傍らに座って

「――お師匠」
 ゆっくりと瞼を開け、泰明は傍らに座っている人を呼んだ。
「どうした?どこか、痛むか?」
 その人は――晴明はこちらを覗き込み、気遣うように声をかける。
「いえ……」
 泰明は首を振った。少しの間眠っていたので、身体の痛みも癒えている。
「――良かった」
 師は安堵したように息を吐く。高鳴りを感じ、泰明は胸に手を当てる。
 少し前、泰明と晴明は褥に入り抱き合っていた。その後、落ち着いてから眠る前の挨拶を交わし改めて褥に入
ったのだが、どうやら眠っていたのは自分だけだったらしい。
 師は、いつもそうなのだ。自分が目を覚ましたとき、いつも寝ずに見守ってくれている。仮に自分が朝まで瞼
を開けなかったとしても、この人はずっと傍らに座っているのだろう。ゆっくり休んで欲しいとも思うが、目を開
けたとき穏やかな瞳に迎えられると安堵するのも確かだ。
「……私が目覚めるまで、待っていて下さったのですか?」
 起き上がりながら、尋ねる。
「――私は、寝ている泰明も好きなのだ」
 晴明は唇を綻ばせ、頷く。その柔らかな声音に、泰明の胸は満たされた。
 自分がもう一度眠りに落ちるまで、師は優しい声でずっと語りかけてくれる。それを聞いていると鼓動が速ま
るが、それ以上に幸福を感じ、安らかな夢を見ることが出来るのだ。
「――ありがとう、ございます」
 小さな声で感謝を伝える。そのとき、掌で頭をなでられた。
「――泰明」
 晴明の唇がお休み、と動く。そして、泰明の唇は、晴明のそれに優しく塞がれた。


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