〜午後の桜田家〜

「・・・ふぅ。のりも紅茶を淹れる腕前が上がってきたわね」
テーブルについてティータイムを楽しんでいる真紅とのり。
「ふふっ。真紅ちゃんに相当鍛えられましたから。ジュンくんもね」
そう言うとのりも次いで紅茶を啜る。
家にはいつもの喧騒はなく、時折のどかに小鳥の囀りが聞こえるのみである。
「それにしても。私達だけだと、こうも静かに午後を過ごせるものだったのね・・・」
真紅は満足げな表情で、再びティーカップに唇を寄せる。
「ジュンくんは翠星石ちゃんや雛ちゃんに好かれているものね。あんなにはしゃいでついて行っちゃって」
くすっとのりは微笑んだ。
今はジュンの修学旅行の真っ最中である。そして彼のバッグに潜んでついて行った翠星石と雛苺。
今頃は旅館でバッグを開けたジュンが素っ頓狂な声を上げている頃だろう。

「ジュンも、何だかんだと言ってあの子達に甘いんだから・・・」
少しだけむすっとした顔で、ズ・・・と紅茶を啜る。
「ふふ、結局真紅ちゃんも気になってるのね」
そう言いながら、のりは含みを持った表情で、テーブル越しに顔を寄せて来た。
「ところで・・・ねえ、真紅ちゃん。ジュンくんとはどこまで進んでるのかしら?」
「ブッ!」
唐突な問いに、真紅の鼻から勢いよく亜麻色の液体が噴き出す。
「・・・意外に大胆な質問をするのね、のり・・・」
凄まじい事になっている顔のまま、落ち着いた所作でハンカチを取り出そうとする真紅。
「あらあら、驚かせてごめんなさい!お顔を拭いてあげなくちゃ」
のりは真紅を手で制して、丁寧に真紅の顔を拭いていった。

「ふう・・・」
ようやく一息付く真紅。
「ジュンとはそんな変な事は無いのだわ」
「ごめんねぇ真紅ちゃん。でも、やっぱり思春期の弟を持つ姉としては気になるところなのよ」
洗濯籠の方から戻ってきたのりが、そう言いながら再び椅子につく。
「やっぱりあの年頃の男の子はね、どうしても身近な、大好きな女の子に欲情しちゃうものなのよ」
「ジュンくんにとって、お姉ちゃんである私も例外じゃないものなのよね〜」
メランコリックな表情で、何となく凄い事を口にするのり。
「そ、そういうものなの・・・?」
「ええ。でも、姉として、それはちゃんと受け止めてあげないと。
だから今までもあの手この手でジュンくんを誘惑して・・・」
よよよ、と眼鏡を持ち上げて涙を拭く真似をする。
「・・・日常的に実の姉に誘惑されたら、思春期以前に人間的に屈折すると思うのだわ」
人間の男子の生理になど疎い真紅だが、そこは適切に突っ込んだ。
「でも、その私の役目は真紅ちゃんが来てからは終わったみたいなの!」
手をパチン、と合わせて唐突に喜んでみせるのり。
「・・・そうなの?私が来てから?」
欲情云々で大いに訝しい話題であるのだが、まんざらでも無い顔をする真紅。
「ええ!今までは私のパンツを見せても見向きもしなかったのに、
真紅ちゃんのお着替えのパンツを見せたら食い入るように見つめ・・・いえ、実際食い入って・・・」
「そう、私のパンツを・・・って貴方ッッ!!?」
顔を真っ赤にして、ガタン!と椅子から立ち上がる真紅。
「真紅ちゃん知ってる?ジュンくんたら、毎晩午前3時にトイレで真紅ちゃんのパンツを使って・・・」
「ちょ、ちょ、ちょ・・・ッ!!の、のり、あ、あな、貴方・・・ッッ!!」
真紅は目を渦巻きにして、茹蛸のような顔で卒倒しそうになった。
「これからは真紅ちゃんがジュンくんのたぎる情欲を一滴残らず受け止めてあげるのよ〜〜!真紅ちゃんファイト!」
そう言いながら、両手指でそれぞれ二本の筒を作って上下に怪しく動かしてみせる。
「・・・・って何で二本なのっっ!!」
「女なら目指すは二刀流よぉ〜」

―後の武蔵である。

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