サラシ一本の奥

作品集: 最新 投稿日時: 2008/09/14 00:00:03 更新日時: 2008/09/14 00:00:03 評価: 8/8 POINT: 50 Rate: 1.67
 夜風が身に心地よい。
 昼間はあんなにも強い日差しが出ていたにも拘らず、この夜の風は何と気持ちの良いことか。二の腕からその涼しげな風が伝わり、全身をちょうどいい温度に冷やしてくれる。
 雲間に隠れたおぼろ月のうっすらと見える姿。その美しさは、決して隠れるべきものではないのに。しかし、その僅か見える月の光もどこか儚げで、はっきりと見える太陽よりも美しく見えた。

「……んっ」

 神社の縁側で、空を見上げる人影一人。普段から目印のように付けている赤いリボンを傍において、その結った黒髪を惜しげもなく垂れ流す。真珠のように輝く黒い瞳は、惚けたように空高くを見上げる。
 普段の服を脱ぎ、胸に白い晒を巻き、胸の秘部が曝け出されるのを防いでいる。
 博麗霊夢は、普段ならば既に床に就いている時間。だというのにも拘らず、夜風に当たり火照ったその全身を冷やしていた。
 そう、冷えているはずなのに、熱い。暑いのではなく、熱い。
 夏であるがゆえに、その熱気というのはどうしても外側から肉体に入ってくる。けれども、今生み出されるその全身が冷めやらぬほどの熱気は、確実に心の内から生まれていた。

「……もう、寝てるかな」

 視線を、社の中に向ける。
 障子一つを挟んだ向こうに彼女がいるのだと思うと、どうにも心が落ち着かない。
 こんな気持ちになった事が、今まであっただろうか。親友の魔法使いと居た時にも、ここまで心が騒ぎだすことはなかった。
 今鏡を見たら、自分の顔の赤さが酷く嫌になることだろう。できるだけ冷静にふるまおうにも、する自信が全くない。特に、彼女を実際に今目の前にしたら。暴走するのは何となく目に見えている。そんな自分がちょっとだけ嫌で。

 どうして好きになってしまったんだろう。
 最初は恋い焦がれるなんて、そんな気持ちじゃなかったのに。
 妹のような、ちょっと小うるさいけれど本当は優しい相手。そんな気持ちだけだったのに。

「妖夢……」

 あの銀色が――心底、恋しくなってしまった。



***
サラシ一本の奥
***



 部屋の前に、立つ。
 明かりは蝋燭程度しかない部屋の中。その僅かな火が揺らぐ姿しか見えない。障子の向こう、彼女は果たして起きているだろうか、それとも寝ているだろうか。火に隠れた影は、映し出されない。
 すぅ、と大きく息を吸い込んだ。心臓がとくんとくん、と動く。いやそれはいつもの事だ。だが、今のこの状況では異常なまでに大きくその音が聞こえるのだ。嫌になる。止まってくれ。そう思うたびにどくん、どくんと更に鼓動が強まる。胸元を抑えるが、それはむしろ逆効果になっているような気もする。
 心を落ち着け、深呼吸。吸い込んだ大量の息をゆっくりと全部吐き出した。

 落ち着けると、障子の取っ手に手をかける。口元に溢れるほど出る唾。それもまた緊張からくるものなのだろうか。ごくり、と喉を鳴らした。
 手に力を込める。障子をゆっくりと、開いていった。

「あ……」

 密閉された空間。
 障子を隔てたその向こう側。白銀の髪が揺らいだ。
 普段ならばただ、自分よりも年下の幼い童顔として認識するだけの筈なのだが、今宵はどうにも違った。その幼く、また儚げな表情はこの夜という雰囲気と揺らめく蝋燭の炎に照らされ、酷く妖艶に見えた。
 普段は若葉色の洋服の下に隠された薄ら白い肌。普段は二の腕程度しか見れないが、その肩や腰の部分は丸みを帯びていて、やはりまだ発展途上な肉体であることを教えてくれる。
 ほんのり赤みをおびた頬。どくん。より一層、今まで以上の鼓動が胸を鳴らした。

「……妖、夢」
「……いらっしゃい、ませ」

 三つ指付き、こちらに深く頭を下げる妖夢。まるで、これから嫁入りでもするかのようだ。その何とも言えない丁寧さ、いじらしさが心をさらにくすぐる。
 妖夢は、上半身はサラシだけ。下はまだ脱いでいなかったのか、それとも脱ぐ気もないのかスカートをそのまま着用したままでいた。
 妖夢は顔を上げ、視線をこちらに向ける。上目遣いの視線がなんとも愛らしく見えた。

「来て、くれたんですね」
「……小さな事だけど、約束したもの」
「はい。ありがとう……ございます」

 ただの言葉の応酬が、どうしてこんなにも心臓に響くのだろうか。先ほどから鼓動が収まらない。妖夢の一言一言を聞くだけで、酷く心が動く。どくん、どくん。収まらない。止まるわけもない。
 全身が滾っている。興奮。そう言いかえるのが最も適任だろうか。
 彼女のその柔肌を。丁寧な物腰を。幼い愛らしい姿を。その全てに、興奮している。息遣いが荒くならないように、こらえる。

「それでは……こちらに」
「ええ、ああ、うん……」

 妖夢が布団の上に正座をしたまま、霊夢を招いた。
 酷い緊張感だが、霊夢はそれに従うようにゆっくりと布団の上に歩いて行く。

 事の始まりはつい先程の事。
 博麗神社に泣き腫らして目の回りを真っ赤にした妖夢がやってきたのが始まりであった。

 どうも幽々子と喧嘩をしたらしく、泊めてもらいに博麗神社に駆け込んできたらしい。時間も夕方であったし、そのままはいそうですかと追い返すわけにもいかない。仕方ないので本日一番泊めてやることにした。
 そこまでは普通通りなのでまだよかった。特別問題があるわけでもない。
 ただ、何の流れか一緒に風呂に入ってしまった時が不味かったのかもしれない。

『今日、一緒に寝て頂けませんか?』

 妖夢がこんな申し出をするなんて、僅かにすら考えていなかったのだから。
 それによって気も動転してしまい、先ほどからずっと自分の中からの熱気が止まらない。それに、時間がかかったり返答に戸惑ったとはいえ、その要望を受け入れてしまったのも事実だ。

 熱い。ただただ、熱い。夏の暑さなどを遥かに超えた自分の体温の上昇を理解する。
 彼女の姿を目の前にしてそれはより一層燃え上がった。炎に全身を突っ込むよりも遥かに熱い。心の奥底からそれは来るのだ。

「……霊夢?」
「……あ?」
「どう、しました?」

 同じ布団の上で、見つめ合う。
 その白銀の髪、蒼い瞳が酷く美しい。何とも言えない激情が襲う。それでも、冷静に振舞おうとした。
 これでも一応、女の子だ。あまり女同士といった恋愛に興味があるわけではない。同性同士の恋を否定する気はないが、基本的に異性同士の恋のほうが普通であるという認識は当然ながら持っている。

「ううん、ごめん。ちょっとこういうの初めてだから、さ」
「……すいません、唐突にこんなことを申し出て」

 申し訳なさそうに首を垂れる妖夢。本当にその唐突さに驚かされたが、そんな事を言っていても仕様が無い。
 むしろ――気になっていた。

「ねぇ」
「はい?」
「どうして、私と寝たいなんて思ったの?」

 少しだけ身を乗り出して、聞いてみた。
 顔を近づけると、妖夢の顔も真っ赤になる。真っ赤になりたいのはこちらの方だ、と霊夢は心の中で深く思う。

「……その質問の仕方は、卑猥じゃないですか?」
「やっぱりそう言う事、考えてたんだ」

 核心を突く。
 単純に温もりを求めるだとか、傍にいて欲しいだとかそういう意味ではなく。交わいを求める意味。それが全く無かったとは言わせない。今までの態度を見ていて、ずっとそのことを考えていられる方が珍しい。

「……ずるい、ですよ」
「どうして」
「私が答えたら、霊夢は私の質問に答えてくれますか?」
「質問を聞いてないのに、そんなの答えられっこないじゃない。そのやり方の方が、ずるい」

 沈黙。
 答えを待った。
 沈黙が長く、長く続く。実際はどれぐらいの時間が流れたのだろう。全くわからないけれど、とても長い時間にそれは思えたのだ。

「霊夢が、好きです」

 どくん。
 大きく跳ねた。
 首元が吹っ飛んだとしても、可笑しくはあるまい。もはや爆発しそうだった。それは心でもあり、肉体でもあり。自分の全てが心の底から爆発してしまいそうになった。
 いっそのこと言葉が理解できない人間であったならどれほど楽だったことだろう。だが、残念ながら博麗霊夢は他人の事をよく知ることのできる、優しい少女であった。全てに対して平等であるという事は、全てに対して興味があるということでもある。だからこそ他人の事がよく気にかかるというものだ。

「霊夢の事が、大好きです」

 心臓が喉から飛び出しそうであるというのは、こういう事なのか。
 我慢の限界はとうに超えている。だが、それをどうにか抑えなければ、抑えなければ、と。心の中で思うたびに更に鼓動が強く、早く、なっていく。
 できることならこの告白を。

「心から、ずっと」

 やめて。
 そのまま、続けたら私は。

「貴女を想ってました」

 私で、居られなくなった。

「ふあっ!?」

 全力で、目の前の少女を押し倒す。
 布団の下に曝け出された彼女の姿。熱い興奮はもはや誰にも止められない。晒の上から、思いっきり胸元に触れてやる。
 その、膨らみの無い胸を揉む事は難しい。だが、晒の上からでも何となくわかる。
 そして気づく。その小さなふくらみが、リズムを刻みながら揺れているのを。とくん、とくんと。触っている間、その鼓動はより強く、より早く刻むようになっていった。

「れ、霊夢……」
「やっぱり、あんたの方がずるい」
「え……」

 すっと、スカートの中に手を突っ込んだ。他人の股間を弄る事なんて初めてだ。ぎこちなく、指を動かしていく。
 そう、妖夢の方がずるいと思う。あれだけ熱い思いを告白されて、どう断われというのだろうか。好きなのは、私も一緒だ。伝えたかった気持ちを伝える。伝えられなかった側はどうすればいいのだ。
 ――ただこうして。これを返事とするしかできない。

「んッ……」

 嬌声が、彼女の喉から漏れた。もはやそれだけで心がさらに燃える。
 更に、指を動かしていく。太股の間、触ることでようやくわかるその割れ目。見えないけれども、指の感覚で何となく理解する。
 自慰をした事が無いわけではない。無論、目の前にいる彼女の事を考えながら。この割れ目の具合は、確かに普段触っているような部分に酷似している。ゆっくりと、ゆっくりと撫でていく。

「んあっ、ふあぁっ!」

 ああ、そう、もっと。
 この声を聞いていたい。この、愛らしい声をずっと耳にしていたい。そう考えると、指の動きは更に早くなっていく。もう片方の空いた手で、妖夢の晒に手をかけた。

「えあっ……そこは……」

 何か言おうとした妖夢の唇を、一気に奪いにかかる。
 あまりの唐突さに目を見開く妖夢。それも一瞬の事で、すぐに霊夢に身を委ねた。そのやわらかな唇から、舌をゆっくりと入れていく。二人の舌が絡まり、粘膜がぐちゅぐちゅと中で暴れ出す。茨のように絡まる舌を解き、二人の唇を離した。
 はぁ、はぁと妖夢が荒い息をつくのが見える。クリトリスで味わう快感、そして霊夢に唇を奪われたという事実が彼女をより興奮させているのだろう。
 いったんスカートに入れた指の動きを止める。そして彼女が落ち着くのを少し待った。

「妖夢……」
「……はい」
「熱いわ……とっても。心が、身体が――あなたと一緒にいると、とっても熱い」
「私も……です」
「脱ぎましょうか」
「んッ……」

 左手を妖夢の晒に。右手をスカートと下着にかける。
 自分でも巻いているからこそ、晒の構造はよく理解している。その着方、解き方も。器用にサラシを左手で解きながら、ゆっくりとスカートと下着を下していった。スカートの下からすべすべな、可愛らしい割れ目が覗く。先ほどから触られている部分が、愛液で既に相当濡れていた。
 その部分を見られると、妖夢は頬を真っ赤に染める。それが何とも、可愛らしくて。
 晒を全てほどき終えると、そこにはもう、生まれたままの姿の妖夢が居た。

「かわいい」
「やめて下さい……恥ずかしい」
「だって、本当なんだもん」
「人のところ脱がせておいて、自分は着てるのは反則ですよ」
「……そうね」

 手を妖夢の服から離すと、自分の晒とスカートに手をかける。いとも簡単に、霊夢本人も全裸に姿を変える。妖夢は、黙ってこちらを見つめ、喉を鳴らした

「これで……ちょっとは涼しくなったわね」
「……」
「どうしたの?」
「……綺麗、です」
「初めてだわ、そんなこと言われたの」

 そう、言いながら妖夢の胸の秘部に触れた。
 先ほどよりも風を全身に感じる。股間の部分がすーすーして落ち着かない、というのも生まれた。だが、それ以上に。
 生まれたままの姿でまぐわえるこの状況に、さらに興奮してきて。霊夢としては涼しいどころの問題ではなかった。涼しくなったと思った肉体は更に熱気を帯びる。

「んッ……私ばかり、触られるのは……」
「……私を、好きにしたい?」
「……なんですか、その聞き方」
「ちょっと、言ってみたかっただけ」
「そりゃ好きにしたいですよ。できるなら」

 ふふ、と霊夢が笑う。すると、妖夢をひっつかんで横に向ける。そのまま自分が布団に仰向けになり、妖夢が自分を押し倒すような体制に変える。余りに一瞬の事に、妖夢も戸惑う。しかし、自分の下に霊夢がいるという事に気づくと、一気に顔を真っ赤にした。

「なッ……」
「好きにして、いいよ」
「……そ、その……こ、これは……」
「妖夢ばっかり気持ち良くなるのは、ずるいから」

 妖夢を見上げる。その蒼い瞳が、動揺で揺れ動くのがよくわかる。
 こうであるから、可愛いのだと改めて思う。こんなにも純粋で、おとなしい子。
 霊夢はすっと手を伸ばすと、妖夢の腕を掴む。そしてその行為に妖夢が動揺している間に、一気にその手を自分の胸に持っていった。

「っ!」
「気持ち、いい?」

 胸がそこまで大きい自信はない。けれども、小さいというわけでもない。この年の女の子の平均ぐらいはあるだろうと自負している。ぽよん、と妖夢の手のひらに包まれた乳房が動いた。妖夢の動揺が、見てとれる。
 見ると、妖夢の顔は夕暮れ時の太陽のように真っ赤であった。酷く、緊張しているのだろう。
 妖夢から見ても、霊夢の肉体は魅力的だった。幼くもなく、かつ成熟しているわけでもない。しかし自分よりも出るところのはっきりと出ている、女性らしい肉体。酷く心が奪われる。その手に触れた柔らかな胸が、酷く温かく、気持ちがよい。だが、どうしても力を居れて揉む気になれない。
 それは、この神聖な肉体に触れてはいけないだろうといったような、大事なものを守りたくなるような観念があった。だから、どうしても汚したくない、という気持ちが占める。

「……妖夢」
「っ、はっ、はいッ」
「私の胸じゃ、いや?」
「そ、そんな事は決してッ!」

 不満そうに妖夢を見つめる霊夢。

「……妖夢が」
「え?」
「私も、妖夢が好きだから」

 ようやく言の葉にした。
 伝えたかった気持ちを。さっきまでは身体で伝えた気持ちを。言葉で。

「だから、妖夢の好きな事、目いっぱい――私に、していい」
「霊……夢……」

 その言葉を、告げる。
 思いを遂げる。
 なんだかおかしくなって、笑いがこみあげてきた。

「……ごめんね、変な事言って、さ」
「……いいえ、そんな事、無いです」
「……」
「霊夢」

 妖夢が、はっきりとその名前を呼んだ。
 振り向くと、その瞳が真摯にこちらを見つめている。その真剣な瞳が射抜き、今までで最大の鼓動が霊夢を襲った。

「私は、今、何よりも」



「貴女が欲しい」

 ぐい、と。その小さな手のひらで霊夢の胸を揉みしだき始める妖夢。
 くすぐったいような、それでいて気持ちの良い感覚。全身にその涼しさを求めるために全身を生まれたままの姿になったはずなのに、全く持って、熱い。
 股間から、ゆっくりと熱い粘液がぬるりと溢れ出しているのに気づく。直接触られてなどいないのに。胸のその感触だけが、快感となり全身を駆け巡る。

「んッ、はぁっ、ふぁぁっ!」
「霊夢の胸……すごく、柔らかくて……あったかい……」
「やだ、そんな事……言わないでよ……」

 改めて言われると、酷く照れる。その間も妖夢の胸の愛撫は止まらない。
 そうすると一旦、その手が胸から離れた。そして次の瞬間にそれ以上に熱いものが、胸の性感帯に。曰く乳頭に触れた。妖夢の舌が、ゆっくりと乳首を舐め上げていく。

「ひゃぁんッ!ぁんっ!」
「霊夢、こんなに……こんなに、硬くなってる……」
「駄目っ、ダメぇ、言わないで、言葉にしないで……」

 言われるたびに、どんどんと興奮してくる。
 妖夢が自分の乳首を舐めている。ただそれだけで、もはやリミットゲージは振り切っている。興奮と快感が同時に襲いかかり、さらに自分の股間からあふれ出る愛液。既にシーツを相当なまでに汚していることだろう。

「……そろそろ、下に行くよ、霊夢」
「んッ!……うんっ……」

 普段の自分とは思えぬ弱々しい声。
 妖夢もまたその嬌声に興奮していた。普段の霊夢と違う、淫らなこの姿に。酷く欲情し、自分の割れ目もしっかり濡れていた。我慢が、できない。
 ゆっくりと空いた手を霊夢のクリトリスに這わせていった。びくん、と霊夢の体が大きく跳ねる。しかし構わずに、ゆっくりと。優しく、包み込むように。霊夢は口元をしっかり押さえ、できるだけ声が出ないように我慢した。
 クリトリスの突起を、少しだけ力を入れて摘む。痛みなど、とうに感じない。

「はぁんッ!? そ、そこッ……そこはっ……!」

 我慢の限界は超えているのだろう。
 だが、それを知って敢えて攻めた。そして声を出させた。その声が、妖夢の欲情を限界以上に駆り立てるのだ。自分の目の前で、こんなにも淫らになる姿。何とも、美しい姿だった。

「もし……」

 あくまで、もしもの事を、思う。
 その指で、霊夢のクリトリスを優しく愛撫しながら。

「もし私が、男だったら――



 霊夢と、ちゃんとした恋愛ができてたかな」

 ビクンッ、と。
 霊夢が跳ねた。全身の快感が遂に限界域を突破したのだろう。
 必死になって、その両手で妖夢を抱えるように。その姿は弱々しい赤ん坊同然だった。
 今まで霊夢が、こんな姿を他の誰かに見せる事があっただろうか。いいや、自分にしか見せたことは無いのだろう。こんなにも弱く、そして可憐な姿。

「だめ、変、頭のなか、へんッ!」
「霊夢……」
「離しちゃ、いやぁっ、妖夢、だめっ、離れない、でっ……んぁっ!」
「大丈夫、です。私はここに、いる」
「ふぁぁぁぁっっ!!」

 絶頂。
 その叫びを最後に、力無く、項垂れる。それでも、妖夢の体を離そうとしない。それほどにまで――離れたくない、大事にしたいのだろう。
 自分より年上で、大人の筈なのに――その様相はもう、まるで子供。頭を、軽く撫でた。

「はぁっ……やだ……この馬鹿……」
「さっき頭撫でられたお返しです」
「……ありがと」

 霊夢は、ほほ笑んだ。らしくない、弱々しい微笑み。
 それが酷く美しく、霊夢が、自分にようやく心を開いてくれたように感じた。





 ギュッと、霊夢は妖夢の体にしがみつく。そしてそのまま横に、倒した。

「うあっ!?」
「……気持ち、よかったよ」
「……それならよかった」

 霊夢は、そのまま妖夢を包み込むように強く抱きしめた。改めて行為を終えると、先ほどまでの事が頭の中から離れず異常なまでに恥ずかしい。霊夢の顔が目の前にある。それだけでもう、心が熱くなっていた。

「疲れちゃった?」
「やっぱり……でも、霊夢ほどじゃないかな、って」
「そう」

 んふふ、と気持ち悪く笑う霊夢。
 その笑いに少しだけ体を強張らせる。そして霊夢は上半身を起こした。妖夢の頬を軽く指で撫でる。

「熱い、ね」
「熱い、ですね」
「ねぇ、妖夢」
「はい?」

 そのまま、生まれたままの姿で、立ち上がる。
 美麗といってもいい、その霊夢の肢体が妖夢の目に焼き付く。どくん、と再び心臓が高鳴った。

「ちょっと、外に出て涼しくならない? このまま――」

 どことなく妖艶な瞳を浮かべる霊夢。
 それが心に強く響いて――今の妖夢には。

「……そう、ですね」
「……一緒に、はだか」
「く、口に出さないで下さい、恥ずかしい」

 ギュッと、二人で。
 まるで世界には二人しかいないような。そんな感覚を覚えながら。夜風を浴びる。その、姿で。
うわぁ時間ギリギリとかマジ怖い
どうにか無事時間内に投下できてますように/(^o^)\
オチわけわかめwwww

ギリギリッ…ギリギリッ…お題にギリギリッ…沿っているっ…!
稜乃
作品集:
最新
投稿日時:
2008/09/14 00:00:03
更新日時:
2008/09/14 00:00:03
評価:
8/8
POINT:
50
Rate:
1.67
1. 4名前が無い程度の能力 ■2008/09/14 01:04:40
甘いんだけど、ちょっと性的悩みがあったりもしてほろ苦いのはそれはそれでいいんだけど、
いくらなんでも、えっちの最中に「もし私が、男だったら」とか言っちゃうのは無粋の極みと思うのです。
2. 10名前が無い程度の能力 ■2008/09/15 02:09:20
珍しい組み合わせだけど楽しめました。
3. 5かまし ■2008/09/24 05:06:38
最後せっかくよさげな雰囲気なのに後書きが……。
でも初々しい二人が可愛らしかったのでよかったです。
「もし私が、男だったら――霊夢と、ちゃんとした恋愛ができてたかな」
思わずドキッとするようなセリフなのに、特に妖夢は何も考えないで言ったのかな?
4. 5名前が無い程度の能力 ■2008/09/24 13:13:23
描写が洗練されている。
お題にうまく沿えていないのが残念。
5. 6名無し魂 ■2008/09/24 23:49:28
妖夢は一体どうしちゃったのか……。どうして霊夢が好きになったのか……。
好きになっちゃったものは仕様がないのかな。
ゆゆ様のケンカ別れとかの話も書いてくれると期待しているぜ。
6. 7七紙 ■2008/09/25 16:35:45
珍しい妖夢×霊夢、堪能させていただいた。
お題に沿ってはいるけど弱く感じた。
そんなの関係ないくらいに面白かったけど。
7. 6グランドトライン ■2008/09/26 00:16:05
美しい……この一言だけです。

文章や表現は丁寧に描かれており、さらりと美しく感じました。
ありそうであまり見当たらなかった霊夢と妖夢の組み合わせも美しく官能的に仕上がってます。
涼しさと暑さと熱さの違いの表現もアクセントが付いて良い感じです。

ただ、『晒』で統一されているところで、『サラシ』がたまに出てくるのが気になりました。
特別な意味を持っているなら別ですが、普通は統一させた方がよろしいです。

ねちょとしてはインパクトが薄めですが、霊夢と妖夢の美しさの前では些細な問題です。
8. 7泥田んぼ ■2008/09/26 23:45:16
沿ってる沿ってる
サラシが二人ってビジュアル的にいい絵だ……
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