今度はだっこです!本物の雛苺のサイズならまだしも、
ジュンでは完全にサイズオーバー!一体この女はなにを考えているのでしょうか!?
「わーい、トモウェー!」
ジュンはある意味吹っ切れていました。もう半分どうでもよくなっていたのです、
命さえあれば、いつか、きっとなんとかなります。
巴の膝にジュンはちょこんと座ります。やっぱり完全にサイズオーバーの模様です。
むにゅう。
ジュンの背中になんだかやわらかい感触が当たります。
「ト、トモウェ」
「なぁに?」
「あの・・・その・・・・背中に胸が・・・・」
ジュンの心臓がもう光の速さで高鳴ります。ひきこもりの思春期にはあまりにも刺激が強すぎるのです。
雛苺口調も忘れて、すっかり素に戻っています。
「ウフフ。どうしたの・・・雛苺?」
どうやらわざとあててる模様です!
頬をうっすらと桃色にして巴はジュンに微笑みかけます。
何かが壊れる音がして、ジュンのリミッターが吹き飛びました。
あふれ出る思春期&ヒキコモリのエロパワー。大変です、きっと収拾なんかつきません。
理性という光を失った瞳が巴を見つめます。
「柏葉・・・僕は・・・僕は・・・」
(この続きは製品版でおたのしみください)