「第一話」
午前の庭仕事は風が寒い。今日に限って翠星石はマスターと家の中にいるようだ。
仕事が終わって家に入ると、マスターと翠星石が玄関で僕を待っていた。
「うわあ、おいしそう。」
マスターと翠星石は僕に二つの、生クリームたっぷりのドーナツと、紅茶を用意してくれていた。
こんなご馳走はもう、何ヶ月ぶりだろう。
「さあ、食べなよ。」
マスターが僕にほほえみかける。いつも優しいマスター。大好き。
「いただきます。」
僕はドーナツを食べ始めた。とても甘くて、美味しい。
「ドーナツは翠星石が作ったですよ。感謝して食べるですぅ。」
翠星石は僕の双子のお姉さん。お料理が上手で照れ屋さん。大好き。
僕はふと、二人にはおやつがない事に気づく。
やはり出費が厳しかったのだろうか。
残り一つとなったドーナツを二つに分けて二人に差し出した。
「いいよ、お前が全部食え。」
「そうです。遠慮なんかするなです。妹らしくするです。」
いつも優しい二人。でも今日は特に優しい。
いつもと少し違う二人。僕にはそれが少し怖かった。
----
挫折した後いきなりアイデアが沸いてきました。やはり捨てる勇気は大事ですね。
さて、これからの話は前作とは全く関係のない話です。
作風も前作とは違った物になっています。鬼畜好きには物足りないかもしれません。
あと、これは不定期更新です。毎日更新するとは限りません。大分間があくことも。