※永琳の考え方についてちょいと独自解釈含みます
うちの永琳はこんなんじゃない!などという苦情は受け付けられません
ごめんなさい
※慧音が長生きしてます
短命だからこそ慧音はいいんじゃないか!という方にはお勧めできません
※前置き長いです
すぐ抜きたい人にもあんまりお勧めできません
いつのことだっただろうか。
彼女と出会ったのは。
禁忌を犯した私は永遠の時を生きる。
彼女は、蓬莱人から見てはおろか、月人から見たとしても、刹那の時しか生きない。
……はずだった。
しかし彼女はまだ生きている。
それも、いまだに元気な、若々しい状態で。
私が、生かし続けている。
私が、私だけの都合で――
■ ■ ■
「……永琳?」
慧音の、私を呼ぶ声で現実へ意識が戻った。
「どうしたんだ、そんなにぼうっとして?」
いけない、せっかく愛しい人と一緒にいるのに。
考え事をしてしまった。
「あら、ごめんなさい、なんでもないのよ?」
私は平静を装って返事を返す。
悩むのは慧音が里に帰った後、いくらでもできる。
「そうか……ほら、雪が降ってきたぞ」
慧音に言われるまま外を見ると、はらはらと降る小さな雪。
地面につくと、すぐに消えてなくなってしまう程度の小さな雪。
「……そうね。でも、私は雪はあんまり好きじゃないわ。
特に、こんな、儚い雪は」
雪に、手をかざしてみせる。
雪は手に落ちて、すぐに溶けてなくなってしまう。
「……寒いわ」
手を引っ込めてすぐに、その手で慧音を抱き寄せる。
雪で冷えた手が、慧音の体温で温まる。
そのまま、慧音を抱きしめる。
彼女が、確かにそこにいるのを確かめたくて。
■ ■ ■
私が彼女に出会ったのは、今よりももっと強い雪の日。
輝夜と妹紅が殺し合いをしていた日。
こんな雪の中、よくもまあ飽きずに、と思いながら、
雪以外いつもとそう変わりない景色を見ていたときだった。
雪まみれになりながら、走ってきた彼女の姿を今でもよく覚えている。
突然現れた彼女――慧音は、いきなり妹紅と輝夜を止めに、二人の元へ近づいた。
見たところ彼女は人間のようだったので、私は彼女を引きとめた。
理由を尋ねると、彼女は少し前から妹紅と親しくなったらしい。
そして、ある日妹紅から聞かされた。
妹紅が蓬莱人であること。そして、かたきである輝夜と殺し合いを続けていること。
それで、妹紅が心配だったから、止めに入ったのだそうだ。
しかも話を聞くと、彼女は妹紅と知り合ってまだ半年もたっていないらしい。
私は耳を疑った。それだけでなく、彼女のほうも疑った。
私が姫にそうしたように、特別な存在に対して何かするのなら分かる。
しかし、出会ってまだ数ヶ月の人間のために、
わざわざ雪まみれになり、そして巻き添えを食う危険を冒してまで止めに入ろうとする。
そんな精神は、理解することができなかった。
だが、彼女はそれができる人であった。
困っている人間をほうってはおけない性分らしく、
里の人々もずいぶんと彼女の世話になっていることを後に知った。
そんな彼女に、私のほうが惚れたのはいつからだっただろう。
あれ以来、特に永夜異変以来、慧音と話す機会が多くなった。
そして彼女と話していて、私は少しずつ変わっていったんだろうと思う。
そのときまでは、姫さえ良ければ――ひいては結局のところ、自分さえ良ければ、だったのだろう――
他のものなどはどうなろうとも良かった。
だから、あの時も、姫を一緒に迎えに来た同胞たちを皆殺しにしてしまった。
そしてそれが正しかったと信じていた。
鈴仙のことだって、匿うぐらいの情けはあったが、
満月を隠したのは正直なところ、結局自分たちが困るからという思いのほうが強かった。
だが、慧音は私とはまったく違った。
純粋に他人のために、少なくとも自らに直接の利益は与えないようなことをたくさんしていた。
彼女は私が悩んでいるらしいところを見たときも、相談に乗ろうとしてくれていた。
無論このようなことさすがに彼女には話しづらかったので黙っていたのだが。
永夜異変が解決し、永遠亭の存在が明るみに出たころになっても、
慧音はいまだに殺し合いをやめない妹紅を説得しようとしていた。
それだけでなく、里の人と接触しようとしない妹紅を、あれこれと助けている。
だが、妹紅は唯一の理解者である慧音にすら、いまだに心を開こうとしていなかった。
それでも慧音は、妹紅をほうってはおかなかった。
私は、慧音と自分を比較して、自分がどれだけ自己中心的な生物であるかを思い知った。
現に、妹紅が消えない憎しみを背負って苦しみ続けていることには、まったく知らん顔をしていたのだ。
他人のために力を尽くす慧音の姿を見ていなかったら、私は今までどおり無視していただろう。
しかし、慧音のおかげで目が覚めた。
私は、初めてまったくの他人を心配し、その人のために行動しようと思った。
無論、慧音に良く思われたいとか、そんな利己的な思いがなかったといえば嘘になる。
だが、このとき初めてであるが、妹紅を心配したのも嘘ではない、確かなことであった。
■ ■ ■
雪足は相変わらずで、降っては降っては地面に吸い込まれるように消えていた。
だがますます寒くなってきたように思う。慧音も私も、ますます身を寄せ合った。
「おっ、……と。邪魔しちゃ悪いな」
「そうね」
小さな声が、背後から聞こえた。
振り返ると、少しだけふすまを開け、部屋の外になにやら小声で話しかける妹紅の姿が。
もう一人、それに答えた声の主はここからでは見えないが、輝夜だ。
「大丈夫よ、誰も邪魔だなんて思ってないわ」
気を遣ってくれているらしいので、声をかけてやる。
「ああ……でも大した用じゃないんだ。
慧音が来てるらしいから挨拶ぐらいしとこうかなって」
「ええ、元気にして……るに決まってるわね、
そうじゃなかったら永琳が治療にかかっているところだもの」
「そのとおりだ。私が病気になったら、永琳が何とかしてくれるさ」
輝夜と妹紅、それと慧音。
三人は仲良く話している。
そこにいたるまでは、多くの苦労があった。
蓬莱人になってまで輝夜を追ってきた妹紅の憎しみは根が深かった。
そこで輝夜を説得することにしたが、
輝夜も意地を張ってなかなか難航した。
しかし、最終的には輝夜は、妹紅に対して謝罪した。
無論、妹紅はすぐには許してはくれなかった。
だが、輝夜の言葉に相当心は動いたらしく、あとは目に見えて二人の関係は改善されていった。
そして、結果は見てのとおりだ。
「で、妹紅は今日何をしにきたんだ?」
「ああ、輝夜と将棋でもしようかと」
今ではすっかり二人とも仲良くなっている。
妹紅自身も、輝夜のことをもう恨んではいないと慧音に言っていたらしい。
もっとも、私や本人にはそんなこと絶対に言わないのだが。
妹紅は相当な意地っ張りらしく、
輝夜があんな竹林のボロ屋じゃなく、永遠亭に住めばいいと言っているのだが、
妹紅は断固としてそれを受け入れない。
永遠亭には頻繁に来るのだが、将棋や花札、トランプなどといった勝負事にこだわり、
絶対に『遊びに来る』という表現をしない。
だが殺し合いはもう決してしない。
慧音も私も、妹紅を心配しなくて良くなった。
「まあ、そういうことで。じゃあな」
「じゃあね。ま、今日も私が勝つんだけどね」
「いーや、今日は私が勝ってみせる!」
二人はそんなことを言い合いながら、部屋を去っていった。
慧音は手を振って二人を見送っている。
「……まあ、何度となくどうなることかと思ったけど……
生きてる間に二人のあんな姿を見られて、良かったよ」
二人がふすまの裏に消えた後、慧音は笑顔で振り返ってそんなことを言う。
その言葉に、私の心は少しざわついた。
「どうしたの、突然。
まるでお婆さんじゃない。私よりずっと若いのに」
「いや、半獣って妖怪ほどは長く生きられないって聞いてたからな」
私はひそかに胸を押さえた。
実際、そのとおりらしいのだから。
らしい、というのは、人に聞いた話だからだ。
それも獣人一般の話で、ワーハクタクにもそれが当てはまるかは分からない。
慧音以外にワーハクタクなど、身の回りにはいないのだから。
だが、たとえ『そうかもしれない』程度の話でも、私は怖かった。
■ ■ ■
妹紅と輝夜の問題を解決する傍ら、私は自分の問題についても向き合わなければならなかった。
すなわち、慧音への恋。
姫に対する感情とも、また違ったものだった。
ゆえに、私は最初それに有効な対処法をもてなかった。
恋の病、などと人はよく言うが、まさしくその通りだと体感して思った。
そしてそれは、私の薬でも治すことはできない。
だが、それを治すことそのものは、前の問題と比べて非常にあっけなかった。
方法は非常に単純なこと。
ある冬の日、ただ慧音に、恋人になって欲しいと想いを告げただけであった。
そうすると慧音は、照れたように笑って、承諾してくれた。
もちろんそれは嬉しかった。
だが同時に、私は怖かった。
そのときから、私の恋人は半人半妖の上白沢慧音になった。
つまり、私はいずれ、必ず恋人を失うことになる。
それも、蓬莱人にとってはそれほど遠くない未来に。
私が苦しまなくてはならなかったのは、恋の病よりもむしろこちら――寿命差のほうだった。
やがて春が来て、日に日に消えてゆく山頂の残雪や、
はかなく舞い散ってゆく雪のように白い桜吹雪が、慧音と重なって見えた。
今まで私の周囲は、姫をはじめとして寿命の長い者ばかりだった。
だから、他者の寿命の心配などしたことはなかった。
だけど慧音は、ほんの百年、二百年もすれば、老いて弱り、死んでしまうしまうかもしれない。
それが自分の愛する人なのだから、尚更怖かった。
それを考えたとき、私は自分で思っていたよりもずっと脆かった。
一人でいるとき、慧音を想って涙腺が崩壊したことさえあった。
私に強さがあれば、慧音とわずかな時間しか生きられない分、
その時間をより濃密に過ごそう、などと考えられたかもしれない。
だが私はそれほど強くはなかった。
慧音を失った後も幸せに生きていける自信が無かった。
しかし幸か不幸か、私にはその運命を捻じ曲げる力はあった。
『あらゆる薬を作る程度の能力』が。
だから、出会って100年ほど経った今も、慧音は元気で私の隣にいる。
■ ■ ■
私は慧音を抱きしめた。
少々唐突だったからか慧音は驚いていたが、
私の心境を察してくれたらしくすぐに強く抱きしめ返してくれた。
「……妹紅は今頃将棋を指してるはずだし、ウドンゲはてゐと遊んでるし、
今なら、誰も邪魔してこないはずよ」
「あ、ああ」
そういって私は慧音に口付けをする。
最初に唇が触れたとき、このまま軽く済ませたのでは気がすまないと感じたので、すぐさま舌をねじ込んだ。
慧音はまたも驚いていたが、こうされるのは慧音だって初めてではない。
まあ、ここまで急激に深いキスをするのは珍しいのだが。
舌を絡ませにいくと、慧音もそれに応えてくれる。
そのまま倒れこむように押し倒し、慧音を貪る。
息が続く、ぎりぎり限界まで舌を絡ませ続け、そしてようやく口を離す。
私と慧音が繋がっていた証が、二人の間に光っている。
「……今日は、あれ、使う?」
私の問いかけに、慧音は黙ってうなずいた。
慧音も意外と好きなのよね、などと言ったら怒られるから心の中でつぶやいて、
ポケットから小瓶を取り出し、慧音に渡す。
あれ、というのは、精神をそっち方面に昂ぶらせ、性感を刺激する薬――要するに媚薬のことだ。
……と、慧音には思わせてある。
長く生きることが必ずしも幸せでないことは、私たち自身が良く知っている。
今は幸せだが、つらかった時期が確かにあった。
その幸せだって、永遠に続くとは保証できない。
慧音を、一時的にとはいえその中に巻き込むのは、気が引けた。
本人も望まないかもしれない。
あの白黒の魔法使いのように、自分の種族のままで、本来の寿命で死することを望むかもしれない。
だが私はそのまま慧音を失ってしまうことには耐えられなかった。
だから、慧音には黙って彼女の寿命を延ばそうとした。
慧音を本人の知らぬ間に延命させようと思ったとき、一番問題だったのがどうやって薬を飲ませるかだ。
食事に盛るという手が一番単純で手っ取り早いが、現場を目撃されると面倒だ。
ならば、いっそのこと薬を隠さずに飲ませるのがいい。
そして至った結論が、偽って飲ませるということだ。
慧音と体を重ねる関係になったときに、
まだ不慣れな慧音の痛みを和らげるためといって、慧音に媚薬を飲ませた。
媚薬といっても、ほんの軽いもので、慧音の体の負担にはならない程度のものだ。
慧音は意外とこういうのに興味があったらしく、結構興味津々な様子でのってきた。
そしてその次からは、媚薬だと偽ってさまざまな薬を投与したわけだ。
体の老化を遅らせる薬や、若返りの薬などを状況に合わせて使う。
蓬莱の薬の方が手っ取り早いのはいうまでもないが、慧音を不幸にしかねないそんな方法は論外である。
今回飲ませた薬もそれだが、ちゃんとプラシーボが働いているらしく、
もともと本物も比較的弱い媚薬であったのもあって、慧音にはちゃんと効果が出ている。
むしろ前よりも効いているのではないだろうか。
背後にまわり、服の上からちょっと触っただけで、慧音は体を震わせて反応する。
それが可愛くて、もっと苛めたくなる。
服越しにそのまま、抓るように弄る。
あるいは乳房を丸ごと服越しに揉みしだく。
私が何かアクションを起こすたびに、慧音は大きく反応を返す。
「どう?気持ちいい?」
慧音は目にわずかに涙をにじませながら、何も言わずにこくこくとうなずいた。
もっと深い行為を何度もしたことがあるのに、いまだに恥ずかしいらしい。
さらに私は、慧音の服の中に手を入れる。
ひゃっ、と慧音が間の抜けた声を上げる。
そして慧音の白い肌がそこからのぞく。
その色白のお腹を手のひらで触れ、へその周辺を指先で刺激する。
今度は先ほどとは少し違った反応を慧音は示す。
ぞくぞくと背筋を震わせているのが触っているだけでも分かった。
慧音の表情へ目をやると、恥ずかしいのか顔を背けて震えていた。
だがそのまま続けると、慧音はこちらに目を向けた。
「……え、永琳、そんなに、焦らさないでくれっ……」
慧音の潤んだ瞳が、こちらを見ている。
これだけ可愛い顔をされると、もっと苛めたくなる。
だけどそれで慧音に嫌われたくはないので、焦らすのもほどほどにしてそのまま上へ行く。
そしていきなり乳頭を抓り上げた。
「ひゃっ、あぅっ!」
慧音の体が大きく跳ねる。
それを確認したら、今度は手を緩めて、大きくなった乳頭をくにくにと弄り続ける。
「……いっちゃった?」
「んっ、んんっ……」
慧音は口をつぐんで喘ぎ声を抑えるばかりで、何も言わない。
しかしその抑えた声はそれはそれで愛らしかったので、さらに指先で弄る。
リズムを早めたり、緩めたり、一定しない責め方で苛める。
「……うぅっ、んっ、もう、そろそろ……」
慧音がそういうと、私は手をつつっと下に這わせる。
それだけでもう慧音の体が震えているのが分かる。
まじめな慧音が恥らいながら、それでも求めてくるのは本当にそそられる。
だが、あんまり意地悪はしないほうがいいかと思い、すぐに下に手を動かす。
「……あらあら、焦らしただけでこんなになってるのね」
「だ、だって、それは、薬のせい……
……いや、もういい」
薬の所為にしても無駄だろうと思ったのか、慧音は拗ねてしまった。
意地悪、と目で訴えている。
「……ごめんね、私が悪いのよね」
焦らしすぎたかと後悔して、今度は慧音に身を寄せて、まっすぐに突入する。
「あ、あぅっ、そ、そんな、いきなり……」
慧音が突然下を責めてきた私に驚き、声を上げる。
今度は苛めるつもりではなかったので、私はすぐに手を止めた。
「あっ、ご、ごめんなさい、痛かった?」
「いや、少し驚いただけだ……」
私が身を離すと、慧音はそのまま続けて問いかけてきた。
「でも永琳、今日は少し様子が違うな?
いつもならもっと意地悪なのに」
「そ、そうかしら?」
確かに、私は今日はなんだかいつもと心境が違っていた。
いつもなら、慧音がなんと言おうとも、自分からはっきり口に出して求めるまでは焦らし続けてたのに。
今日は何故か不安で仕方なくて、そんなことをする気にはなれなかった。
今日は、何時になく不安定だ。
普段、無理矢理押し込めていた不安や罪悪感が、だんだん胸の奥から噴き出してきている。
本来の道をはずれて慧音を長生きさせた罪の意識、慧音を失うことへの不安。
そして、その両者との葛藤。
いま、罪の意識の方が大きく膨れ上がっていく。
そしてもう限界だった。
私は手を下ろし、まっすぐ慧音を見る。
慧音がどうしたのかという目で見ている。
「……慧音、変なことを聞くけど……私のこと好き?」
「ど、どうしたんだよいきなり……
……好きに決まってる、じゃないか」
慧音は不思議そうな顔をして、そしてはにかみながらそう言ってくれた。
それを見て、少しだけ、胸が詰まったような気がした。
「……愛してる?」
「……ああ、愛してるよ。……どうしたんだ?」
少しだけ困ったように笑ってから、慧音はまた言ってくれた。
心臓が、変な高鳴り方をする。
「私と、……これからも、ずっと、一緒にいたい?」
「な、なんだよ、当たり前じゃないか」
自分でも、なぜこんなことを口走ったのかも、何を言っているのかも分からなくなってきた。
少しずつ、涙もにじんできた。
慧音はいよいよ本格的に困った表情で私を見ている。
「私も、ずっと一緒にいたいわ。できることなら、永遠に」
「……ああ、そうだな」
私は、とんでもないことを口走っている。
止めたほうがいいはずなのに、涙も、言葉も止まらない。
「でも、それは駄目。貴女を私と同じ目にはあわせられない」
「…………」
慧音は、何も言わなかった。
「……だけどっ、私は、半分人間の貴女が、さっきの雪みたいに、消えちゃうのが怖かったの。
だから、私っ……貴女に、薬をっ……」
ついに、言ってしまった。
罪悪感に勝てなかった。
これで、すべては水の泡。
恐らく、私は軽蔑される。
「……まさか、蓬莱の薬?」
「違う、けど……私はっ、貴女の、寿命をっ……勝手に、延ばしたの……」
考えるのも恐ろしい結果に向かっているのだと、私は感じていた。
だが、私の心中の罪悪感はそのまま言葉を押し出し続ける。
「ごめん、なさいっ、人間がっ、長く生きるなんて、辛いことだって、知りながら……
私の力で、むりやり……」
「永琳」
私の言葉は、慧音の抱擁に塞き止められる。
それから、優しい口付け。
ゆっくりと口を離して、慧音はじっと私を見てきた。
「……落ち着いた?」
「え、ええ」
慧音は優しく微笑んでいた。
いくらかは混乱が収まったが、まだ涙が二、三粒流れているのがわかる。
「……まあ、うすうすそうなんじゃないかって気はしていたよ。
もう百年は経つのに、全然年取ってる感じがないからな」
「…………」
私は何も言えなかった。
慧音は、気づいていた。
「でもな、永琳?どうも貴女は罪の意識を感じてるみたいだが……
不安なのは私だって一緒なんだぞ?」
「……え?」
慧音はもう一度、私を強く抱きしめる。
涙が一度、ぴたりと止まる。
「私が先に死のうが、仮に永琳が先に死ぬことがあろうが、私にとっては同じことだ。
……どちらも、永琳との別れであることには変わりないからな」
「あ……」
私は、やはり愚か者だ。
慧音の気持ちなんて、どちらにしてもこれっぽちも考えていなかった。
「だからさ、もし永琳が何もしてなかったら、こっちから頼みたいぐらいだったんだよ」
「あ、うっ……」
ただひたすら、謝りたい気持ちで一杯だった。
しかし、すぐにはうまく言葉にできない。
何とか落ち着きを取り戻そうとしながら、ゆっくりと言葉にしていく。
「ごめんなさい、私、貴女の、気持ちもっ、知らずにっ……かってにっ……」
「あぁもう、泣くな」
慧音はそのまま、頭を撫でてくれた。
「こっ、こんなこと、知られたら、嫌われるん、じゃないかって、ずっと、不安だった……」
「大丈夫だ。むしろ嬉しいよ、私と長く一緒にいることを望んでくれて」
慧音は私を許してくれる。
そんな言葉をかけてくれる。
もう言うこともなくて、でも感情は収まらなくて。
ただただ慧音の腕の中で泣きじゃくっていた。
こんなところ、弟子が見たらどう思うだろう。
あるいはかつての教え子である姫や、私を天才として知っている月の人々が見たら。
でも、今はそんな体面などかなぐり捨てて慧音に甘えたかった。
思えば、こんな風にして誰かに身を預けたことはなかったかもしれない。
私は今も昔も、師として他人を導く立場にあった。
また、姫に対しては従者として守る立場でもあった。
それに、少なくとも戦闘能力という意味では無敵に近かったために、
誰かに守られるということはなかった。
「もう、落ち着いた?」
「……うん。ありがとう、慧音」
気づけば、心なしか言葉遣いも少々幼くなってる気がする。
我ながら似合わないなと思いつつも、慧音に力いっぱい甘える。
今度はこちらから慧音を抱きしめる。
胸に顔をうずめ、目を瞑る。
慧音の、少し速い心臓の音が聞こえてくる。
しばらく、そのままで過ごした。
やがて慧音が口を開く。
「……じゃあ、そろそろ続き……するか?」
「うん……でも」
いつもとは逆に、慧音を、引き倒す。
いったん少しだけ離れた顔が、また大きく近づく。
「今日は、慧音にしてもらいたいわ」
突然引き倒された慧音は、少々きょとんとしていたが、
すぐに微笑んで、そのまま私に覆いかぶさった。
「分かった」
それだけ言って、慧音は私に口付けた。
それから上だけ服を脱がされ、慧音の手が、そっと下着越しに胸に触れる。
先端を中心に緩やかに輪郭をなぞられ、薬もないのに私の体がぞくぞくと反応しているのが分かる。
だんだんと、指先での刺激は掌によるものに代わり、乳房全体を刺激される。
私は声を我慢しなかった。
この甘い気分に浸り、身を任せたかった。
だが、しばらくして慧音の手が緩む。
どうしたかと顔を見ると、慧音もこちらを見ていた。
「……どうしたの?」
「いや、こうしてみると永琳も可愛いな、って」
「っ!?」
可愛い、だなんて。
今まで言われたこともなかった。
「だって、永琳ってなんだか大人っぽいイメージが先行してるし、
それにその、こういうときだっていつも永琳がリードしてたから……」
確かに、こんな風に胸を弄られるのも初めてだった。
いつもはさっきのように私が責めていたので、終盤触りあいになることはあっても、
このように一方的にされることなどなかった。
「そうね……でも、今日は慧音に体を預けるわ」
「そうか。……じゃあ、遠慮なくいくぞ」
下着が取られ、私の胸が露わになる。
刺激されていたのは少しの間だったのに、もう乳頭が大きくなっていた。
「もう、こんなに……」
「だ、だって、仕方ないじゃない、慧音がしてくれてるんだもの……」
「ふふ、嬉しいこといってくれるじゃないか」
慧音は、今度は口で胸の先をついばむように刺激する。
思わず声が漏れてしまうが、慧音は構わずにそのまま乳頭を口に含む。
そして舌を絡め、少しだけざらつく舌の腹で刺激された。
意識しないうちに、慧音を抱く腕に力が入っていた。
慧音はさらに、吸い始めた。
薬を使っているわけでもないのに、すごく気持ちが良い。
そのまま快楽に身を任せ、慧音に胸を吸われる。
それだけで、軽く達してしまった。
その動きを察したのか、慧音は一度口を離す。
「……なんだ、結局永琳もえっちじゃないか。
いつもあれだけ私に言うくせに」
いつもの仕返し、とばかりに慧音は笑っている。
いつもの私はあんな感じなのだろうか。
「……ええ、たしかにそうね。
でも、慧音にだけよ?こんな風になるのは」
「ふふ、ありがとう」
私がいやらしいのは否定しない。
だが、ただいやらしいだけだと思われるのは嫌だった。
「じゃあ、正直な永琳には、不安にさせてしまった分も、
いっぱい愛してあげないとな」
慧音はのしかかってきて、私にキスをする。
そのまま、舌を絡めあう。
慧音からこんなに深いキスをされるのも、また初めてのことだった。
「うん、愛して……私を慧音のものにして。
慧音も、私のものになって」
それでもまだ少し不安だったのか、こんなことを口走ってしまった。
柄にもないな、と自分でも少し思う。
「大丈夫だ、永琳は私のもの、私は永琳のものだ。
……離さないからな」
慧音は、耳元でそうささやく。
飲んでもいないのに、まるで酒に酔ったみたいなふわふわした感覚に陥る。
慧音も、たぶんそうなのではないかと思う。
二人してその感覚に酔いながら、何度もキスをした。
しばらくして、慧音は私に体重を預けたまま手を下に伸ばす。
スカートが取り払われ、下着も脱がされる。
すでにそこはべとべとになって、糸を引いていた。
下着をひざぐらいまで下ろしたところで、慧音は改めて指をそこに這わせる。
いやらしく開きかけた花びらを、慧音は指でなぞる。
「んやっ、意地悪しないで、はやく……」
頭で考えるより先に、私は求めていた。
今まででは考えられないような、甘えた声を出して。
しかし慧音は指の腹でなぞったり軽く引っかいたりするだけで、一向に挿れてはくれない。
下腹部が切ないまま、私は慧音を見た。
「……なるほど、そりゃいつも私を苛めたくなるわけだ」
慧音は、少しだけ意地悪な笑みを浮かべていた。
たぶん、私の顔は真っ赤になっていただろう。
苛めるところまで、完全に立場が逆になっていた。
「……でも、さ」
慧音はワンピースはそのままにして、下着だけを脱いだ。
「……私は、永琳と一緒に……
その、気持ちよくなりたい」
それ以上、具体的なことは何も言わず、ただこちらを見ている。
優位な立場にあっても、結局いつもの慧音だと、どこか安心したような感覚を覚えた。
「……いいわ、来て、慧音」
「……ん」
そのままワンピースも脱いで、慧音は私と体をぴったりとあわせる。
乳首同士が擦れあい、乳房が圧迫されて潰れる。
そのままキスをして、その勢いで足も絡めあう。
舌を絡めあったまま、肌で慧音を感じる。
私の秘所が、慧音の太腿にこすれて、淫靡な音を立てる。
また慧音のそこも、すでに十分に潤っていた。
だが、すぐに私の愛液と混ざり合い、もともとどちらがどれほど濡れていたのか分からなくなった。
私の手が、慧音の手にぶつかる。
慧音は迷わずに互いの手を絡めた。
あちこちを絡めあい、全身でお互いを感じる。
身も心も溶けて、慧音と混ざり合ってしまうような錯覚におぼれる。
互いの汗も、唾液も、愛液も混ざり合っていた。
「あっ、んあっ、けいねっ、けいねっ!」
「えいりんっ、うぁっ、もっと、んぁっ!」
互いの名前を、呼び合う。
互いの手を強く握る。
幸せと快楽で、意識が飛びそうになる。
「「んああああぁぁぁっ!」」
そして、私たちは果てた。
お互いの手を、しっかり握り締めたまま。
■ ■ ■
くしゅん、という慧音の可愛らしいくしゃみで、まどろみから意識を取り戻した。
見ると、雪はいつの間にか強くなっていて、外を白く染めていた。
「あら、大変。毛布持ってこなきゃ」
先ほどの行為の熱も、まだだいぶ残っていたものの、さすがに寒かった。
押入れから毛布を取り出し、慧音とともにくるまる。
まだ二人とも裸だったが、人肌に触れているのでむしろ温かい。
「……綺麗ね」
雪を見た、素直な感想を呟く。
降っては降っては、虚空を白く染め上げてゆく。
「……これだけ降れば、当分は溶けないだろうな」
「ええ」
しばらく、二人で雪を眺める。
音は無く、静かだった。
しかし、慧音がいれば十分だ。
「永琳」
慧音が、口を開く。
「さっきも言ったけど、私はあなたと一緒にいたい」
「ええ。私もよ」
慧音の手を、ぎゅっと握る。
もう冷たくなっているかと思ったが、まだまだ温かかった。
「……だから、変な話だが……頼んだぞ」
「言われるまでも無いわ。離さないわよ」
そのまま、ずっと二人で寄り添っていた。
慧音は、私を抱きしめる。
私は抱擁を返して、頭を撫でる。
雪は、止む気配もないまま降り続ける。
静かに、またどこか力強く。
寒かったが、それ以上に慧音は温かかった。
- 作品情報
- 作品集:
- 最新
- 投稿日時:
- 2009/01/10 21:50:54
- 更新日時:
- 2009/01/10 21:50:54
- 評価:
- 5/5
- POINT:
- 41
- Rate:
- 2.20
短い文の改行おかげでテンポ良く読めました。
自分勝手で弱々しい永琳の心理描写も見事でした。
また、短いながらもネチョの部分も無難な仕上がりでした。
それにしても泣き崩れる永琳……いいものを見させていただきました。
二人の関係において良い使われ方をしていると思います。
情景の描写もとても綺麗。珍しい二人の新たな魅力に気付く事が出来ました。
> 保護者同士、教師同士、大人同士と共通点も少なくないのに何故かマイナー。
子供の世話に手一杯だからでしょうか、あるいはえーてるとけねもこが多くの人の中で確定しているからでしょうか。
組み合わせもただ珍しいだけではなかった。
永琳が延命の薬を投与するのを告げるところからの、慧音の永琳を慰める言葉には力強さがあって、漢さえ感じました。
とてもいいSSでした。
Gjjjjjjjjjjjjjjjj