るれ


 夜も、強まった。窓を見つめ、期待する。そして。
「晴明」
 見つめてくれる者が、現れた。居室の席にいることはやめ、移る。
 施錠を私の手が払う。待ちは寂しい。そして、頷く。やっと、話せる。窓に手を寄せ、彼は踏み込んだ。
 無視せず、戻す。躊躇うことすら、不要だ。見つめて、窓の位置を移す。
 十二月二十五日の、居室だ。ふたりで、過ごす。昨日は祝宴に招いたが、零時を超えたら、天狗との日だ。
 そっと、囁く。微笑む彼と、話したい。
「天狗。夜も、包むな。ありがとう」
 招かれた客に、会釈する。素晴らしい、夜だから。腕に包まれた箱も、胸を埋める。
 彼は微笑み、頷いてくれた。
「……作るか」
「無論だ」
 調理場を見ながら、話す。
 二十四日は泰明と泰継もいたので、今日は違う。料理する。彼と、美酒の肴を作るのだ。少し変わっている
が、ライスチップスを試す。
「材料の封、切るぞ」
 持っていた包みが、振られる。手と美しさは、目に映る。少し洒落たハーブソルトを頼んだ。
 私に、評判の米が割り振られている。調理場に、備えたが。
「――天狗」
 彼を、呼んだ。
「少し待つか?」
 天狗は包みに添えた手を止める。すぐ調理する夜も、悪くないが、少し聞くと更に素晴らしく過ごせると思
う。
 踏み込み、囁く。
「まだ辛くない私の唇を、休めてくれるか?」
 肴は、少し辛くする。唇を寄せるときは、今だ。
 彼は、少し黙す。だが。
「……腹に、足そう」
 ほどなくして、微笑んだ。胸が、幸せを呟く。そして、瞼で瞳を塞いだとき。
 辛くない優しさに、唇は、包まれた。

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