【俺は之で満足したか?】と言う表情をしながら、人形に視線を向けた。
人形は満面の笑みで俺の視線に答えた。
俺(脳内)「・・・こんな表情も出来たのか」
俺は、少し戸惑っていた。
先ほどまで この人形は陰湿で暗い雰囲気を漂わせていたので
【こいつは悪魔の類だな】と、勘ぐっていたからである。
俺(脳内)「どうやら、そこまで危険な人形でもなさそうだな・・」
俺はこの蒼い人形に対する偏見を少し改めた。
 だいぶ気持ちが落ち着いてきたので人形の横を通り、
居間へと向かった。『トタトタ・・』人形も後ろから付いて来ているらしい..
【!!】俺は居間を見て驚愕した。
窓ガラスが割れ、あちこちに破片が飛び散っていたからである。
俺は泥棒に入られたと思い、直ぐに 何か盗まれた物は無いか確認した。
しかし盗まれたものは何もなく、俺を少し安心させた。どうやら泥棒では無かったようだ。
人形「どうしたんです? マスター」
不意に沈黙を破る声..俺はドキッとし、声の出た方へ顔を向けた。
俺(脳内)「・・・確か、こいつもいたんだったな」
人形「マスター?」
俺「ああ、何故か知らんが窓ガラスが割られていてね・・」
その一言を言った時、俺はある事を思い出した。
俺(脳内)「そういえば俺がこの家に帰ってくるよりも速く
       この人形はこの家にいたんだったよな・・」
もしやと思い、俺は人形に尋ねた。
俺「お前、何で窓ガラスが割れてるか知ってる?」
俺の問いに、人形は少し戸惑ったような顔をし こう答えた。
人形「・・・いえ、知りませんよ。
    僕が入ってきた時には割れてましたから。」
俺「そうか…」
俺は何か違和感を感じながら、視線をを下に向けた。

ふと、俺の頭にある疑問が浮かび上がってきた
(こいつ、何処から入ったんだ?)
俺の家は、キッチンと廊下があり ワンルームだが意外と広く
一人暮らしには、最適だった。当然 ドアは一つしかない。
俺は顔を上げ人形の方を向き話し掛けた。
俺「ところで、おま..『ゴホンッ』 君は何処から入ってきたのかな?」
俺は警戒されないよう、出来るだけ相手が話しやすいように話し掛けた。
人形「え?窓からで‥」
人形は、口の中でどもった。
俺「『で』? その続きは?」
俺は、少し意地悪く相手の語尾を強調させた。
人形「・・・」
そこで会話は途切れた。俺はさらに問い詰めようとしたが、
人形から暗く貪よりとした雰囲気が漂ってきたので、
俺にはそれ以上言うことは出来なかった。
 窓ガラスを割った犯人が 誰だか分かったのはいいが、居間にはガラスの破片が飛び散っている。
俺は仕方なく破片を片し始めた。
もちろん、人形は手伝う素振りさえ見せない..というより 鬱ワールドの住人となっていた。

暗い雰囲気の中 ガラスを片ずけながら何度も自分に問い掛ける【もしかして俺が悪いのか?】 と..
ガラスが無いせいか 朝のやらわかい日差しが部屋に降り注ぐ。だが 人形の雰囲気は依然暗いままだ。
俺はその矛盾した空間に耐えかねて、人形に話し掛けた。
俺「あのさ..実はこの窓、初めっから割れてたんだよね。ちょっとお前に意地悪をして見たくてさ・・」
俺は嘘を言い、人形の反応を待った。
人形「・・・」
無言のプレッシャーがジワジワと俺に圧し掛かる。
(やはり話し掛けない方がよかったか・・この雰囲気はマジでつらいぜ トホホ...)
俺は内心そう思いながら 話題をがえた。
俺「そ、そういえばさ お前って名前あんの?無ければ俺が付けてやるけど」
人形「・・・」
俺は少し待ち、人形が何か言うのをまったが 人形は俯いたままだった。
仕方が無いので俺がまた話し始める。
俺「でha・・」
人形「・・星石」
俺が話そうとした瞬間、人形がボソリと言った。俺は聞き取れなかったので人形に聞き返す。
俺「え?」
人形「・・・蒼星石」
また人形はボソリといった。だが今度はちゃんと聞き取れた。どうやらトウセイセキ言う名前らしい。
俺「そうか、トウセイセキっていうのか!いい名前だなw」
俺は人形に向かって、笑顔を飛ばした。
人形はゆっくり顔を上げ、苦笑いをしながら俺にこう言った。
人形「・・蒼星石です。マスター」
それを聞き 俺の顔からは少しずつ笑みが消えていった。

----
暫くの間硬直し、何事も無かったかのようにガラスの片付けを再開する俺、
そう、俺にはもうそれしかやる事が無かったからである。
俺は黙々とガラスの片付け続け、人形の方は俺の方をボーっと眺めている。
手伝いはしない、話し掛けもしない、ただ俺の作業を眺めているだけである。
もう人形からは鬱な雰囲気は感じられないが、
立ち直ったのなら手伝ってくれというのが俺の切なる思いだった。
 ガラスの片づけを終え、休憩しながら窓を眺めた。限りなく鬱だ・・
以前そこには窓ガラスが張られていたが、人形のせいで ガラスはもう無い。
この現状が信じられなかったのか、俺は窓のそばに行き手を伸ばしていた。
俺の手はそのまま何の抵抗もなく外にでる。何度も伸ばしたが俺の手に当たるものは何も無い。
【どうしてくれるんだよ..】という何とも言えない表情をしながら、人形に顔を向けた。
俺「・・・」
俺は絶句した。人形は悪びれる素振りも無く、俺の行動を見て笑みを浮かべていたからである。
不意に、人形は口を開いた。
人形「マスターそれって楽しいですか?」
俺「・・・」
俺は少し考え、苦笑いしながらこう答えた。
俺「何が言いたい?」
人形「いえ、マスターが楽しそうに見えたので..」
人形はそう言と 表情を暗くし視線を下に落とした。
(なんで、こうなるかな・・)
と、自問し 俺は窓ガラスの件は忘れることにした。

 『グルル』腹から音がする。どうやら俺の胃袋が空腹を訴え始めたらしい。
(そういえば、まだ朝飯を食べていなかったな・・)
俺はキッチンからコーンフレークと牛乳を部屋に持ってきた。
普段なら、自分で適当に飯を作るのだが、今回は色々あり作る元気が無かった。
俺はコーンフレークを口に頬張りながらTVを付けた。『PI、PI』TVのチャンネルを回し朝のニュースを見るのが俺の日課だ。
いつもと違うのは ガラスが無い事と 何とも言えない人形が居ることだった。
俺は煩わしい物を忘れるためTVに見入る。人形がコーンフレークを見ているようだが気にしない。
TV「・・今朝のニュースです、○○区XXアパート付近でパトロール中の警官が
  下半身を斬りつけられるという、ショッキングな事件がありました。
  被害者に命の別状は有りませんが、まだ意識がハッキリしておらず「蒼..蒼い」と、うわ言を繰り返しているそうです。
  なお、目撃者の居ない所から 警察では計画的犯行とみて捜査を開始する見通しです。では次のny・・」
そのニュースを聞き俺は 蒼い人形の方を見た。人形は暗い笑みを浮かべながらTVの画面を見つめている。
どうやら俺が見ていることに気付いていないようだ。俺は気付かれないうちに目線を他の場所に移そうとしたが
すでに遅く、人形と視線が合ってしまった。人形は驚いた顔をして俺の顔をじっと見る。
一瞬の間、しかし俺にはとても長く感じた。俺は視線をTVに戻しコーンフレークをぎこちなく食べる。味はわからない。
 ふと俺はXXアパートが俺の住んでる場所だと思い出した。そして警官とのいざこざの事も..
(まさか、あの警官じゃないよな?下半身を切りつけられたって言ってたな・・俺は鞄を投げただけだよな?)
神経をすり減らしながら、再度警官とのやり取りとニュースを脳内で確認する。
(蒼..切る..警官..人形?)
俺は頭で何かが繋がるのを感じた。だが同時に不安が俺を襲った。
もし俺の考えてる事が当たっているのなら、この状況は相当危険だからだ。
俺は顔を強張らせながら人形に話し掛けた。
俺「お前・・あの時どうしたんだ?」
人形は少し戸惑った表情をしながら俺の質問に答える
人形「?、マスターどういう意味ですか?」
俺「俺が・・警官に鞄を投げた後のことだ」
人形は即答せず、口に手を当て考えている。数秒後やっと口を開いた。
人形「・・・あの人ならマスターが行った後 どこかに行っちゃいましたよ」
俺「・・行った後、お前はどうしたんだ?」
俺はただ只管に問い掛け、人形は困惑しながら俺の問いに答え続けた。
人形「僕は..あの後 鞄に乗りマスターの家に向かいました」
俺「・・・」
俺は此の侭話していても埒があかないと悟り、人形の持ち物に刃物が無いかどうか調べる事にした。
俺は人形の鞄の所に行き蓋を開ける。人形は不安そうに俺の行動を見つめているが、俺は気にせず鞄の中を探した。
人形「あの・・マスター?」
俺「・・・」
人形が俺に何か言っているが、俺は聞こえないフリをし鞄の中を調べ続ける。・・金色の螺子以外は何も無かった。
(取り合えず凶器は無いみたいだな・・)
俺はそう考え、鞄の蓋を閉じた。

 次に俺は人形に無言で歩み寄る。人形は身の危険を感じたのか、少し身を引いているが俺はさらに近づいた。
人形「どうしたんです?マスター」
人形は不安そうな声をあげているが、俺はその声を無視し人形に手を伸ばした。
人形「・・マスター?」
声を震わせながら、まるで恐ろしいものを見ているかのように顔を引き攣らせながら俺のことをじっと見つめている。
俺は片方の手で人形の手を掴み、もう片方の手で服の上から手を人形の体に添せて触る。
人形「何をするんですかマスター!」
人形は必死に体を捩じらせ抵抗しているが、俺が手を掴んでいるので効果はあまり無い。
人形「マスターやめてください・・」
人形は瞳に少し涙を浮かべて、必死に俺に懇願する。それでも俺は体を触るのをやめない。
次第に人形は抵抗する力を弱めていき、無抵抗になった。
俺は人形のポケットから足、腕や背中と言って具合に隅々まで調べたが、刃物は発見できなかった。
(・・・見つからないな、探してない場所と言ったらあそこしかないか..だが男同士だし気にすることも無いかな。)
俺はそう考え、人形の股間に手を伸ばす。『ビクッ!』人形の体が一瞬跳ね上がった。
人形「!!」
【!!】俺は驚愕した。人形の股間には刃物どころかある筈の物さえなかったからである。
俺は動揺しながら人形の顔をゆっくりと見た。人形は体を震わせ瞳から涙を流していた。
その姿を見て俺は自責の念に襲われ、頭が真っ白になり金縛りに会ったようにその場で固まっていた。

 俺は自分のした行為を思い返し【俺って最低だ・・】と凹んでいた。
いかなる事情があったとしても第三者の視点から見た俺の行為は変体そのものである。
しかも人形からは凶器が発見されなかったのだから救いようが無かった。
俺は【謝った方がいいよな・・】と思い立ち、謝罪するため 人形の方に視線を向けた。
人形は涙目のまま俺をじっと睨みつけている。俺はその表情を見て言葉がでなかった。
俺が怯んでいると人形の口が唐突に開いた。
人形「満足ですか?」
人形は平静を装うような声で俺にそう言った。・・瞳はまだ濡れている。
俺「・・・」
俺はなんと答えれば良いのか分からず黙っていた。なぜか妙に背中が冷たい。
人形「・・どうしてあんな事をしたんですか?」
人形は今にも泣き出しそうな声で俺に訴えかけてきた。
俺「・・・スキンシップさ」
気付いたら苦し紛れの嘘をついていた。だが今の状況で本当の事を話せる勇気は俺には無い。
人形「・・え?」
人形の表情が一瞬曇った。どうやら困惑しているようだ。
俺「・・すまなかったな」
人形「・・・」
そこで会話は途切れてしまったが、俺は謝りの一言を言えて少し罪悪感を紛らわす事が出来た。

 『ヴーヴー』俺の携帯からアラームがなり始めた。どうやらアルバイトに行く時間らしい。
俺は急いで支度をし、仕事に行く準備をした。今日は休みたい気分だったが、人形と顔を合わせているのが辛く
アルバイトはこの部屋から出るための良い機会だった。
俺「・・ちょっと出かけるから」
人形にそう言ったが何の反応も示さなかった。どうやら何か考え事をしているようだ。俺的には好都合だが・・
俺は扉を開け仕事場へと出かけた。俺の仕事はコンビニの店員で特に何も考えず仕事をこなしている。
人付き合いもあまり好きな方ではないので、大抵集団から外れており一人で何も話さずに仕事をするのが日課である。
 仕事が終わり、帰宅途中の俺はふと人形の事を思い出した。
(・・・まずいな、此の侭帰っても気まずいだけだしな..)
俺は頭の中であれこれ考えながら、あたりを見渡した。ゲセンにコンビニケーキ屋etc・・
【ケーキでも買っていくか】と思い立ち、ケーキ屋で苺のショートケーキを一つ買った。
『ガチャッ・・』俺は家の扉を開け中に入ると、蒼い人形が俺を出迎えてくれた。
人形「・・お帰りなさいマスター」
俺「・・・ただ今」
拍子抜けだった。俺は家に帰ると鬱な雰囲気と気まずさが漂っていると思っていたが
そのような雰囲気は感じられなかった。人形はどうやら立ち直ったようだ。
俺は人形にケーキを買ってきた事を告げた
俺「・・ケーキを買ってきたんだが、食べるか?」
俺は人形にそう言いった瞬間、彼が人形だった事を思い出した。俺が【しまった】と思っていると
人形から返答が帰ってきた。
人形「ええ、頂きます」
俺「・・・」
俺は何も言えず箱からショートケーキを取り出し、皿の上に乗せて人形に渡した。
俺はかなり興味が湧いたので人形の仕草をじっと眺めていた。
だが人形がフォークをケーキに刺そうとする所で動きがピタリと止まった。人形は俺の事を不信に思ったのか
俺に話し掛けてきた。
人形「マスターは食べないんですか?」
俺「・・俺の分は買ってないし、ケーキはあまりな..だから気にせず食べてくれ」
人形「・・・では僕のを半分食べてください、少し量が多いようなので..」
俺「・・・」
人形はそう言うと、フォークでケーキを半分にし苺が乗っている方を俺に差し出してきた。
人形「どうぞ」
明るい表情で俺に語りかけてくる。
俺「・・俺は苺が無い方でいいよ..無い方が好きなんだ」
俺は複雑な気分になりながら、人形のケーキと俺のケーキを取り替えた。人形の方は新しいフォークを
キッチンから取り出してきて、俺に渡してくれた。
俺「・・ありがとうな」
俺はそう言い人形の様子をまた眺め始めた。人形は何故か俺の隣に座りケーキを食べ始める。
俺「・・何故俺の隣に座るのかな?あっちの方が広いと思うのだが..」
俺がそう言うと人形は微笑しながら俺に答えた。
人形「僕にはスキンシップといえばこのくらいしか出来ませんから・・」
(・・・こいつ、何か勘違いしてないか?)
と俺は思ったが、取り合えずケーキを食べた。

----
 【・・・中々いけるな】俺はケーキを食べてそう感じていた。一人暮らしになってからというもの
甘いものには興味も関心も無かったのでケーキを食べるのは久しぶりだった。
人形「美味しいですねマスター」
俺の隣にいる人形が幸せそうな顔をしながら俺に語りかけてくる。
俺「だな」
と、俺は相槌を打ったが、何故か肌寒さを感じていた。
(それにしても今日は寒いな・・昨日はそんなに寒くは無かったのだが..)
俺はそう思い、何が原因なのか気になったので周辺を見渡s…窓が無かった。
仕事帰りの俺は窓が割れている事など頭の片隅にも無かった訳だが、改めて思い知らされた。
【道理で寒い訳だ..窓が無いのだからな・・】俺がそう結論付けていると人形がまた話かけてきた。
人形「寒いですねマスター」
俺「・・・」
俺は何ともいえない気分に襲われた。元はと言えばこの人形がガラスを割ったからだ。
 俺と人形はケーキを食べ終えたので、彼の使った食器と自分の食器をキッチンへと持っていった。
『トタトタ・・』人形が後ろから着いて来ているようだ。夕食をまだ取っていなかったので、俺はそのまま夕飯の準備に取り掛かった。
・・・人形が俺の作業をじっと見つめている。ふと疑問が浮かび上がり 俺は人形に話し掛けた。
俺「一つ聞いて良いか? お前って食事とかするのか?」
人形「え?まぁ少しは・・」
人形はきょとんとしている。俺がそんな事を聞くとは思っていなかったのだろう。
(・・・やはり食べるのか、こいつ本当に人形か?ある種の生命体ではないのか?)
俺は眉間に少し皺を寄せて、そう考えながら会話を続けた。
俺「今から何か作るが・・食べるか?」
人形「ん〜・・」
人形は手を唇に当て少し考えた後、口を開いた。
人形「ええ、頂きますw」
人形は好奇の目を俺に向け微笑しながら返答した。
俺「・・好き嫌いとかはあるか?」
人形「特には・・」
俺「そうか、なら居間でTVでも見ながら待っていてくれ」
人形「ここに・・」
人形が何か言ったように聞こえたが、俺には聞き取る事が出来なかった。
俺「? 何か言ったか?」
人形「いえ..では居間で待ってます」
俺「ああ・・」
そこで会話は途切れた。俺は一人になりたかったので人形が居間に行ってくれて少しホッとしているのが実情だった。

 【・・さて何を作ろうか、下手に不味いもの作れないしな..】俺はあれこれ考えながら料理を作り始めた。
数分後、料理ができたので居間へと持っていく俺。見た目と香りは今までの中でも最高峰の出来だと自負している。
料理名は特に無いが、見様見真似で作ったチャーハンの模造品のようなものだ。
俺「できたぞw」
俺は柄にも無く、頬を緩ませながら人形に話し掛けた。かなり自信が有ったからだ。
人形「美味しそうですねマスター」
俺「だろ?、一人暮らしの俺が作ったんだからな」
そう言いながら、俺は料理の入った皿とスプーンを人形の前に出した。
俺「まぁ何だ、とにかく食べてみてくれ」
俺はそう言い、人形の反応を期待しながら眺めた。『カチャカチャ』皿とスプーンの擦れる音、
そしてスプーンの上に乗った料理が人形の口へと向かう。
『モグモグ・・』人形の表情がだんだん蒼白になっていくように見える。だが気のせいだろう..
『ゴクッ』人形が料理を飲み込んだようだ。俺はすかさず彼に感想を聞いた。
俺「どうだ? うまいか?」
人形「・・・」
人形は瞼を閉じたまま沈黙している。
俺「・・・不味かったか?」
人形「・・・」
何を言っても人形からは何の返答も無い。俺は不安になったので人形の額に手を当て熱が無いか調べようとしたが、
手をかざした瞬間 人形は力なくその場に倒れた。どうやら意識が無いようだ。
俺「・・・俺の料理じゃないよな」
俺はそう呟き、自分の料理を口に入れた。

----
 ・・・料理に問題はないようだ。香りは良いが味は上手くも不味くも無い普通の料理だった。
最初は【・・これは俺に対する嫌がらせではないのか?】と人形に疑惑の念をもっていたが、
人形に意識が無いようなので その推論は却下された。
【・・どういう事だ?】頭の中で色々考えてみたが料理以外の原因は俺には思いつかず、お手上げ状態だった。
俺は人形の肩に手を置き、揺さぶって人形を起こそうとしたが 彼に意識が戻る気配は無かった。
俺は時計を見て時間を確認した。時計の針は10:00を指している。
【明日になれば多分起きるだろ】俺はそう考え、このまま眠ることにした。
布団を居間に敷き 寝る準備を整え、いざ布団に入ろうという所で、人形の姿が俺の目に入ってきた。
【・・・やはり此の侭では良くないよな】俺は人形を俺の布団の上に寝かせ、
俺自身は人形の隣のスペースに、掛け布団一枚で寝る事にした。本当は布団で寝たかったが、人形が起きた時に
気まずくなるのはごめんだったので、人形と一緒に寝る事は無理だった。
【・・・さすがに掛け布団一枚では寒いな、明日あたり 人形に文句でも言うか..】
そんなことを考えながら俺は眠りについた。
 翌朝、俺は目覚まし時計の音で起床し、顔を洗い歯を磨いた。
【そういえば、人形は起きたかな?】そう思い、俺は人形の寝ている布団の所へ行ったが
人形が起きた形跡どころか動いた形跡も無かった。【・・・いつまで寝ているんだ?】と、気にはなったが
特に問題は無いだろうと思い、俺は仕事に出かけた。
仕事が終わり家に帰ったが、やはり人形が起きた形跡は無かった。
人形が起きた時を考え、俺はハンカチを水で濡らし人形の顔についた埃を拭った。
そんな状態が四五日続き、【これは、やばいんじゃないか?】と俺は少し焦りを感じていた。
俺は何度か眠っていると思われる人形に声をかけたり、揺さぶってみたりしていたが
人形は何の反応も示さなかった。【まぁ、 いつか目覚めるだろ】と俺は前向きに考え、
仕事帰りに買ったコンビニ弁当に箸をつけた。
『ジリリリン』突然電話が鳴った、俺は突然のコール音に心臓をドキドキさせながら受話器を取った。
俺「はい・・もしもし」
??「まきますか? まきませんか?」
俺「・・・」
【そうか! そう言う事か!】俺はあることを思い出し電話の主に礼を言った
俺「おおそれだったか! ありがとな」
??「まk・・」
『ガチャッ』俺は受話器を置き
人形の鞄から金色の螺子を取り出し、人形をうつ伏せにした。
俺「さてと・・」
俺が螺子を指そうとした時、また電話のコール音が部屋に鳴り響いた。
【・・・グッドタイミングだな】皮肉を頭の中で呟きながら俺は受話器を取った。
俺「はいもしもし?」
??「まきますか? まきませんか?」
俺「・・・ああ、あんたか今巻くところだよ」
『ガチャッ』俺がそう答えると、電話が切れてしまった。
【・・・一体何なんだ?】俺は電話の主の事を考えようとしたが、まず先にやるべき事を終わらる事にした。
俺は後ろに振り返り人形に螺子を差し込もうと・・・・・・
(・・・あれ? 鞄が増えてないか?)
鞄がダブって見えたので、俺は目をこすりもう一度目の前の光景を確かめた。
【増えてる・・・】俺はとりあえず、増えた鞄の事は気にせず 人形の螺子を回した。

 『カチリ』その音と同時に、まるで永い眠りから目覚めたように人形はゆっくりと動き出した。
その様子をじっと見守りながら【・・やはり螺子だったか】と俺は思っていた。
人形「あっ、マスターおふぁようございまぁす・・」
人形はあくびしながら俺にそう言った。
俺「ああ、おはようw」
なぜか俺の顔から笑みがこぼれていた。人形が動き出した性か、
それとも 今日からまた布団で眠ることができるからなのか、俺には分から無かった。
俺は人形にどこか異常は無いか、目で確認しながら人形に聞いた。
俺「どこか、異常は無いか?」
人形「特には・・」
俺「そうか..なら良いのだが・・」
その答えを聞いて安心した性か、俺の興味は新しい鞄に移っていた。
人形「マスターそれは・・?」
人形は新しい鞄に指を指し俺に聞いてきた。
俺「俺にもさっぱり..」
俺はそう言いながら、鞄に手をかけ蓋を開けた。
【・・またかよ】中には緑色の服を来た少女が入っていた。多分人形だろう。
【・・どこかで見たか? 同じ種類の人形?】俺はそう思い、蒼い人形に視線を向けた。彼は困惑した表情をしている。
俺「・・この少女はお前に似てないか?」
俺には彼と少女が似ているように見えたので人形に返答を求めた。
蒼い人形「・・・」
彼は顔を下に向け、俺の問いに答えようとしない。
俺「・・答えたくなければそれでもいいが..」
俺はそう呟き、新しい鞄の方に視線を戻した。
【さて、どうする・・】俺は鞄を見ながら考えていた。だが如何すれば良いのか俺には判断できず、
人形に意見を求めた。
俺「俺はどうすればいいと思う?」
蒼い人形「・・・」
人形は依然俯いたままで、口を開こうとしない。
俺「・・・」
【・・俺の好きなようにしろと言うことか..】俺はそう解釈し、今日の所は寝ることにした。
俺「俺はもう寝るが、お前はどこで寝る? ・・余り言いたくは無いが
   この布団で寝るなら 俺は掛け布団だけで寝るが..」
俺は苦笑いしながら人形にそう言った。
蒼い人形「・・・ 大丈夫ですよマスターw、僕は自分の鞄で寝ますんで・・ ではお休みなさいマスター」
人形は顔を上げ 俺に微笑しながらそう言うと、彼は鞄の中に入ってしまった。
【・・・便利だな】人形の様子を見てそう思いながら俺は部屋の電気を消した。
【久しぶりの布団はやはりいいなw】しばらくの間 布団の感触と暖かさを味わっていたが、
だんだん意識が遠のいていき、そのまま眠りについた。
 【・・?】話し声が聞こえる、意識は朦朧としているが 俺はまだ熟睡しきれてなかったようだ。
【この声は・・・ あいつか?】部屋に明かりは無く、音だけしか聞こえないが、
蒼い人形が誰かと話しているように聞こえた。目を開けた当初は暗くて何も見えなかったが
だんだん俺の目は暗さに慣れていき、 月明かりで人形が新しい鞄に話仕掛けている事が分かった。
人形「・・ぁ・s・・・」
なんて言っているのかは聞き取れないが、彼らは知り合いだという事が俺には理解できた。
【・・・明日あの少女の螺子でも捲くか..気は進まないがな】俺はそのように考え 深い眠りについた。

 翌朝、俺は太陽のやらわかい日差しで目が覚めた。やはり久しぶりの布団は最高だ。
俺は顔を洗い、歯を磨き 背骨をボキボキ鳴らしながら蒼い人形の鞄の前に座った。
彼の目の前で緑色の少女の螺子を捲こうと思ったからだ。
時計の針が7:00を回った頃、ようやく彼の寝ている鞄が開いた。
俺「おはよう」
蒼い人形「・・・ おはようございますマスター、起きてたんですか?」
彼は眠そうにしながら目を擦っている。
俺「ああ、ついさっきな」
人形にそう答え、俺は新しい鞄の所に行き 鞄の蓋を開けた。
俺は念のため人形の表情を確認した。彼は何とも言えないような表情をしていた。
俺は鞄の方に目を戻し、鞄から緑色の少女抱き上げた。
【これでいいんだよな?】そう考えながら、俺は少女の背中に金色の螺子を指し、螺子を巻いた。
すると少女が眩い光に包まれた。とても眩しく俺は開いてる手で自分の目を覆っていた。
【・・!?】少女をもっていた手に衝撃が走った。それと同時に聞き覚えの無い怒声が飛んできた。
??「汚らわしい手で触るな!ですぅ・・」
俺は面食らいながら、声のした方向を元にその声の持ち主が誰なのか確認した。
・・・先程まで俺が抱いていた緑色の少女が蒼い人形の背中に隠れて俺の事をじっと睨んでいる。
多分声の持ち主は彼女だろう。俺は少し状況が把握出来たので、彼女に謝罪した。
俺「・・すまなかったな..君が潔癖症だったとは知らなかったものでな」
俺が謝ると、少女はまた怒声とも言えるような甲高い声で俺に言葉を飛ばした。
少女「謝ってる暇があったら、さっさと飯でもつくりやがれです!」
俺「・・・」
とりあえず、朝飯がまだだったので少女の言う通りにする事にした。

 俺はキッチンの前に立っている。飯でも作れと少女に言われたからだろう。
とにかく先ほどの出来事は忘れ、料理に専念することにした。
今回は人形の復帰祝いを兼ねて美味い料理を作ろうと思ったからだ。
数分後、料理が出来上がった。以前と同じチャーハンのような物である。
【・・・ 何故だ】俺は自分の作った料理を見て呆然としていた。
この前とは違った料理を作ろうとチャレンジしていた筈だったが、
いつの間にか この前の類似品になっていたからである。
だが、見た目と香りはかなり良い。【・・まぁいいか】俺はそう思い料理を彼らのいる居間へ持っていた。
俺「できたぞ」
俺はそう言いながら小さなテーブルの上に人数分の料理を並べた。
蒼い人形「・・・」
少女「遅いです人間! さっさと手でも洗って座りやがれです!」
蒼い人形は暗い顔をしながら料理を見つめ、緑色の少女は少し怒っているように見える。
だが 先ほどと少し違い、少女は蒼い人形の後ろに隠れるのをやめていた。
人形の表情が暗い理由は何と無く分かるが、俺の料理をそのように見られて少しショ ックだった。
俺は彼らにスプーンを渡し、自分の料理を吟味した。
【・・今回はいけるなw】俺が内心そう思っていると、勢いのある甲高い声が部屋に響いた。
少女「何ですかこの料理は!? まるで豚の餌です!不味いです!不味すぎですぅ!」
俺「・・・」
(・・・ 不味い? 俺の料理が? 何かの冗談だろ?)
俺は驚愕しながら少女に視線を向けた。少女は俺の方を見て文句を言っている。
少女「なんて物を食わすです人間!見た目と香りで味を誤魔化すなです!こんな物食えたもんじゃねーですぅ!」
蒼い人形「翠星石 少し言いすぎだよ、これじゃあマスターが可哀想だよ」
蒼い人形が少女に注意した。
少女「いいんです蒼星石、こいつには自分の身の程をはっきり分からせてやった方が 良いです!」
俺「・・・」
【いいすぎ・・・か..結局、否定はしないのだな】俺はそう思いながら現実と言う苦虫を噛み締めて いた。
蒼い人形「そんな事ないですよ、自身を持ってくださいマスター」
不意に蒼い人形が俺に励ましの言葉を掛けた。
俺「・・・」
【・・・ 読心術?】俺は一瞬そう思ったが 俺が呟いていたかも知れないので、この事は忘れることにした。
俺「一言いっていいか?」
俺は少女に目を向け、そう聞いた。
少女「なんです?・・さっさと言いやがれです人間!」
俺「薄味の方が体に良いのだが・・」
今の状況で俺に言える唯一の弁論だった。
少女「そんなの知ったこっちゃねーです、翠星石達は人形ですから健康より味の方が 大事なんです!」
俺「なんて独善的な・・」
俺はそう口の中で呟いていた。普段なら心の中で呟き 口に出して言う事は無いが、今日は何故か発声していた。
少女「聞こえているですよ人間!お前は料理だけでなく心までゲテモノですぅ!」
俺「・・・」
(俺の料理がゲテモノ? 馬鹿な・・ ありえない・・よな?)
俺は自信の有った料理を完全否定され、少し目を潤ませながら蒼い人形に言葉を飛ば した。
俺「・・・ ちょっと・・出かけて来るは..留守番頼んだ・・」
蒼い人形「え?」
俺はそう言い残し、その場を後にした。

その日、俺は生まれて初めて料理のレシピを買っていた。

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 【・・・ そろそろ起きないと】僕はそう思い、鞄の蓋を開けた。
朝の目覚めと共にまた新しい一日が始まる。今まではマスターと僕だけだったけど、今日からは翠星石も一緒だ。
実を言うと翠星石が来た当初は少し不安も有った、だけど今では翠星石にまた会えてよかったと思ってる。
【・・あれ?マスターがいない】マスターの布団はすでに畳まれており、マスターがの姿が見当たらなかった。
『ジュージュ・・』キッチンから何か音がする。音が気になってキッチンへ調べに行くと
マスターが本を片手に料理を作っていた。
僕「おはようございます、マスター」
僕がマスターに挨拶すると、マスターは後ろを振り向き僕に答えた。
マスター「・・・ ああ、おはよう」
彼は少し驚いた表情をしている。たぶん僕が後ろに居る事に気付いていなかった性だろう。
マスターは僕に挨拶を返すと、本を見ながらまた料理を作り始めた。僕はその本に少し興味が湧いた。
僕「マスター、それは何です?」
マスター「・・この料理か?」
マスターは僕の方を見ずに 後ろ向きのまま答えている。
僕「いえ、その本の事です」
マスター「・・・ これは料理のレシピさ」
僕「へぇ〜」
僕はそう言いながら、マスターの隣に行きマスターを見つめた。マスターは困惑した表情をしているけど気にしない。
僕「マスター、何か手伝いましょうか?」
僕がマスターを見上げながらそう言うと、マスターは ばつが悪そうな顔をして僕に答えた。
マスター「・・いや、いいよ ・・・ それより少しあっちに行ってて貰えないか?」
僕「・・・」
僕は何も言えず、マスターに言われた通りキッチンを離れ 部屋に戻った。
【マスターは僕の事が嫌いなのだろうか・・】そう思うと少し胸が苦しかった。

 部屋に戻るとふいに翠星石の鞄が動き出した。どうやら彼女が起きたらしい。
僕「おはよう翠星石、目覚めはどうだい?」
翠星石「おはようです、まだまだ眠いですね・・」
そう言い終えると、翠星石は大きなあくびをしていた。
僕「変わらないねw」
翠星石のその姿を見て僕の顔は綻んでいた。自分でも少し驚いている。
作り笑いでない 笑みが自然とこぼれたのは久しぶりだったからだ。
翠星石「ど、どういう意味ですぅ!」
彼女は少しむくれている。
僕「その言葉の通りの意味さw」
僕がそう言うと、彼女は呆気に取られたような表情をしていた。
??「できたぞー」
どうやら、マスターの料理が完成したらしい。小さなテーブルの上に料理を並び終え、マスターは僕らに言った。
マスター「今回のは自信作だ、まぁ食べてみてくれ」
今回はチャーハンではないようだ、白米にジャガイモの煮っ転がし、そして味噌汁etc・・。
一口食べて見た。・・・ まぁチャーハンよりかは美味しいと思う。翠星石の方を一瞥したけど、
翠星石も僕と同じ心情に見えた。
マスター「どうだ? うまいか?」
僕「・・良いと思いますよ」 翠星石「前と全然変わってないですぅ!少しは進歩しろです! 」
僕らは同時にマスターに答えていた。僕は苦笑いしながらマスターに答え、
翠星石は少し怒りながらマスターに答えている。
マスターは僕らの返答を聞き、少し悲しそうな顔をしながら 仕事に行って来る と僕らに言って出かけてしまった。
僕「翠星石、幾らなんでも少し言い過ぎじゃないの?」
翠星石「しかし変わってないのは事実ですよ、翠星石達の為にも嘘は良くないですし」
【僕らのため・・・か、それでいいのかな?】僕は翠星石の言葉を聞きどうして良いのか分からなくなった。

 マスターが出かけてから気付いた事があった。それは この部屋には意外と埃が溜まっていることだ。
多分マスターはあまり掃除をしていないのだろう。【・・部屋を綺麗にしたらマスターは喜ぶかな?】
僕はそう考え部屋を掃除する事にした。
翠星石「さて、ここに居ても暇なので散歩にでも行くです」
僕が掃除をしようと思い立った矢先、彼女が僕に話し掛けてきた。
僕「僕はこれからマスターの部屋を掃除するから遠慮しとくよ」
そう答えると、彼女は少し唖然とした後 すぐ気を取りなおして僕に訴えかけてきた。
翠星石「あの人間の事なんてほっとくです、そういうことは あいつ自身にやらせれば良いですぅ」
僕「でも、マスターは忙しい見たい出し..大丈夫 僕一人でやるから、翠星石は散歩でもしてきなよ」
翠星石「全然大丈夫じゃねーです! 人形サイズで人間の部屋を一人で掃除なんて
     時間が掛りすぎるです! ・・仕方が無いから翠星石も手伝ってやるですからさっさと終らせるです!」
僕「・・いいの?」
翠星石「かまわないです!」
彼女は少しムッとしている様に見える。そんなこんなで僕らはマスターの部屋を掃除する事になった。
 僕らはまず、キッチンに溜まった洗い物を全て洗い、部屋に溜まったゴミや埃を取って雑巾を掛けた。
マスターの布団を日干しするのが一番の難点だったけど、試行錯誤を繰り返して
なんとか僕らだけで対処する事が出来た。掃除が終わり一息つきながら僕は翠星石に声を掛けた。
僕「ふぅ、やっと終ったねw」
僕は微笑しながら彼女に話し掛けた。
翠星石「ですぅ」
彼女は僕にそう答える。どうやら相当疲れたみたい。
【・・後は、集めたゴミをゴミ捨て場に置いてくれば終わりかな】僕はゴミ袋を持って、
彼女に ゴミを捨てて来るから と告げ部屋を出た。
 外に出ると辺りは暗くなり始めていた。【・・急いだ方が良いかも】僕は早足でゴミ捨て場に行きゴミを置いた。
【マスターは喜んでくれるかな?】マスターの部屋に戻る途中そう考えていると、
アパートの中に入るマスターらしい人影が見えた。僕は駆け足で家に向かい、
家の扉を開けると話し声が聞こえてきた。どうやら、マスターと翠星石が会話をしているようだ。
マスター「・・前が掃除してくれたのか?」
翠星石「まぁそうですけど、翠星石と蒼s・・」
マスター「ありがとう! お前って実はいい奴だったんだなw」
翠星石「・・当然ですぅ! 翠星石は良心のあるすばらしい人形ですぅ、穴が開くほど感謝しやがれです!」
マスター「ああ、感謝するよ、まさか帰宅したら俺の部屋がこんなに綺麗になっているとはなw 見間違えたよ」
マスターのうれしそうな話声が聞こえてくる、僕はその話し声を聞いていると気まずくてなり廊下で立ったいた。
僕が廊下で如何するか考えていると、マスターが僕に気付いてしまった。
マスター「・・そんな所に居たのか、少し心配したぞ」
僕「え?」
マスター「・・いや、まぁとにかく部屋には入っては如何かな..」
僕「・・・」
僕は少し驚いていた、マスターの口からこんな言葉が出るとは予想もしていなかったからだ。
取り敢えず僕はマスターに言われた通り部屋の中に入った。

 部屋に入ると翠星石が僕を見て出迎えてくれた。
翠星石「あっ、蒼星石、帰ってたですか?」
僕「・・うん、たった今ね」
僕と彼女が会話をしていると横から視線を感じた。僕は気になって、視線を感じる方に顔を向けたら
マスターが僕を見つめていた。何か考え事をしているように見える。
僕「どうしたんです? マスター」
マスター「・・・」
僕「マスター?」
マスター「・・ああ、いや、ちょっとな..・・・ この部屋、大分綺麗になったと思わないか?」
僕「え? ・・綺麗になったと思いますよ」
僕はちょっと戸惑いながらそう言った。【・・どうしてそんな事聞くのだろう?】そう思いながら
僕はマスターとの会話を続けた。
マスター「この緑色の人形が、部屋を掃除してくれたんだってな・・」
マスターは手を翠星石に向け僕にそう言った。僕はどう答えれば良いのか分からず、
ただマスターの顔を眺めていた。すると ふいにマスターは僕に顔を近づけてきた。
僕は身を少し引いたけど、マスターはそのまま僕に近づき耳元でこう囁いた。
マスター「お前があいつを上手く扱ってくれたんだろ? ナイス マインドコントロールw」
僕「え?」
マスターは僕にそう耳元で囁き、笑顔を僕に向けてくる。僕は苦笑いでそれに答えていた。
彼は何か勘違いをしているようだけど、僕にはその事を言う事が出来ずただ黙っていた。
 結局マスターが僕の事を嫌いなのか? と言う疑問は僕にはまだ解決する事が出来ず、
今日という一日が終った。

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 今日は久々の休みだ。普段ならバイトに行く所を、時間が来ても起きずにずっと寝ていられる・・・はずだった。
バイトがある日はだいたい 09:00頃に家を出て仕事場へ徒歩で通勤している。
だが今日は久しぶりの休暇だ、時間道理に起きる必要は無い。
俺は8:30頃に一度目を覚まし、もう一度眠りについた。俗に言う二度寝というやつだ。
俺が夢の世界の住人となっていると、遠くの方から声が聞こえた。いや、現実からと言うべきか。
「マスター時間ですよ、起きてください」
か細い声が聞こえてくる、この声の正体は俺の家にいる青い人形だろう。
【俺を起こそうとしても無駄だ、夢の住人を舐めるなよ】俺は彼を無視して眠り続ける。
「どうしたです? 蒼星石」
【この声は・・緑色のやつか】だが俺には全く興味は無い。今の俺には眠りこそが至福の時間だからだ。
「マスターが起きてくれないんだ」
「こんな奴はほっとけば良いです」
「でも・・御飯は如何するの?」
「・・・ 仕方ないですね、起きるです人間」
布団の上から振動を感じる。俺のことを揺さぶって起こそうとしているようだ。
だがその振動が俺を心地の良い 夢の世界に誘う・・。『ガンガンガンガンガン!!』
突然、巨大な不協和音が俺の鼓膜を振動させた。
「起きるです!に・ん・げ・ん!」
『ガンガン・・』鳴り止まないノイズ。それは俺の眠りを妨げ 覚醒に向かわせる最高の起こし方。
「うるせぇぇぇ!!」
俺は布団から上半身を上げ、緑色の人形にそう叫んだ。緑の奴は片手にフライパン
もう片方にオタマという、何とも言えない格好をしている。
「ほら、起きたです蒼星石」
「・・おはようございます、マスター」
蒼い人形は苦笑しながら俺にそう言った。
「・・・・・・」
「マスター?」
「・・・ おはよう」
俺は自分の中で苛立ちを募らせながら起床した。

 顔を洗い、歯を磨いた俺は 人形達にさっきの事を尋ねた。
「俺を起こして楽しいか?」
「・・いえ、別に楽しい訳では」
「起きたのなら、さっさと飯でも作りやがれですぅ!」
蒼い人形は俯いたまま俺にそう答え、緑色の人形はTVを見ながら俺に指図をしてきた。
TVに映っているのは チビっ子から大人まで幅広く人気のある探偵クンクンだ。
そのTVの内容が俺に更なる不快感を与えてくる。俺は自分の感情を抑えながらキッチンへ向かった。
 【・・やはり躾は必要だよな】怒りを料理に昇華させて作る最高のスパゲティーミートソース・・・のようなもの。
いくら料理本を見たとしても、類似品が俺にとっての限界だった。そしてもう一品 ソースの部分を特化した
理想の復讐、いや躾のための激辛料理。タバスコを入れすぎたお陰で見た目は
他のソースより少し赤いが、あの人形の事だ多分食べてくれるだろう。俺は料理を居間に持っていった。
 「出来たぞ」
俺の声と共に二体の人形が小さなテーブルの周りに集まってくる。俺は料理を間違わないように順番に置いていく。
緑の人形が不信そうな目でこちらを見てくるが、俺は気にせず人形に笑みを飛ばす。
「さぁ食べてくれ、今回は洋風だ」
「わぁ、美味しそうですねマスター」
「ちょっと待ったです! 明らかに翠星石の料理だけ色が違うです!」
疑惑が頂点に達したようだ。緑の人形がソースの色の違いに気付いたのは予定外だったが、
まだ詮索のレベルだろう。俺は頭をフル回転させながら、緑の人形に出来るだけ優しく語りかけた。
「そうか? 少しトマトを入れすぎたようだが・・ トマトは嫌いか?」
「トマトは好きですけど・・ 違うです! そういったレベルじゃないですぅ!」
【・・こいつ、どういう勘をしているんだ?】俺は少し顔をしかめながら、人形の勘の良さに少したじろいでいた。
「翠星石、我侭はいけないよ。マスターが困ってるじゃないか」
「・・・ 分かったです、でも食べる事は食べるですけど、その前に人間! お前が食べてみろです!」
「へ?」
突然の状況の変化に俺の口から言葉が出てきてしまった。【・・俺に食べろと? 冗談だろ?】
俺はその場で黙って考え込んた。
「・・・・・・」
「どうしたです? 何か問題でもあるですか?」
緑の人形は勝ち誇ったような顔で俺を見つめてくる。
「・・俺がお前の料理に手を付ける訳にはいかんだろう、食事のマナーを守らなければな」
「ですぅ?」
「・・・・・・」
緑の人形はトコトン惚けている。
「ああ、そう言えば確か、この料理に使った素材は賞味期限が切れていたんだっけかな・・ だから今日は外に食べにでも行こうか」
俺は空々しい事を言い何とか危機を脱した。結局 緑の人形は俺の作った激辛料理を食べず、
俺達は外に食べに行く事になったが、
蒼い人形がスパゲティーを口に頬張りながら固まっている様に見えたのは 多分俺の気のせいだろう。

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