与えた熱

  晴明は真下にいる男を見つめた。ベッドの上に仰向けになったその男は、気持ち良さそうに目を閉じている。
 その男――天狗の仄かに赤く染まった頬に触れながら、晴明は先ほどまでの宴を思う。

 ほんの数分前、晴明は天狗たちと共に盛宴の中にいた。クリスマス・イブである今夜、晴明と泰明の家で宴を
開くことを天狗が提案したため、泰明と泰継、そして彼と共に聖夜を過ごしていたのだ。
 その宴の途中、天狗は晴明に飲み比べをしないか、と持ちかけてきた。すぐに了承し彼の持って来た三本のワ
インを飲んだのだが、晴明とは違い天狗の身体には少々アルコールが回ってしまったらしい。椅子に寄りかかり
今にも眠ってしまいそうだったため、晴明は彼を自分の部屋まで連れて来たのだ。

 こうして見つめていても、カットソーとジーンズを纏ったたくましい身体は相も変わらず横たわったままだ。
 せっかく二人でベッドの上にいるというのに、これはもったいない。
「天狗」
「んー、晴明?」
 軽く頬を叩くと、天狗はゆっくりと目を開けた。完全に眠りに落ちていたわけではないようだ。
「とても楽しそうだな」
「ああ、良い気分じゃ」
 答える天狗の顔には実に晴れやかな笑みが浮かんでいた。多くの酒を口にしたことにより、少し気分が高揚し
ているのだろう。
 アルコールではなく、自分が彼に熱を与えることは出来ないだろうか。
「……もっと良い気分になりたいとは思わないか?」
 言ってから顔を近づけると、天狗はそれまで細めていた目を大きく開けた。
「――晴明?」
 そのまま、唇を重ねた。
 もともと高い体温がアルコールにより更に上昇していたのだろうか。唇も、熱い。
「ふふ、ここも熱いな」
「――唐突だな」
 笑いながら顔を離したとき、眉を寄せた天狗の顔が視界に入った。
「おや、酔いは醒めたのか?」
「こんなことをされて醒めないわけがないだろう」
「そうか。身体の熱も……失せてしまったか?」
 熱は失われてしまったのだろうか。目を見ながら尋ねると、天狗は小さく息を吐いた。
「――そんな風に見えるか?」
「――見えないな」
「――当たりだ。泰継に、今日はここに泊まると伝えて来る」
 天狗は微笑んだ。晴明の身体にも、熱が広がって行く。
「ふふ、分かった。メリークリスマス、天狗。プレゼントは……私で良いか?」
 身体を起こした天狗に、再び唇を重ねた。


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