のた


 二月十四日。現れた。すぐ隣の、祝福。天狗は静かに呼吸し、接する。
「悪くない、か。泰継」
 傍の彼に、教えて欲しい。泰継は、そっと明かす。
「美しく優しいと思う。天狗も、頷いてくれるか?」
 少し板に落ちた粉は、戻される。粉とクリームで作られた菓子。
 今日を、彼と祝う。ふたりで夜は癒される。作った木のような菓子。唇が、癒される。幸せをくれる木だ。
 泰継が、微笑む。
「祝してくれるか?」
 堪能せぬ理由はない。天狗は、そっと接する。彼の傍に。泰継は、すぐ、見つめてくれた。そして。
「あ……」
 ゆっくり、美しい身体を包んだ。指は、見える。菓子に添えられない。
「悪い」
 天狗の、言葉。謝った。彼は惑っている。悟れる。力を弱めるときだ。知っている。泰継は、きっとすぐ歩
く。だが、傍で嬉しい。止められぬのだ。
 惑いが、伝わる。天狗は、呼吸する。彼を、見つめたとき。天狗は、少し安らぐ。
「幸せだ。謝罪する、な」
 聞こえた。泰継は、拒まずいてくれる。幸せ、だ。
 居室から、移ってくれるだろうか。ふたりで、ずっと祝したい。彼に、伝える。
「泰継。室に、歩く」
「――分かった」
 天狗の言葉。彼は、すぐ頷いてくれた。幸せの、響き。菓子は冷やしておこう。今、彼は包まない。ふたり
の、とき。そして、歩いた。

「ありがとう」
 室に、踏み込んだ。戸が、移る。天狗は、泰継といた。静かに、伝える。
「素晴らしい、ときだ」
 彼は、微笑む。ふたりで、安らぐことを祝してくれるらしい。今日は、素敵なときだ。
「やす、つぐ」
 彼を呼ぶ。そして、寄った。美しい唇に見惚れる。距離は、詰めた。
「てん……」
 惑った様子の泰継だが、唇を、そっと寄せる。
 幸せで、頷いた。すぐ、塞ぐことは止める。
「やはり、より、安らぐ」
 そっと、見つめる。作ったとき、変わらぬ品を唇に寄せているが、より幸せは増える。不思議だが、愛しさは
募る。
 泰継は、少し黙す。そして。
「傍に、いる」
 ほどなくして、聞こえた。夜に、包まれる。天狗の室。傍から、移らない。言葉に、頷く。彼の横で、止まっ
た。
「――泰継。明日まで、移らない。拒むか?」
 見つめつつ、天狗が、踏み込んだとき。美しい、微笑み。頬は、少し苦しさを見せる。だが、承知の首だ。
 天狗は、眠る場所に彼を寄せる。泰継と、安らぐ。明日も、いる。
 彼の服は、見える。ゆっくり、指を添えた。天狗は、呼吸する。静かに、響く。そして。
 裾は、すぐに、引いた。


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