花にも勝る 「泰明、おいで」 草木が静かに眠る刻。自分の部屋に来てくれた泰明に、晴明は呼びかけた。 「――はい」 彼は素直に頷き、こちらへと歩み寄る。 泰明の香りは、とても好ましいものだった。 「泰明……」 呟いて深く息を吸い込めば、胸いっぱいにその香りが広がるようだ。 「――お師匠、どうかされましたか?」 急に深呼吸をした晴明を不思議に思ったのか、泰明が尋ねる。 彼の頬にそっと手を当て、その疑問に答えようと口を開いた。 「……お前は、とても良い香りがするな」 「――そうでしょうか?」 予想していなかったのか、泰明は晴明の言葉に目を見開く。だが、これは本当のことだ。 「同じ香を焚いているはずなのに、何故だろうな?」 彼は、晴明と同じく菊花の香を好んでいる。だが、泰明の匂いは香のそれとは全く異なるのだ。 菊花の上品な香りだけではなく、どのような花にも勝る甘く魅力的な匂いがする。それは、いかなるときも自 分を惹き付けるのだ。 「……お師匠」 頬に当てた掌をゆっくり動かしたとき、彼の小さな声が聞こえた。 「何だ?」 手を止めて、問う。 泰明は短い沈黙の後、視線を晴明に向けて、唇を動かした。 「私は、自分ではなくお師匠の香りが……」 彼の頬には、薄紅が差している。その先を告げるのは難しいだろう。 促すように、晴明は言った。 「――好き、か?」 「……はい」 泰明は頷いた。彼も、自分の香りを好んでくれているらしい。それはとても嬉しいことだ。 「――ありがとう。では、これから互いの香りに酔うとしようか」 夜は、香を楽しむのに適した時間だ。泰明の腰に腕を回し、更に近くへと抱き寄せる。 息を吸って甘い香りを堪能した後、彼の帯に指をかけた。 |
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