白磁のようだと、魔理沙は思う。
ソファで隣に座っているアリスの横顔を見ているとき、そんな言葉が自然と脳裏に浮かぶのだ。
古びた表現ではある。それこそ幻想入りしても可笑しくないような古語と言っていい比喩だろう。彼女の整った顔を見てそう思うこと自体、自分の言語能力の貧困さを思い知る。魔法の絡まない書物を読んでこなかったことを些か悔やまれる。
それでも、それ以上の表現を思いつかなかった。
アリスはまっすぐ前を向いて、手の内に収まるぐらいの小さな端切れを縫い合わせている。細かな作業をしているせいか、眉間に少ししわを寄せて、一心不乱に手元へ視線を注いでいた。
魔理沙はソファに深く腰掛けて、ただ静かにアリスのことだけ見ていた。手持ちぶさたで落ち着かなかったが、何か喋ればそれだけで言質を取られて追い出されるのが定番だった。だからじっと見ていた。
集中して縫い針を動かしているアリスは、魔理沙のことなど忘れてしまったかのようだった。冬の空のように蒼く濁り無い瞳をただ一カ所に据えて、目の前のものにだけ意識を払っている。深爪じゃないかと思うぐらいに短く爪を切った指先を少しずつ動かしているのに気を払わなければ、一つの完成されたビスクドールのようにも見える。
魔理沙にとってのアリスは綺麗なお人形だった。話さず、触れず、ただ眺めているだけ。アリスはいつだって冷たい無関心の中に氷のような硬い態度を潜ませているだけだった。
ひとたび言葉を交わせば、百は皮肉が返ってくる。会話が会話として成り立たない。魔理沙を見る視線は棘だらけで、そのくせ目と目が真正面から合ったことなど一度もない。
その程度で遠慮するような魔理沙ではなかったが、ただ挨拶をしただけで怒鳴られ、つまみ出されることさえあるのだから、出来るだけ余計な口は慎むことにしていた。
家から追い出されてしまっては、アリスの綺麗な横顔を眺めることも出来ない。それは嫌だった。
(こういう表情のことを、クールとか澄んでる、とか言うんだろうな)
客観的に見れば『冷淡な態度』とか『取り澄ました態度』とか言うのが本当は正しいのかもしれない。だが圧倒的にニュアンスが違う。自分の言語野が明らかに恋色に染まっているのを自覚する。
魔理沙にはアリスの持っている全てのことが、魅力的に見えた。すっと伸びた鼻筋も、サファイアのような瞳も、柔らかな光沢を放つ金髪も、言葉では言い表せないくらい大切な宝物のように思えた。
どうにか用事を作り出して彼女の家に上がらせてもらうことが出来ても、紅茶一杯だけ出されて、後は会話も無いまま放っておかれる。そうだとしても、ただ馬鹿みたいに見惚れて、それだけで幸せだった。
しんと静かな部屋の中で時計の音だけ響く。時間がどれだけ過ぎていくのか実感として分からない。
黙ってただ一口だけ紅茶を飲んだ。薫り高いストレートのお茶は、冷めていて微かに苦みを帯びていた。
アリスの色素の薄い肌は透き通るようで、大理石や硝子や石英の類を思わせた。触れればきっと軽やかな音を立てて割れてしまうだろうけれど、それでもそっと指を伸ばしてその存在を確かめたくなった。
魔理沙は人差し指をぴくりとさせた。まるでそれに反応したかのようにアリスが小さく身じろぎをする。ガードされているような感じがして、魔理沙は手を引っ込める。
そんなことが何度か繰り返された。
時折音もなく上海人形が飛んできて、主のカップへ紅茶を注ぐ。魔理沙のカップへも視線を投げかけるが、まだ残っているのを見て、ポットを台所へ下げる。一応、気遣いはしてもらえているらしい。人形の自動的な機能なのかもしれないが。
気がついたら、窓から差し込む光がうっすらと紅く染まっていた。
アリスはようやく顔を上げて、こう言った。
「……まだいたの」
呆れたような口調だった。
「ああ」
魔理沙は平然とそう答えた。歓迎されていない言い方だとは魔理沙も気付いたものの、無理矢理追い出されるまで帰る気は無かった。あわよくば夕飯までごちそうになってしまおうかと思っているくらいだ。
「お前こそ、そんなに一生懸命何作ってるんだ? さっきから縫ったりほどいたりしてばかりだが」
魔理沙がそう言うと、アリスは表情を強ばらせた。魔理沙へ向ける視線をきつくして、小さく唇を噛みしめる。
「お前がそんなに集中して作ってるんだ。何かすごい魔法の道具だったりして……」
魔理沙がそう言って手を伸ばそうと、さっと避けられた。
「……詮索は止しなさい。さもなくば、きっと酷いことになるわよ」
アリスはそう言って立ち上がると、さっきまでの端切れを戸棚の引き出しにしまい込んだ。
「へいへい」
いつものことだ。彼女がこちらに本音を告げたことなどない。
アリスがソファから退いたのを良いことにごろりと横になった。視線を感じるが、気にしない。
伸びをする。ずっと横を向いていたせいか首が少し痛い。アリスの座っていたところはかすかに暖まっていた。
大きくあくびをして魔理沙は言った。
「ところでアリス、お腹空かないか」
「空いたわよ。夕飯どうしようかと思っているところ」
「お、今日のおかずは何だ?」
のっそり起きあがって魔理沙はアリスを見る。
しかし彼女は目をそらした。
「……貴女が食べられるものはないわ」
「そりゃーねーぜ。あ、魔法使いと人間じゃ食事が違うってことか?」
「そんなことはないけど……とにかく、貴女の分はないの」
「嘘つけー。昨日買い出し行ったばっかりだろ。人間の里でお前のこと見たぜ」
「そ、そうだけど……とにかく、何か食べたかったらよそへ行くか、自分で作ってよ」
アリスがそう言うと、魔理沙はにやりとしてソファから立ち上がった。台所へ向かう。
「じゃ、作らせてもらうぜ」
「え、ちょ、ちょっと……」
「アリスさんきゅ。超愛してるぜ!」
ばちっとウィンクをして、魔理沙は腕まくりをした。他人の食材で自由自在に料理が出来るなんて最高だ。何しろちょうど米を切らしてしまっていたから、願ったり叶ったりというところだった。
「……どうせ作るなら、二人分作ってよ」
アリスが背中を向けて言った。
「まかせとけ!」
ぽんとアリスの背中を叩く。
魔理沙にはもう台所と食材しか見えていなかった。朝から何も食べずにここに来て、ずっとアリスの顔だけ眺めていた。いくら綺麗なものだって、見るだけではお腹はふくれない。
「何作るの?」
アリスは食堂から椅子を運んできた。どうやら監視するつもりらしい。我ながら信用がないことに魔理沙は苦笑した。
「お前が洋食派で、私が和食派だろう。そうすると間を取って……和風ハンバーグかな。付け合わせはキノコのホイル焼きで」
「……そう」
アリスは再び縫い物を取り出して、ちくちくやり始めた。魔理沙も下ごしらえに集中する。
ボウルの中に挽肉と切ったタマネギ、調味料を入れ、卵と合わせる。手でねっとりとするまで丹念に混ぜ続ける。ハンバーグだけは他人に食べさせられる自信があった。
ふっと顔を上げる。アリスの顔が窓ガラスに映っていた。
「なあ、なんでこっち見てるんだ?」
びくっとアリスが飛び上がる。
「……別に見てないわよ。だいたい貴女はこっち見えないじゃないの。変な言いがかりつけないで」
「いや、それが見えるんだな」
にんまりと笑みを浮かべて、魔理沙は言った。顎で目の前の窓を指し示す。
「……っ!」
「なんかお前、気持ち悪いぐらいニヤニヤしてたぞ。何か良いことでもあったのか」
言ってからしまった、と魔理沙は思った。ハンバーグのせいで両手がふさがっていた。殴られても避けられない。
アリスは案の定がばっと立ち上がってすたすたと歩いてくる。無表情なのがすごく怖い。
「わ、悪かった。私が悪かったから殴るなって……」
急いで流しで手を洗う。振り返るより先に、それは起こった。
ぎゅっと後ろから抱きしめられていた。
「へ?」
と口にしたのもつかの間。
「うげっ……」
肋骨を思い切り締められて、変な声が出た。少し咳き込む。
「な、何なんだ……?」
「振り返らないで」
氷より冷たい声でそう言われた。背中に抱きつかれているから、もうガラスで表情を窺うことは出来なかった。魔理沙の脳裏に一瞬にして、嫌なイメージが湧き出る。背中をあり得ない方向に折られ、台所に倒れ伏す己の姿であった。
「えーと、ごめん」
とりあえず謝ってみる。だらだらと冷や汗が噴き出してくる。
元来、アリスは近接戦を好まないはずだった。それが敢えてわざと至近距離を取っている。何か秘策があるに違いなかった。それがただひたすらに怖い。
「何が悪いか分かっていない癖にどうして謝ったりするの」
明確に責めている口調。図星を突かれてうろたえる。
「い、いや悪いのは分かってるんだぜ。うん、私がきっと悪い」
「分かってない。魔理沙は全然分かってない。今日一日、私がどんな気持ちでいたのかも全然理解してないし、自分がどれだけのことをしていたのかさえきっと理解していないんだわ」
訥々と語りかける声音には、どことなく哀れみさえ感じる。
「そ、そりゃあ無いぜ。まるで私が馬鹿みたいじゃないか」
完全に決めつけられて、魔理沙は反論したくなった。
「じゃあ、私が魔理沙のことをどんな風に思ってるのか言ってみて」
「え、えーと……」
そう言われると困る。控えめに言ってもあまり良く思われていない自覚があるからだ。
「そ、そうだなあ……と、友達とかお客とか、そういうアレかな」
「そういうことじゃなくて。……好きとか嫌いとか」
「えっと、その……どっちかって言うと……今はまだそんなに好かれてはないかなー、なんて、思ったりはしてるんだぜ。これでも好感度上げるために一応努力はし」
両手で口を塞がれた。次は窒息攻撃なのかと思ってひやりとした。口からマスタースパークが出せればいいのにとか思ったりもしたのが、自分の思考の空回り具合を示している。
それから小声でアリスが何か言った。
「……ぃ」
「……?」
聞き直したかった。出来れば録音して何度かリピートしたかった。
そのはんたい。
彼女はそう言ったのだ。
そっとアリスの手を口から外す。口の周りがかすかに紅くなっているのが窓に映った自分の姿から分かった。
「えーと、それって、好k(むぐ)」
また口を覆われる。ゆっくり剥がす。
魔理沙の頭の中に疑問符が渦を巻いていた。嬉しいとかそう言うこと以前に、何か詐欺にでも引っかかったような気持ちでいた。
「まだ状況が上手く理解出来ないんだが……つーか、じゃあ何でさっき私のこと追い出そうとしたんだ」
「別に追い出そうとしたわけじゃないわよ」
「でも『お前に食わせる飯はねーよ』とかそんな感じだったじゃん」
魔理沙がそう言うと、アリスはとぎれとぎれに答えた。
「私、和食、作れないから」
魔理沙の頭の中がきゅうぅぅぅっと締めつけられるように真っ白になった。さっきまでの恐怖が全部吹き飛んで、脳味噌ごとぎゅるぎゅる絞り出されて空っぽになりそうだ。
思わず倒れそうになって、身体をくるりと回してアリスを抱きしめていた。
「な、何よ……」
「かわいい、アリス。超かわいい」
そのまま押し倒したくなるぐらい可愛いと思った。甘酸っぱい気持ちがこみ上げてきて、理性が飛んで行きそうだった。
「なあ、ひょっとして目を合わせてくれないのもそういうアレなのか?」
「……そうよ」
言葉少なく応える。
「一生懸命作ってたアレもそれか?
「……そうよ。端切れでマスコットとか作ったら可愛いかと思って……ちょうど白黒だし」
「私が挨拶するだけで追い出そうとするのもそれなのか?」
「だって、出会い頭に『今日も可愛いな、アリス』とか言うし。それって挨拶なの!?」
「そんなの誰にでも言ってるじゃねーか」
「そんなの誰にでも言わないでよ!」
泣きそうな声をしていた。
「超愛してるとか軽々しく言わないで。こっちだって期待するし、ドキドキするし、変なこと、いっぱい考えて頭がおかしくなりそう」
「だってアリスのこと超愛してるし」
「っ……だから、そういうの、止めてよ!」
どんと強く突き飛ばされて、よろけた。
そのせいで彼女の顔がよく見えた。
人形のように澄みきっていた顔がくしゃくしゃにゆがんでいて、魔理沙は、ああ、コイツ、生きてるんだな、そんな馬鹿げたことを思った。
自然に、手が伸びた。壊れもののようだと思ったその白い頬に、今なら指先で触れることが出来た。その頬は冷たく濡れていた。
「ホントだ。アリスは可愛い。すげー可愛い。好きだ。愛してる」
出来る限りの真顔で言った。
「嘘」
「ホントだ」
「嘘でしょう」
「ホントだって」
「嘘、嘘、嘘。絶対信じられない」
アリスは子供のように大きくかぶりを振った。
「ひでーなあ。そんなに信用無いのか私は」
小さく肩をすくめた。
「だって、可愛いとか愛してるとか、きっと霊夢にもパチュリーにも言ってるんでしょ。魔理沙って優しいもの」
そう言われると魔理沙には上手く反論できない。確かに霊夢にもパチュリーにもその場のノリでつい可愛いとか言ったことはある。でもそれは服が可愛いとか仕草が可愛いとか、それぐらいの変な意味もない言葉だ。アリスに対する思いとは違う。
そう、触れたら壊れてしまうかもしれないと思うほど、綺麗だと感じるのはアリスに対してだけだ。
「どうやって証明すりゃあいいんだ?」
魔理沙がそう聞くと、アリスは小さくしゃくり上げながらこう言った。
「じゃあ、キス、して」
「いいぜ」
すうっとアリスのおとがいを持ち上げて口づけた。ただ触れるだけの軽いキス。
それでもただ一瞬の柔らかさが魔理沙の唇に電撃のように伝わってきた。ああ、幸せだなと無心に感じ入る。
「……っ!?」
アリスは後ずさった。口を押さえて信じられないという目つきで魔理沙を睨む。
「何なの、貴女。信じられない」
「キスしたら信じるって言ってた癖にー」
魔理沙は肩をすくめた。
「何で、そうやって……軽々しくキスとか出来るのよ」
「キスしても怒るんじゃしょうがないな」
にかっと破顔した。
「それ以上のこと、しようぜ」
ソファまで手を引いて歩いた。本当はお姫様だっこしようと思ったのだが、嫌がられたのだ。
「……ギックリ腰とかなられたら絶対立ち直れないから」
必死でそう言われると、魔理沙としても無理強いは出来なかった。
二人でソファに腰を下ろす。昼間と同じ位置関係。けれど距離が違う。
アリスの手をそっと握る。磁器で出来ているように白くて、そして冷たかった。
暖めようと思ってゆっくりと唇へ運んだ。深爪気味の丸い指先におそるおそる口づける。アリスの身体がわずかに震えたように感じた。舌先をちろりと滑らせる。
「……っ!」
たったそれだけのことでアリスの吐息が深くなる。唇の中へちゅぷりと浅く吸い込むと、明らかに肩で息をし始めたのが分かった。
魔理沙はアリスの顔を見上げて、尋ねた。
「この爪も、ひょっとして、アレか?」
「……悪い?」
ほとんど泣きそうな顔をして、それでもアリスは強がってみせた。
「そういやさっき、変なこと考えちゃうって言ってたな」
「……だから何よ」
「変なことってこういうことか?」
言うなりアリスの手を取って自分の胸へあてた。
「っ!」
唇をわななかせて、目をそらす。それでもアリスは手を退かそうとしなかった。
「私、アリスはされたい方なんだと思ってた」
「わっ、私は、別にどっちでも」
もじもじと太ももを擦り合わせて、アリスは言った。
「いいぜ、アリスがしたいようにして。アリスになら全部あげる」
そう言って、魔理沙は襟元のボタンを一つずつ外した。
「や……そんなの、ダメだよ。だって……」
「私は本気だぜ。お前は私のこと嫌いか?」
目をそらそうとするアリスの顔を両手で挟み込む。
とぎれとぎれにアリスが答える。
「……嫌いじゃない、けど」
「そこまで好きでもないのか? 私ばっかりお前のこと好きなのか?」
鼻と鼻をくっつけるようにして、問いつめる。
大人げないと思いながらも少し魔理沙は焦っていた。言い始めたのは向こうだ。けれどこちらだって気持ちを焚き付けられたのは同じで、むしろほとんど期待していなかった分だけ否応なしに盛り上がっていく感情を止められない。
再びアリスの手を取って口づける。舌先を絡ませてねっとりと唾液をまとわせる。冷たい指先が口腔へ滑り落ちていく。強く吸い付いて、柔らかな粘膜を擦らせる。歯に当たらないようにして喉奥へ。少しだけえづきそうになるのを堪えて、アリスの硬い指先を強く吸いつけた。口内の唾液で濡れた肉壁がアリスの中指を包み込むように動いた。
「やっ、魔理沙……やわらかい」
アリスが喘ぐように呟く。その声はひどく甘くて、耳を通り抜けて頭の中をぐちゃぐちゃに掻き乱されてしまいそうだ。
自分の舌のざらざらしたところを指の腹へ擦りつける。頬の内側の硬くなったところを指で押させる。強く締めつけて何かを搾り取るように動かす。
その感触が何に似ているのか、魔理沙は知っている。
アリスだってそれが分かっているはずだ。だからこんなにも息が荒い。この反応だけでアリスが本当はどうしたいのか、魔理沙には分かってしまった。
「っ、ふぁ」
ちゅぽんと指先を出して、今度は唇へ深く口づけた。舌を差し入れて口腔をねぶるようにする。くちゅくちゅと淫猥な水音が響く。柔らかくて温かくて、頭の隅がぼうっと痺れたようになる。お互いの吐息が重なって熱くなっていくのを感じる。互いの唇を甘く挟みあうとぬるぬると滑ってその柔らかな感触に気が遠くなりそうだった。
ぷふぁっと息を継いだ。細い銀糸がゆっくり滴って切れた。
「……なぁ、アリス」
甘えるように名前を呼んだ。
「ん」
「私のこと、好きだって言って」
「ん、ぁふ、」
返事を待たずにまた口づける。ソファの上で半身を倒して、アリスの上に覆い被さる。抵抗は、なかった。
濡れた唇をすりあわせ、お互いの舌を絡め、吐息を交換して、その合間にアリスの髪をそっと撫で、かき上げて右の耳朶へ。指でそっと触れるとぴくりとアリスの腰が動いた。
「ん、っぁ」
微かな声が漏れる。
ぎゅっぎゅっとソファの皮革が擦れる音がする。快楽で痺れた頭のすみの方で他人事のように認識する。
焦らすように耳介の後ろ側へ指を差し入れる。小指で耳朶を擦る。爪の先でわずかに触れるだけでアリスの腰がぴくんぴくんと反応する。
「耳、弱いんだな」
魔理沙がそう言ってアリスの耳朶を口へ含むと、それだけでぎゅっとしがみつかれた。
「やぁ……そんな、こと、ない」
荒い息をして、アリスは言った。そのぼうっとした言い方が可愛くて、魔理沙は意地悪したくなった。
湿った舌先を耳介へ滑り込ませる。わざと唾液を絡めてくちゅくちゅと音を立ててなぶってみせる。
「ひゃぁうんっ」
ぐっと背筋をそらして、アリスは震える。眉根をきゅっと寄せて、唇を微かにほころばせて、熱い声を漏らす。
左手で首筋をなぞる。触れるか触れないかのわずかな刺激を皮膚の上へ滑らせる。時々ひきつるようにアリスの下腹部が脈動する。
首筋から愛撫する場所をゆっくり降ろしていく。胸のふくらみへ到達する。服の上からでも触るとその柔らかな手応えが伝わってくる。
「やらかい」
感嘆して言った。
「……ばか」
抱きついたままでアリスが背中を叩いてきた。
「何が馬鹿だよ」
「……なんで、そういうこと、いちいち言うの」
その声は少しだけ冷たかった。怒っているのかと不安に思って顔を見る。
昼間の澄ましたような顔はどこにもなかった。ただ羞恥に顔を赤らめたアリスがいるだけだった。
ほっとした。声や口調だけでは相手のことを推し量ることが出来ない。
そうだ、いつでもアリスはいざというときには背中を向けたりして顔を背けていた。昼間の様子を思い出して、魔理沙は自然に顔がにやけてしまうのを抑えられなかった。
素直じゃない女の子には、ちょっとお仕置きしてやることにした。
「アリスのおっぱいすごいやらかい」
「やだ、ばか、黙りなさいよ」
言葉責めとすら言えないような拙い言葉でも、アリスの耳たぶがますます紅くなる。
「ホントのこと言ってるだけだぜ」
「……正直なのも考え物よね」
無理矢理首を横に曲げて、視線を合わせまいとするアリスが愛おしくて仕方なかった。
ぎゅっとアリスの背中側に腕を回して抱きしめた。柔らかな胸が頬に当たって心地よいクッションになる。甘い匂いがした。シャンプーとも石けんとも違う、暖めたミルクのような心地よいふんわりとした香り。
服の上からホックを外す。思っていた以上に簡単に外れた。
「やっ、」
慌てたアリスがもがく。強く抱きしめて離さない。
「なんで、そんなに慣れてるの」
アリスが不審そうに尋ねた。
「練習してるから」
「誰とよ」
「自分で」
「嘘」
「イメトレは大事だぜ」
言いながらアリスのワンピースのリボンをほどいた。スカートをたくし上げて指先をそっと内側へ滑り入れると、柔らかな腹部に触れた。なめらかな皮膚の上をなぞり、背中へまわす。肩胛骨のあたりを優しくなぞる。びくびくと彼女の身体が震えるのが分かった。
その手を前へまわすのは少し勇気が要った。本当に大事なモノに触れてしまうような気がして、怖かった。服の上からならまだ、冗談で済まされるような気もする。けれど彼女の柔肌に本当に直に触れてしまったら、取り返しがつかないような気持ちになって、ためらってしまう。
「アリス……私のこと、好きか?」
だから、問うた。
「な、なによ、こんなことまでしておいて」
アリスは顔を横に背けた。
彼女は、素直じゃない。それは魔理沙だって分かる。
どうしようもなく恥ずかしがり屋で、意地っ張りで、分かりにくい態度だったから、今日まで嫌われていると思い込んでしまっていた。
そうだとしても、本当に大事なときには誤解のないような、素直な言葉が欲しかった。
「私は言ったぜ。何度も、好きだって。でもアリスはまだ言ってくれてない」
真剣な顔でアリスを見た。
「ここから先に行ったらもう止められない。私だって、我慢の限界があるんだ」
実際のところ、限界を通り越しているような気もした。下着の替えを持ってくるべきだったと後悔しているぐらいに下腹部の熱は高ぶっている。
「わ、私だって……」
アリスがおずおずと前を向く。
「今更、止める気なんか無いわよ」
そう言って、自分から魔理沙の額に口づけた。
それが、合図になった。
魔理沙の中で何かが弾けたような気がした。機械のように、ただ相手を気持ちよくさせることだけ考えた。
左手で彼女の身体を支えながら、右手でマシュマロのように柔らかな箇所をもみしだく。手のひら全体で覆うようにふっくらとしたその感触を味わう。かすかに勃っている繊細な先端にはあえて触れずに、自分の手に少し余るぐらいの大きさの胸を優しく愛撫した。回すように、指先をうねらせるように、持ち上げるように、その柔らかな肉を弄ぶ。
「っ、いじ、わる」
そう言いながらも、アリスはくしゃりと魔理沙の髪をかき混ぜる。それがますますいじらしくて、魔理沙の心臓が強く高鳴った。
「可愛い」
そう言って耳朶へ口づける。唇と指先とが同時にアリスの上を這う。耳の穴に唾液を流し込みながら、同時に硬くなってきた乳首を弄る。
「っぁ、やぁっ」
高い声を上げて、アリスは鳴いた。その声が媚薬になって魔理沙の耳へ流れ込む。頭の中がどろどろに熔かされて、下腹部の欲情に化ける。とろとろと流れ出ていくのが触れなくても分かる。
もう、我慢出来そうもなかった。
起きあがって両手で彼女のケープのリボンをほどく。それからワンピースのボタンを外し、腰を持ち上げて丁寧に脱がせる。アリスはあっという間にショーツだけの姿になった。
「ふぇ……?」
見下ろした先にいる彼女はとろんとした目をしていた。自分がされたことが理解できていないらしい。
「汚しちゃうから脱がなきゃダメだぜ」
自分の服を脱ぎながら魔理沙は言った。出来るだけ平静を保つように心がけ、それでもかすかに声がうわずるのを抑えきれない。
「え、っと……」
アリスは自分の下着をじっと見て、口をへの字に曲げている。少しだけ身じろぎして、すぐに顔をしかめた。魔理沙には彼女の考えていることが手を取るように分かった。
「濡れて気持ち悪いんだろ? 脱がせるの、手遅れだったな」
その言葉を聞いて、アリスはすぐにかぶりを振った。けれどその朱に染まった表情から図星だということは現れてしまっている。魔理沙はそっと手を伸ばして確かめようとした。
「やっ、止めてよ」
内股になってガードする。白く扇情的な太ももがあらわになる。魔理沙はすべすべで柔らかな肌へすり寄るように顔を寄せた。
「ちょっ……な、何するっ、ぁ……」
丸く滑らかな膝へ口づけた。そのままゆっくりと舌を滑らせる。膝から内ももの柔らかな所へ強く舌で圧迫するようにする。唾液でたっぷりと濡らして、てらてらと光るようになるまで、丹念に舌先を擦りつけた。
「やぁ……っぁ、そ、んな……めぇ……」
逃れようとして、身体を丸めようとするアリスの膝を取ってぐっと両手で開いた。
魔理沙の鼻先に微かに酸っぱいような匂いが漂ってくる。アリスが欲情している匂いは胸をきゅんと苦しくさせた。
「アリスが感じてくれてるの、すごく嬉しい」
「……っ!」
ますます脚を閉じようとする彼女の下着の上へ指を這わせる。指触りの良いシルクは純白で、けれど柔らかな双丘に挟まれた隠しきれない滲みがアリスの我慢の限界を表していた。
「すごい濡れてる」
鼻先を擦り寄せて、胸いっぱいにアリスの香りを吸い込む。
「やっ……きたない、から、だめ……」
「なんで? きたなくなんてないぜ」
脚の付け根から下着の中へ指を潜らせようとする。アリスの手が魔理沙の手を押さえつける。
「動けないぜ」
「だ、だって」
うるんだ瞳で、にらみつけてくる。恥ずかしくて死にそう、という顔だった。
「手が動けないなら口でするだけだぜ」
言うなり、唇で下着越しに口づけた。
「やぁぁっ」
しっとりと湿っている股布に触れただけで、アリスの唇から甲高い声が漏れた。
尖らせた唇でぷっくりと膨らんだその場所をついばむようにする。布越しの触感でもその内側に秘められた湿気と熱さが魔理沙の興奮を高めていく。布と腿の境目へちろちろと舌を這わせると、びくんっとアリスの身体が跳ねた。
アリスの手から力が抜ける。魔理沙の指がまるで別の生き物のようにアリスの下腹部を這い回る。股布を横にずらして、美しく桃色に染まったそこを見た。ねっとりと濡れて艶っぽく光っている。
下着に手を掛けて、下ろした。布が剥がれるとき、うっすらと糸が引くのを魔理沙は見逃さなかった。
「やっぱり汚しちゃってたな。後で私が洗うよ」
「っっっ! ……ばか!」
うわごとのように馬鹿馬鹿とだけ繰り返してアリスは自分の顔を両手で覆った。膝を曲げて、下着が脚から引き抜かれるに任せている。
一糸まとわぬ姿になったアリスをあらためて見直して、魔理沙は小さく感嘆の息を漏らした。綺麗だった。完璧な美しさだと思った。
肌理の細かい白い肌へ刷毛ではいたような赤みがうっすらと差し、さながら夕暮れ時の雲のようだった。つんと上を向いた乳首がさらに濃い桜色をして吸い付かれるのを待っている。細めた目が微かにうるんでその艶を引き立たせている。
「……見ないでよ」
「いいや、見るぜ。じっくり見るぜ」
きっぱりと言い切って、丹念に視線を走らせる。アリスが身体を縮めようとしてもぐいっと押さえつけて、そうさせない。
そっと覆い被さって、乳首へあいさつのようなキスをした。
「ひゃうっ……」
アリスの身体が強く反応する。そのまま軽く歯を立てて甘噛みした。アリスの声がさらに高くなる。吸い付いて口の中で突起を転がすと、アリスの腰が突き上げるような動きを示した。
そのまま右手を下腹部へ滑らす。じゅんじゅんと滲み出る熱い液体は太ももまで流れ出ていた。閉じようとする脚を己の膝で割って、内ももから焦らすように液体を中指に馴染ませていく。とろとろに熔けてしまっているアリス自身の柔肌へ、粘りのある愛液が絡みついていく。
左手で乳房を揉みしだくと、尖った先端がぴんと上へ向かって勃っているのが分かる。舌先で味わうと、剥いたばかりの桃を食べているような甘く幸せな心地がした。
「っく、ふぁ、ぁっ」
アリスの興奮した吐息が、魔理沙の意識をようやくつなぎ止めている。幸せすぎて気が狂いそうだ。同じ性、同じ生き物として、肌と肌が重ね合わさって、そのまま境界ごと溶けて無くなっていきそうだった。微かに冷たかったアリスの体温が、今は心地よく感じる。
願わくば、アリスも同じことを感じていてくれるように。そんなことを思った。
「やぁ、まりさ、そこ、、、」
アリスがねだるような声を出す。腰を自分から魔理沙の指へ押し付けている。それをわざと避けるようにして、魔理沙は入り口の花弁ばかりなぞるようにしている。けれどあまりに滑りが良くて、そのままつるりと入っていってしまいそうだった。前の襞の周りを回すようにして愛撫しているうちにソファまでべっとりと濡れて、うっかり滑りすぎて後ろの窄まりにまで触れてしまう。
「や、ダメ、そこ、だめぇっ」
強く拒否反応を示すアリスがひどく可愛らしかった。
「綺麗にしてやるぜ」
そう言ってアリスの膝の裏を持って高く掲げた。
「や、だめ、だめだよぉ……」
アリスの制止を無視して、上体を低く屈める。したたり落ちそうなほど溢れてくるアリスの蜜をわざと音を立てて啜った。
「ふぅぁあっ、やっ、きゃうっ、はぁっ、うぁあん」
舌先が襞の奥に触れるごとにアリスの艶声が高く高くなる。じゅぶじゅぶと音を立ててアリスの秘所を舐めていても、その濡れ方は収まるところを知らなかった。太ももから後孔まで舐め尽くして、桃色の粘膜の奥へ舌を差し込む。微かに血のような香りがして、魔理沙は不安がこみ上げてきた。
顔を上げて尋ねる。
「アリス、大丈夫? 痛い?」
「え、ううん。き、気持ちいい、よ」
そう言ってしまってから、アリスはぴくんと震えた。
「そうか、気持ちいいなら、良かった」
「ば、ばか。だって、その、魔理沙、上手いからなんだか腹立つんだけど!」
「だからイメトレだって」
小さく肩をすくめて答える。
「今からもっと気持ちいいことしてやるよ」
「へ……? あっ、やぁぁぁぁん!」
魔理沙が桃色の小さな突起へ舌を這わせた途端に、アリスの声が今までないくらい高く上がった。
舌先を巧みに蠢かせたまま、親指で下腹部の肌を軽く引っ張り上げると、被っていた包皮からさらに濃いピンク色が頭を出した。さらにもう片方の手で襞をぱっくりと開かせた状態で、充血した陰核を吸う。
「やっ、ひゃぅ、んぁっ、ぁああっ」
アリスの声はもう為されるがままに絞り出されていた。唾液と愛液でべたべたになった唇でやわやわと噛み、蜜壷から指先ですくい上げられた蜜を丸く勃ち上がった淡紅色へ塗りつける。
親指で軽く爪弾くように擦りながら、魔理沙は問うた。
「なあ、挿れていいか」
「……っ、な、なに、を、あんっ、やぁっ、ゃぅんっっ、いっ、いまさら……ぁあっ、」
喘ぎが混じるせいで、上手く聞き取れなかった。だから再度聞いた。
「さっきからアリスの此処、すごく滑って指入っちゃいそうで怖いんだ。嫌だったら止めるけど」
「やっ、やめ……ないで」
懇願するアリスが珍しくて、思わず手が止まった。
「な、なんで、急に止めるのよっ!」
頬を赤らめたアリスがぎゅっとしがみついてくる。
「悪い。つい……」
可愛くて。
アリスの開いた脚を左手で支える。自分の中指を舐めてたっぷりと濡らした。
「行くぜ」
「んっ」
抱きしめていても、アリスが小さくうなずいたのが分かった。
既に熱を持ち、ほころんでいた入り口は魔理沙の指を難なく受け入れた。
「魔理沙……っぁあ、まり、さ……」
恍惚とした声を上げて、アリスが名前を呼ぶ。そのとろけるような声が魔理沙の心をぎゅうっと締めつける。
「っぁ……アリスの、中っ、すごい熱いぜっ……」
中指に絡みつく肉襞は強く収縮して、魔理沙の中指を締めつけている。くちゅくちゅっと水音がして、独りでに腰が動く。本来は存在しない男根を模すようにして、中指と腰とが前後に動いて魔理沙の欲望を叩きつけていた。恥骨同士がぶつかって、それが時々陰核を刺激する。魔理沙自身、声が漏れるのを止められなかった。
「っ、く、ふぁ……アリス、んぁ、り、す……」
指先からどんどんふやけて、溶け込んでいってしまいそうなくらいアリスの膣の中は滑った。それでもまだ足りないとでも言うように、肉壁が中指を締めつけている。
「やぁっ、んぁあっ、すっ、ごい、すごいよぉ……」
アリスの快楽が唇から漏れる。
それに応えるように、ぐぐぐぐっと震わせるように細かく指を横に動かす。ねっとりと重く湿った襞が歯を持った獣のように魔理沙の中指に食らい付いて離さない。
中指一本だけでは勝てない、そう思った。
「……二本入れても、いいか?」
アリスはただ無言でうなずく。魔理沙の背中に必死でしがみつくようにして、ただ吐息を荒くしていた。
一度中指を引き抜く。手首まで白い粘液が絡みついているのが分かった。人差し指に唾液を塗りたくる。微かな苦みがしたが、それすら魔理沙の舌には幸せの薬にしか感じられなかった。
「んっ、ふっ……」
アリスの唇から漏れる吐息が愛しかった。つぷりと入り込んだ指先を動かせずにいた。
「痛かったら言えよ」
「ん……」
幼児のようにあどけないうなずき方だった。少しずつ、慣らすように指を動かす。
「あっ、んっ、」
アリスの喘ぎの全てが心地よくて、知らず知らずのうちに動きに夢中になってしまう。彼女の深い場所をかきまぜれば、ぐじゅっ、ぐじゅっと深い音がした。指関節の曲げる角度、深さ浅さの具合、彼女の喘ぎを全身で浴びながら魔理沙は自分が一つの機械になったつもりで動く。頭の中全体が熱くぼうっとなっているのに、そこから離れたところにある魂か何かが彼女の反応のどれをも見逃さないつもりで傍らに立っている。
「あっ、っふぁ、ああっ、やぁっ、ふぁぁっ」
自分の手がもどかしい。アリスの柔らかな肉壁が強く締めつけるせいで、本当の奥へ届かない。狭く締めつける肉の管の中を心細く運動しているばかりで、彼女の奥深くへ届かない。
ぐっと身体を沈める。肘から先が一本の道具になったようなつもりで、強く奥を突く。アリスの奥底へ、魂の奥を貫くような気持ちで二本の指を突き立てる。
「ぁああっ、やぁ、っそこっ」
つんざくような高い声に、思わず動きを止めた。
「ひゃぅ、やっ、ち、ちがうの、」
必死な声をしていた。
「やめないで、そこ、すごいっ、から……」
あられもないアリスの言葉に、魔理沙の顔がひどく熱くなった。ごくりと唾を呑んで、再び動き出す。
ぐっと腕に気合いを込めて、奥に潜む硬い芯を強く突く。突けば突いただけ、彼女が啼く。高く艶やかに。声が濡れていればいるほど、魔理沙の中で熱い気持ちが燃え上がる。自分の一挙が彼女を支配して、思いを込めれば込めただけ、彼女が反応する。そのことがただ嬉しくて、自分のあるだけの心を込めて腕を動かした。
「あっ、ぁふあぁああっ、やぁああっ、すごい、っ、すごいよぉぉぉ」
彼女の声が変わる。締めつける脈動が変わる。終わりが近いことを身体が知る。両手両足でぎゅっとしがみついてくる。助けを求める子供の様に、必死に全身で魔理沙を求めている。
「やぁん、ぁあぁん、ふぁっ、すっ……っごい、ゃっ、っこ、こわいよぉ……おちぅ、、、おちてくよぉ……」
たくさんの喘ぎ声の中に混ざるアリスの戸惑いと畏れが、魔理沙の心を優しく愛しくさせる。
「だいじょうぶ、だいじょうぶだ……」
低く呼びかける。激しい吐息と共に、何度も何度も、彼女へ呼びかける。彼女が落ちていかないように。彼女が側にいるように。
「やぁ、あっ、ぁふあぁああっ、やぁああっ、やっ、ぁあああああああ……」
びくびくっと彼女の身体が蠕動し、
そして、
「……すき」
ぐったりと弛緩した。
指先をゆっくり抜いたとき、アリスの身体が微かに震えた。魔理沙はそっと彼女の肩を抱いて、じっと息が収まるのを待った。少し肌寒くて、そばに散らかっていた服を適当に掛けた。アリスの服は、やっぱりアリスの匂いがした。
少しだけうとうととしかけて、目が覚めて、それから改めて自分の中で何がなんだか分からないような気持ちになった。さっきまでの熱に浮かされたような衝動はまるで夢だったような気分になる。
「……ごめん」
魔理沙が最初に言った一言が、アリスは気に入らなかったらしい。
「何が、ごめんなの」
そう問い返してきた。
至極理性的な一言だと魔理沙は思う。初めて身体を重ねた同士で交わす会話ではない。
「いや、その、初めてなんだと思って、その、」
「下らないこと言わないで。一体何の権利があって……」
言いかけて、アリスは口を閉じた。
魔理沙が何を見ながら『初めて』と言ったのかに気付いたのだ。
「いや、血、出てたんだ、な。気付かなくてごめん」
「っっっ……!」
アリスはぐるりと身体を返して、ソファの背もたれの方を向いてしまった。
魔理沙はしげしげと自分の右手を鑑賞した。ねっとりと絡みついた愛液と破瓜の血とが皮膚の上でまだらの模様を作っている。ついさっきまで指先がふやけそうに濡れていたのに、早くも少し乾き始めている。
不思議だった。指先はまだあのきつく締めつける肉の熱さを覚えているのに、少しずつそれが過去のものになっていく。それが少し切なかった。
(そう言えばハンバーグ焼かなきゃ、な)
今まで忘れていた日常が戻ってくる。お腹も空いた。あまり遅くなると魔法の森は危ない。まあ、このまま泊まっていってもいいんだろうけど、仕込んだままの魔法の素が気になる。一日一回、壷の底から手でかき混ぜてやらないとちゃんと発酵が進まない。
それでも、服を着るのが途方もなく面倒くさかった。ずぶずぶと柔らかなソファに溺れて起きあがれない。眠い。自分が達したわけでもないのに、ひどく満足だった。
小さくあくびをした。
どうやら気付かれてしまったらしい。アリスが小さく身じろぎした。
「魔理沙、寝ないでよ」
アリスはこちらを見ないままに、ひどく冷静な声で言った。
「ちょっと休んだら、私の番なんだから」
- 作品集:
- 最新
- 投稿日時:
- 2008/09/06 18:35:10
- 更新日時:
- 2008/09/11 21:28:37
- 評価:
- 20/20
- POINT:
- 171
- Rate:
- 1.87
神
ただ魔理沙のセリフひとつひとつがどうにも陳腐で、そこが少し残念だったかな?
砂糖吐きそうな甘々のマリアリに、読んだ後でも顔が凄く熱いですw
中々エキサイトさせて頂きました
次はアリスが無理やり魔理沙を押し倒して頂いちゃうのかと思うと、妄想が止まらないです
なんとかわいいアリスなんでしょうw
少々序盤の展開が急だった気がしないでもないですが、面白いですね。
さあ、魔理沙受けを書く作業に入りましょう。
よんで幸せになれました。
そのはんたい、って可愛すぎるー。
してる途中でも、やや子供っぽさがあって可愛い。
行為中に壊れてないのも、個人的に大満足です。
この作品のアリスは可愛いです。
魔理沙は、よくある横暴な設定が非常に薄くなっていて、好感が持てました。
終始アリスの事を考えていてあげて、アリスが気持ちよくなったら満足、とか優しすぎて読んでて嬉しいというか、
その感情に共感したりもしました。すごくいい性格です。この作品の魔理沙は好きです。
非常に好みの作品でした。
全体として、綺麗な印象でまとまっているのも嬉しい点です。
素敵な作品がみれて、幸せです。ありがとう。
正統派なマリアリ、大変美味しゅうございました。
あからさまなツンデレではなく、凄くイメージ通りのアリスデレを頂きました。
大変美味しゅうございました。
このアリスは堪らない程可愛い♪
細かい表現や高度な単語の活用は見事で、文章構成も読みやすかったです。
また、行為の表現と段階も細かく、スローセックスを間近で見ているような感じになりました。
あまりにも官能的でこちらが焦ってしまうほどです。
ですが、漢字の使い方がしっかりしすぎて、読みづらく感じるところがいくつか見られます。
場所によっては常用漢字でない部分はひらがなの方がわかりやすいですよ。
あとは、以下の部分が気になりました。
言ってからしまった、と
→言ってから「しまった」と
こちらの方がわかりやすいと思いますが、そちらの判断に任せます
「一生懸命作ってたアレもそれか?
→「一生懸命作ってたアレもそれか?」
後ろの鍵括弧が忘れています。
「やらかい」
→「やわらかい」素で間違えたのか、それともあえて砕けさせた表現なのか?
どちらにせよ、私はそのままで良いと思います。
ちょっとしたアドバイスですが、参考になれば幸いです。
とにかく、弄られる度に恥ずかしがるアリス、可愛いよ〜♪
できればこの続きの、アリスの番も見てみたかったです。
そんなクールな顔から余裕が抜けて啼きだす瞬間がたまらん
ねちょが初でも十分すぎるクオリティ。
ここから先は純粋に物語としての面白さを問う領域に入ってしまいそう。
クーデレアリス可愛いよアリス
こういうクールなアリスと魔理沙の初体験ってなんかいい。道具とか使わないでやさしいからさらにいい。
これからも気が向いたらイカロに投稿してほしいです。
DVDを早送りで見たような。展開が速いわけじゃないんだけど。
アリスの心の動きが、ねーよw と思うほど不自然だったのが残念。
> そのはんたい。
ここで死んだ。
すげー濃厚な甘々でした…ごっつぁんです。
魔理沙の口調がやや乱暴すぎな気もしましたが、なかなか面白かったです
「そのはんたい」の部分で胸が撃ち抜かれた
読んでいるこっちが赤面するようなマリアリ、ごちです。
こんな魔理沙に抱かれたい、こんなアリスを抱きしめたい
いやもうなんか最高
アリスの最後の一言が一番クールだったのぜ
初書き、と書いたこと自体が、一種の作者言及であったなあと反省しているところ。
横書き小説の独特の間の取り方とか、可読性の向上方法等、よく分からず苦労。今後の課題。
とりあえず、甘甘マリアリでありさえすれば、多少ぎこちなくても、みんなとりあえず最後までは読んでくれるだろうと思ったのは事実。
ほっとくと鬼畜とかシュールとか苦いのとか切ないのばっかり書く人なので、さすがに初書きからそれは不味かろうとも思った。。。
>グランドトライン氏
やらかい、はわざとだった気がします。魔理沙っぽいかなと。
カギ括弧忘れはすいませんミスったです。。。
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