衝動的に書いてしまったので書き込みます。
 いろいろ好き勝手やってますがどうかお目汚しに。

 ドアをノックする。もう1時間もこんな調子だ。
「真紅ぅー、真紅ぅ。部屋に引きこもってないで出てくるです。ひきこもりは一人で十分ですぅ。」

 蒼星石だ。こちらに来る。
「・・・?ジュンの部屋の前で、一体どうしたんだい姉さん?」
なぜか真紅が引きこもってるです。体調が悪いとか何とか言って1時間もでてこないですよ。」
 真紅にしては珍しい。珍しすぎる。
「本当に体調が悪いんじゃないかい?そっとしておいてあげようよ。」
「それはありえないです。今日は『くんくん探偵第32話 マドリガーレの逓減率(pt.4)』なんですよ。子供
向けアニメにあるまじき凄惨な殺人事件、そして伏線張りまくりの物語に今週ついに決着が着くんです。真紅が
あれを見逃すなんてありえないです。」
「・・・そう。・・・また面白そうなサブタイトルだね。」
「そうです!前回のラスト、くんくん探偵が『今回の謎は・・・いわば変奏曲といったところだね。第一の殺人
の主題と考え、第二、第三の殺人を変奏と考えるんだよ。さまざまな装飾、拍、変拍子・・・すべてが絡み合っ
てわからなくなっている。壮大な組曲を構成しているのさ。でも主題はたった一つ。単純で、とても簡単な、ね
。』って言ったところなんて感動して涙流してたですよ。真紅。」
 そう。そうなのだ。今回のくんくん探偵は今までで最高傑作と言ってもいい出来なのだ。もっとも、雛苺あた
りはすっかり忘れているかも知れないが。
「真紅ぅ?あと5分くらいで始まるですよー。第二の殺人、クローディアが演奏会場で射殺された事件のトリッ
クを知りたくないですかー?親切でいってるですよー。出てきやがれですー。」
「・・・ちょっと僕も見たくなってきたな。その話。」

 その時。ドアが開く。ちっちゃい真紅が出てきた。
「そ・・・そうね。みないと・・・いけないわ。」
 ・・・かわいい。物凄くかわいい。もともと少女なのに、完全に子供化している。身長は、そう。雛苺よりち
ょっと低いくらいか。それより顔だ。子供っぽい。無邪気っぽい。ああ、あのお姫様がこんなに無邪気でかわい
い顔だったなんて。
「・・・し、真紅?どうしたですか?」
「真紅、君・・・、小さくなってるよね。」
「み・・・みれば・・・わかるでしょ。ちいさく・・・なったの・・・ょ」
「それは、分かるですけど。」
「と、とにかく、くんくんたんていを、みにいくわよ。いきましょう。すいせいせき。」
「ええ、ところで、真紅?」
「かんじが、つかえないの。」
「僕らの知りえないところまで影響を及ぼすとは。凄いね。」

 階段を下りる。服までサイズが小さくなっているようだ。
「うう、このじょうきょうははじめてだわ。なんとかしないと。」てくてくてく。
「ほんとうはひとりでなんとかしたかったの。」てくてくてく。
「まあいいわ。とにかく、いまはそれどころではないわね。」てくてくてく。
 てくてく歩く真紅。ちっちゃい足。たまによろけたり。ちょっと触ってみる。なでなで。
「え、そうせいせき?どうしたの?」
「ちっちゃい真紅。ちっちゃい真紅ぅ。可愛いですー。」なでなでなで。
「ちょっと、やめなさい」
「可愛いです可愛いですぅ。」なでなでなでなで。
顔が真っ赤だ。あの真紅が、あの真紅が顔を真っ赤にしているのだ。ああ!今こそ日ごろの恨みを晴らす時!
恨みは特にないけど。なでなでなで。
「やめなさいってそうせいせき。」
「あうー。可愛いぃー。お帽子取りましょうねー。」
ひょいっ。ちょっと意地悪をしてみる。

「あ・・・ちょっと、やめ、かえしなさい。すいせいせき。あなた。」
「あうー。そっちの方が可愛いですよ。」なでなでなで。
「こら、う・・・ふざけてないで、かえしなさい。」
「こんなに可愛いからー。もうちょっと返さないですぅ。」なでなでなで。
「姉さん、返してあげなよ。かわいそうだよ。」
 蒼星石の声だ。聞こえなかったことにしよう。
「ちょっと、ほんとうに、かえしなさい!」
 ぴょんぴょんジャンプする真紅。私は手を上に。真紅はジャンプするがとどかない!ああ!素敵!なんて素敵
なの!ローゼンメイデンって飛べるのに。ぴょんぴょん飛ぶちっちゃい真紅。必死。必死で私の手から帽子を取
ろうとしている。顔は真っ赤だ。いじめられた子供のよう。ああ、素敵だ。もうちょっといじめたくなる。ごめ
んなさいね。真紅。ちっちゃい真紅。

「えへへー。これは私がもらったですよぉ。」
「うう、かえして、かえして、かえしなさいよぉ」ぴょんぴょん。
「ちょ、ちょっと姉さん、」蒼星石が止める。聞かなかったことにしよう。
「あははーです。」
「姉さん・・・真紅が、本当に・・・泣きそうだよ・・・返してあげなって・・・。」
へ?真紅が泣きそうですって?

「う・・・かえしてってばあ・・・それ・・・だいじな・・・ぼうしなんだからぁ・・・ぐすっ・・・ふえっ・
・・」
あ、あらあら。
「うう・・・ぐすっ・・・かえしてよぉ・・・どうして、いじわるするのよ・・・ぐすっ・・・う・・・うわぁ
ぁあぁぁあぁぁぁん・・・ああああああああん。」
!!ちょ、ちょっと、あの真紅が!?あの真紅ですよ?
「うわあああああああああああん、・・・ひっ、ひっ、かえして・・・ぼうし・・・おねえちゃん・・・かえし
て・・・ぐすっ・・・ひっく・・・ひっく・・・ああああああああん。」
「あ、えっと」
お姉ちゃんって言った真紅。私はお姉ちゃんじゃないのに。まずい。ちょっとまずいかも。でもちょっとかわ
いい。いや、すごくかわいい。
「ふっ、ひっく、ひっく。ぐすっ、ひっく・・・」
「よしよしです。ごめんなさいね真紅。」なでなで。
「ぐすっ・・・ぼおし・・・」
「いじわるしたお姉ちゃんが悪かったですね。帽子は返すですよ。着けてあげるから前をむくです。」
「うう、ぐすっ、ぐすっ。」べそをかく真紅。私は帽子を着けてあげる。
「うん。とっても綺麗ですよ。」
「ほんとう?」
「うん、お帽子がとってもよく似合ってるです。素敵ですよ。だから泣くのをやめるです。」
「うん・・・やめる。」
「えへへー。いいこですねぇ。よし、お姉ちゃんがだっこしてテレビの前まで連れてってあげるです。」
 真紅をひょいっと持ち上げる。驚くほど軽い。
「姉さん・・・さっき帽子取ったほうが可愛いっていってたのに・・・」
 いまのは本当に聞こえない。ああ、素敵。今日から私がお姉さん。

 リビングのドアを開ける。ジュンがこっちを見る。
「し、真紅?どうしたの?」
 そんなことは問題じゃない。私たちはテレビを見る。そう、二人でなかよくテレビを見るの。

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