めを 天狗は、煌めきを生んだ。少し休もう。そっと近くを見つめる。 「泰明。邪魔なんで自室に保管しろ」 彼は、澄んだ目を見開く。惑いは察する。だが、修正するつもりはない。 聖夜。晴明に招かれ、邸を泰継と訪ねている。祝宴を彩る雑貨も色々と持参したが、やはり余っている。泰明 の自室に置いて欲しいと、居間の椅子に座り話す。 小さな、ため息。天狗は聞く。声を求めた刹那。 「――後で戸の傍まで来い」 荷は移った。彼の手が、持ってくれる。 「ああ、よろしくな」 ひとまずは安心だ。ゆっくりと頷く。巨大な鞄を持ち、師に一礼し去って行く綺麗な背を、見つめた。 賑わいの終わり。嬉しい会話や食事で素晴らしい聖夜になったと思うが、やはり少し寂しい。静まる。 「整頓だ」 見える位置にいた晴明が呟く。綺麗になった皿を端に寄せつつ、天狗は知らせる。 「世話になった。泰明、鞄を引き取る」 会場の清掃を済ませたら、泰継と並び帰る。無論、荷は引き取ろう。彼の傍に踏み込む。 「分かった」 承知を聞き、泰明の後ろに続いた。 「ちゃんと置いてくれているな」 入室し、そっと褒めた。戸の傍で品は直立している。鞄を放らずにいてくれたらしい。自分に呆れた際も、彼 は手を抜かずにいてくれる。嬉しい。 自分の荷を、引き寄せたとき。 「天狗。少し、負担は増えるが、持って欲しい」 聞こえた。綺麗な紙袋を、緊張しているらしい泰明が勧めてくれる。自室に置いていたのか。 聖夜の、祝福。天狗は呼吸し、囁く。 「……ありがとう。荷は気にするな。今、纏められる」 選んでくれたものを手に取りながら、巨大な包みを彼に見せる。 祝宴を彩るもの以外も、詰め込まれている鞄。預かって貰えれば引き取りの際に泰明と話せると思い、管理を 求めた。 美しい瞳は、見開かれる。近くで、覗き込んだ刹那。 「――ありがとう」 礼を、感じられた。俯きつつ、彼は品を持ってくれる。安堵し、天狗は沈黙を破る。 「聖夜だ。開いてくれ。儂も良いか?」 「拒否する理由はない」 許可を得て、そっと包みを開く。 使いやすさの伝わる、吊るせる網。収納にも使えるハンモックだ。 「戻ってすぐに設置する。ありがとう」 泰明は小さく頷き、丁寧に包みを開く。 「――広い」 立体的な迷路。泰明は見つめ、声を発する。 「転がせる迷路だ。きっと雑念もなく過ごせる。してみるか?」 彼に説明する。向きを変え、始発に位置するビー玉を導く迷路。集中力もより養えると思う。 「ありがとう。移す」 泰明は、そっと本体に触れる。 「音は、遮る」 ビー玉の転がる音。居間に響かないことを願い、天狗は戸の前を守る。 美しい手は、的確に目的地を教示している。少しずつ舞う、見惚れる指。 「……着いた」 小さな声。ビー玉は、無事に導かれている。 戸の前から、一歩、移る。迷路に触れている彼。見つめつつ、話す。 「晴明が来る前に、祝す。良く、努めたな」 愛しい手は、近くに映る。更なる幸せを、貰って欲しい。 見開かれた目。覗き込んでから、そっと、親指の根元に唇を寄せた。 |
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