「じてんしゃ ほしいの!」
ひないちごは大きな声をあげていいます。
手は じたばた、じたばたとゆかを何度もたたくばかり。
「ええ、いいわよう、さっそくホジャスコにかいにいき
ましょうね」
のりは新聞のおりこみチラシをひないちごに見せます。
そこには、かくやすのくんくんじてんしゃのこうこくがありました!
ていかのはんがく以下のおそろしいねだんでうっています。
ああ、あこれがれのくんくんじてんしゃ!
ぼたんをおすと「くんくんたんてい!」とくんくんたんていがしゃべるのです。
ペダルをふむと「はんにんはきみだ!」とくんくんたんていがしゃべるのです。
そんなわけでふたりは、ちかばのジャスコにくんくんじてんしゃを買いにでかけました。
そこにはいろとりどりのくんくんじてんしゃのやま!まさにたからのほうこです!
「おじょうさま、ごしじょうされてみますか?」
ジャスコのてんいんさんが、ひないちごにじてんしゃをすすめます。
ひないちごのソウルがはげしくかやがきます。あこがれのくんくんじてんしゃにのれるのです。
ああ、なんてすばらしいのりごこちなのでしょう!スピードもすばらしく、
まさにひないちごのためにつくられたじてんしゃといってもかごんではありません。
のりのまえでとまろうとおもったひないちごですが、
スカッ、ブレーキがスカスカ言っています!
なんと、しじょうじてんしゃのブレーキがぶっこわれていたのです!リコールたいしょうです!
せいいっぱいこいだせいで、むちゃくちゃなはやさになったじてんしゃはそのままジャスコのしょうめんげんかんにとつげきするかたちとなりました!
ガッチャーン!
ガラスのはげしくわれるおと!くうちゅうをまうひないちごとじてんしゃ!まさにかんどうてきなじこのしゅんかんです!
「ううう、いたいのー」
ひょっこりおきあがるひないちご。よおく、みると、うでにはでっかいガラス片がささっているではありませんか!
でも、だいじょうぶ、ひないちごはローゼンメイデンの第6ドール。
ささってたってぜんぜんよゆうなのです。
「ほら、ひなちゃん、おみせからそんがいばいしょうふんだくったから、
これでべつのおみせにいって、そこでくんくんじてんしゃかおう、ね?」
のりはとくいのおどし節で、お店側から多額のお金をゆすっていました。
ひないちごも、なっとくしたようで、うんうんうなずきます。別のお店に行くのです。
しかし、そんがいばいしょうがくの実に9割9分をのりがちゃくふくしていたじじつは、あまりしられていません。
つぎにふたりは、げきやすのでんどう、ドンキホーテにむかいました。
ここもおりこみチラシにこうこくをいれていた会社のひとつです、
びっくりするようなやすさでくんくんじてんしゃを売っています。
「ほらほら、くんくんじてんしゃよ、ひなちゃん」
のりはそういって、980円のじてんしゃをひないちごにけしかけます。
たしかにこのじてんしゃはくんくんじてんしゃです。
でもためしに、ひないちごはボタンをおして見ます。
「オーーーーー!チビマルコチャン!」
まちがいなくクンクンたんていの声なんかではありません!どちらかというと、
トルコの日本人せんもんぼったくりしょうにんの
声というべきでしょう、そんなあやしさばくはつのこえです!
ねんのためにペダル部分もふんでみます
「イヤーーーーーハーー!チビマルコチャン!」
おそらくどういつ人物の声です。
そんなことからしょうひんの名前もよくよくみてみると、
「ぐんぐん伸びるたんていになれるかもしれいじてんしゃ」となっているではありませんか!
350%にせものです!よくみると、くんくんの顔もどこかほそきかずこばりです!
「のり!だめよ!これにせものなの!」
ひないちごは、のりのそでをひっぱります。ひないちごは本物のくんくんじてんしゃがほしいのです。
「これでがまんしなさいよう、かけいだってたいへんなのよう」
そういってのりはめがねをクイッと持ち上げます。
「うええええーんのりなんてきらいよーーー!」
ひないちごはかんきわまって、お外に飛び出していってしまいました。
「ううう、ぐすっ、ぐすっ」
ここは、電波をはこぶ、てっとうのうえ、てんけんようにつけられたのぼりはしごをいちだん、
いちだんゆっくりとなきながらあがっていきます。
ひないちごはもうつかれてしまったのです、じんせいにつかれました。のりにもつかれました、
これいじょう生きているのがつらくなったのです。
「おとうさま、いまいくの・・・」
ひないちごはてっとうから身なげする気まんまんでした。もうこの世になんのみれんもないのです。
風がびゅうっとふいてひないちごのかたをかぜのようせいがふっ、と押したような気がしました。
ひないちごの体は、じゆう落下していきます。
しかしなかなか地面にとうたつしません。
それもそのはず、ここ、東京タワーなんです。
「ひないちご!」
東京タワーから落下しているさいちゅう、ひないちごはききおぼえのある声をききました。
とってもやさしくて、ひないちごがいちばんだいすきな人、トモウェです!
「トモウェーー!!」
ひないちごもせいいっぱいおおきな声を出します。なおも体はじゆう落下を続けたまま。
「ほら!これをみて!あなたのために、くんくんじてんしゃをかってきたの!」
そこにはほんものの、こわれてもいないしんぴんのくんくんじてんしゃがありました、
きっとトモウェがおこづかいをはたいてかってくれたのです!
「と、トモウェー!!!だいすき!!」
スカイダイビングのようりょうで、ひないちごはトモウェのいるほうこう向かっていきました。
そして、すぽっ!とじてんしゃにジャストフィットします!まさにミラクル!さすがローゼンメイデンのちから!
しかし、ちきゅうのぶつり法則はひないちごのことをけっして見逃してはくれませんでした!
とてつもないじゅうりょくかそくど(G)がひないちごをおそいます!
でも大丈夫かのじょはローゼンメイデンですから、30Gかかってもきっと平気です。
だけど、じてんしゃそういきません!
きょうれつなGにたえきれるはずもなく、じてんしゃの部材がつぎつぎとほうかいしていくのです。
そして、全体の耐力がたえきらなくなったところで、おもむろに、じてんしゃははじけとびました!
あたりに、むすうのはへんが!そして、いちばんおおきなはへんは、一度上空にあがり、
そして、ひないちごのあたまめがけて落下してきました。
メキョ!へんなおとがして、ひないちごのあたまには大きなたんこぶができたのです。
「うぇぇぇぇーん痛いのーーー!」
じーこじーことほじょりんがまわる音なんてきこえません。
トモウェはあれいらいおこってじてんしゃなんかかってくれないのです。
もう、ひないちごはじてんしゃをあきらめました。
(めでたし、めでたし)