たと


「天狗」
 北山に、言葉が響いた。幹に凭れることは止め、少し歩く。
「晴明。邸に戻るのか?」
 素敵な客と、思う。天狗は彼を見つつ、推測する。
 すぐ、北山と親しむ様子だ。夕に包まれ、晴明が、伝える。
「少し力は振るい、既に守られた。寄らせてくれると嬉しさが増える」
 天狗は、少し呼吸する。包むような優しさに、癒された。今日は、ゆっくり過ごせる。彼を、見つめた。陰陽師
と、少し休む。晴明は力を添え、都を包んでくれた。きっと、癒される。
「ゆっくり、包まれろ」
「ありがとう」
 天狗は頷く。晴明が、少し小さく伝える。ゆっくり、呼吸していた。天狗は、見つめる。
 静かに、悟った。彼は、微笑む。天狗は、伝える。
「――少し、疲れておるな」
 表情は、崩れない。だが、読める。ずっと、傍にいる。休みを要するのだろう。疲れは、癒す。僅かな厳しさ
は表情で悟れる。
 一歩、踏み込んだ。北山の美しさを見る。今は、ふたりで過ごす。陰陽師の務めに移るときが、表れる。安ら
いだ彼に、戻ってくれと黙し訴える。
 夜は、少し遠くしばらく過ごせる。晴明が、そっと呼吸を響かせた。天狗は、待つ。彼の曇りを晴らしたい。北
山で、ゆっくり過ごすときだ。晴明は、唇を見せる。そして。言葉が、聞こえた。彼は、美しい。
「天狗。陰陽師とは違う。ひとりの晴明に、見られたく思え」
 優しく命じられる。少し、惑う。だが、嬉しい。
 ひとりではなく、安らぐ表情と、語ろう。期待する瞳を、見る。天狗は、頷いた。ゆっくり、手も移す。既に、少
し曇りは取れたようだ。頬が、目に映る。天狗は、そっと包んだ。
 彼の瞳は、すぐ瞼に守られる。改めて、唇を見つめた。一度、呼吸を悟る。幸せで、癒されよう。
 唇は、守ると決めた。晴明に、寄る。愛しさが、響く。
 天狗は、そっと唇に和んだ。


トップへ戻る

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!