<Side:キュルケ> 『フッフッフ…ラ・ヴァリエール家の三女は魔法が使えぬようだ。しかしだ、我が娘キュルケよ。ツェルプストー家は代々ラ・ヴァリエール家と対をなしてきた。例え、ドット以下であったとしても、全力で倒すのだ』 お父様から言われた言葉。 ラ・ヴァリエール家の三女…ルイズは魔法が使えない。それがツェルプストー家が出した答えだった。 確かに、12歳の時に会ったルイズはドットクラスどころか、コモンクラスすら使えなかった。 私は炎のトライアングル。 勝って当然、負けるなんてありえない。 むしろ、相手にすることすら考えても居なかった。 でも、それは… 「全く…高々学院のスクウェア程度の分際で、この『爆破せし者(エクスプローダー)』を見下すなんて…」 このトリスティン魔法学院に入学して、たった半年で改めざるを得なかった。 「『爆破せし者』だって!? 聞いた事があるぞ。あの、『烈風のカリーナ』の唯一の弟子にして、その師をも跪(ひざまず)かせたという…まさか、ミスルイズ…キミだったなんてっ!?」 何でもない午後の授業。 なんでもない講義。 ただ、『風が最強』等と豪語する名も知らない教師が 気に入らない回答をしたルイズを挑発しただけ 「『跪かせた』とは過小評価ですね。これでも私、お母様…いえ、『烈風のカリーナ』との勝率はこの学院に来る前で4割でしたのよ?」 ルイズは何かの魔法を使った。 聞いたことのある詠唱のはずだった。 でも、見たことの無い魔法。 いや、私だけではない。誰も見たことが無いだろう。 何も無い空間を…ルイズは… 「それで、分かって頂けましたか、先生? 風が最強なのではない、この『私』が最強なのですわ!」 『爆発』させたのだ。 −−−−−−−−−− ゼロの使い魔中期連載SS「オクトメイジ」 外伝ノ一「蒼桃とキスと勘違い −この爆弾魔、お義姉さまにつき−」 −−−−−−−−−− 「何なのよあれ、何なのよあれ!何なのよあれぇっ!!」 『魔法が使えない』? 違う、ルイズは魔法を使っていなかっただけだったのだ。 数秒程度の詠唱。なのに、威力はトライアングル… いや、スクウェアクラスあったのだ。 私の全力で『フレイム・ボール』を放ったところで、あの風のスクウェアである先生を吹き飛ばせただろうか。 否! きっと先生は、私の魔法を軽く杖を振るだけで跳ね返してしまっていただろう。 なのに、ルイズは反撃する暇すら与えずに吹き飛ばしたのだ。 しかも… 『安い挑発に乗って吹き飛ばしてあげましたけど、黒板は無事でしょう?さっさと授業を続けてください』 そうだ、ルイズは手加減して吹き飛ばしていた! 元来、炎属性は非常に調整が難しく 『手加減』など殆ど出来ないと言っていいほどなのに 「すごい!すごいわっ!すごいわぁっ!!」 急いで彼女の部屋へ向かわないと、そう思いながらも私は逸(はや)る気持ちを抑え 走り出したくなる衝動を抱えたまま、足早に歩いていく。 まずは謝ろう。入学当初『魔法が使えない』等と馬鹿にしたことを。 意に返さず、ルイズが『フン』と鼻で笑って去っていったあの時はただの虚勢だと思っていた。 きっとあの時ルイズには、私が滑稽(こっけい)に写っていただろう。 そう思えば、あの時の行動がとても恥ずかしいモノだったと思える。 逃げ出したくなるくらいに情けなく、も。 でも…決めた。私はルイズの友だちになるんだって。 両親の繋がりじゃなく、ラ・ヴァリエールとツェルプストーではなく ルイズと、キュルケとして。 「落ち着きなさい、私。…ったく、男の子に興味を持っても、こんなに上擦(うわず)る事なんて無いのに…何で貴女は女の子なのかしらねぇ?」 右手を胸に当て言い聞かせるように呟けば、自然と笑みが毀(こぼ)れてくる。 大丈夫、いつもの私だ。 さぁ、ドアノブに手をかけ…一気に開けてっ! 「ねぇ、ルイぶふぅっ!?」 「んんっ…はぁんっ…やぁっ……ぁ……?…って、キュルケじゃない」 なに?今のなに!? 今起こった事をありのままに言うとするならば 私はドアを開けた! 足を一歩部屋に踏み入れて、ルイズの名前を呼んだ! …のに、視界にあるのは…床? 床…? あ、私…あまりにあまりな光景を見てしまって、脱力して突っ伏してしまって… 「って、そうじゃないわぁっ!!」 「何突然テンション上げてるのよ、ツェルプストー」 鼻の頭を少し擦りむいたのか、ちょっとだけヒリヒリするけどそんなの関係ない! 私は勢い良く起き上がり、未だに……えと……だ…だい……だい… 「る、るるるるっ…ルイズ!…あ、あぁぁぁっ…あ、あなっ…あなた!そっ…そこっ…そこは赤ちゃん作る大事な所なのよぉっ! 何で指なんて突っ込んでるのよぉっ!?」 「何でって…普通にオナニーしてただけじゃない」 やっぱり判ってない絶対判ってない! 『おなにぃ』とか良くわからない単語を使って誤魔化してるつもりかもしれないけれど、そうはいかない。 きっと、指なんて突っ込んだから内部が傷ついてしまってる。 だって、指が体液に塗(まみ)れて凄い匂い出してるし。 「だからっ!だからぁっ!」 「あぁもう、ウ・ル・サ・イ。興が逸れちゃったじゃない」 興奮しすぎたためだろうか、足腰に力が入らなくて 謝らなくっちゃ!でも、注意しないと!って、頭が混乱してしまって それでも話を聞いて欲しいのに、ルイズは指に付いた体液を舐めながら 「アンタが『子供遊び』を止めたら判る様になるわよ」 なんて… しかも、部屋を出る時に…私より身長低いクセに 私より小さい手で、私の頭を撫でて それがとっても優しくて、そう感じた自分が凄い情けなくて 「もう…もう、何なのよぉっ!!」 私はただ、叫ぶしか出来なかった。 そんなに私って子供なのかな… <Side:タバサ> リーゼロッテの居ない日々。 リーゼロッテが入学するまであと半年。 後半年で、リーゼロッテが入学してくる。 「ねぇねぇ、今日のタバサさんって…もしかして笑ってない?」 「へ? あ、うーん…どちらかというと、何か悪いことを考え付いて『ニヤニヤ』している様にも…」 「どうかなー?案外、好きな男子のコトでも考えてるんじゃない?」 「えーっ!あのタバサさんがぁ〜?うっそ〜?」 やはり教室は騒がしくて、読書には向いていない。 私は本を閉じると、こちらに意味有り気な視線を送ってくる一団を無視しながら教室を出た。 やっぱり、中庭が良いかも知れない。 そう思い立って、少しだけ歩を早めて向かう。 私にとって、リーゼロッテに会えない日々に意味なんて無い。 ただ、時間を潰しながら己のスキルに研鑽(けんさん)を重ねていく そのためだけの日々。 色の無い日々。 まるで、リーゼロッテに会う前の私に戻ったみたいだ。 そう、思えてしまう。 だから… 「うそ…なぜ…」 中庭の草むらの木陰で昼寝をしている人を見かけた時 「リーゼロッテ…」 息が、止まりそうだった。 とても大事にしていた本。 何十回も読んだ本。 まるで、私とリーゼロッテを題材にしたような本。 その本が、私の手から滑り落ちた時…まるで、それが合図のように 「っ!」 私は走り出していた。 距離にすれば50メイルも無かったと思う。 「はぁ…はぁっ…リーゼ…はぁ…ロッテ…はぁっ…はぁっ…んっ…」 でも、リーゼロッテの所に来た私は、荒い息を整えぬままに彼女の唇を奪っていた。 「んふ…ちゅる…おいひ…っちゅ…んふ…ちゅ…」 考えより先に出た行動だった。 でも、考えが追いついても この学院にいながら、私を半年も放置したリーゼロッテが悪い とか あまりに可愛く成長してしまったリーゼロッテを前にして、興奮が止められない とか 諸々の事情の所為で止まるどころか… 「こ、これが…リーゼロッテの胸…ごくっ…だめっ…我慢…はぁっ…んっ…っちゅ…ふぁ…リーゼロッテの胸…甘くて…柔らかくて…ちゅる…それに…こんなに、乳首堅くして…んんっ…」 「…ぁ…ふぁ…ん…」 私はいつの間にリーゼロッテの服を脱がしたのだろう。 でも、そんな些細なことはどうでもいい。 ただ、心行くまでリーゼロッテを味わいたい ただ、それだけ… <Side:ルイズ> 何でこうなってるの? 私はキュルケにオナニーを止められて、半ば苛々しながら中庭で不貞寝(ふてね)していたというのに 気が付けば、蒼い髪の娘が私の服を脱がして胸にしゃぶりついているのだ。 しかも幸か不幸か、不貞寝を邪魔されたくないからと廊下の視界の影にある所に寝ているから この娘以外に気付いている感じはしない。 というか、この娘…どこかで会った気が… 「心安く眠っているところをごめんなさい、リーゼロッテ。でも、私を半年も放っておいた貴女が悪い。」 「わ…はぁ…わた…はぁ…はぁんっ…ま、まって…んぁぁっ…んむっ!?…んんっ…」 そうだ、この娘シャルロットとかいうガリアの王女だったはず… でも、ガリアから来たのは『タバサ』とか言ったはずだけれど。 余程興奮しているのか、私の制止を聞かずに身体を弄(まさぐ)ってくる。 意外に…上手い。 ちょっとでも気を許したら、そのまま流されそうなほどだ。 でも、私はその辺りに居る娘とは違う。 日頃からちぃねえさまに散々苛め…もとい、可愛がられている私に この程度の技、どうって事は… 「やぁっ…だめっ…みみぃっ…みみだめなのぉっ!」 「いっぱい…気持ちよくなって…はぁっ…んぅ…私もっ…凄くっ…興奮して…んっ…ちゅ…」 なんで、何で力が入らないわけ!? ていうか、感じるところ探すのが的確過ぎて…って、そういえばリズも耳とか乳首とか感じやすかったっけ… あっ… そういえばこの娘…まだ私をリズだと勘違いしてるんだわっ! お、思わず流されるところだったじゃない! 「達(イ)きそう?良いよ。リーゼロッテの可愛い絶頂(イ)き姿…私に見せて…」 「だ、から…私は…る…い…じゅ…ぅ…っく…っっ〜〜〜〜〜!!!!」 でも、止まらなくて 絶頂き慣れた身体では、快感に抗えって方が無理だったわけで… <Side:タバサ> 「かっとしてやった。全力で謝罪したいと思っている」 ただ、平に…平にと土下座するけれども リーゼロッテ…いや、リーゼロッテの実姉ルイズさんは、絶頂に身体を震わせながらもこちらに背を向け 「リズ以外に絶頂かされたちぃねえさま以外に気持ち良くされたリズ以外に絶頂かされたちぃねえさま以外に気持ち良くされたリズ以外に絶頂かされたちぃねえさま以外に気持ち良くされた…」 と、私がギリギリ聞こえる大きさで呟いていた。 「で、でも…理解して欲しい。それだけ貴女…ルイズさんがリーゼロッテに似て可愛かったと…」 「私は釣り目!リズはタレ目!顔は似てても雰囲気全然違うでしょうがぁっ!!」 ダメ。本気で泣いてる。 でも、放置するわけにはいかない。だって、リーゼロッテの姉であり 私の義理の姉になる人なのだから…あっ 「あの…お義姉さ…っ!?」 「誰が、誰の『義姉』ですって?」 良かれと思って、義姉と呼んだのだけれど…どうやら逆効果だったらしい。 背中を丸めて縮こまって、いじけていたはずのルイズさんは私の言葉に反応するのが早いか 私に飛び掛り、押し倒してきたのだ。 ルイズさんの目が充血して目蓋(まぶた)が腫れ上がっている。 その目で睨まれるのは、凄く辛い… やっぱりこの人もリーゼロッテのお嫁さんになりたいのかもしれ… 「リズは私の嫁よっ! 誰が嫁にやるものですかっ!!」 「…へ?」 一瞬思考が止まってしまった。 『私の嫁』ということは、ルイズさんはリーゼロッテの夫になりたいという事なのだろう。 だったら、何も問題は無い。 私は、リーゼロッテの嫁になりたいのだから。 <Side:ルイズ> 「つまり、アンタはリズの嫁になりたいのね?」 「そう、そしてお義姉さまはリーゼロッテの夫になると良いと思う」 シャルロットはリズの妻になり、リズは私の妻になる。 シャルロットの言葉を要約すると、こういうことらしい。 ふむ、全く問題無いわ。上手く考えたわね。 それにリズの夫となるということは、リズの処女を貰えるという事だし リズを妊娠させられるのも私ということに… 「お義姉さま、鼻血…」 「ふぁ…ふぉめんなさい…興奮しすぎたわ」 それはそうだ。ソファに座り、愛(いとお)しそうにお腹を撫でるリズの子は私の子になるのだ。 これで興奮するなという方が無理だろう。 「ふっ…フフフッ…ジュル…し、仕方ないわね。良いわ。今日から私の事を義姉(あね)と呼ぶことを許してあげるわっ!」 「感謝しきれない。これからよろしく、お義姉さま」 これで、リズの妻の座も夫の座も埋まったわけだし 後はリズが来るだけじゃない! 本当に、半年後が楽しみだわっ!! <Side:???> ゆっくりと羊皮紙を捲っていく。 書かれているのは、来期入学予定者達の絵入りのプロフィールだ。 しかし、来期はあまりパッとする子がいない。 いや、今期が凄すぎたのか… 「ラ・ヴァリエール家にグラモン家、ゲルマニアのツェルプストー家…それに、偽名にしてあるけれどガリアの王位継承権を持つ子も居たのよね…」 誘拐して身代金を…というのも考えたけれど、リスクが多すぎて敬遠していたのだ。 しかしながら、コナをかけていて損は無い面子であるのは確かではある。 「…ん?…えっ!?」 少しばかりのため息を付きながら、羊皮紙を捲っていくのは 職業柄なのか、『本職』の成せる業なのか。 でも、そんな私の手を止める一枚のプロフィールがあったのは 数時間もかけて閲覧していた甲斐があったと言えるかも知れない。 いや、そんな奇麗事で済む話ではない。 私は今、奇跡を目の当たりにしたのだから。 この衝撃はティファニアに初めて会った時以来かもしれない。 「ふっ…ふふっ…あはははっ!!」 天を仰ぎ、小汚い埃だらけの天井を見つめながら私は大声で哂(わら)った。 何度ブリミルを恨んだか判らない。 何度神々を罵(ののし)ったか覚えても居ない。 ただ、今この瞬間だけは… 彼らに感謝しよう。 地上に舞い降りた『天使』の二つ名を持つ少女『リーゼロッテ』と巡りあわせてくれた奇跡を。 それ以上に、どうやってこんな娘を脅して入学させようとしたのかをあのジジイ… いえ、オールド・オスマンに問い質さなくては。 「ズズッ…いけない…鼻血で汚れてしまったわ。…まぁ、私しか見ない文書だから大して関係ないのだけれど」 リーゼロッテ・ベルワース…か… どこかの小さな貴族の家の出なのかもしれない。 入学時15歳って書いてあるけれど、どこをどう見ても絶対8歳なのは一目瞭然だ。 つまり、変態セクハラロリコン魔神のオールド・オスマンに弱みを握られ この学院に入れるという名目で、あんなことやこんなことを… そ、そんなうらやま…じゃない、いけない事を私が止めないで誰が止めるのよ!! ま、まぁ…それが切っ掛けで彼女が私に好意を持たれたり… 『あ、あのっ…お…お姉さまって…呼んでも…いい…ですか?』 「ぶはっ!…あっ…あぁっ!?…やだっ…書類が血まみれじゃないっ!?」 ま、大概目を通したし リーゼロッテ以外に目の付く子は居なかったからどうでも良いのだけれど。 私はゆっくりと身体を屈(かが)め、素早く床に居る『モノ』に手を伸ばした。 「チュイッ!?」 「さぁネズミさんネズミさん。私の下着を覗く暇があったらさっさと主人の場所に案内なさい」 少しばかり『本職』の時の声が出てしまったけれど、多分大丈夫だろう。 少しばかり強く握った手の中で、『ガタガタ』と震えるネズミを見ながら私は 少しだけ…久しぶりに… 微笑んでいた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− オリジナル設定 烈風のカリーナ 実際はカリーナではなく、マンティコア隊隊長時の名前カリンなのだが リーゼロッテが6歳の時に『お母様って烈風のカリーナって言うのですねっ』という 無邪気な笑顔で呼ばれた事により、あっさりと改名したらしい。 爆破せし者(エクスプローダー) 今作は原作同様『虚無の魔法』は使えないのだが、『魔法を使うと爆発する』という面白い原理をリーゼロッテに気付かされたため 『失敗魔法』ではなく『爆破魔法』として昇華させるべく、母親であるカリーナに修行をつけて貰い 初めて勝利した時に母親自身から貰った二つ名である。 そのため、爆破させる方向や威力を自在に操れる程に熟練しているようだ。 相変わらずコモンマジックは殆ど使えないようだが