つせ 二月十四日、午前零時。天狗は、晴明の邸に走った。少し、呼吸する。車が停まった。足でも、走る。 「晴明」 戸に、響かせる。 「天狗。走ったのか?」 夜に包まれる邸。戸は、位置を変える。友人の言葉だ。 「泰明はいる、と思う。儂の家に招かせてくれ」 呼吸しつつ、頼む。晴明は、そっと接する。友人が、寄る。 「理由は知らせてくれ」 晴明に、止められた。天狗は、深く呼吸する。 「――暇がきっと消える」 言葉が響く。嘘ではない。 「許可する」 優しく、招く友人。頷き、踏み込んだ。 すぐ、彼――泰明の室に移る。戸は、見えた。呼ぶ。すぐ、位置が移った。 「……車だ」 説明される。天狗は、伝える。 「家に、走る。断るか?」 ふたりで休む。邸から、移るのだ。祝福する日。傍にいる。一度、承知してはくれたが、少し待つ。 「天狗の、家だ」 泰明の、言葉。そっと、響かせてくれた。嬉しい。彼に、伝えると決める。そして。 「ありがとう」 指は止めない。泰明を、包み込んだ。しばらく、待つ。だが。 「――移れ」 小さな言葉が聞こえた。夜。天狗の家に走るとき。承知し、手指は引いた。 晴明に手は振られる。そして、彼と踏み込んだ。 「ほら」 すぐ、家には移れた。天狗の室が、守る。泰継は既に休んでいる。包みを、見せた。 「――ありがとう」 泰明は、そっと持ってくれた。 二月十四日。ふたりで祝せるよう、備えた。彼を、見つめる。 「きっと幸せだぞ」 泰明は頷く。そして、包みを掃ってくれた。 チョコレートに包むアボカド。 接してくれた手は、止まった。惑うような表情。だが。 「……苦しくない」 彼は唇を寄せてくれた。優しい響き。世辞ではない、と思う。安らぎ、呼吸する。 「そっと、作った」 静かな言葉。天狗が、見つめたとき。 「……拒まぬ。今日は、祝すときだ。返す」 目に映る。泰明が、祝福の包みを寄せてくれた。 「取るぞ」 「寄せろ」 彼の言葉を承知する。指で、得るつもりだ。そっと、包みを掃う。 小さく、美しきチョコレート。ライスパフが見える。 天狗は、そっと一粒持った。唇に、寄せる。 安らぐ、菓子だ。 「――泰明」 そっと、呼ぶ。チョコレートは、癒される。言葉も、不要だ。 美しい唇が見える。安らぐ場所で、塞いだ。 「てん、ぐ」 「互いに、美しく渡す。では、休むぞ」 接することを止め、伝える。明日は、休みだ。しばらく、傍で見つめられる。眠る場所に、移る。 「分かった……」 小さく、承知する言葉。見つめてはくれぬ。だが、少し目に映る表情は美しい。 天狗は、堪能する。幸せを、与えると決める。嬉しさが、響く。そして。 「愛らしさも、幸せだ」 伝える。彼は、いてくれる。しばらくして、泰明の服に手を添えた。 一瞬、待つ。彼は、嫌と伝えず呼吸する。 手を、止めぬと決める。泰明の、傍。天狗は、裾から指を忍び込ませた。 |
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