すみ


「晴明」
 元日の夕。声は、すぐに寄せられた。庵の傍で客と視線を合わせ、そっと主張する。安らぎの刹那。
「天狗。時間を費やさせてすまない」
「構わん。歩もう」
 優しく微笑み、隣に移ってくれる。嬉しさを得る。彼と並び、伝える。
「ああ。久しぶりに、傍で話せる」
 新しい年。天狗に接している。嬉しさは、増す。
 年末から、陰陽師は内裏に赴く。美しい日々を呼び込む時期。私が指揮する儀も存在する。粛々と力を注
ぐ。緩やかなときはない。
 彼の傍で、少し呼吸する。
「泰明とも過ごしたか?」
 優しい響き。頷き、説明する。安堵して貰いたい。
「庵に戻れる」
 泰明も、送った。今は疲労を鎮めているだろう。私も、自由に歩める。
 ゆっくり過ごせることが、嬉しい。煌めく表情を自室で見たい。休める一室に、天狗と移ろう。笑顔はもっと
増やしてみせる。貴重な始まりの日に、もてなすことを選んだ刹那。
「――無理はするな。庵にも、儂が案内しよう」
 笑い声を、聞いた。もてなしに努める姿勢は悟られているらしい。少し目を見開き、呼吸する。
 彼の喜びを見ることに、苦はない。だが、優しさを得られることは嬉しい。許してくれると、思う。知らせ
る。
「ありがとう。天狗は、今年も笑ってくれるのだな」
 彼に、求める。疲労することは止め、そっと移ろう。私の庵に案内して貰う。不思議なときに、胸が安らぐ。
 表情も崩さずに、彼は頷く。疲労は、確かに消えていない。ゆっくりと近付き、歩むのだ。
 天狗はそっと腕を伸ばし、自室に続く道を披露する。意外なほどに淀みのない指示。不満はない。安らぎつ
つ、そっと、傍に踏み込んだ。


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