ラムネ

作品集: 最新 投稿日時: 2008/09/14 00:00:30 更新日時: 2008/09/14 00:17:34 評価: 29/29 POINT: 272 Rate: 1.98
橋の上で一人、流れる水を目で追っていた。



薄暗い世界で、微かな光を反射して水面が揺れる。
覗き込んだ私の汗が滴り、時折小さな波紋を描いて。
地底は地上より涼しいとはいえ、夏はやはり暑い。特に湿気が酷い。
地上の奴らはこの蒸し暑さは知らないだろう。ああ、表の奴らが妬ましい。
橋を通るものはなく、することもない。退屈な橋の守り。でも一人で居られるのは気分が楽だった。
旧都の奴らの大騒ぎには、あまり関わりたくなかったからだ。
大体どうしてあそこの連中は、些細なことであんなに楽しめるのというのか。その単純さが妬ましい。
妬ましくて妬ましくて、いっそ呪ってしまいたいほど。
何を見ても、誰を見ても、妬ましいと感じる。だから誰かと関わりたくはなかった。

――だというのに。

「おう、橋姫! 今日もぶつぶつ呪詛でも吐いてるのかい?」
大きな声がこだまして、耳元まで響いてくる。
手を挙げてこちらへ向かって歩く。額には赤い角一本。掲げた杯の酒を飲みながら。
私の緑色の瞳で睨んでも怯むことはなく、その苛立たしいほどの余裕のある笑みは崩れない。

「……また来たの? いつも貴方は馬鹿みたいに楽しそうね。妬ましいわ」
皮肉に皮肉を返しても、こいつには通用しない。
それもそのはず、相手は何と言っても『鬼』なのだ。旧都を統べる、力強き種族。
何をやるにも、まず力と酒。乱暴で誇り高くて騒がしい。
そして目の前の相手は、そんな鬼の中でも四天王と呼ばれている内の一人だった。

「貴方ともあろう方が、こんな所まで一体何の用かしら?」
「だから水辺の方に涼みに来てるんだって。昨日も言っただろう?」
川辺に座り込んで杯を呷りながら、涼しい顔で言い放つ。
実を言えば、旧都の奴らで一番苦手だったのが鬼だった。
私自身も分類上からは鬼に当たるのだろうが、所詮嫉妬心から人間が姿を変えただけの存在に過ぎない。
気高きあいつらにしてみれば、私なんかただの下賤な妖怪だ。少なくとも同族ではない。
舐められているのがわかっているのに、歯が立たない。その力強さが妬ましい。

しかし、そんな鬼の中でもこいつだけは特殊だった。

誰も近づこうとしないこの橋に、川涼みだ何だと訪れる。
私に向かって「一杯飲むかい?」と、杯を突き出し笑顔を振りまく。
私を見下している様子はなく、普通に接してくる。他の鬼と違ってだ。
何なの、こいつは。私は放っておいて欲しいのに。
溜息を吐いて「いらないわ」と答え、視線を再び揺れる水面へと。

「つれないねぇ。酒ってのは、誰かと飲むから美味しいのにさ」
「それならさっさと旧都にでも戻って、誰かと飲めばいいじゃない」
「あん? 旧都の方はみな夏祭りの準備で忙しいからねぇ」
からからと小気味良く笑いながら、空の杯になみなみと酒を注いで。

夏祭り。そうか、もうそんな時期になるのね。
陽気で暢気な鬼たちのせいで、旧都の祭りは頻繁に行われているが、やはり夏祭りは規模が違う。
何日も前から準備を始め、集まる人数もかなり多い。
まあ、私は橋から離れてそんな騒がしいところに行く気など無いので、実際に見たことはないのだけれど。

「……貴方は手伝わないのかしら? いいご身分なのね、妬ましい」
「ちゃんと手伝ってるって。力仕事が終わったから、ここに来たんだよ」
「あら、そう。……ま、どうでもいいけど」
「今年は凄いよ? 今、丁度やぐら組んでるんだけどさ。これまた大きくて……」
楽しそうに、今準備している内容を事細かに喋る。
私に聞かせて、何の意味が? という疑問よりも先に、妬ましさの方が打ち勝った。
毎日眺めているのは揺れる水面ばかり。いつも退屈している私に、こんなに面白そうに話すこいつが妬ましい。
だけど真っ直ぐすぎる皮肉は、時に予想も付かない結果を引き起こす。


――ぎりりと奥歯を軋ませて、言ってしまったこの一言がそもそも余計だったのだ。


「……妬ましいわね。夏祭りとか、楽しそうでいいわ。退屈な私への嫌味かしら?」
「うん? なら夏祭りに来ればいいじゃないか。……そうだ、私と一緒に行くかい? 今年は連れも居ないし。いいよ、橋姫。駄目になるまで連れ回してあげよう!」
「……はい?」
「当日、迎えに行くよ。ここで待ってな。無理にこっち来ると、人が多くて迷子になるからね」
「……え? ちょっと……え? 私、行きたいだなんて一言も……」
「じゃあ、祭りの日にまた会おう。ふふん、楽しみだねぇ」
言いかけた言葉は、既にあいつの耳には届かず。
愉快そうに杯を呷りながら、去っていく後ろ姿の髪が揺れる。

再び、誰もいなくなった橋のたもと。水面は相変わらず静かに揺れている。
呆然と、あいつが過ぎ去った方向を見つめ続けて。
……厄介ごとに巻き込まれてしまったと私の頭が気付くまで、さして時間はかからなかった。







「あの鬼……いっそ妬み殺してやろうかしら。人の話も聞かないで」
溜息を吐く。今日何回目のことだろうか。
あの鬼――星熊勇儀が去ってから、もう大分時間が経つというのに、私は未だ立ち直れないでいるらしい。
あいつと? 旧都の夏祭りに行く? 一体、何の冗談か。
旧都で名前を知らない者がいないほどの有名人。喧嘩が強くて、お人好しで、大酒飲みで、人気者。
あんなのに連れ回されちゃ、身が持たない。持つわけがない。
途中で喧嘩でも始められたら、どうしろというのか。一歩間違えば巻き込まれる可能性だってあるし。
大体が星熊がそばにいる時点で、嫌でも目立ってしまう。私は静かに暮らしたいのに。
そもそもあんな乱暴者が、何故あそこまで人気なのか……ああ、もう本当に妬ましいわね!
あいつが私を連れて歩いたって、凄く不釣り合いじゃない。旧都の連中に知り合いなんかいないから、話にもついていけないだろうし。
それを楽しみだって? 私は全然楽しみなんかじゃないわよ。騒がしいところに行っても疲れるだけだ。
妬ましい。妬ましいわ。嬉しそうに私を誘う、あいつが楽しそうで妬ましい。

いや待って、それ以前にどうして私は既に行くことを前提に考えているのかしら。断ればいいだけの話じゃない。
そうよ。断ればいいのよ。「橋から離れる気はない」って言えばいいだけ。
そうすれば星熊は……
……駄目だ。担がれて無理矢理連れて行かれる様子しか思い浮かばない。鬼だもの、人攫いは得意じゃない。
話を聞かないということも、今日で分かってるし。
なら、居留守でも使おうかしら。即座にバレるだろうけど。

ああ、どうしようもない。不可避だなんて妬ましい。
溜息を吐けばいいのか、爪を囓ればいいのか、それとも奥歯を噛み締めればいいのか。
それすら思い浮かばなくて、延々と頭を抱えて。
ただでさえ暑かったというのに、悩みすぎて熱暴走を起こしそうだ。
いっそ、橋からあの水流へと身を投げたくなる。涼しくなれば、少しは頭も覚めるだろうか。
……そうだ。全てこの暑さが悪い。
断れないからと理由を付けて行く気になってるとか、ちょっとした浮かれ気分になっている気がするのも全て熱のせいだ。
こんなの冷たい水で顔でも洗えば、霧散するに決まってる。
まったく、だから暑いのは嫌いなのよ。何かを考えようにも、頭がボーッとしてしまう。
暑いのが得意な人が妬ましいわ。もしくは何も考えなくてもいい人が妬ましい。
悩みを勝手に押しつけて、自分はまったく悩んでない星熊が妬ましい。

……と、またここで元通りにループする。溜息を吐いた。もう何度目か数える気すら起きない。
つまり私は幾度も同じ事をぐるぐると考え続けて、抜け出すことが出来ないでいる。
まるで迷路のよう。どの道を通っても、結局同じ場所に戻ってきてしまう。
空回りをしては、繰り返し同じ事を妬んで。
嫉妬をするのも疲れるから、無駄に同じ事を妬んでも仕方ないというのに。

「……何処かに一緒に行こうって誘われたの、一体何時ぶりの事かしら」
ふと、自然に呟いた言葉。
あまりにも自然すぎて、自分で自分を絞め殺したくなるほどの。
……何、ちょっと本当に浮かれ気分になってるのよ。蒸し暑さで、頭がやられたのか。
本気で涼を取るために、水浴びでもしようかしら。
そうは思っても、うだるような暑さと悩みすぎた疲れに、動く気は少しも起きなかった。







それから数日が経った頃。今日も相も変わらず蒸し暑い。
夏祭りの日程を星熊から聞いておかなかったのは迂闊だった。毎日、今日なのか明日なのかと悶々とする羽目になっているからだ。
あの日以来ここを訪れた者はなく、誰かに聞くということもできない。知り合いがいる奴らが妬ましいわ。
川辺で足先を水に遊ばせながら、ぼんやりと橋を眺め続けて。
……退屈ついでに、旧都の方まで行ってみようかしら。
そんなことをふと、思っていたりして。
「――っ!?」
ハッと正気に戻ってみては、さっきまでの馬鹿な考えを頭から振り払う。

さっさと夏が終わらないかしら。最近は、暑さで頭が上手く回転しなくて困る。
することが無いせいもあるかもしれない。何もしていないから、ついぼんやりしてしまうのだ。
そしてぼーっとしていると、いつの間にか星熊のことを思い出している。
あの屈託のない笑顔だ。裏表が無くてさっぱり爽やかで、それが妬ましくて余計に癪に障る。
加えて、豪快で陽気で面倒見もいい。私とはまったく正反対。
きっとあいつの周りには、多くの人妖が集まるのだろう。ああ妬ましい、妬ましい。

爪をガリガリと囓りながら、いつものように無い物ねだり。
取って殺せたらいいのに。だけど私はあいつに敵わないから、それは叶わない。
その強さも、何もかもが妬ましいわ。
退屈であれば、誰かを妬む。ずっと繰り返してきた日常。
対象が一人に固定されたからと言って、何の違いがあるだろう? 本来ならば、そんなの些細なことだ。
なら、何が問題かって?

「……普通に考えてあり得ないわ。何で、苦しいわけ?」
それは小さくチクリと針で刺されたような痛みと、水の底に沈められたかのような息苦しさ。
遥か昔に体験したことあるような無いような。遠い記憶を漁ろうにも、靄がかかったようにぼやけた領域。
渡ってきた橋の向こうの事なんて、今更思い出そうにも思い出せないと言うことらしい。

「はぁ……それにしても祭りは何時なのかしら。あの鬼、約束忘れるってことはないでしょうね」
「うん? 約束を忘れるかって? 鬼を舐めちゃあいけないよ。約束は絶対守るさ」
「きゃあ!?」
後ろから突然かけられた声に驚き、足を滑らせて川の中へと転ぶ。
冷たい水に全身を包まれ、一気に頭が覚めた。
水中から顔を出せば、またあの笑顔がそこにある。いけしゃあしゃあと暢気に、外れた事を言って。

「おお、派手に行ったね。水の中は涼しいかい?」
「なっ!? そういう問題じゃないわよ! 私に呪い殺されたいわけ!?」
「いや、ごめん。そんな驚くなんて思ってなかったもんでねぇ」
突如現れた星熊はあははと笑いながら、川の私に手を伸ばす。その手を振り払って、自力で川岸に這い上がって。
「親切は受け取っとくもんだよ?」との苦笑も無視。暢気さが妬ましくて、憎らしいわ。
ああ、もう。服はびしょ濡れだし、髪も濡れてぐしゃぐしゃじゃない。
裾を絞って、髪を手櫛で整えていると、ジッと見つめる赤と目があった。
睨み付けてやると、少しマズかったなという表情を見せて。

「怒ってるのか? ……ごめんってば。私が悪かった」
謝れば許すとでも? 私はそんなに心が広くないの。残念ね。
無言のまま視線を逸らした私に、こいつは何を思ったのか。威勢のいい掛け声と共に、突然川に飛び込んだ。
あまりに突飛すぎる出来事に、唖然と揺れている水面を見つめる。
最初に角が見え、顔が水面から飛び出して。

「ぷはーっ、冷たいな。結構涼しくていいじゃないか」
そう言いながら川岸まで泳いできて、這い上がった後に得意そうな顔で一言。

「私もびしょ濡れだ。これで気は済んだかい?」
「……貴方、馬鹿なの?」
思わず素で聞いた。いや、だってこんなの有りなの?
あまりにも単純な発想に、妬ましさより呆れの方が先にきた。私には珍しいことだ。

「ん? これでお前が話を聞いてくれるようになるなら、安いもんさ」
上着を脱いで絞りながら、事も無げに笑う。
サラシが巻いてある大きな胸と、割れている腹筋。そのスタイルの良さは何? 妬ましいわね。
じっと見ているのも何だか恥ずかしい気がして、そっぽを向く。

「まあそうは言っても、元々そんなに怒ってなかっただろう?」
「はぁ?」
「本気で怒ってるなら、私が手を伸ばしたときに引っ張って落としてたんじゃないか? 違うかい? 橋姫」
言われて、しまったと歯ぎしりをする。そうか、その手もあった。
復讐の機会を手放してしまうなんて、恨めしい。
出来れば、今からもう一度川に突き落としてやりたいわ。既にびしょ濡れだから、今更意味は無さそうだけど。
何だか出鼻を挫かれたような気分だ。復讐しようにも出来ないんじゃ、どうしようもない。
呆れで、私の怒りを吹き飛ばすなんて、妬ましい奴。

「……で、一体何の用なの? まさか今日が祭りの日とかじゃないでしょうね?」
「ああ、祭りは三日後だよ。安心しな。……それより」
「っ!?」
肩に手を乗せられたと思ったら、しゅるりと手慣れた様子で腰帯を解かれる。
驚きで反応できない間に、そのまま上着を脱がされそうになって。

「なっ、なななななな何するのよっ!?」
「ほら、上着脱ぎなって。夏とはいえ、そんな濡れた服着てたら風邪引くだろう?」
「だっ、だからっていきなり脱がす馬鹿は居ないでしょうに。……この変態」
「あん? 別に下にもう一枚着てるんだからいいじゃないか」
非難の視線を浴びせても、気付いてないような顔。鈍感さが妬ましい。
結局上着は脱がされ、星熊が力に任せて絞っている。
服、伸びなければいいのだけど。着られなくなったら、今度こそ本気で祟ってやる。
広げて振って水気を切る。ぴんと伸ばした状態で、何かを定めているようにじっと私の服を見つめて。

「……何、人の服じっと見てるの。終わったならさっさと返しなさい」
「ちょっと待ちなって。……ふーむ、大体こんなもんか」
勝手に見つめて、勝手に何かに納得して、漸く私に手渡す。
羽織ってみたが、まだ少し湿っぽかった。まあ、当たり前だけど。
星熊も上着を着直している。角、引っかからないのかしら。引っかかったら嗤ってあげるのに。
そして用件を言うのかと思いきや、こっちに背中を向けて帰る意図を示した。

「……は? まさか用なんてなかったの?」
「いいや、もう用事は済んだ。三日後の夕刻あたりにまた来るよ」
事態が飲み込めなくて呆然としている私と、こちらを見ずに手を振りながら去っていく星熊。
しかし、ふと思い出したように足を止めて。こちらを振り向いて。

「……それにしても、ちゃんと約束って認識してくれてたとはね。てっきり断られるかと思ってたよ」

妬ましいほどの爽やかな笑顔。本当に嬉しそうなのが、憎らしい。
思わずその表情に見とれていた。首を絞められたように、息が出来なくなる。
反論してやろうにも言葉が出なかった。そもそも何を言うのかさえ思いつかない。
冷えたはずの身体が、再び熱を上げ始める。浮かされていく。
結局何も言えないまま、去っていくのを見送ってしまった。

「……はぁ。土蜘蛛にでも病気移されたかしら」
頭が痛い。涼しくなったはずの頭の中は、もう熱が籠もっている。
もう一度川に飛び込むべきかしら。さっきのあいつみたいに。
……これは病気だ。しかも間違いなく重症だ。
苦しさは引かず、鈍痛にも似た胸の痛み。鼓動は少し速くなって。
思い出せない橋の向こうの、何処か懐かしい感じがした。遠い昔に封じたはずの何かだ。
奥底に溜まっている泥のような鬱屈した感情の、更に一番底の何かが呼び覚まされそうで気持ち悪い。
顔の熱さに、たまらず川で顔を洗う。揺れた水面に、歪んで映る私の顔。
ニタリと笑っているようにも見えるそれは、あいつの笑顔とは程遠かった。







「……はぁ」
橋から川を眺めながら、溜息を吐く。
あっという間に時間は経って、夏祭り当日。ここ数日でも今日が一番暑い。まさに厄日だ。
地上では涼風ぐらい吹くというのに、ここでは吹く風も湿ってて気持ちが悪いぐらい。
涼しくも何ともない、温い風。これじゃあ、息苦しくなるのも当たり前だ。
胸の中のもやもやとした何かは未だに晴れてはくれず、浮ついた微熱は続いている。
気持ちのいい風一つでも吹けば、少しは違うだろうに。地上の風が妬ましいわ。

「……そろそろ、あいつが来る頃かしら」
ぼんやりと思う。恐ろしいことに、違和感がまるでない。
これはあいつを楽しみに待ってたからじゃない、旧都に行くのが久しぶりだから意識しすぎているだけなのだ。
そう自分に言いきかせてみても、憎らしいことに肯定できる要因はあまり無かった。
振り回されてる自覚があるのに、どうして振りほどこうと思えないのか……

「おーい! 橋姫! 居るかい?」
響く大声に、心臓が一瞬跳ね上がる。
向こうから歩いてくる影。大きく手を振って。
いつもの服ではなく涼しげな青い浴衣姿。下駄の音も、いつも以上に映えて。

「ちゃんといるね。探す手間が省けて良かった」
「別に逃げはしないわよ。どうせ無理矢理にでも連れて行く癖に」
「あはは、わかってるじゃないか。……あ。そうそう、お前に渡す物があるんだ」
愉快そうに笑いながら、何かを私に投げて寄越す。
ばさりと音を立てて広がったそれ。落ち着いた緑色の布地が私に覆い被さって。

「……浴衣?」
「ご名答! 夏祭りといえば浴衣だろう。たまたま家に、小さいのがあったんでね。どうせ持ってないだろう?」
「要するに着ろってことね……拒否権は?」
「もちろん、ないわね」
笑顔で言い切る。予感はしてたけど、面と向かって言われるとムカつくわ。
……浴衣を着るなんて、本当に何時以来かしら。着方、忘れてないと良いけど。
それにしても、サイズがぴったりなのが不思議だ。あいつの持っているものなら小さいとは言っても、私には大きそうな気がするのに。
というより、一体何時私の服のサイズを……と考えて、一つ心当たりを思い出す。
きっと川に落とされたあの時だ。あいつ、私の服をじろじろ見てたし。
もしかして用事ってこれのことだったのかもしれない。
わざわざ言わなかった辺りが、実に狙われてたようで癪に障る。
まあつべこべ言ってもどうしようもないし、そこまで嫌というわけでもないので、さっさと影の方で着替えてしまう。

やっぱり浴衣は涼しいわね。風通しがいい。それに風情もある。
あいつに同意するのは癪だけど、確かに夏祭りには浴衣だ、と素直に思う。
気分が少し浮ついているのを自覚しながらも、今の私はそれを留めることが出来ずにいた。

「おお、似合うね。可愛いじゃないか」
「……でも、歩きにくいわ。これ」
「まあ、直に慣れるさ。さて、行こうか」
笑顔でさらりと自然に手が握られた。あまりに自然すぎて、少しの間気がつけなかった程。
解こうとしたが「迷子になられても困るからね」と言われてしまって。
力比べじゃ、鬼に敵うはずもなく。故に、手は繋いだまま。
旧都までの道に、下駄の音が高く響く。遠くから祭り囃子が聞こえてくる。
薄暗い世界で、ぼんやりと提灯の明かりが赤から橙、黄へと光を放っていた。






「……すごい」
旧都に着いての第一声はそれだった。
迷子になると言われたのも頷ける。それくらいに人混みが酷かった。
特に酷い箇所では、すし詰めになっていて歩くことさえ困難に見える。
加えて、大音量で響く祭り囃子だ。耳が痛くなりそう。
すぐ横にいる星熊の声でさえ、上手く拾うのが難しい。
こんなところではぐれたら、そりゃあ迷子になるに決まってる。

「さあ、ついてきな! 今日は思う存分楽しませてあげよう!」
星熊が声を張る。腕が引っ張られる。人混みを縫うように、軽やかに走り抜けて。
慣れない浴衣に何度も転びそうになりながらも、不思議と上手くついて行けた。
石畳に響くたくさんの足音。喧騒に満ちて。
音が上手く拾えない中、視覚と握られた手の感触だけが頼りだった。
時折星熊はこっちを振り返って、楽しくて堪らないといった風に笑う。
いつものあいつの笑い方より、もう少し幼い印象を受けた。無邪気な、といった辺りだろうか。
まるで祭りを縦横無尽に駆ける悪ガキのよう。純粋無垢な、笑い方。
不思議なことに妬ましいとは思わなかった。むしろ、こっちまで笑いたくなった。
まったく、本当に妬ましい奴ね。私をここまで愉快な気分にさせてくれるなんて。
鼓動が高鳴る。こんな高揚感を感じる事なんて、本当に久しぶりのこと。
屋台を回って、色んなものを食べたり。色んな事をしたり。

例えば、かき氷の心地よい冷たさだとか。
真っ白な雪山に、澄んだ緑が侵食して溶けていく。それをすくって口に入れれば、涼しい甘さが広がって。
ふと横を見れば、赤に染まった氷を一気に掻き込んでいるあいつが。
そして突然悶えて、こめかみの辺りを押さえている。

「……ったたた。やっぱりかき氷はこうでないとね」
「……それ、私には理解できないわ」
「何言ってるんだい。この痛さがかき氷の醍醐味って奴だろう。大体、そうゆっくり食べてると溶けるよ?」
「頭痛が増えるより、マシよ」
そもそも一気に食べて味が分かるのかしら。せっかく冷たいものを食べてるんだから、その涼しさを楽しまないと損だと思うのだけれど。
シャリシャリと耳に届く涼しげな音だって、それじゃあまり聞こえないじゃない。
半分呆れながら見ていれば、あっという間に山は無くなって。
足りないのか、物欲しげな瞳。スプーンを咥えたまま。
たかるな、と言ってやりたいところだけど、どうせ食べきれないしと器を差し出す。

「え……あ、いや。いいよ別に! さ、お前が食べな」
「なら、食べたいって顔しない事ね。ほら、あげるわよ」
「……ん、ありがとう」
スプーンが伸びる。一つだった雪山が、双方向から崩されていく。
一つのかき氷を二人で食べる。その風景を想像して、少し顔が熱くなる。
冷たいのに、熱い。でも不快ではなくて。
この滲むような気持ちに名前を付けるとするならば、きっと『幸せ』なんだと思う。
思い出したその感情。どうして私は、これを心の奥底に封印していたのだろう。
断片的な甘い記憶だけが、上手いこと私の中で蘇って。

強引に誘われて来た祭りだったが、とても楽しくて幸せな時間だった。
この後も金魚すくいだとか、風鈴の屋台が涼しげな音を奏でていただとか、綿飴を食べたりだとか。
ここで終わっていれば、きっと血迷うこともなかったんだろう。
楽しかった、で終わって。明日からまた退屈な日々が再開して。
たまに星熊がやってきて、適当に喋ったりなんかする。
今日のことは氷のように一日で溶けて。きっと日常へと戻っていたはずだった。

最後に連れられたのは、旧都のとある広場。ここから見える花火が綺麗だと星熊が言っていた。
そこには鬼たちがたくさん居た。もしかするとこの広場は、鬼の交流所なのかもしれない。周りに酒屋が多いし。
いつもだったら、その時点で警戒してたはずだった。
でも、その時の私は気が緩んでいたのだろう。久しぶりに楽しくて、浮かれていた。
一緒にいたのが星熊だったということもあったかもしれない。
たくさん鬼がいる中で暢気にしていられたのだから、本当にどうしようもなかった。
端の一画に場所を取って座って。星熊が「ちょっと屋台で何か買ってくるよ」と離れていくのさえ、普通に見送ってしまったのだから。







「……で? 貴方たちは私に何の用なのかしら?」
「あー? そうだなぁ、言わなくても分かってるんじゃないかい?」
私の目の前を囲っているのは三匹の鬼。
真ん中の一匹は大柄で、星熊みたいに一本角の奴。横にいる二匹は、二本角。片方は牙が生えている。
きっと、この一本角の奴が親分格なんだろう。事実、私に話しかけてきたのは真ん中のこいつだ。
どう見ても友好的な相手ではない。ぎらりと光っている黄色の瞳が、見下しているような雰囲気を孕んでいる。

「……さあ? 言われないと分からないわ」
売られた喧嘩を買うつもりはないが、こいつらに従うつもりも毛頭無い。
舐められるのは嫌いだ。馬鹿にされるのも嫌い。だからわざと煽るように返して。

「ふん。なら仕方ないな。言っておくが、ここいらは鬼の宴の場所。そこへやってきて無事に済むとでも?」
「……普通は近づこうとは思わないわね。何に巻き込まれるか分からないし。でも、残念だけど私は一人で来たんじゃないわ。星熊に連れてこられたのだけれど?」
星熊勇儀の名を出せば、文句は言わないだろうと思った。
しかし鬼は愉快だと言いたげに高笑いし、哀れみの目でこちらを見る。
つくづく苛立つ相手だ。何が可笑しいのよ?

「……哀れだね。真実を知らないってのは、実に哀れだ」
「何が言いたいの?」
「何もかもを妬むのは、自分に何かが足りないという恐怖が無意識に出ているから。誰もかもを拒むのは、拒絶される痛みを無意識に避けているから。なのにやっぱり心の奥底で愛に飢えている。だからこうやって勇儀についてきた。違うか?」
心の奥底までを抉るような、鋭く真っ直ぐな目付き。
背中に悪寒が走るのに、目を逸らすことも出来ない。蛇に睨まれた蛙のよう。
「違う」と言ってやりたいのに、喉がからからに渇いて声が出せない。
私はそんな弱い存在じゃない。星熊に思い入れなんてないし、これからだって一人で……

「――勇儀がお前に構う理由を知っているのか? 地上での人間のように卑怯な裏切り者を出さないために、地底の全ての妖とある程度の信頼関係を築くためだ。四天王は余程平和論が好きらしい。ここの妖怪ごときなど、我ら鬼が潰すことなど造作もないのに!」
苛立たしげに、憎々しいとばかりに憤る。吠える。
だが、目の前の鬼など今はどうでも良かった。むしろ耳に入り込んできた、その言葉の方が問題だった。

……今、何て言ったの? こいつは。

「……全ての、妖と……? 信頼関係を築くため……?」
「そうだ。お前だけじゃない、他の妖怪とも勇儀は色々と交流している。橋姫、お前が特別というわけでなく、また興味を持ったからですらない。四天王の和平政策の一環だ」
目の前がぐらりと揺れる。悪寒と吐き気に、勝手に身体が震え出す。
喉元を掴まれたように呼吸が止まった。鉄の塊でも飲まされたかのようだった。
加えて、握りつぶすかのような胸の痛みが襲ってくる。
目の前の暗い世界に、ちらつく黄色い真っ直ぐな視線。
胸の奥の奥まで抉って、痛みを更に強めて。
腹の奥底から、制御しきれない何かが急激に昇ってくる。
忘れていた、封印していた記憶が、闇の部分まで鮮明に脳裏に蘇ってくる。

やめて……それ、思い出させないで。止められないから。
忌まわしい過去。私がこの身に堕ちるまでの道程。思い出したくなかった真実。
お願い、取らないで。……は私の……なのに……
ああ……あいつが妬ましい。あの女が憎い。私を捨てたあいつが憎い。
裏切るなんて酷い……妬ましい……

姿の見えない怪物が、私の中で暴れ回る。
歯を食いしばろうとしても、歯の根がガチガチ鳴る。握りしめた拳がぶるぶる震える。

「……う、そ……でしょ?」
やっと絞り出した言葉だったのに、正直な鬼は蝶の羽を毟る子供の純粋な残酷さで。

「鬼が嘘を吐くものか! 四天王は地上での事が再び起こることを恐れて姑息な手に出た! 我ら誇り高き鬼がお前らのような下賤な妖怪に媚を売る必要など無いのに!」


――鎖が、引き千切られる音が頭に響いた。


一瞬、自分を見失いかけるほどの憎悪と嫉妬が込み上げて。
地面から飛び出し鬼に襲いかかったのは、緑眼の怪物。私の制御を離れて、暴れ回る。

「ふん、醜い奴め。力ずくで鬼に敵うと思うな!」
鬼が吠える。広場は騒然となり、その場を離れるもの、唖然としてるもの、囃し立てるもの。
そんな野次馬なんかはどうでも良かった。目の前のこいつをズタズタに引き裂いてやる。それだけが私の意識で。
このどうしようもない妬ましさの捌け口を求めて、鬼に牙を剥く。
怪物は這いずり回り、身軽に逃げる鬼を追う。建物を幾つか破壊しながら。

耐え難い胸の痛みに苦しむ。どうして私だけが、こんな痛み苦しみを味わわなければならないのか。
妬ましい。この世の全てが妬ましい。どいつもこいつも私と同じ痛みを味わえばいい。
緑眼の怪物に呑まれて、狂おしい程の嫉妬に苛まされて苦しめばいい!

大きく口を開けた怪物。上空から一角鬼を呑み込まんと突進する。
それを素手で止め、頭を押さえ込む。他の二匹は尾を押さえて。
藻掻いても逃れることは出来ず、そのまま鬼の怪力にねじ伏せられて姿を消した。
次は私だと言わんばかりに、鬼はこちらへと向かってくる。撃てども撃てども、鬼には効かない。
歯が立たないのが妬ましい。この力の差が悔しい。

――そして星熊はこいつらなんかより遥かに強く、遠い。

私には誰かを振り向かせられる何かは無いし、例え振り向いてもらえたとしても、この嫉妬心から捨てられる。
緑眼の怪物。あれが私の本性だ。何処までもしつこく追って、いつか喰らい尽くす。
私が愛した相手は不幸になるし、私も不幸だ。だから鬼になった日に、私は私に誓った。
もう二度と、誰かを好きになんかならないと。
それだけを胸に今まで生きてきた。忌まわしい過去のことは全て忘れて。
だけど、今はっきりと全てを思い出してしまったのだ。
この胸の痛みの意味も、水に沈められたような苦しさの意味も。
弾幕を抜けてきた鬼が目の前にいる。もう抵抗する気さえ失せていた。
妬むのも、もう疲れた。痛いのも苦しいのも、もう嫌だ。
この身ごと消えてしまえれば、どれだけ良かったことか。
気付いてしまったからには、二度と戻れない。どろりと渦巻く、深い深い闇の奥底へと沈められていく。
避けようとも思わない。身体が動かない。
鬼の拳が迫ってきて――


「待て!」


それは大気を震わせ、誰であっても一瞬怯んでしまいそうな吠え声。
ぴたりと、私の眼前で止まった拳。
私たちを囲んで囃し立てていた野次馬も、固まったように動かなくなる。
その人混みを掻き分けて、現れたのは。

「私の連れに手ぇ出すとは、お前たちわかってんだろうね? さあ、死にたい奴からかかってきな!」
初めて見たその表情は、まさに鬼の形相で。
星熊が何故旧都で畏怖されているのか、やっと理解できた。
見た者全てを怯えさせるような威圧感。鋭い赤い視線は先程の鬼の比ではない。
この空気の中、動ける者は誰もいない。動いたら最後、取って喰われてしまいそうで。
仲間の鬼からも畏敬の念を集めるような、四天王の怒りの鱗片だった。

「ほ、本気で怒ること無いだろうが……勇儀……」
さっきの一角鬼が、驚きと動揺を隠せずにぼそりと言う。それを耳聡く聞きつけて。
「何だと! 朋友を傷つけようとされて、怒らない情の薄い鬼が何処にいる! いくらお前たちが同朋とはいえ、それを許すような私じゃないよ!」
怒鳴り返され、更にキツく睨まれ、たじろぐ一角鬼。手下の二匹は既に逃げていた。
しかし、言われっぱなしも癪なのか。それとも怒鳴られることで逆に吹っ切れたのか。

「う……うるさい! 何が朋友だ! お前たち四天王が怖じ気づいての和平政策だろうが! 我ら鬼が他の妖怪に媚を売る必要があるのか!?」
「あん? これ以上口で言っても愚か者には仕方ないね。寝言は私に勝ってから言いな!」
そこからの戦いは、一瞬の出来事に近い。
掴み掛かろうとした一角鬼を、まるで舞うように優雅に避けて。肩を掴むと鮮やかに投げ飛ばしてしまった。
周りの野次馬の鬼たちも息を飲む。よくある旧都の喧嘩のように囃し立てる者は誰一人いなかった。
静まりかえっている広場。地面に座り込んでしまった私の元へと星熊は歩いてくる。
そしていつも私に見せる笑顔で、いつかのように手を伸ばして。

「大丈夫かい? 怪我とかはなかった?」
「……ッ」
差し出された手を払いのける。そのまま走って逃げ出した。
後ろで星熊が驚きの声をあげるのが聞こえた。制止の声も。
だけど私は走り続けた。浴衣が崩れても構わずに。

さっきの星熊の怒りの表情が怖かったのもある。あまりに強く、あまりに遠い。
しかしそれ以上に悔しく、悲しかった。あの鬼の言葉が。
何かを期待してたわけじゃない。それは確かだ。でも、何処かで期待してたんだと思う。
私に自ら近づいてくる奴なんて、星熊ぐらいしかいなかったから。
もう恋なんかしないって思ってたのに、いつの間にか惹かれていた。好きになっていた。
もしかしたら、なんて私に限ってある訳が無いのに。
嫉妬深い橋姫を好きになる物好きなんて、居る訳がない。自分のことは自分が一番わかっている。
それでも、星熊が近づいてきたのがあんな理由だなんて恨めしかった。
他の妖怪にも同じように近づいているという事実が許せなかった。
私に興味を持ったわけですらないということが妬ましかった。
あいつも、所詮他の奴らと同じだったのだ。信用なんかしてはいけなかった。
妬ましくて、妬ましくて。殺してやりたいのに殺せない。
胸が痛くて、苦しくて。橋の下の川辺まで逃げ戻ってきて。
当たり前だ。わかってる。それでも、私だって……

「……っす、ぐす……っう、ぐす……う、うっ……」
もう二度と味わいたくなかった、裏切りと失恋の痛み。

……私だって、普通の恋がしたかった。

だけど私の中の怪物は、それを許さない。過剰な嫉妬心は私に制御できるものじゃない。
他人の嫉妬心を操る能力を身につけた今でさえ、これだけは上手く飼い慣らせない。
どうして私だけが。どうして。

「おーい! 何処に居るんだ!? 返事をしてくれーっ!」
遠くから響く大声。下駄の音がだんだん大きくなってくる。
見つかりたくなくて息を潜めた。でも、嗚咽は上手く止められなくて。
結局、聞きつけられてあっさりと見つかってしまった。

「お、見つけた。いきなり逃げるからビックリしたじゃないか」
「……来ないでッ!」
私の叫びに、一瞬たじろぎ目を丸くする。
そのまま困ったような表情をしていたが、ふと何かに気付いたような顔をして。

「……泣いているのかい? どうしたんだ、一体」
「来ないでって言ってるでしょ!?」
「あん? 誰かが泣いているのに、放っておくなんて出来ないね」
そう言ってこっちに近づいてくる。私は後退る。やって来る。後退る。やって来る……
手が橋台に触れる。もう、これ以上は下がれない。
星熊の顔は見れない。橋の下は暗いからあまり見えないし、そもそも顔を見せたくなかった。

「……どうしたんだい? もしかしてさっきので怖がらせちゃったかな?」
しゃがみ込んで、私と視線の高さを合わせようとして。表情が見たいのか、覗き込もうとしてくる。
それを頑なに避ける。膝に顔を埋めて、見せないように。
何にもわかって無さそうな、星熊が妬ましい。恨めしい。憎らしい。
今すぐ首を締め上げて、水の中に落としてやりたい。妬み殺してやりたい。
だけど力で敵わない。何にも出来ない。妬んで、呪って、憎むことしか出来ない。あの時のように。

「……どうして」
「うん?」
「どうして私に構うのよ……別に貴方たち鬼に勝てるわけがない。心配しなくても鬼を出し抜けるほどの何かもないし、仲間もいないわ……だから私を放っておいて! 貴方たち鬼を脅かす事なんてしないから、無理に私のところに来ないでッ!」
人々の輪の中で独りぼっちなぐらいなら、最初から誰もいない方がよかった。
橋の上で一人、誰とも付かない誰かを妬みながら、退屈に暮らしてたほうが良かった。
こんな痛みを知るぐらいなら、幸せなどいらなかった。
今更歯がみして悔やみ、妬んだって、もう知ってしまった事実は覆らない。
だったら、もう建前だけで構われても辛いだけだ。

「……ああ、あいつの言葉を気にしているのか」
ふと、何か納得したように星熊が声をあげる。
……そうよ。だから、いいじゃない。私は何もしないから、無理に付き合う必要なんて無いわ。
放っておいて。一人にさせて欲しい。

「……橋姫、あいつの言葉を私は否定しない。確かに、そういうのはあった」

胸の傷口を、更に抉り取るような言葉。
正直が全て良いわけじゃない。世の中には嘘だって必要だ。
澄み切った水の中では、魚は住めないのだから。
嘘だって言ってくれれば、いや、せめて何も言わずに去ってくれたら良かったのに。
最後までとどめを刺そうだなんて、慈悲も何もない妬ましい鬼だ。
これ以上話を聞きたくもないし、顔も見たくない。
何とかしてここから去ろうとすると、肩を掴まれた。

「まあ、待て。人の話は最後までちゃんと聞くもんだよ? ほら、まずはこれでも飲んで落ち着きな」
頬に押し当てられた、何か冷たいもの。反射的に手で受け取ってしまう。
涼しげな色をした瓶と、中で僅かな光を反射するビー玉。泡が煌めいて。

「ふふん、ラムネだよ。お前は、酒はあまり好きそうじゃないみたいだからね」
以前、酒を勧められたときに断っていたのを覚えていたらしい。
別に飲めない訳じゃなくて、あの時はこいつと飲むのが嫌だっただけなんだけど……
傍らでは、星熊が杯に酒を注ぎ始めている。逃げる隙は無さそうだった。
もうどうにでもなれと、橋台に背中を預ける。今更、傷口に塩を塗られても大差ない。
いっそ立ち直れなくなるまで、とどめを刺せばいい。壊れた方が楽になるだろう。
私が逃げる意志を失くしたのを見て取ったのか、星熊は杯を呷ってから口を開いた。

「我ら鬼がここに来た経緯は知ってるね? だから詳しくは今更言わないが、私たちとしてはこれでも人間と上手くやっていたつもりだったんだ。でも、実際には違った。鬼の存在は人間には負担だったんだよ」
遠くを見つめるような目をして、星熊は語り出す。
そんな昔話を聞かされても、今の状況と一体何の関係があるというのか。

「今でも鬼のほとんどは、裏切られたと思っている。でも、私たち四天王の結論としては『鬼にも見直すべき点があったんじゃないか』で一致している。私たちの歩み寄りが足りなかったせいで、人間には誤解をさせてしまったのかもしれない」
「……それで?」
「だから、もうそんな過ちは犯したくない。ここは私たちにとって最後の楽園なんだよ。お前たちだって全てを受け入れるはずの幻想郷でさえも居場所がなかったからここへ来たんだろう? 私たちは地上での反省を生かして、仲良くやっていきたいわけだ。決して怖じ気づいた訳じゃない。もう、誰かが疎まれるのは嫌なんだよ」

「……だから、星熊は私に構ったって言うの?」
結局、根本的な解決には至っていない。わかってないのだ、こいつは。
同情心や庇護心から誰かに構ってもらうほど、私は甘くない。これでも地上で嫌われた妖怪の端くれだ。
哀れまれるぐらいなら、放っておいて欲しい。
安い同情が一番人の心を傷つけると、何故分からないのか。
期待させるだけさせておいて、実はそうではないという事実を知ったときの落胆がどれだけ苦しいものか。ああ、妬ましいわ。

「……そうね。くだらない昔話を聞かせてくれたお礼に、貴方にもう一つくだらない昔話を教えてあげるわ。遠い昔の物語――」




――遠い昔。橋の近くに住む女が一人いた。
身内も友人も居ず、彼女はいつも独りだった。
川の流れを見つめ続け、日々をぼんやりと過ごして暮らして。
だが、そんな日常も一つの出会いで変わった。
彼女に近づいてきた、一人の男。いつも笑顔でいるような、好青年だった。
誰もが振り返りもしない彼女に、唯一好意で接してくれた男。
誰かに好かれたことのない彼女は、一瞬で恋に落ちた。

そんな些細なこと。何処にでもありそうな恋物語が、こんな危険極まりない怪物を生み出すきっかけであった。

その日は夏の終わり頃で。蜩が涼しげに鳴く夕暮れ時のこと。
いつものように橋の上で彼を待っていた。だけど、待てども待てども彼は来ない。
蜩も鳴き止み、鈴虫が鳴き始める時間になっても、現れる様子は全くなかった。
普通の人なら、別に気に留めるようなことではない。だけど彼女は何故か嫌な予感を感じていた。
第六感とも言えるべき何かが、彼女を駆り立てていた。
橋から離れ、通ったこともない道を抜け、そして彼女は見てしまう。
彼と知らない女が、仲睦まじく歩いている姿を。
飛びついた。叫んだ。突然のことに、男も動揺を隠せない。
「返して! 返しなさいよ! ……は、私のものなのに!」
湧き上がる憎悪。嫉妬の念。初めて知った激情。燃えるような愛よりも、熱く身を焦がして。
赤でも青でもなく、黒い炎が胸中を燃やし尽くす。
男に突き飛ばされた。何かを叫んでいる。何を?
途切れ途切れの記憶。はっきりと覚えている事実は、彼女は男に捨てられた。ただそれだけだった。
橋に帰った彼女は血の涙が出るまで泣き続け、恨み続け、妬み続け。
嫉妬のあまり、丑の刻参りを行って呪い続けた。そして七日目に、神託が下る。
赤い衣を身にまとい、頭には丹を塗って鉄輪を載き、その三つの足に火を灯して、宇治の川に二十一日間浸れ。

――そして彼女は鬼となった。



「……だけどね、この話の面白いところは何処だと思う? 結局ね、男を殺せないの。襲いかかって、首に手を伸ばして。でも、指に力を込めることは出来なかった。その間に陰陽師にやられて終わりよ」
そう。彼女は男の首元を掴むところまで行ったのに、殺すことは出来なかった。
陰陽師に退治され橋まで逃げ帰り、人を喰らって生き延びたが、結局後に追い詰められて、橋の守りをする代わりに見逃して貰ったのである。
何のために鬼になったというのだろう。まったく滑稽な話だ。

「この話での教訓はわかったのかしら? 『その気もないのに、不用意な行動はとらないこと』よ。不用意な行動は、無駄に逆恨みを買うことになるわ」
吐き捨てるように告げる。皮肉たっぷりに。
だが、星熊はゆったりともう一度杯を傾け。

「……それで? それがどうしたんだい?」
「……は?」
きょとんとした風に、いつもとあまり変わらない表情の星熊。
駄目だ……皮肉が通じていない。ここまで鈍感、もとい馬鹿だとは流石に考慮してなかった。
あまりに予想外の展開に、こっちが唖然としてしまう。妬ましい。

「っ……だからっ! 私に興味がないなら、勘違いとかする前に二度と現れるなって言ってるのよ! 何、それとも本当に呪われたいの!?」
「あん? お前こそ、人の話は最後まで聞けって言っただろう? 私の話はまだ終わってないよ」
いいから飲めと、ラムネの瓶を引ったくられて、封を開けられてしまう。
空いた瓶をそのまま持っているわけにもいかず、仕方なしにちびちび飲んで。
爽やかな甘さと炭酸が喉に突き抜ける。苛立って熱くなった身体には、丁度良い涼しさだった。
私が落ち着いてきたのを感じたのか、星熊はまた語る。

「いいかい? 確かにさっき言ったようなのがあったさ。四天王の一人なんかは人間と共生する道を模索して、ここをふらりと出ていった奴もいる。でも、私はここを出る気がない。何故なら、お前たちがいるからだ。今更、同朋にも近いお前たちを置いていけるわけ無いだろう」
また話がループしている気がする。正直、何が言いたいのかさっぱり分からない。
酔っぱらいの戯れ言に付き合う気など無いのに、絡まれているような気分だ。

「でも、交流って言ったって最低限で良いんだ。実質、例えば地霊殿の連中なんかはたまに尋ねるだけだしね」
「なら私だって……」

「パルスィ」

言いかけた言葉が止められる。初めて呼ばれた名前。
力強い赤い瞳が、真っ直ぐにこちらに向けられていて。
思わず息を飲む。目を奪われて。

「――好きだ」

たった一言を、簡潔に。
飾る言葉もなく、ただただ真っ直ぐなだけの言葉。
いつもの余裕たっぷりの不敵な表情で、しかし先程の広場の時のように真剣で。

「……はぁ!?」
思わず、素っ頓狂な声をあげてしまった。
何? 今、何て言ったこいつ。好き? はぁ? そんなわけがあるものか。
私の嫉妬狂いを知っていて、能力まで知っていて、そんなはず無い。あるわけがない。
どうせこいつだって他の奴らと一緒だ。信用なんか出来ないし、しては駄目。
あり得ない。こんな私が好かれるなんてあるはずが……

「で、返事はくれないのかい? これでも結構、勇気いったんだけどねぇ」
「う、うううう嘘でしょ!? そんなのあり得ない。あるわけ無い! 私が好き? 何の悪い冗談よ、それ。信じられるわけないでしょう!」
「うん? 鬼は嘘を吐かないって言っているだろう。パルスィ、私はお前のことが好きだよ。ずっとお前の傍に居たのだって、居たいから居たんだ。それじゃ、駄目かい?」
からからと小気味良く笑う。いつものように。
鬼が嘘を吐かないのは知っている。分かっているけど、分からない。
一体、何処をどう間違ったら私を好きになるというのか。真性の馬鹿なのか。

「どうして? 一体、どうしたら私を好きになれるのよ!? こんな嫉妬狂いの厄介者、一生を台無しにするわよ?」
「嫉妬なんて、真剣に好いてくれてる証拠で可愛いもんじゃないか。それだけ深く愛してくれているって事だろう?」
「貴方ねぇ……嫉妬狂いの妖怪が、恋愛事で上手くいくわけないじゃない。妬ましいけどそれが現実なの。冗談で済む間に、撤回しないと痛い目見るのは貴方よ」
「それこそどうしてだ? だって別に関係無いだろう? 私がお前のことを好きなのは変わらないんだし」
「嘘よ! もう少し真面目に考えなさい。私の何処を好きになれるのよ!? さっきの話、もう忘れたの? 最初こそ好意だったとしても、貴方だって絶対いつか私を捨てるわ」
「ああ、やっぱりさっきのはお前の昔話か。なら大丈夫じゃないか。鬼になるまで憎んだとしても、結局殺せなかったぐらい愛してたんだろう? そんな一途さが私は好きなんだけどねぇ。それ以前に、私がお前を捨てるわけ無いじゃないか」
「ああ……もう、だから……えっと……」
どうすればいいというのか。嫉妬も皮肉もまったく通用しない上に、力でも敵わない。
心臓の鼓動は激しくなり、顔は熱い。川辺なのに、ちっとも涼しくない。
喉が渇いて、何も言えなくなる。忙しなく視線をあちこちに逸らして。
両肩を強く掴まれる。驚いてラムネの瓶を落とした。
中身の少ない青い瓶が、しばらくコロコロと転がって止まる。
目の前には星熊の顔。直視することも出来ずに、視線が泳いでしまう。

「……さて、これ以上言い合ってても仕方がない。どうすれば信じてくれるんだい?」
「あ……う……」
「本当に鬼が嘘なんか吐くものか。……パルスィ、愛してるよ」

近づいてくる顔。抵抗できなかったし、そもそもする気もなかった。
目を閉じる。温かくて柔らかいものが唇に触れる。
乱暴な星熊には似合わないほどの、優しく触れるだけのキス。
角が邪魔なのか、少し顔を傾けたままで。
数秒も経たないうちに、離れる。残る熱は、なお焼け付くように熱く。

「これで信じてもらえたかい」
「あ……え、えっと……その……ね、妬ましい、わ……気持ちを素直に伝えられるなんて妬ましい……」
「ふふん、まあ正直なのが鬼の取り柄だからね」
そう言って笑う。星熊の顔にもやや朱が差していた。私なんか、もっとだろう。
ぐらぐらと揺れ続けた心が、とうとう一方へと倒れる。
気付いて、押さえ込もうとしていたその気持ちに、火が点いてしまった。

「……酒臭いわ。ファーストキスなのに、ロマンも何もないわね」
「う……いや、その……酒飲んでるし、それは仕方ないって」
「……一つだけ聞いていい? 本当に、どうして私なんかを好きになったの?」
「ん? さっきも言ったけど、お前が一途で真っ直ぐで素直な奴だからだよ」
何を当たり前なことを、とでも言いたげな表情。
しかし、私にはどうしてもピンと来ない。一体、何処が真っ直ぐなのか。むしろ捻くれてる方だと思うのだけど。

「何を言っているんだ。妬ましいだの、恨めしいだの、そんな普通なら隠してしまうような感情だってお前は素直に出しているじゃないか。誰もが恥じるような感情を、お前は正直に伝える。これ以上、真っ直ぐな奴を私は見たこと無いね」
見方の違いというか、まさか私の嫉妬をそんな捉え方をする奴が居るとは思わなかった。
私では思いもよらないようなことを、こいつはいとも簡単に思いつく。
……星熊なら、大丈夫なのかもしれない。
誠実さで鬼に勝る者はないし、どうやらこいつの鈍感さは私の嫉妬でさえものともしないらしい。
いや、鈍感なんじゃない。きっと、知っていて知らない振りをしてくれているのだろう。
つくづく敵わない。妬んでも恨んでも呪っても、星熊には通用しないだろう。
涼しげな顔のまま、きっと黙って受け止めてくれる。私の全てを。

「それで、返事は?」
「……後悔しても知らないわよ、本当に。言っておくけど、告白したのはそっちよ? もう、一生離さないんだから。死んでも私のものにしてやるわ」
「あはは、そりゃいいねぇ」
心底愉快そうに笑うから、私も笑い返した。
心の中にある靄が、晴れ渡るような。どろどろした闇に光が差し込むような。
信じられない。本当に信じられないほどの、幸せ。
どうしよう。泣きそうかもしれない。私をここまで振り回すなんて、本当に妬ましいわ。
隣に座り直した星熊に体重を預ける。そっと手を繋いでくれたのが嬉しかった。
顔が熱い。恥ずかしさと照れ臭さで、何も言えなくなる。
旧都より川辺の方が涼しいだろうに、そのせいで全然涼しくなくて。
静かな夜。川のせせらぎと、水が跳ねる音。時折星熊が杯を傾けて、一口酒を呷って。
それ以外には、何も聞こえない。橋の下の闇の中、二人。
突然、遠くから大きな音がした。揺れる水面が、赤や黄色に一瞬染まる。

「お、花火始まったみたいだね」
「……星熊は、花火見なくて良いの?」
「勇儀で良いよ。あと、花火はいい。お前を見てる方が、綺麗だしね」
「……そんな歯痒くなるような嘘は吐かなくて良いわよ」
「だから、鬼は嘘は吐かないって」
「嘘じゃなくて本気だったら尚更。そんな恥ずかしいことを、普通に言えるなんて妬ましいわね」
「まあ、言葉じゃ伝わらないことの方が多いからね……よっと」
「え? ちょ、ちょっと……」
ひょいと軽々しく持ち上げられ、勇儀の膝の上に抱かれる。丁度、お姫様抱っこのような格好。
じたばたと抵抗するも、抜け出せるわけもなく。
悪戯っぽく笑って、私のことをジッと見つめて。
そっと耳元に口を寄せて、小さく囁いた。

「だから、教えてあげようじゃないか。忘れられないぐらい」

何を、と口を開く前に、再び塞がれる。
さっきよりも深く。唇を挟み込まれるようにして。
酒気を含んだ吐息が、口の中に広がる。それだけで酔わされそうな程。
甘さを含んだアルコールの香りが、頭の中まで突き抜ける。
ぼんやりと意識が霞み、身体が弛緩する。何よりも、熱くて堪らない。
うるさいぐらいに鳴り響いていたはずの花火の音も、最初からなかったように聞こえなくなって。
もともと暗くてよく見えなかったこともあって、闇の中に二人で溶け合っていくような気さえした。
もう、勇儀しか見えない。
上唇を食んだりしたかと思えば、次は下唇を擦り合わせる。はみはみと、まるで食べているかのように。
何度も何度も啄むだけ。余裕があるのが、逆にもどかしい。
……欲しい。全部。全部、私だけの。
独占欲が燃えて、強請るように私から唇を吸う。舌を伸ばす。
絡め取られて私の口腔に押し戻された。勇儀の舌も入り込んで。
ぬるりとしたそれに、私のそれが触れるだけで背筋に電流が走る。
流し込まれる唾液も、なお甘く。貪るように吸い上げ、飲み干す。

「ん……っ、ふ……う、ちゅ、む……ちゅぅ……」
息も出来ずに、喘ぎながら。でも、このまま死んでしまえるならば本望かもしれない。
もちろん、当たり前のことだが勇儀も道連れにして。
気が変わってしまう前に、二人でキスしたまま死ねるなんて素敵じゃない。
骨の髄まで痺れて焦がれるような甘い誘惑。
だけども、まだ手放すには惜しかった。大体、まだ何もしていない。貪り足りない。
全部手に入れなきゃ、気が済まない。

「ふっ……ちゅ……んっ、ぅ……む……」
角が邪魔で、上手く角度を変えられない。だから、ひたすら深く貪った。
歯が何度ぶつかり合っても構わずに、ただ求める。
触れ合った唇と唇の隙間から、溢れた唾液が喉まで伝って。
蠢く舌は、それ自体が別の生き物のように。私の中を暴れ回って、融かし尽くす。
粘着質な音が静かな夜闇に溶けて。

「ふむっ……ん……ちゅ、ぷは……ぁ……」
離れる唇。何本も橋が架かる。
落ちて切れるそれが勿体なかったから、ちゅるりと吸い上げて。
まだ求め足りなくて再度キスしようとしたが、勇儀は笑って。

「これだけじゃ足りないんだろう? ふふん、私も足りないけどね」
そのまま腕の中で体勢を変えられる。丁度、勇儀が後ろから覆い被さるように抱きしめられた形。
膝の上に座ったまま、すっぽりと腕の中に収まって。
頭をぐしぐしと撫でられる。ちょっと痛いぐらいだけど、不快ではなくむしろ心地よかった。
髪に顔を寄せて、くんくんと鼻を鳴らしている。少しくすぐったい。

「んー……良い匂いするね。ラムネみたいに甘い」
そう言いながら、髪に口付ける。神経が通ってないはずなのに、過敏に受け止めて。
何だか、それが恥ずかしくて言葉を返せない。
勇儀の表情が見えないのは、ある意味ありがたいかもしれない。またさっきみたいに近距離で見つめられたら、心臓が破裂しそうだ。
頭を撫でていた手が、頬を伝いながら下りてくる。そのまま首筋をなぞり、襟元へと。

「んっ……」
そっと浴衣の内部に手が伸びる。鎖骨から心臓の辺りを撫でるように往復して。
まだ、胸の方には行かない。らしくないほど、焦れったい動き。
首筋に息が吹きかけられる。驚いて身を竦ませると、首筋に吸い付いてきた。

「ぁ……んぅ……」
「ちゅ……ん、浴衣はいいね。風流だし、脱がし易いし」
「ふん、馬鹿じゃないの……ふあっ、耳は駄目……」
かぷりと音がしそうな風に食らい付いて。舌先で産毛を逆立てるようになぞられる。
輪郭を辿って、凹凸を埋めてしまうかのように。
そして時折吸われたり、軽く歯が立てられたり。その度に、粘ついた音が耳に響く。
恥ずかしい。心臓が悲鳴を上げるほどに暴れている。
勇儀の指先が心臓に近づく度に、伝わってないかと余計ドキドキして。
ふと、その指が横に逸れた。膨らみの裾を回り始める。

「ふ……ぅん……ず、随分手慣れているのね……っあ、今まで、何人抱いてきたのかしら……んぁっ……」
「普通、抱かれたかどうかを聞かないか? なんか失礼だな」
まあ確かに抱いた数の方が多い気はするけど……と、ちょっとムッとしたように言う。
妬ましいわ。過去の女が。勇儀に、こんなことをして貰っただなんて妬ましい。
愛されるのは私だけで良い。ああ、妬ましい……
ギリッと歯ぎしりしたのを聞かれたようで、勇儀が耳元で囁く。

「心配しなくてもいい。過去は過去だ。今、私が好きなのはお前だからね」
何処までも足りないというなら、満足できるまで愛してあげよう。と笑って。
その手が膨らみを優しく覆う。そっと丁寧に指が沈んで。
壊さないように注意しているのか、ひどくゆっくりとした愛撫。
先端にも触れずに、期待は高まるばかり。既にそこは痛いぐらいに隆起して。
もどかしさに身体を捩るも、後ろからギュッと抱きしめられた体勢じゃ、上手く動くことさえ出来ない。
浴衣はほとんど意味をなさないぐらいに、崩れていた。
舌が耳の内側へと潜り込む。水音が大音量で聞こえて。
ノイズのようなそれが、更に興奮を掻き立てる。熱い吐息が背筋をぞくりとさせた。

「はっ……あ、ぁ……あんっ……ふぅ、ふぁ……」
恥ずかしいと思いながらも、声が抑えられない。唇を噛んでも駄目だった。
誰もが通らない橋の下とはいえ、外だから余計に音には敏感になってしまう。
汗がじっとりと全身を濡らして熱い。焦れったさが更に内部に熱を籠もらせる。
指先がだんだん膨らみを上って。少しずつ中心へと近づいていく。
そして、キュッと優しく摘んだ。

「ひぁっ!」
その部分から、全身へと電流のようなものが駆けめぐる。身体が勝手に小さく跳ねた。
何だかおかしくなってしまいそうな程のもどかしさを孕んだ、直接的な快感。
呼応するかのように、全身が疼く。むず痒くなる。

「……ふ……ぅ、はっ、あっ……んぅ……ひぅっ」
「気持ちいいのかい?」
指先で弄ぶように転がして。弾いたり、摘んだり。
手加減しているかのような、弱めの感覚が疼きを更に増幅させて。
もっと。もっと強く。乱暴で構わない。
貴方の全てが欲しい。優しくなくともいいから、全部頂戴。
叫んでしまいたい気持ちは、喉に引っかかって出てこない。代わりに喘ぐ声だけが洞窟に反響する。
耳を囓られ、胸を優しく愛撫されるだけじゃ全然足りない。

「……本当は吸ったりしたいんだけど、角が邪魔なんだよねぇ」
ふと、勇儀が呟く。残念そうな声色で。
ぼんやりと熱暴走した頭では、それが何を言おうとしているのかが分からなくて。
何も返せずに、何とか勇儀の表情を見ようと首を捻る。

「……ごめん。初めてみたいだから優しくしてあげたかったんだが、もうそろそろ限界かもしれない」
もどかしいのとか苦手なんだ、と困ったような顔をして。
力ずくで構わないのに。むしろ、私こそもどかしくて困る。

「……好きにすればいいじゃない。遠慮なんかしなくて良いわよ」
その呟きに、ビクリと勇儀が身体を強張らせるのが分かった。
ゆるゆると続いていた愛撫が、完全に止まって。

「……むしろ、そうじゃないと困るわ。私の嫉妬狂いを貴方はわかっているんでしょう? 今までに抱いてきた娘よりも、もっとしてくれなきゃ許さない。誰よりも強く愛して、気持ち良くしてくれなきゃ、許さない」
睨み付ける。さっきとは逆に、私の瞳に釘付けにさせてやる。
緑色に溺れて、全部私のものになればいい。
少しばかり目を丸くしていた勇儀は、不敵に笑って。

「いいねぇ、その意気。やっぱり私はパルスィが好きだよ。鬼に本気を出せだなんてね。後で止めてって言われても止まらないかもしれないよ? いいのかい?」
「いいから、早く続き……んむっ!?」
噛み付くように、口付けられる。舌が奥まで滑り込んで。
飲まれるような、食われるような。そんな激しい口戯。
胸をまさぐる指先も激しさを増して、引っ張って捻るように。
少し痛いはずの強い愛撫にさえ、まだ足りないと疼く身体。
勇儀の右手がお腹を撫で、下へと。既に濡れているそこをなぞって。
指が二本、あてがわれる。本当にいいのかい? と耳元で最終宣告を。

「ん……ぁ、勇儀こそ本当にいいのかしら。それを破ったら……っは、後戻り出来ないわよ……ッ」
ぐっと指に力が込められる。徐々に内側へと侵食していく。
その痛ささえも快かった。だって、この痛みは私を愛してくれている証拠。
だったら、もっと欲しい。感じたい。
一気に奥まで指が差し込まれた。それを突き破った瞬間、気が狂うほどの痛みと愉悦が全身を襲う。
それでも足りない。もっと、もっと。

「あ……っ、ん、くぅ……ふぁあっ、あっ、あっ、あんっ……」
遠慮も無しに中で暴れる勇儀の指が愛おしい。
全身を駆ける快感。求められているという充足感。
口付けて、舌を絡み合わせて。もう、何が何だかわからなくなるぐらい融け合って。
頭が真っ白に染め上げられる。今まで、まったく知らなかった感覚が込み上げて。

「あ、あ、んっ、んぅっ……ああっ、やっ……ひっ、あ、ぁ……ふああっ!」
そこから先の記憶に残っているのは、耳元に聞こえる勇儀の荒い息。
身体の境界さえもが曖昧になるほどの快感と、焼き尽くすような熱。

「――――――ッ! ――――――――ぁああっっ!!」
獣のような声をあげながら、意識は遠く霞んでいった。








最初に聞こえたのは、川のせせらぎ。涼しげな水の音。
痛みと怠さが残る身体で起きるのは億劫だったが、起きないわけにもいかないので目を開ける。

「……お、やっと起きたかい? 全然反応してくれなかったから心配したじゃないか」
「!?」
驚いて跳ね起きる。目の前に見えていたのは、勇儀の顔だった。
状況が分からない。え? 何? 私、今までどうして……?

「ごめん。結構無理させちゃったみたいだけど。何処か痛いとかはないかい?」
「え……? あ……別に、そこまで痛いところはない、けど……」
「あの後、お前が気絶しちゃってね。流石にやりすぎた。ごめんよ」
まあ、寝顔可愛かったから眼福だけどね。と、悪びれもせずに言ってのけて。
何だか、さっきまでのことが今更恥ずかしくなってきた。
着崩れた浴衣の、赤いものやら何だかわからないものやらが飛び散り、さらに所々が破れている惨状を見ればよく分かる。
でも何故か怒る気にはならなかった。心は爽やかで、満たされていた。

周りは少し明るくなってきている。夜が明ける。
後ろから勇儀に抱きしめられたまま、橋の下で迎える朝。
照れ臭さに耐えきれなくて「熱い……」と文句を言ったら、勇儀がいきなりキスをしてきて。
口の中に渡された何か。冷たいような、少し甘いような。
出してみたら、ビー玉だった。

「……貴方、なんでビー玉なんてしゃぶってたのよ?」
「ん? お前にあげたラムネのビー玉だよ。私は小さい頃から、これを舐めるのが好きでね」
曰く、ガラス玉は涼しい味がするのだとか。わかるような、わからないような。
ビー玉なんか持ってても仕方がないから、勇儀に返す。
しかし勇儀は受け取らずに、私にそれを握らせて一言。

「いいから、お前が持っておきな。それが私の代わりだ。苛立ってるときにはそれを舐めればいい、落ち着くからさ」
愉快そうに笑う。爽やかな笑い方だ。
もしかしてこいつの笑い方は、小さい頃からビー玉を舐めていたせいなのかもしれない。
透明で水のように透き通った涼しげなガラス玉。それによく似た爽やかさだ。
……ま、そんなわけないか。と思いながらも、ビー玉を口に含む。
甘い。この甘さは、勇儀が舐めてたからか。それとも、ビー玉自体のものか。
確かに、涼しくはなるかもしれない。

ラムネの味を思い出しながら、水面を見つめる。
揺れる川面は、いつも以上に輝いている。そんな気がした。
パルスィは橋じゃなくて縦穴だよ!というツッコミは無しでお願いします
勇パル。時間無くて、全然上手く書けなかったorz
もう少し、本当に時間が欲しかったなぁ……うーん……
何だか尻切れトンボで本当に申し訳ないです。リベンジしたいよー
鎌鼬
作品集:
最新
投稿日時:
2008/09/14 00:00:30
更新日時:
2008/09/14 00:17:34
評価:
29/29
POINT:
272
Rate:
1.98
1. 5名前が無い程度の能力 ■2008/09/14 01:01:00
ツンデレぱるすぃが超おk。
ややネチョは薄いけど、話の骨格はすっきりしていて良い。
2. 10名前が無い程度の能力 ■2008/09/14 01:55:55
ちょっとラムネ買ってくる
3. 10にゃにゃし ■2008/09/14 02:27:07
もの凄くいい勇パルありがとう!
4. 10暇人A ■2008/09/14 02:43:46
パルスィの心の揺れ動きがうますぎる
5. 10点ななし ■2008/09/14 03:06:22
生きてて良かった
6. 10ななし ■2008/09/14 06:25:57
とても良い物でした。
7. 10名前が無い程度の能力 ■2008/09/14 17:04:53
最高。
8. 8名前が無い程度の能力 ■2008/09/14 18:42:50
良い嫉妬を見させてもらいました!
9. 10だれかさんのおもいで ■2008/09/14 19:03:07
なんとなく筆者の予想がついてしまいました・・・・・・理由はおもに文体とか耳攻めとか耳攻めとか・・・・・
もし間違ってたら怖いので挙げませんが・・・・・・

できればもう少しネチョがほしかったかな〜とは思いますが、それでもこのクオリティには満点をつけざるを得ないですね〜。
そしてパルシィの妬ましいが全部ツンデレにしか見えなくて困る・・・・・・
私も自分に自信がない人間ですから、この好きと言われた後のパルシィの動揺はよくわかりますね〜。

それにしても私では思いもよらないような文を、あなたはこんな風に書きあげる・・・。妬ましい。
もちろんいい意味でですが(どんな意味だw)
10. 10名無しさん ■2008/09/14 23:02:27
あぁ妬ましい妬ましい
その文才が妬ましい

起承転結ネチョの流れが巧いですね
少々ネチョ少なめ(出来れば勇儀との絡みがもっと先まで見たかった)な気もしましたが、リベンジで期待してます

そしてどうしてもパルシィがツンデレにしか見えないw
ニヤニヤしっぱなしでしたw
11. 9nanasi ■2008/09/14 23:45:14
これ以上があるというのなら、是非リベンジして欲しい出来
パルスィの想いが募っていく過程や、自棄になったパルスィを受け止める勇儀の漢らしさ、結ばれる時のパルスィの強い執着がとてもよかった
涼しげな雰囲気も良く出ていると思います

強いて言うならネチョ部分をもうちょっと書いて欲しかったのが不満といえば不満か
12. 10ななき ■2008/09/15 01:01:43
ぐいぐいと引き込まれてしまいました。
パルスィの心理描写がとっても良かったです。
勇儀の告白に対する反応とかも可愛かったですw
嫉妬は深く愛している証拠…確かにそうかもしれないです。
つまりパルスィは勇儀にゾッコン(古っ)ラブな訳ですね。
良いものをありがとうございました!
13. 10名無し ■2008/09/15 13:25:43
勇パル最高でした!
自分なんかの言葉じゃ何といっていいかわからないくらい素晴らしかった
14. 10  ■2008/09/16 00:33:17
パルパルがべた惚れの勇儀が妬ましい、うぎぎ。

少しネチョがあっさりしてるような。展開は予想できましたが、描写が秀逸でした。
あぁ、文章力が妬ましい、うぎぎ
15. 10na-na-shi- ■2008/09/16 13:59:21
勇パルだと…!?最高だった…。
16. 10EMANON ■2008/09/17 18:27:04
勇儀姐さんの優しさに泣いた。
17. 10なぎー ■2008/09/18 01:12:37
『妬ましい』というキーワードの使用法の変遷(っていうかぶっちゃけデレ期への移行の仕方)が何より巧かったです。
この「嫉妬してる割には大っぴら過ぎてダダ漏れ」な辺りがパルパルの魅力なのですね。目覚めました。
二人が仲良くなるきっかけのエピソードも本当に「らしい」形で描写されてますし、心底感嘆しました。
パルスィ最高。
18. 10ななし ■2008/09/18 18:57:21
貴方が神か
19. 9@ ■2008/09/19 02:33:55
勇パル良いな。
リベンジwktkして待ってます。
20. 10なー ■2008/09/21 18:38:30
充分妬ましい勇パルです。 勇パル小説は初めて読みましたがそれでも完成度はかなり高いと断言できます。 私は。

これより上手く書くってどれだけねたまs リベンジ期待してますよ!
21. 10グランドトライン ■2008/09/24 00:16:14
「妬ましいわ!こんなに素敵に私を表現する小説を書くなんて!!」
……と、嫉妬しつつもうれしいパルスィであった。


段落分けが上手くとても読みやすかったです。
また、設定の使い方や勇儀の性格の表現などとても上手かったです。

そして、何かと妬ましいを連呼したり、呪い殺そうかしらとか呟いたりする
パルスィ一人称の文章で何故か笑ってしまいます。勇儀が絡むとなおさらです。
それでいて、傷つきやすく悲観的であり、恋に一途で純粋な彼女はとても可愛い。
このパルスィは原作以上の出来だと思います。

ですが、ところどころで検索しても分からないような難しい漢字を使用しており、
読むのに苦労しました。(例:囓れば・嗤って)

捻くれ気味で妬ましいを連呼するパルスィと少しお馬鹿で直球な勇儀はいいコンビでした。


「それと、ビー玉は誤飲の危険があるから、みんなは真似しないようにね♪」
「う”っ……謀ったわね勇儀!」
22. 10inu ■2008/09/24 03:24:31
凄く。凄く、嫉妬狂いなパルスィが可愛い。
23. 7かまし ■2008/09/24 05:34:38
ゆうぎ姐さん男気たっぷりで良かったのですが、読み始めて20行ほどであらましの展開はほぼ読めてしまいました。
最後のシーンがきれいでした。
作品の評価とは別に個人的な意見ですが、せっかく読んだのに最後で「ダメだった」とか言わないでほしいです……
24. 7名前が無い程度の能力 ■2008/09/24 13:12:07
昔話を上手くいかせれば。
王道に見えるようで案外のめりこませる力がある。
安定した文章だった。
25. 10名無し魂 ■2008/09/24 23:50:36
今日から勇儀とパルスィはこのキャラに決定。
勇儀は男前(女だけど)だし、パルスィは可愛いし……
新キャラ出て日も短いというのによく作ったって感じです。
ツボなカップリングだし。

作者に、最高のGJを贈りたい。

野良鬼にレイプされるパルスィも幻視してしまったではないか……
26. 10んs ■2008/09/25 14:15:37
素晴らしいですね。
ネチョ以外のところもキュンキュンきます。
27. 10七紙 ■2008/09/25 17:00:36
勇儀とパルスィの話をこんなに上手くまとめられるなんて……。
正直上手く言葉がでてこないが、素晴らしいと思った。
とても面白かったし、読んでいる最中は最高に楽しかった。
読後感はすっきりと清々しく、ラムネが飲みたくなりました。
エロがこれまたねっとりと甘ったるくエロくて素敵でした。
28. 8RoN ■2008/09/26 22:29:49
コレで尻切れトンボは作家涙目フラグ
ねちょ薄いのはやっぱ気がかりだがだが愛がある すてきだ
29. 9泥田んぼ ■2008/09/26 23:47:01
勇☆パルキタァァァァァァァァァァァァァァッァァァァァァァァァッァァァァッァァァァァァッァァ
姐さん漢前すぎだよ……嫉妬するパルスィの涙かわいいよ……
あぁ寄り添う二人が妬ましい……お、お幸せにぃぃぃっっ(ダッ)

でも確かに微妙に尻切れトンボっぽい(−1点)
続きがあるならぜひ読みたいです!
30. フリーレス 鎌鼬 ■2008/09/28 06:16:24
おおお!? またしても個人的にビックリな結果でした
まず最初に、作品を読んでいただきありがとうございました。
時間が無くて、後半gdgdで本当にすみません。時間配分の甘さを反省して次に生かしたいと思います

>名前が無い程度の能力(1)氏
ネチョ足りなくてスイマセン……ネチョ入った時点で、残り時間足りないと直感しました
もっと書き足したかった……orz

>名前が無い程度の能力(2)氏
ラムネはおいしいよ!
ちなみにビー玉舐めてるのが好きなのは、幼少時の私の話でした。今でも好きです

>にゃにゃし氏
ありがとうございます!勇パルはいいものです

>暇人A氏
心情表現は頑張ったつもりです。そう言っていただけると嬉しいです

>ななし(1)氏
生きればもっといいことあるよ!ありがとうございます

>ななし(2)氏
ありがとうございます。次も頑張ります

>名前が無い程度の能力(3)氏
シンプルにありがとうございます

>名前が無い程度の能力(4)氏
Nice par.ですよ

>だれかさんのおもいで氏
何故私とばれたし!しかし、自分でも分かり易い自覚があるから困ります
ネチョ少ないのは、時間が足りなかったせいです。申し訳ないですorz
精進しますー

>名無しさん氏
ネチョ本当に少なくてごめんなさいorz時間ががが
いつか勇パルはまたリベンジしたいです。最近、この組み合わせがかなり気に入ったので
……しかし勇さとにも揺れてきた。どうしよう、修羅場しか思いつかないw

>nanasi氏
もうリベンジしたいのはネチョの薄さと、最後の部分
急造で何とかまとめてみましたが、もう少し事後もゆっくり書きたかった……ッ
勇儀姐さんは漢前で、パルスィの全てを受け止めるといいよ!

>ななき氏
ゾッコン(笑)ですねw
自分でも気付かないうちに、勇儀姐さんにベタ惚れなパルスィ可愛いよ

>名無し氏
ありがとうございます。勇パルは最高ですよ!

> 氏
ネチョは本当にすいませんorz
勇儀姐さんの格好良さはShitものですよ

>na-na-shi-氏
はい、勇パルです。地霊での個人的ヒットですw

>EMANON氏
みんな勇儀姐さんの優しさに惚れるといいよ!

>なぎー氏
明るい顔で妬ましい妬ましい言えるのがパルスィかと
パルスィ可愛いよ、可愛いよパルスィ

>ななし(3)氏
いいえ、ただの鼬ですw

>@氏
いつか時間があれば、続編というか。また勇パル書きたいです

>なー氏
あれです。時間があればもう少しネチョとか量産できたかと
推敲ももう少ししたかったし……
みんなも勇パル書くと良いよ!

>グランドトライン氏
確かに読みにくい漢字ががが。今後気をつけます
しかし笑いと嗤いじゃ意味が食い違ってきますから、そこら辺難しいですよね
なるべく読みにくい字は避けるようにしてるんですが……
ビー玉誤飲は本当に危ないので、小さい子にはやらせちゃ駄目ですねw

>inu氏
パルスィは嫉妬するところがいいんです。乙女で

>かまし氏
まあ、王道展開といいますか。直球しかほぼ投げられないもので
卑屈になってしまったのはすいません。本当に時間無くて、書き上がらなかったのが悔しくて
でも本当に駄目だと思ったら多分ここには出してないでしょうから、そういう発言は控えるべきでしたね
本当にすいませんでした

>名前が無い程度の能力(5)氏
昔話の所も、もうちょっと掘り下げて書きたかったのが本音
文章が安定していると言われると嬉しいです。しかし特定されやす(ゲフンゲフン)

>名無し魂氏
むしろ一番ヒヤヒヤしたのは、地霊殿製品版で矛盾が起きないかどうかでした
そのためにネタバレに突貫したりとか。幸い地霊殿の方が旧都とはあまり関係なかったので何とか
ありがとうございました

>んs氏
むしろネチョの方が苦手で……
胸キュンしていただけると、とても嬉しいです

>七紙氏
ラムネ飲むといいよ!暑い日にビー玉舐めると、ちょっと涼しい味がしたり
ネチョの方は短くてごめんなさい。もう少し甘々にしたかったなぁ

>RoN氏
本当に涙目でしたorz
ネチョシーンが書く時間ホント無かったよ! 頑張って何とかまとめてみたよ!

>泥田んぼ氏
嫉妬するパルスィ可愛いよ。パルスィマジ可愛いよ!
姐さんは漢前。一目で惚れました
実は姐さんには最初、甚兵衛着せてたんですが、メッセサンオーの浴衣姿を見て打ち変えたのは内緒

皆様、本当にありがとうございました!
31. フリーレス マリアリスキー ■2008/09/29 10:11:42
これを見て勇パルに目覚めた
あなたの作品はいつ見てもいいですね
何度見ても飽きません
マリアリの次か、次の次くらいに勇パルが好きになりました
32. フリーレス らむね今食べてる ■2010/09/24 21:57:05
くぁwせdrftgふじこ……
勇パル最高!GJです!
33. フリーレス uduyponxwrq ■2011/06/26 07:32:50
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34. フリーレス pregnancy miracle ■2011/06/27 16:57:14
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35. フリーレス louis vuitton handbags ■2013/01/07 15:26:19
Touche. Great arguments. Keep up the good work.
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