うわぁ、またスレまたぎだよ(つД`)
前スレ756の続きです。というか、これでラスト。
何スレにもわたって長々と……本当に失礼しました。
『……泉田……泉田』
誰かの呼び声が私の意識を覚醒させた。
誰だ? 誰が私を呼んでいるんだ? と、声に出して問うつもりが、声にならない。
『泉田、あなたには悪いと思ったけど、あなたの心の樹の枝を少し切らせてもらったわ』
冷静で品のある声が、何もない、何も見えない漆黒の闇の中に響き渡る。どこかで聞い
た事があるような無いような……そんな不思議な声だ。
『心の樹から生える枝や葉は、その樹の主たる人間が持っている思い出や夢。今回切り取
ったのは、泉田さんが持っている、僕たちに関わる全ての思い出です』
凛とした別の声が聞こえた。なんだ? 何を言っているんだ?
『もうお前は翠星石たちとは何の関係も無い、ただのデカブツですぅ。どこへなりと失せ
やがれです……』
また別の声だ。口の悪さとは裏腹に、寂しさを漂わせる口調だ。
『ジュンイチロウ、さよならなの……』
ひときわ幼い声の持ち主は半分涙声になっている。
最初に私に語りかけてきた声が、再び聞こえてきた。
『あとは、あなたの時間をほんの少し巻き戻すだけ……泉田、いつまでも元気で』
再び私の意識が遠のく。声にならない声で「待ってくれ!」と叫び、懸命に伸ばした右
手が何かに触れた。握り締めたと同時にたたらを踏んでしまった。
ドサッ! カラーン、カラカラカラ……コン
警杖の転がる乾いた音がアスファルトに響く。私は交番の前でへたりこんでいた。相勤
の巡査部長が交番から血相を変えて飛び出してきた。しきりに私の身体を気遣う巡査部長
に「大丈夫」と伝え、私は地べたに転がる警杖に手を伸ばした。
ふと、右手に違和感を覚えた。何かを握っている。手を開いた。
「……なんだ、これ?」
私の手の中には、黒く細いリボンのようなものがあった。いつの間に握っていたのだろ
うか、全く身に覚えがない。私はそれを無造作にポケットにねじ込むと、立番に復した。
残暑の陽射しの下、涼しい交番の中に思いを馳せながら。
<<つぶやき>>
おわりです。
夢落ちに近い(というかそのもの)ラストですが、もともと泉田くんは原作・アニメともに
登場しない人物ですから、話も一番最初に戻すのがベストかな? と思った次第。
ちなみに、泉田くんの心の樹の枝を切るよう決めたのは真紅。
反対したのは翠星石と雛苺。それを説得したのが蒼星石。
そのへんの話も書こうかと思いつつ、冗長に過ぎやしないかとも思い、やめました。
そうそう。泉田くんの手の中の黒いリボンは、もちろん、真紅のです。
お付き合いいただいた方々に多謝。