負担に

「天狗。今帰った」
 呼びかけながら、私は庵の戸を開けた。
「泰継、お帰り。疲れていないか?」
 中にいた彼は、素早く私の傍へとやって来た。その唇は、綻んでいる。
「大丈夫、だ……」
 鼓動が、速い。だが、とても幸せだ。私は短く返答した後、笑っている天狗を見つめた。
 優しい光の宿った彼の瞳は、いつも私に安堵をもたらす。
「――どうした?本当は疲れているのか?」
 しばらくして、黙っている私を不思議に思ったのか、少し不安げに天狗は口を開いた。
 それは、違う。私はゆっくりと首を横に振った。
「……そうではない。お前が笑うと、気の乱れも治まると思っていた」
 自然と、言葉が出た。どれほど疲労しているときでも、笑っている彼と目が合うだけで、私の気は鎮まる。天
狗は、とても大切な存在だから。
 思わず告げた本当の気持ち。頬が、熱くなった。
 彼は目を見開いている。どうやら、驚いたらしい。
 だが。
「――それは良かった。儂も、お前が傍にいてくれるときは美しい気を感じられるぞ」
 天狗はすぐ、笑顔に戻り、私の頭にそっと手を載せた。
 ときおり、彼への気持ちが膨らみ過ぎて、天狗の負担になっているのではないかと不安になることがある。今
も、突然想いを告げて、彼を惑わせたかもしれないと思った。
 だが、溢れる想いを受け止めて、天狗はいつも私に応えてくれる。
 だから――私は、愛しく思うのだ。
「そう、なのか。嬉しい……」
 胸が満たされ、呟いた、そのとき。
 優しく髪をなでられ、やはり幸せだ、と思った。


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