晴れた日のアイスブルー
何が起きているのかを理解するには、恐らく時間が必要だった。
休み時間は3-Aの教室へ向かう。室内を見回す。踵を返す。
部室へ向かう。扉を開き、いつものように一歩下がる。俯く。
着替える。顔を横へ向ける。
コートに向かう。背中を捜す。瞬きを繰り返す。
部室に戻る。資料を確認する。パソコンの周囲を拭く。椅子の埃を払う。
ガットを張り替える。グリップテープを巻き直す。見えない汚れを拭う。
時間が部活の終了を教える。
ガットとグリップテープを買いにスポーツ用品店に寄る。
次の日も、その次の日も、同じことを繰り返す。
テレビの中で、女の人の声が名前を並べていた日から。
理解はいつになっても訪れない。
そして、また一人いなくなった。
一人で学校を出る。背中の見えない帰り道。
何度目になるのかを数えることは止めていた。
公園の脇を通る。いつからか避けていた道だ。
逸らすように顔を上に向けた。
視界には遮る何があるわけでもなく、雲が流れていくだけだ。
暫く、空を見上げた覚えがなかった。
少し俯けば、そこに高い空があったからだ。
強い風が吹く。目を閉じたのは数秒。
灰色の混じっていた空が、不意に澄んだ青に変わる。
その青が、滲んだ。
「ウス」
理解は一瞬だった。
それでも、待っていようと思った。
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