そんなはずはないと誰でも一度は最初に思うだろう。
身近な人を好きになったときだ。
例えば、幼い頃からずっと一緒にいた幼馴染とか。
それは入浴中かもしれない。今まさに寝ようとベッドに入った時かもしれない。もしかしたら廊下を歩いている時かもしれないし。下の階から自室に戻ろうと螺旋階段から上がっていた時かもしれない。
そんな時に不意にそいつの事を思い出して、誰へとも言わず大量に罵詈雑言並べ立てるのだ。
あんなちっちゃくて、私より年下で、ずっと地下に引き篭もっていて、口を開けば私への悪口ばかり。物は壊すし、メイドは壊すし、食事もまともに摂らなくて、出かけようとすればどこへ行くの? と、うるさく聞いてくる。宴会が終わる時間まで起きてるし、内緒話までしっかり聞いていて。私の大嫌いな雨の日ばかり機嫌がいい。あいつなんか嫌いだ、大嫌いだ。
だから、まさか私ともあろうものがあんなやつを好きになるはずがないと。
そう、思ってたのに。
あれは初めてあいつが魔理沙を家に上げた時だっただろうか。
夕方頃だった。本当に苛々した。仲が良くて。手を繋いで紅魔館に入ってきたのだ。
忙しそうな咲夜をとっ捕まえて聞けば、食事のテーブルも一緒にしてくれと頼んだらしい。
部屋の用意はしたの? と聞くと、そういえば泊まろうかとは言っていましたけど、そういう話は聞ききませんね。と返された。
でもどう見ても魔理沙は着替えを持ってきているのだ。隣のふくらんだ旅行鞄がその証拠ではないか。
図書館に行ってもあいつも嬉しそうで、宝石のついた羽をぱたぱたさせていた。
いつもみたいにパチュリーの研究を邪魔したりもしない。
それどころか小悪魔が本を戻す手伝いまで始める始末だ。
そんなに魔理沙が好きなのかと一瞬思って、なんだか悲しくなった。
そりゃ、私だって、こんなに長い間一緒に居て、あなたのことはずっと閉じ込めたままだったけど。
「……嫌われてるとは、思ってないけど」
でも、大切にされているという自信なんて、なかった。
思い返してもあいつとの思い出なんてろくなのがない。
満月の異変を解決しに行った時も帰ってくるなり石像投げられたし。
宴会で酔って帰って来たら怒って玄関の扉ごと握り壊された。
こんなに怒られるならと霊夢の所で一泊して帰ってきた時なんか 「もう止めてよ!!」 と泣きだす始末だ。
そういえばあいつ、この間庭園で赤い薔薇ばっかり五百本も栽培してたこともあったっけ。
弾幕ごっこで一本折っちゃった時も物凄い勢いで怒ってた。
平手で頬を殴られたのなんか、あれが始めてだった。
そういえばしばらく話をしていない。
謝った覚えもなかった。
そうこうしているうちにフランが魔理沙を引き連れて図書館を出て行ってしまった。
フランの部屋の方角に。
魔理沙を自分の部屋に入れるつもりなのだろうか?
やめてほしい、やだ、やめて。
思わず外に飛び出してしまう。
屋敷から少し離れた森も紙をぐしゃぐしゃに丸めて詰めたごみ箱を引っ繰り返したみたいに鬱蒼と茂っていて見ているだけで嫌な気分になった。暗い緑色の葉の間から差し込む月の光を避けて進む。
最近、神社にも行っていない。弾幕ごっこもしていない。急にむしゃくしゃしてきて草がなぎ倒された獣道を思いっきり走った。道を塞ぐように倒れた木を折れそうなほど踏み付けて空を飛んだ。
木から木へ、枝から枝へ。どうせ落ちたってケガもしないだろう。
だから剥がれ掛かった樹皮に足を滑らせた時も、受け身さえ取らなかった。
「……頭悪いよ」
ベッドで目を覚ました時のフランの第一声がそれだった。
帽子はいつも通り被ったままで、崩せばいいのに律義に膝を揃えている。さっきまで月が出ていたはずなのに、フランの顔も満足に見えない。手にはほどけ掛かってぐしゃぐしゃになった包帯を持っていた。なんだか怒っているようで、窓もない部屋だった。何も物音がしない静かな部屋。咲夜もどこかへ出掛けてしまったのだろうか。まあ、メイドなんかいても何の音がしないし、騒ぐのは私ぐらいのものなのだけれど。
それにしても体中痛い。服に擦れて針で刺すように痛んでいる。
「飛べるのに木から足を滑らせて岩場に落ちるなんてどうかしてるよ」
手当してくれたのだろうか。フランの指が胸元のリボンに触れた。着替えさせられたのか、それとも初めから破れてなどいなかったのか。服に穴は開いていなかった。血もついていなくて、心臓のあたりがぴりぴりする。
「……私がいなかったらどうなってたか分かってるの? 日が昇りそうだったんだよ? 魔理沙送ったからまだしもさぁ」
ブローチが外され、呼吸が少し楽になった。言葉とは裏腹にフランの指が丁寧に穴にボタンを押し込んで外して行く。ただそれだけ。にもかかわらずなぜか心臓がバクバク鳴っていた。白い手首までフランの赤い服が覆っている。ここ連日の暑さで頭がおかしくなっているのかもしれない。だって、なんだか変だ。
「……どうかした?」
ほとんど無い私の胸の辺りでフランの手が止まる。どこがおかしいのかはよく分からない。なんだか顔が熱くなる。何を言っていいのかわからなくて黙ったままでいると、フランはため息をついて私の服を脱がせた。身体は包帯でぐるぐる巻きにされていた。あまり世話にならない近所の薮医者と比べても明らかに下手で、ところどころ肌が見えている。思わず口を歪めた。
「笑わないでよ」
ふわりと甘い匂いがして、赤いリボンと包帯がわずかに触れ合った。反射的に背筋が硬くなる。半裸なことなどどうでもいいが、フランの胸が触れんばかりに近づいてくると無意識に身体を支えている手に力が入った。最初何をしているのか分からなかったが、包帯の結び目らしきものにフランの指が掛かるのを感じた。露出した肩に吐息がかかり、なんとなく誘っているのではないかと思ってしまった。想いまで息と一緒に吐露してしまいそうで、呼吸するのも憚られた。今すぐここから離れてどこかに逃げ出してしまいたくなる。
「……誰もいないからない知恵絞って必死に手当したんだよ? これでも」
「わ、わかったわよ」
かろうじで頷くと、フランは少しだけ笑って包帯の上をなぞった。なんだか変に緊張して目を合わす勇気もない。一生懸命聞こうとしてもフランの声が頭に入ってこなかった。
「痛いの?」
白くなるほど握り締めた手を見て勘違いしたのだろうか。そうこうしているうちに包帯が解けた。ほぼ真っ平らと言っていい身体にほのかに赤いガーゼがへばりついている。……本当に下手だ。薬すら塗っていない。
フランはかなり懐かしい白く塗られた救急箱から入っていた鈍い銀色のピンセットを取り出すと、まだ血に染まっていないガーゼの端を摘まんだ。傷回りの乾いた血がガーゼにこびりつき、赤く傷んだ弱い皮膚が剥がれて少し痛い。相当深いみたいで傷口を見るのも嫌だった。
「私がどんな気持ちで運んで来たか分かる?」
袋に入ったガーゼを取り出した。黄色い塗り薬を無駄だと思うほど白い面に塗り広げ、薬を下にして肋骨あたりの傷口の上に押し当てる。今まで気が付かなかったが、フランの白い襟にも絵の具を零したような赤い血がついていた。
「ごめんなさい」
思わず目を伏せると急にフランの手が止まった。
「ありがとう、……手当してくれて」
なんだか変な意味で泣きそうだった。
あまり言い慣れない言葉を使ったからかもしれない。
違う、本当は分かっている。分かっていて認めたくないのだ。
今までこんな風に感じたことはなかったかのだから。
今日は変だ、今日はおかしい。
大体、今朝だって私はフランのことを考えていたのではなかったか。
なんとなく分かってしまって、フランの身体を抱き寄せた。
あまりにあっさりと腕の中にフランが収まる。
隔てるものが布と包帯しかなくて、抱き締めたらくっついて一つになってしまいそうなぐらい熱かった。心臓がさっきよりバクバク鳴っている、フランに伝わってるんじゃないかと思うと頭の中が焼き切れそうだった。赤い服に触れている指先だけでフランを撫でる。それだけでもため息が出るほど嬉しくて、身体半分が触れ合っているなんて信じられないほどだった。抱き締めたい、もっとフランに触りたい。もっと服の内側の、端的に言ってしまえば、私はフランとひとつになりたいと思っていた。
「側にいて欲しいなんて思ってないよね?」
フランが腕を床につけると、私から身体を離した。
「……顔、赤いよ」
そういうフランの顔は笑っていなくて。ああ、この子は私が嫌いなんだなと思った。
何本もの針で心臓を貫かれているみたいだ。掴まれていた手首をさすっている。辛くないはずがない。
抱き寄せた時についた皺を目の前で丁寧に延ばされる。落ちていた帽子を拾い上げて深く被った。顔を見る気もないようだった。
「あとは自分でやって」
救急箱を押し付けられ、あいまいに返事をして、扉が閉まる音を聞き、ベッドの中に潜った。
自分がなんだかとてつもなく惨めなような気がしてくる。
本当に頭を打ちでもしたのかもしたのかもしれない。
……フランが好きだ。
気持ち悪い、吐き気がする、分かってて、フランが好きになっていた。
笑っているフランを見ると嫌な気分になるのに、やっぱり私はフランが好きだった。
私の前で幸せそうに魔理沙の話をするフランを見ると無茶苦茶にしてやりたいと思うのに。
でも、フランが好きになっていた。
触りたいと思う、あの白い肌に触りたいと思う。あのさらさらした金髪に触れたいと思う。
もう一度、あの細い身体を抱き締めて想いを伝えたい。
どれだけ嫌われていても。
フランのベッドに寝ていると思うだけで呼吸が速くなる自分が嫌になる。
秘所が熱い、裸になってフランがここで寝ていたら、抱いてあげようかって、耳元で囁かれたらどんなにいいか。
淫芽をこすり合せて絶頂に達して、「もう我慢できないよ」って、言って貫いてほしい。
「ん……、やだ、私……」
愛液を潤滑油に中指を出し入れする。
私は、妹の子供を孕みたいとすら思っていた。
「そんなの無理じゃない」
無理、そうだ、無理だ。
妹も私もメスだった。
妹には生えていないし、仮に生えていたとして私を好きになってくれるはずがないのだ。
好きだった、大好きで大好きでしょうがなかった。
ありえないと思っていた。
妹を好きになったりするはずなんかないと思っていた。
そんな私はいつからか影を潜めて、純粋にあの子を愛してしまっていた。
なんでこの部屋にあの子がいないのか分からない。
なんで私はこの部屋に来なかったのか分からない。
「なんでこんなに好きなのかな……?」
泣いていた。誰かにたずねたい訳でもない。理由を知りたいわけでもない。
ドアは閉っていたけど、誰かが入ってきてくれればいいのにと思っていた。
好きだった、欲しかった、大好きだった、愛していて大事だった。
たとえ狂気に蝕まれていたとしても、肉親に嫌われていたとしても、地下に閉じ込められていて、会わせてもらえなくても。
好きで大好きでしょうがなかった。
指を押し入れる、フランの指、そう思うだけで口の中に唾液が沸き上がった。
「……ぁっ」
膣壁に擦れる、異物の感覚が気持ちいい、フランに犯されたい、もっともっと犯して欲しい。
思わずフランのベッドに寝転がる。
手の甲を下にして、ベッドに腰を押し付けた。
「んぁっ、フラン、だめ、そんなの……っ」
指の力を抜く、腰を動かすたびに、壊れていくのが分かった。
生暖かい液体で掌が濡れる、フラン、フラン、見てよ、私の中もうこんなになっちゃって……
ぐちゃぐちゃになる、自分の中が真っ二つに割れてずれていく感じがした。
フランがほしくて、ぐちゃぐちゃにしたくて、壊れそうだった。
棒を抜き差しすると腰を降り、タイミングがずれるたびに棒が大きくなる。
「ぁあん、フランの、おっきくなって……ッ」
『大きくして欲しいんでしょ? お姉様が腰振ってるせいで大きくなってるんだよ?』
「やだ……違う、んッ、私、そんなふしだらじゃ』
好きすぎて嫌いなはずのフランにおっぱいを揉まれるたびにあそこがきゅうきゅう締まって嫌になる。
「ぁあんッ、揉まないでぇ……ッ」
『ほら、ふふ、あんなに出してもらっておいてまだおちんちん締め付けてくる、射精して欲しいんでしょ?』
「はぁ……あん……うッ、違……ッ」
首を横に振ってもフランは無理やりおちんちんで何回も管を擦って最奥に叩きつける。
「ぁん、はぁッ、やだあ、フランの私の一番奥まで貫いてるぅ……ッ」
『射精して下さいって言わないと出してあげないよ? ”フランのえっちな液、私のいやらしい蜜壷の奥に注いで下さい”って言って?』
そうささやかれると秘所はきゅーっと締まった。こんなに欲しがってる自分が嫌になる、私なんかいなくなればいいのに。
『締まってるよ? お姉様はこういうこと言われるの好きなんだね? 実の妹に後ろから貫かれて這いつくばらされて、射精して下さいって言うまで気持ち良くさせてもらえないの、そんなに大好きなんだ?』
勝手に内股からぬるぬるの愛液が流れ出た。真っ赤になる、顔も見たくない。フランは分かってて言っているのだ。
『愛液が溢れてるよ、……感じ過ぎだね。おちんちんもお姉様のせいでこんなにおおきくなってるんだよ? お姉様の身体がいやらしすぎる証拠だよね?』
「フランのがおっきすぎるからいけないのよ……、私、本当はこんなことされたくなんか…ッ」
『お姉様、自分が淫乱だっていいかげん認めればいいのにぃ……、お姉様はね、私に貫かれて喘がさられるのが大好きなんだよねー? おっぱいだってびんびんだし、上の口からも下の口からもよだれ垂れてるよ』
フランのベッドの上で淫らな妄想に耽る。
まるで土足で踏み荒らしているみたいだった。
私は雪みたいに白くなんかなかったけど。
フランはまだ純粋だから。
きっと汚れているのは私のほうなのだろう。
まるで雪と墨みたいだ。
- 作品情報
- 作品集:
- 最新
- 投稿日時:
- 2009/01/10 22:51:16
- 更新日時:
- 2009/06/28 21:28:30
- 評価:
- 8/8
- POINT:
- 60
- Rate:
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それがちゃんと話に絡んでていいと思いました。
てか、切ないな……
そしてフランちゃんがお嬢様を大好きすぎるので、お嬢様は今までの仕打ちを反省して告白すべき。
ところで妹の子供を孕みたいとか、後ろから妹に貫かれる妄想しながら本人のベッドでおなぬーとか
お嬢様のエロさが半端無いだけにエロシーンが短いのがもったいない、と思いました。
どうなるのだろうか?
雪と墨という二律背反を使ったテーマの消化方法はなかなか上手いと思いました。
そして複雑な心理描写と展開はなかなか奥深い仕上がりになっています。
難点としてはやはりネチョが短くてパンチ力に欠ける点です。
ですが、文章や物語はしっかりして完成度は高いと思います。
あと前回同じく背景を黒にしてしまった私から二言。
背景黒にしたらコメントが炙り出しなり、笑う羽目になります。
それと本文が何となくエロくなります。
レミリアはフランに嫌われてる?見下されてる?厭われてる?
…別に、フランからすればただの姉、というだけかもしれないけれども。
> そんなはずはないと誰でも一度は最初に思うだろう。
>
> 身近な人を好きになったときだ。
>「なんでこんなに好きなのかな……?」
レミリアがなんか、誰にも親しくされてなくて、寂しさをフランにぶつけたいんじゃないかな…なんて思います。
フランって白いの?このSSではなんかフランの腹に一物ありそう。
お姉さまったらにぶちん!
それにトドメが入った
お嬢様切なすぎ。